神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] 第51回 日本SF大会 Varicon(その3)

2012-07-14 10:47:47 | SF

第51回 日本SF大会「Varicon」に参加してきました。その3。


3コマ目は『大森望の星雲賞メッタ斬り!』

本日、みっつめの大森さん出演企画(笑)

他に、野尻抱介さん、小林泰三さん、鷲尾直広さん、穴沢優子さんが出演。

穴沢さんは星雲賞ノンフィクション部門受賞『吾妻ひでお(略)』の著者のひとりであり、出版社の代理受賞者ではなくてちゃんとした受賞者。

吾妻家を訪れた際の顛末や、吾妻さんの逸話(上下に切れた原稿の話とか)がなかなかおもしろかった。

 

企画は星雲賞メッタ斬りということで、星雲賞の得票数に始まり、どうやったら星雲賞を取れるかという話題に。

星雲賞の得票数は非公開だが、ここでは得票率が公開(オフレコ?)。だいたい30%台の数字が並ぶ。投票総数は100を超えるあたりらしいので、組織票で十分いけるはず。特に、今年みたいな参加者が少ない年は……。

星雲賞の獲り方については、長編は参考作品の(A)に上がるぐらい? とにかく著名度が高い作品に投票が集まりがちのようだ。

短編部門必勝法は、(1) SFマガジンなどに掲載される(この時点で候補作の権利が生まれる)、(2) 次の年の投票時期前に短編集を出す。ということらしい。これで、SFマガジンなんか読まない読者にもアピール可能というわけ。

今年の「ピアピア」は見事にこの方式に見事に嵌り、なおかつ、来年の星雲賞長編部門(短編連作ではなく、長編とみなす『太陽の簒奪者』方式)まで狙えるという、一粒でいったい何度おいしいんだという戦略。

当の野尻さんは、筒井康隆氏越えが見えてきたということで返ってビビッてしまい、「くれと言ったわけじゃない」とか言い出す始末。でもくれるならもらうw

この方式を狙って、大森さんはテッド・チャン氏に、星雲賞に合わせた短編集を出させようと画策したらしいが、著者本人を口説き落とせず、あえなく失敗。来年のコニー・ウィリスに期待だそうだ。(だから『ブラック・アウト』だけじゃ完結してないってば)

アート部門で受賞するには、はるこんに関わって組織票を入れてもらうのがいいらしい。

ノンフィクション部門を受賞するには、……失踪する(笑)

そして、アート部門の鷲尾さんがしきりに失踪を進められる。

今年の星雲賞は『吾妻ひでお(略)』以外は割と順当。よく訓練されたSFファンの集まりなので、もっと予想外な結果が期待されたが、SFファンも常識的になったものだ。

 

3コマ目終了時点で、なんとAM 2:00。しかし、まだまだSF大会は終わらない。

夕飯が大量だったのであまりお腹も減っていないが、予約済みの夜食「夕張メロン熊弁当」を引き取りに行く。思ったよりも大きくずっしり。っていうか、本当に普通の弁当じゃないか。もっと夜食っぽい、できれば酒の肴になるようなものを期待してたんだけど。そしてメロンが入っていない。弁当箱全面にメロン熊のイラストが入っているが、ゆるきゃらバージョンなので怖くない。どこをとっても期待外れなやつであった。

クラシック片手に、すでに暗がりと化した談話室でもぐもぐ。やっぱり完食できずに、米はほとんどゴミ箱に。もったいない。アフリカの恵まれない子供たちに(略)

 

4コマ目は『「NOVA&年刊傑作選の部屋」大森望』

もう開き直って大森さんと4コマ目。企画が全体的に少ないこともあって、書籍系企画を追いかけるとこうなってしまうのは仕方がない。

企画内容は『NOVA』と『年刊日本SF傑作選』について大森さんが愚痴るという内容。

聞き手は小林泰三(NOVA1に寄稿)さんと、年配のおじさん(すみません、名前がわからないんですが、ファングループ連合会議の部屋にそのままいたので、連合会議の方?)。

小林さんは酔っぱらったのか眠たいのか、はたまた一人関西勢ということで寂しかったのか、大会通しておとなし目。やっぱり、トリオとかカルテットじゃなきゃダメなのか。

 

『NOVA』の編集印税は2%。苦労のわりに実入りが少ないし、そろそろ疲れてきちゃったので、10巻までやってお休みしようと思う。というのが衝撃の告白。

『異形コレクション』をも続けた(wikipediaで調べたら45巻だった! しかも派生シリーズあり!)井上雅彦さんはすごいよねとか。

そして、『年刊日本SF傑作選』の話題では、大森さんと日下三蔵さんの確執が明らかに(笑)

