『レッドスーツ』 ジョン・スコルジー (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
前半を読んで、作品紹介がそのままネタバレじゃないかー!と激怒しそうになったが、さすがにそんなことはなく、後半には予想を上回る展開が待っていた。
メタのメタでさらにメタ的な転換が続く部分で好みが分かれそう。確かに、これを読んだ人は爆笑するか激怒するかの両極端だろう。もちろん俺は大爆笑派。
SFファンの投票で決まるヒューゴー賞を受賞した理由もよくわかる。
一方で、さらにメタな視点では、著者スコルジーの作品論というか、SFに対する意識、姿勢、もしくは提言の表明とみなすこともできる。
さらに、文学的には、異なる世界、環境で生きる自分の存在を知ることによって、心理的な影響を受ける人々の群像劇と見ることもでき、終章3篇のさわやかな感動が心地よい。
そのあたりのテーマからすると、ネビュラ賞を受賞できなかったのが不思議なくらいで、決してキワモノなだけのコメディというわけではない。
基本的には徹頭徹尾、《スタートレック》、というよりは、《宇宙大作戦》のパロディなのだが、雰囲気だけ知っていれば問題ない。《スタートレック(の古い方!)》を知っていると、ニヤニヤできる場所が多少増えるかという程度。
扱われているテーマは《スタートレック》にとどまらず、日本のウルトラマンや仮面ライダー、さらには、ドラゴンボールやプリキュアにおいてもあてはまる問題提起であるんじゃないかと思う。
問題提起といっても、それは批判ではなく、溢れる愛なのだけれどもね。