思えば‥小さな体ながら、この7年間を懸命に駆抜けたマサナオ。
そんなマサナオが中1になり、テニス部の活動に専念するため、空手クラブを卒業した。
武道啓明賞、東海大会準優勝、全国茶帯ト―ナメント大会・準優勝、全日本大会4位入賞と、その実績は輝けるものに。
でも、それでも‥どんなに努力を重ねたとしても、夢に届かないことがある。
マサナオが涙ぐんでいた。お母さんが泣いていた。お父さんが、それを静かに見守っていた。
最後の挨拶、互いに想いのすべてを言葉にすることは出来ないにしても、それでも、察することで少しでも人の想いに近付きたい‥そんなふうに思った。
思えば‥いつもお父さんとお母さんは、他の子供達の良いトコロを探し、そして声をかけ、たくさんの子供達の意識上げをしてくれた。そう、いくつかの場面で、どんなに子供達の心は救われ、その後も頑張れたことだろう。
思えば‥いつもマサナオは仲間達と切磋琢磨し、その頑張る姿を通して、後輩達をも良き方向へ導いてくれた。
この3年間、浜松地区としては10人の黒帯が誕生したわけで、共に稽古をし、与えてくれた、彼や彼の御両親のチカラは、どれほど子供達にとって尊いものになったことだろう。
あの頃‥西部道場、居残り稽古のハジマリは、私とマサナオだけだった。
《でも、マサナオがいれば百人力!》
言葉の意味はともかくも、夢に向かい、その時間を大切にし、二人三脚でやってきた年月。
夢に届かずとも、やり切った感はある。様々な思考をしたうえで、彼が下した決断を、私は素直に受け入れたいと思う。
空手クラブに残るのか?残らないのか?
その、どちらの選択が正しいのかでは無く、武道精神を活かし、世の中全体に貢献して行くことの方が、これからの人生を生きるうえでは重要となって行く。
長きにわたる時間、真剣に物事に取り組み、多くの経験を重ねてきたマサナオだからこそ、辿り着ける場所があるだろう。
師と弟子。共に稽古をし、二人三脚で歩んできた部分があるからこそ、分かち合える想いがある。
頑張る姿と‥その言葉と、笑顔と、泣顔と、彼の残してくれた想い出のすべてに、心からの感謝をしよう。
《ありがとう!ありがとう‥》
彼のいない稽古風景に、まだ慣れていないボクは、彼がいたはずの場所に向かい、この言葉を繰返している‥