「こんなのどこか面白いんだよ」「そんなのSFじゃない」との言い争いが絶えず、今ではお互い勝手にやっているそうだ。

ちょっとだけ出た「SF Japan」の話も個人的には興味深かった。あそこから選ぶようなものは無かったので、つぶれても惜しくなかった、とか。失礼だけれど全く同意。どうしてああなってしまったのか。

ただこれで日本SF中心のSF専門誌はゼロに戻ってしまったわけで、NOVAが雑誌なり、ムック形式で生き延びてくれるのであれば、それはそれで読み続ける気はあるのだけれど。

テーマアンソロジーとして続けるならばという話で出たのは「魔女っ娘」。『まどか☆マギカ』の星雲賞受賞もあるし、いいんじゃないですかね。もちろん、適度なひねりが必要なので思ったより難しいんじゃないかという反面、どんな作品が読めるのか楽しみだ。

他にはじいさん(ベテラン)特集とか、ラノベ若手特集とか。じいさんたちは、もう書かない人が多いみたいで難しそう。ラノベは『NOVA 7』掲載の3作がいい感じだったので、ちょっと期待してみたい。

で、あそこの客席側にいた作家の方って誰でしたっけ。見たことある気がするんだけど、創元新人賞の人?

そんな感じで、眠たくてぐだぐだな感じになったので、4:00前に終了。やっと部屋に帰って寝る。

 

あれ、やっぱり8人部屋なのに4人しかいない……。

 

 


[SF] 第51回 日本SF大会 Varicon(その2)

2012-07-14 10:04:02 | SF

第51回 日本SF大会「Varicon」に参加してきました。その2回目。

 

やっと20:30となり、企画の開始。そう、なんとこの大会は20:30開始で朝の4:00まで続く一晩だけのファンタジア。

しかも今回はメイン企画と呼べるものがなく、(敢えて言うならば、笹本さん部屋がそうだったのか?)どこに行こうか迷う感じ。


1コマ目は『「翻訳者vs挿画家、海外SFを語る」大森望 vs 鷲尾直広』

鷲尾直広さんは今年の星雲賞アート部門受賞者。お名前をよく知らなかったのだけれど、あれもこれもそうだったのかとびっくりした。

特に、あの『コラプシウム』と《レベレーション・スペース》シリーズが同じイラストレーターだったことに衝撃。ああ、そういえば『啓示空間』にヘンな(失礼!)キャラデザ載ってたな。

『コラプシウム』はハヤカワSFでありながら、内容とは無関係のアニメ絵表紙を付けたということで、一部で強烈な批判を受けたという逸話を持つ例の本だ。しかし、大森さん曰く、「あれ批判してるの、2chでもずーっと一人の人が言ってるだけなんじゃないの? だって、なんだかんだ言ってみんな買ってるじゃない(笑)」

ゲストが二人とも星雲賞受賞者ということもあって、海外SFの話というより、どうやったら星雲賞が取れるかという話に流れ、はるこんでただ働きすると、はるこんスタッフの組織票が入っていいらしいとの結論に。そして、この話は「大森望の星雲賞メッタ斬り!」まで続くのである。

海外SF以外の話では、アニメの話もちょろっと。『ファフナー』の企画はあるけど冲方さんが忙しくてうんぬんかんぬん。そして、モーパイの話はこの後の笹本部屋へ続く。(行ってないのでわかりません)

 

2コマ目は『作家・川端裕人インタビュー「初の気象SF『雲の王』を書いて」』

小林泰三さん部屋と迷ったのだけれど、川端さんの方へ。

川端さんは初めてお目にかかりましたが、実はこのブログに以前コメントをいただいてるんですよね。

てっきり、普通なおじさん(年上だし、PTAだしw)のイメージだったのだけれど、すらっとした長身の好青年といった感じのイケメンで、想像とのあまりのギャップにびっくらこいた。

この実物なら、『銀河へキックオフ』のオンリーイベントに行っても、腐女子たちがキャーキャー言うレベルではないかと思った。

 

で、いきなり大久保町の話とか。川端さんは明石市の出身で、『大久保町の決闘』(田中哲弥)も喜んで読んでたとか。一つ間違えば、小林さんとともにマンガカルテット入りだったのかも。

その後、日本テレビ記者時代の話や、デビュー作『夏のロケット』の話を経て、『川の名前』。さらに、最新作『雲の王』へ。

宇宙や未来へということよりも、身近なものにセンス・オブ・ワンダーを感じるというお話しにはちょっと共感した。確かに、『川の名前』は全然SFでは無いが、読んだ後に世界の見え方が変わるというセンス・オブ・ワンダーど真ん中な小説だった。

『雲の王』も、やはりその傾向にあり、雲の一族という架空の存在を通して描かれるのは遠い異星の気象ではなく、まさしく我々を取り巻く地球の大気であり、この日本の台風である。そして、この小説を読んだ後では、雲の見え方や、台風に対する考え方が違ってくるに違いない。(って、読んだ後に書いてますが……)

雲の一族と、『光の帝国 常野物語』(恩田陸)の類似の件は著者本人も気づいていたとか。ただし、下敷きになっているのは、『光の帝国 常野物語』でも、その下敷きの『果てしなき旅路 《ピープル・シリーズ》』(ゼナ・ヘンダースン)でもなく、クリフォード・D・シマックの短編だそうだ。(『20世紀SF2』収録の「隣人」?)

