『レッド・ライジング2 黄金の後継者』 ピアース・ブラウン (ハヤカワ文庫 SF)
『エンダーのゲーム』か『バトルロワイアル』かといった展開で話題を呼んだ《レッド・ライジング》シリーズの2巻目。
階層社会を転覆させるために、最下層のレッドから、支配者層のゴールドに送り込まれた主人公のダロウ。いったい、ここからどうやって社会をひっくり返すのかという方向性は見えてきたが、それ以上に、この世界の成り立ちや問題点も見えてきた。
結局のところ、よく言われるように、非常事態においては完全平等の民主主義よりも、有能な人々の独裁による支配が有効な場合もあるだろう。しかし、それはあくまで非常事態の間のみであって、事態が落ち着けば速やかに解散されるべきものである。
その指揮系統が維持されたままでは、いずれ腐敗し、指揮系統が支配構造となり、カースト社会が生まれる。
そこで革命が起ころうとするわけであるのだが……。
1巻では世界はなんと単純だっただろう。虐げられた民衆と悪の支配者層がいて、主人公の目的は支配者へ復讐することだった。
主人公がゴールドの一員へ立場を変えることによって、2巻では見える世界はより複雑になった。
それはまるで、義憤に駆られた若者が政治運動に飛び込み、世の中が思ったほど単純に割り切れるものではないことに気付いていくというストーリーでもあるかのようだ。
痛快な復讐劇を期待した読者を裏切るような展開に、自分の思慮分別の無さを突きつけられるかのようで、居た堪れなくなる。
どんでん返しに続くどんでん返しにちゃぶ台返しと衝撃的なカミングアウト。敵と味方が複雑に絡み合う中、ダロウは死にもの狂いで生き残るための戦いへ挑む。
定番のエピソードではあるが、ダロウが生地である火星の鉱山を訪れるシーンは印象的。何も変わっていないはずなのに、すべてが変わって見える。ゴールドとして姿かたちも変わってしまった彼を、母親だけが見分けられる。
起点に戻り、本当の敵を見据えた主人公のさらなる戦いにご期待くださいということで、以下次巻。
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