ポッカリと心に穴があくとは、このことか。
タイシンが空手クラブを卒業した。
小学校一年生から中学二年生まで、この総合空手道というフィールドを駆け抜け、シッカリとした成長の跡と実績を残したうえで、次の競技にシフトチェンジをして行くためのもの。
東海地区大会を2連覇、武道啓明賞をも受賞、週一回の稽古でも初段を取得と、その稽古への取り組みは後輩達にとっても模範となり、そのチカラは、やはり他の分野でも評価され、今回の〔卒業〕にも繋がって行った。
最後の稽古日、ボクは白脇道場へ行くための車中、タイシンとの数年間を想い、辛くなった。
優しくて‥哀しくて‥激しくて‥儚くて‥
あらゆる感情や想い出が絡みあい、そして時に弾けあう。
『寂しいナ‥行かないでくれ‥』
『いや、喜ぶべきことなんだ。彼の新しい人生を見守ろう‥』
そして、いつかタイシンが言った、こんな言葉も溢れだす‥
『技のことだけど‥お父さん、ボクは先生の言うことしか聞かないからね。ボクが負けるわけないでしょ』
出稽古をすることもなく、ボクのイメージにも、かなり近いカタチでタイシンは、その道を歩んでくれたし、ほぼ、そんな言葉通りの活躍と成長を見せてもくれた。
大人しいタイプなだけに、普段からボクと多くを語るわけでもないのだけれど、彼はボクを信じただろうし、ボクも彼を大事に想った。
御家族も素晴らしい方ばかりで、いつだってボクの戯言を、いつも笑顔で聞いてくれていたことを思いだす。
ラストへのカウントダウンの日々‥お母さんは涙ぐんでいたし、お父さんは断腸の想いと言い、タイシンはまだ複雑な気持ちだと言う。
こんなにも、この空手道場を大切にしてくれている、その想いの深さや大きさに、ボクは言葉を探せずにいた。本当に伝えたい言葉を。
解っていたようで、あらためて知ることになる、人と人を繋ぐもの。
それがあったから結果も出せたんだ‥支えられてきたからこそ仕事が出来たんだ‥
抱きしめるように、噛みしめるように、人の心を感じた瞬間。
このブログを書くことに一週間以上もかかったのは、何度か書き直したし、言葉にすれば安っぽくなるとも思ったし、意識的にブログを書くことからも逃げていたからだ。
書いてしまえば、タイシンがココに帰りづらくなるだろうとも思ったし、とりあえずだとしても、別れを受け入れるには時間が欲しいとも思ったから。
でも、それでも、人々の優しさに触れ‥
過去からも、今も、これからも‥どこか懐かしいような、どこか求めているような、久遠の風に吹かれていることをボクは知る。
それぞれの人生で、いくつもの時の輪を巡る中で、いつか重なる時もあるだろう。
そんな時は、また笑顔で逢えるとイイ。
探していたはずの、言葉にならないはずの想いを、それでも、この言葉にかえよう‥
タイシン、御家族の皆様、本当に・・本当に・・
『ありがとう』