あの日、ナナコが行方不明になった時、たくさんの人達が彼女を探してくれた。
顔色を変え、あてもなく、必死に動くことでしか不安を埋めることの出来なかった人達の、そんな純真を、ナナコよ…忘れてはいけない。
何の計算もなく、ただ自然に、オマエの無事を求めてくれた、心ある人達の想いを…いつまでも忘れてはいけない。
今、長年の空手修行の中で、兄、タイセイがカラテを卒業する。
あの日、二人で過ごした時を抱きしめ、声をあげて泣いた、
兄のことを…忘れるな。
人目もはばからず泣き、あの瞬間、誰よりオマエの無事を願ったであろう、
兄のことを…忘れるな。
どんなに時が流れても、
どんなに風に吹かれても、
人の想いを忘れなければ、
オマエは強く…優しく…なれるだろう。