伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

田舎暮らしの日々とガーデニング 時々ニャンコと

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ジャコシカ38

2018-05-07 12:28:35 | ジャコシカ・・・小説
言いながら猛さんは、馬橇跡で固められた道を、ずんずんと危げなく歩いて行く。

 納屋、厩(うまや)、鶏小屋などに囲まれた母屋は、この辺りでは珍しい二階屋だった。

 玄関を入ると広い三和土の土間がある。

 そこから一段高い、ガラスの入った引き戸が開いて、顔を出した妻のトキが、驚いた声を上げた。

 「まあ鉄さん、暫く、いらっしゃい」

 それから遅れて入って来た高志を見て、目を丸くした。

 急ぎ眼を夫に移して言った。

 「もしかして、峠の人ですか」

 「そうだ峠の人だ。岸本高志さん、いい男だろう」

 「本当にまあ」

 トキは驚き、挨拶をして、大慌てに新しい座蒲団を二つ運んで来て敷いた。

 「奥さんの手伝いをさせて下さい」

 鉄さんは一服すると、早々と土産の捌きにかかつた。

 「魚のことは、わしにまかせてください」

 鉄さんは猛さんとトキさんから希望を聞くと、鮮やかな包丁使いで、次々と魚を捌いていく。

 カジカは鍋用に、アブラコは煮付け用に、ソイは刺身に、トキさんは「助かるね、楽だわあ」を

連発しながら鍋の野菜類、刺身の付け合わせ物、そして手際良くアブラコの煮付けにかかる。

 高志もじっとしていられず、洗い方やらワタの片付けやらを手伝う。

 そんな三人を見て、猛さんも腰を上げ、納屋からストーブの脇に、今夜の薪を積み始める。終わ

ると土間にも積んでいく。
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