神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] 地球0年

2010-04-13 22:26:10 | SF
『地球0年』 矢野徹 (ハヤカワ文庫 SF)

JAレーベルが出来る前にSFレーベルで出版されたもの。初出はさらに古く、1964~65年の雑誌連載。
山野辺進の表紙や挿絵が懐かしい。当然のように目録落ち。

おもしろいのが、立風書房版には「-日本自衛隊アメリカを占領す-」というサブタイトルがついている。
今なら、ネトウヨ大歓喜! なのか?

冷戦の最中、米ソ中三竦みのなかで、偶発的に発生した核戦争。わずか40分のうちに収束した戦争は、米ソ中欧の全域、および日本の東京を壊滅させた。それはもう、はだしのゲンでおなじみの原爆地獄絵図。

そこまでは架空戦記や近未来小説としてもよくある話。この小説では、さらにその後の世界情勢に焦点が当てられる。
世界連合は比較的被害の軽かった国々へ、壊滅的打撃を受けた地域への救助活動を要請する。
日本は北米大陸の西海岸を担当するが、これを「日本自衛隊によるアメリカ本土占領」と喜ぶ老害右翼ども。

日本で被害の無かった信州や東北であっても、情報不足によるパニックやスケープゴートに仕立て上げられた外国人への迫害が始まる。
大量の核兵器を喰らった米国などは当然のように、さらにその上をいく。どこのヨハネスブルグだ。
無政府状態で暴走する若者。暗躍する犯罪集団。子供は飢え、女は見境無く犯され、男だって気を抜けば蜂の巣状態。
そんな状態で、思惑はともかく、アメリカ西海岸の援助に赴いた自衛隊に向けられる敵意。人種差別的な蔑視と狭量な愛国精神。

もし、アメリカが核戦争や天変地異によって壊滅的な打撃を受けた場合、各国からの援助に対してアメリカ国民はどう思うのか。
こんな感じで敵意を向けられるのか。それとも、好意的に迎え入れられるのか。

この小説では、終戦の記憶が新しい中、自衛隊兵士達が金髪碧眼の女性をレイプしたり、略奪したりするシーンもある。
ベトナムから出発した船は援助活動ではなく、ベトナム戦争の復讐をするために太平洋の向こうを目指す。
復讐の連鎖はいつまで続くのか。

それにしても、だれでもかれでも強姦しすぎじゃないか。
そんなに日本男児は飢えているのか。
今じゃ草食系だからなぁ。


【追記】
昨日の感想を訂正する。

これは60年代のアメリカの話ではない。今、現在、この瞬間の日本の話だ。

もし、日本で大災害が発生し、国連の要請で韓国軍や中国軍が救援に来たとき、日本人はそれをありがたく感謝することができるだろうか。

誤ったプライド、過剰な愛国精神で、彼らを素直に受け入れることができないことはないか。あれは日本を占領に来た北朝鮮軍だというデマに踊らされたりしないか。

冗談ではなく、背筋が寒くなる想いがする。


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2 コメント

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Unknown (かずあき)
2019-06-24 16:06:59
別に「女に飢えてる」から襲いまくるのじゃなく、
戦争後の混乱状態ではごく普通に起こることです。
日本も終戦後の混乱でおびただしい数の日本女性が韓国人にレイプされました。 そういうものです。
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Unknown (00)
2018-06-15 18:26:34
この記事を書いた翌年に空前の大災厄である東日本大震災と福島原発事故に日本は見舞われましたが、ご期待に全く反して日本人の民度と秩序意識は世界を驚愕させたりしましたな。

莫大な兵力を救援に差し向けた米軍はもちろん、中国と韓国の救援部隊に対しても侵略軍呼ばわりして襲い掛かるどころか、丁重に出迎えましたが。
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