『夏のロケット』もホリエもんロケットとして現実化しそうだし、『雲の王』のGプロジェクトも似たような計画が始まっているらしい。現実に即して緻密に描けば描くほど、陳腐化が早く、旬が短い。“大雑把”な話ほど陳腐化しないという話題も。でも、これって共存可能だよね。大雑把な話を緻密に描けばいいんだよ、とか無責任に思ったり。

大森さんの「これは『MM9』(山本弘)への挑戦だ」みたいな感想も面白かった。台風や地震を怪獣そのものとして登場させた『MM9』と、台風を怪獣、雲の王として描く本作は確かに類似していながら、真向からベクトルがぶつかるかもしれない。

対談が終わって、『雲の王』の販売&サイン会。先頭に並んだコンサユニが俺です。すみません。

しかし、講談社の編集さんが「そうだ、SF大会に行こう」と言い出したというのはすごい。しかも、なんでまたこんな夕張なんかに。都市型大会だと、もっと本も売れたんだろうにね。ああ、でもこうやって話題にするからいいのか。

 

大会の企画はすべてビデオに撮って、後日ustreamで配信ということになっていたのだが、なんとこれだけ公式記録に失敗したとのtweetが流れてきており、まぼろしの企画になってしまったかもしれない。

 


[SF] 第51回 日本SF大会 Varicon(その1)

2012-07-12 00:02:51 | SF

第51回 日本SF大会「Varicon」に参加してきました。

会場は、バーリバリッゆーばりっ!の夕張市。廃校になった夕張北高の校舎をそのまま利用した合宿所「ひまわり」だ。

これがなんとエゾコン2(1984)以来28年振りの北海道開催。当時はSF好きな中学生だったけど、こんなイベントがあったことなんて全く知らなかった。まぁ、噂を聞く限りでは未成年が参加しちゃいけない雰囲気のヤバい大会だったようですが……。

そんなわけで、北海道で開かれるSF大会に俺が行かずに誰が行くってことで、行ってきました夕張まで。いまはもう東京の人だったんだけどね。

しかし、この日は厚別でコンサドーレの前半最終戦。相手は降格争いのライバルだと思っている新潟。そして、次の日はファン感謝イベントのハーフタイムパーティー。ちょっと迷ったものの、すでに2まんえん払込み済みじゃぼけ。っていうことで夕張直行。良く考えると、タイムスケジュール的にはハーフタイムパーティーには行けたんだよね……。

 

 

新千歳空港からの直行バスで会場の「ひまわり」に到着。道中、「ぜんぜん信号が無いよ」と驚いている人数名。いや、こんなもんですけどw

「ひまわり」はまさしく校舎そのもの。玄関の上にでっかく「ひまわり」の文字が乗っている。まるで、学祭。SF大会という異次元空間はハレの空間としての学校祭のノリに通じる。これは意外にふさわしい舞台だったのかも。

まずはオープニング前にオープニング“前”フィルムの「再生機甲ユーバリアン」を視聴。絨毯敷きのだらけた部屋に閑散とした観客。そして、完全に素人くさい演技と編集。これはまさに、学祭レベルの映画か。

メロンを“赤く”しにやって来たメロン怪人(サキエル風)とセクシー女幹部。このままでは夕張メロン(最初から赤肉じゃん……)がスイカになってしまう!

女幹部にやられまくる主人公。しかし、ユーバリアンは一度やられてから“再生”して強くなる。がんばれ夕張。ユーバリアンが過去のヒーローを“再生”できる特殊能力で再生したのは、なんと愛国戦隊大日本のアイ・カミカゼ。著作権もしっかり許諾済みだ。

しかし、今、なぜ大日本なのか。やっぱネトウヨ流行ってるしな。って、もしかして、レッドベアー団の首領がレッドイヨマンテ(←アイヌ語)だったからというだけか?


