特集「The Best of 2011」。
2012も終わりだというのに2011かよと言うなかれ。翻訳SFは訳者の皆様のおかげで読むことができるのです。感謝を。
で、今回の特集を読んで、文学系が強くなってないか、と思った。
起承転結のある物語というよりは、ひとつのシーンのスケッチみたいなものや、ストーリーよりも描写に力を入れたものが多かったような気がする。
そして、今回の特集で収録された作品群にテーマを付けるとすると、隠喩の戯れ、ってところか。表面的な描写は、その物語の中の真実や事実ではない。もしくは、著者は別のことを託しているように見える。それを文学的と言ってしまうのは短絡的なのかもしれないけれど、その方面が好きならば、普通に文学小説を読んでるんじゃないかと思う。
あ、円城塔が芥川賞獲ったりするあたりはそこにつながるのか。
正直なところ、描写じゃなくって物語を読ませろよとは思うんだけどね。そうでなければ、描かれたちょっとしたシーンから物語が広がるようなやつ。
読むという行為が楽しくない時に、その先を考えることなどできませんよ。ましてや、通勤電車の眠たい状況で読んでるんだから、一読して退屈だけれど、よく考えると凄い系の小説は有難迷惑です。
△「アース・アワー」 ケン・マクラウド
背景がわからなさすぎ。断片の集まりのような感じがするうえ、その断片も臨界を突破していない。
△「奉仕者と龍」 ハンヌ・ライアニエミ
これも描写優先的な感じ。そんなに隠喩って美しい?
○「穢れた手で」 アダム=トロイ・カストロ
『シリンダー世界111』よりも断然おもしろかった。やっぱりあれは長すぎだな。
○「地図作るスズメバチと無政府主義者のミツバチ」
面白いんだけれど、何のことかさっぱりわからん。これも隠喩なのか?
△「静かに、そして迅速に」 キャサリン・M・ヴァレンテ
北海道SFだというから期待したのに、その家が知床にある意味がよくわからず、北海道的な雰囲気もまったくなく。
地名がおそらくエキゾチックに聞こえるから使ってみただけなんじゃないか。そして、これこそが隠喩の話。