本格的な春の足音が聞こえてくれば、また人は出逢いと別れを繰返して行く。
それが自然なことであるかのように、あたり前のごとく起こりえる事象に、人は心動かすので無く、それらを受け入れながら歩んで行くことが、じつは本当の倖せなのだと‥そんなふうに頭の中では解っていても、それでも寂しさの感情は、しずかに‥静かに溢れてくる。
ジョウダイとリキノスケ。長年、空手道の稽古に取り組んできた二人だが、名門サッカークラブの試験に受かり、その活動に集中するための理由で、空手クラブを卒業することになった。
思えば、たくさんの想い出がある。
4歳の頃のリキが、稽古中に寝てしまったコト‥(笑)
集中力が無く、よく私に叱られたコト‥
稽古を頑張る中、東海大会で優勝し、特別にホメられたコト‥
まだ一年生の頃のジョウダイが『先生、居残り稽古をしてもイイですか?』と言ってきて、その礼儀正しさとヤル気に驚いたコト‥
東海大会、2年連続準優勝のナギトと、いつも互角の組手稽古をしていたコト‥
優勝を目指していた大会で敗北し、涙していたコト‥
遠足の想い出‥その他にも‥
実力的にも、ここから黒帯も目指せるであろう兄弟だったから、それは指導者としても残念なのだが、それよりも今後、その努力出来る才能を生かし、これからの良き成長に繋いでくれることが、何にも勝る願いとなる。
稽古終了後の挨拶、お母さん達が涙ぐんでいた。
それを見たら、さすがにボクの目にも涙がこみ上げてきた。
でも‥
《泣いてはいけない。泣けば、もう逢えなくなるような‥そんな気がする》
そのような思いの中、なるべく日常のように‥またスグ逢えるかのように笑顔でお別れをしようとするボクは、まだ半分は現実を受け入れられないでいるような、そんな弱さを持っているのだろう‥。
仲間達への最後の挨拶、リキが言った‥
『サッカーがシッカリ出来るようになったら、またココに来ます!』
《3歳か4歳くらいから見続けているリキが、ずいぶんと成長したもんだ‥》
二人の言葉とその成長を確認しながら、その裏に御両親の大きなチカラがあることを、あらためて感じることができた。
いつも静かに見守ってくれたお父さん‥いつも明るく接してくれたお母さんに、心からの感謝をしたい‥特別な感謝をしたいと、そんなふうに思った。
旅立つ二人。すでにジョウダイは、サッカーの中でのコミュニケーションに悩むこともあると言う。
そしてボクもまた、当分この道場の中で彼らの姿を探し、その現実の中で、また想い出に寄りかかる日々が続くのだろう。
でも、これからの人生、御互いに少しずつでも強くなれたら‥少しずつでも優しくなれたらと思う。
明日、少しだけでも強くなれたなら‥少しだけでも優しくなれたなら‥と。
『またココに来ます‥』
そんな言葉が響くように、胸いっぱいに駆け抜けて行く。
再会の時を信じて・・再会の時が、更に成長した姿で、きっと笑顔でむかえられるように・・
そう、
あした、少しずつ‥