続いて、もはや恒例のヒゲキタさんの3Dプラネタリウム。なんだかでっかくなってると思ったら、去年から巨大化したそう。中も広々。そして、七夕のベガとアルタイルの説明もあり。おう、なんだかちゃんとしたプラネタリウムだぞ。と思っていたら、やっぱり登場、赤青メガネ。今年は初音ミクも空を飛ぶ。ブラックホールならぬブロックホールに吸い込まれ、結晶格子に飲み込まれ……

やっぱりアバターよりすごい3Dというのは嘘ではない。アバターを超える3D映画が出ていないので、ヒゲキタさんの3Dプラネタリウムが一番すごいw

 

そんなこんなでやっとオープニング(開校式)開始。会場は体育館。もう、本当に体育館そのまま。折り畳みイスの背中に張り付けられた「来賓席」の紙。ちぎれた緞帳が悲哀を誘う、じみーな飾り付け。おいおい、高校の学祭でもこれよりましだろ。

オープニングフィルムが、オープニング前フィルムになったのも良くわかる。この会場じゃ、ビデオ上映は大変だ。

夕張市長が欠席で代わりに夕張メロン熊が暴れに来たのかと思いきや、ちゃんと夕張市長(31)が登場。あやうく挨拶を飛ばされそうになるが、悪いのは司会のお姉さんではなくてメロン熊だ。そういえばこの人、非実在推進派じゃなかったっけ。八方美人な奴だな。

タケダ警備隊長は欠席。かわりに誰が警備するのか。夕張は田舎だから警備不要か。そして警備隊長の電報による諸注意で発覚する「体育館は土禁」という真実。巻き起こる阿鼻叫喚。もう、何がなにやら。

 

今年はオープニングで星雲賞授与式。

受賞者は次の通り。

日本長編部門 『天獄と地国』 小林泰三
日本短編部門 『歌う潜水艦とピアピア動画』 野尻抱介
海外長編部門 『ねじまき少女』 パオロ・バチガルピ
海外短編部門 『ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル』 テッド・チャン
ノンフィクション部門  『吾妻ひでお〈総特集〉-美少女・SF・不条理ギャグ、そして失踪』 河出書房新社
コミック部門 『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』 安彦良和
メディア部門 『魔法少女まどか☆マギカ』 有限会社シャフト
アート部門  鷲尾直広
自由部門   該当なし

小林泰三さんはなんと今回が初受賞。一回くらい獲っていると思っていた。奥さんに、なんで北海道の時に賞を取るんだと怒られたらしい。毎年京都でやってるのは京フェスですしね。

一方の野尻抱介さんはなんと7回目。しかもピアピアでは2回目。そろそろ遠慮したいとかw

そしてテッド・チャンの訳者として受賞の大森望さんも星雲賞常連。しかし、去年『息吹』で獲れなかったのが相当悔しかったようで、今回も獲れないんじゃないかとやさぐれてたとか。さらに、コニー・ウィリスの『ブラック・アウト』、『オール・クリア』で2年連続の星雲賞受賞を狙ってたり。完結してないと星雲賞候補になりませんよ!

『まどか☆マギカ』はある意味順当だと思うが、授与式に出席したのはシャフトの社長。なんと、夕張日帰りw なぜかセンス・オブ・ジェンダー賞も受賞してました。

もっとも異色なのはノンフィクション部門の『吾妻ひでお(以下略)』。授賞式に出席した女性はただの河出の編集の人じゃなく、著者だった!(ムックなのでw)

アート部門の鷲尾さんはどんな人か知らなかったけれど、後ですごい人だと判明。それは企画の話題の時に。


星雲賞受賞式の後は晩御飯。合宿所っぽいビュッフェ形式なのだが、これは1品づつ取るセルフサービスですよ。食べ放題じゃありませんよ。ちょっとそこの人、自分の皿にメロン積み上げない!

1品づつ取っても腹いっぱいになるくらいだったのに、最後の方ではちょっと悲惨な感じになっていたらしい。まぁ、何がどれだけあるのかわからない感じだったので、取れるときに取るのは仕方がない。

しかし、大問題。ビールが無い!

しまった、先に買って持ってくるんだった。よっぽど席を立って買いに行こうかとも思ったのだけれど、食べきってからディーラーズルーム前の特設売店に。クラシック2本で¥600なり。

名前を書いて共用冷蔵庫に突っ込んで風呂。普通の大浴場って感じで、まだみんな飯食ってるのか、ガラガラ。後から聞くと、時間があったのでレースイの湯まで歩いて行った人も多かったみたいですね。でも、せっかく風呂に入っても、帰りは15分の上り坂なのでまた汗かくんじゃ……。

風呂の後はやっとビール。部屋に帰って飲みましたが、食いすぎた後なので炭酸が苦しい。いや、そんなに取ってないですけど。サケ刺身とか取らなかったのもあるし。

そして、だらだらしながら企画開始を待つのであった。

(続く)