言いながら猛さんは、馬橇跡で固められた道を、ずんずんと危げなく歩いて行く。
納屋、厩(うまや)、鶏小屋などに囲まれた母屋は、この辺りでは珍しい二階屋だった。
玄関を入ると広い三和土の土間がある。
そこから一段高い、ガラスの入った引き戸が開いて、顔を出した妻のトキが、驚いた声を上げた。
「まあ鉄さん、暫く、いらっしゃい」
それから遅れて入って来た高志を見て、目を丸くした。
急ぎ眼を夫に移して言った。
「もしかして、峠の人ですか」
「そうだ峠の人だ。岸本高志さん、いい男だろう」
「本当にまあ」
トキは驚き、挨拶をして、大慌てに新しい座蒲団を二つ運んで来て敷いた。
「奥さんの手伝いをさせて下さい」
鉄さんは一服すると、早々と土産の捌きにかかつた。
「魚のことは、わしにまかせてください」
鉄さんは猛さんとトキさんから希望を聞くと、鮮やかな包丁使いで、次々と魚を捌いていく。
カジカは鍋用に、アブラコは煮付け用に、ソイは刺身に、トキさんは「助かるね、楽だわあ」を
連発しながら鍋の野菜類、刺身の付け合わせ物、そして手際良くアブラコの煮付けにかかる。
高志もじっとしていられず、洗い方やらワタの片付けやらを手伝う。
そんな三人を見て、猛さんも腰を上げ、納屋からストーブの脇に、今夜の薪を積み始める。終わ
ると土間にも積んでいく。
納屋、厩(うまや)、鶏小屋などに囲まれた母屋は、この辺りでは珍しい二階屋だった。
玄関を入ると広い三和土の土間がある。
そこから一段高い、ガラスの入った引き戸が開いて、顔を出した妻のトキが、驚いた声を上げた。
「まあ鉄さん、暫く、いらっしゃい」
それから遅れて入って来た高志を見て、目を丸くした。
急ぎ眼を夫に移して言った。
「もしかして、峠の人ですか」
「そうだ峠の人だ。岸本高志さん、いい男だろう」
「本当にまあ」
トキは驚き、挨拶をして、大慌てに新しい座蒲団を二つ運んで来て敷いた。
「奥さんの手伝いをさせて下さい」
鉄さんは一服すると、早々と土産の捌きにかかつた。
「魚のことは、わしにまかせてください」
鉄さんは猛さんとトキさんから希望を聞くと、鮮やかな包丁使いで、次々と魚を捌いていく。
カジカは鍋用に、アブラコは煮付け用に、ソイは刺身に、トキさんは「助かるね、楽だわあ」を
連発しながら鍋の野菜類、刺身の付け合わせ物、そして手際良くアブラコの煮付けにかかる。
高志もじっとしていられず、洗い方やらワタの片付けやらを手伝う。
そんな三人を見て、猛さんも腰を上げ、納屋からストーブの脇に、今夜の薪を積み始める。終わ
ると土間にも積んでいく。