『リライト』、『リビジョン』に続く第3作。
途中まで読んで、ヤバいと思って前2作をななめ読み。思ったより忘れていたことが多く、読み直してよかった。
要するに、最初の『リライト』をメタフィクション化し、リアクト(再演)するというのが本作の趣向。
作中で“『リライト』の穴”と言われる部分が、果たして最初から仕組まれていた罠なのか、読者の批判に応えた後付けの設定なのかがわからないのが微妙なところ。
『リライト』は史上最悪のバッドエンドを迎えるタイムパラドックス小説で、あれはあれで面白かった。その作品だけで完結していて何の問題も無い。
しかし、さすがにそれは無いだろうという突込みも必然的な作品ではあったわけだが、それがこうしてひっくり返されるのは気持ちが良いかというと、逆に気持ち悪い。
2作目の『リビジョン』の内容がちょっと陳腐ということもあったのだが、あれはシリーズ中でキーとなる未来の科学者、保彦の誕生秘話だったことがこの作品で確定する。いや、これも確定なのかどうかわからないのか。
というのも、謎はすべて解けたわけではなく、あえて残っていることが明示される。したがって、第4作までは必然的に存在するわけだ。
起こっていることは、ちゃんと図解すればそんなに難しい話ではないのだけれど、どうしてそうなるのかは、そうなるのだからそうなったのだという説明でしかないので、ここを納得できるかどうかが問題。
しかも、そうなっているからそうなのだと納得したところで、後から「実はその理屈には穴がある!」と得意気に言われたところで、なんだかなあという気分になる。
とはいえ、理解した構造が見事にひっくり返される経験は、確かにおもしろい。たぶん、タイムトラベル強者(笑)の読者の方が、「ああ、あのパターンか」と勝手に納得して騙されてしまうのかもしれない。
そして、この後の完結編ではさらにこの物語の構造をひっくり返す可能性があるわけで、まったく油断がならない。
そもそも、章題が「時を翔ける少女」、「時を書ける少女」、「時を欠ける少女」、「時を賭ける少女」と、あの有名な作品のパロディであり、なおかつ、それを含めたすべてのタイムトラベル小説のパロディであることを初めから宣言しているのである。
ここまで来たら、古今東西、すべてのタイムトラベル小説をあざ笑うかのような完結編を期待したい。
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