「特集 ハヤカワ・SF・シリーズ総解説」
ハヤカワ文庫SFの次は、ハヤカワ・SF・シリーズかよ。いわゆる銀背。こんなの総解説やったところで、興味があったら古本屋で探せってか。と思ったら、総選挙企画ってことで、ハヤカワ文庫SFで復刊、もしくは、新訳でもやってくれるんですかね。
解説を読んでみると、タイトルは聞いたことがあるけれども読んだことの無い小説がわさわさと。番号の抜けているものはハヤカワ文庫SF総解説と重複しているということは、ここにあるやつは(少なくともハヤカワでは)銀背でしか出てないやつなんだ。
なにしろ、リストの先頭が『ドノヴァンの脳髄』である。この本、タイトルを知っている人の中で、実際に読んだことある人はどのくらいいるのだろう。
リストを眺めてみると、我々がSFとはこういうものだと思う小説が中心のラインナップ。そりゃそうで、いわば、このラインナップこそが本場米国とは多少異なる日本のSF観を形作って来たのだろう。
後半には小松左京をはじめとする日本人作家の作品も混じり、彼らが海外作家と肩を並べられるような作品を生み出し始めた頃のラインナップと比較するのもおもしろい。
小松左京、光瀬龍の第一作品集の1か月前に出たのが『トリフィドの日』だったり、『破壊された男(分解された男)』はその後の出版だったりと、へーと思うことが盛りだくさんだ。
個人的に気になったのはレスター・デル・リイの『神経線維』。原発事故をテーマにした災害SFだが、あまりにリアルな描写のためにFBIから調査を受けたという逸話が目を惹く。原発事故を経験した日本人にとって、60年前に描かれた作品を読み直すことは価値があると思う。
○「青い海の宇宙港」 川端祐人
今回で最終回。種子島多根島の宇宙遊学生である小学生たちがやり遂げた快挙。「ガッカチチウ」という奇妙なスローガンも心に残る。ロケットへのこだわりも、ガオウへのこだわりも、SFじゃないけどSF魂に溢れている。これ、ハヤカワ文庫ハヤカワから単行本で出るんだけど、小学生が読める形にできないものか。
○「新・航空宇宙軍史 イカロス軌道」 谷甲州
読み切りじゃない(何回目?)。もう、不定期連載ってことで。
○「裏世界ピクニック くねくねハンティング」 宮澤伊織
都市伝説的怪談のSF的解釈というか。なかなかおもしろいテイストだと思う。
○「あるいは呼吸する墓標」 伏見完
サイボーグ化され、死しても歩き続ける死体というイメージが物悲しい。
○「ウルフェント・バンデローズの指南鼻〈前篇〉」 ダン・シモンズ/酒井昭伸訳
ジャック・ヴァンス風ダン・シモンズ。というか、トリビュート企画。この雰囲気はさすが。
○「マグナス・リドルフのおみやげ」 石黒正数
うん、まぁ、正しいおまけ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます