言われて千恵は三平皿を手に、ストーブの傍に移動した。
ほどなく清子も戻り、テーブルに着いた。
妹のトックリのセーターに対して、こちらは白のカッターシャッの上から、レンガ色のVネック
セーターと、長めの紺のフレアスカートだ。
若い娘が二人加わると、やはり座は急に華やぎ総勢7人の部屋は、一杯の賑わいに満たされた。
食が進み盃が重ねられると、会話はとりどりに往き交い活気付く。この家の食卓は主人夫婦の人
柄のせいか、陽気で賑やかだ。
中でも千恵の声が一段と弾んで、笑顔もしきりと弾ける。
早目に始まった今日の夕餉で、猛の焼酎のピッチは常より早い。
「いつもながら前浜の魚は、どれも最高だ。特に今のこの寒い時季がいい。鉄さん手がいる時は
いつでも声をかけてくれ。熊みたいに冬眠は無しだよ」
「そのつもりだけれど、冬は年中しける。今年は峠から若い助人も来てくれたことだから、いつ
もよりはちよっとはやれると思う」
「酷使したら逃亡すると思います」
千恵が上目使いに、高志を見て言った。
「それは大丈夫だ。冬のあそこは流人の島みたいなものだから、脱走は無理だ」
猛さんは楽しそうに声を上げる。
「でも峠の旅人はどこへだって歩いて行っちゃうと思います」
千恵のその言葉で、皆の眼が一斉に高志に集まった。
一瞬の沈黙の後で猛が唸りながら言った。
「それはあり得るなあ」
ほどなく清子も戻り、テーブルに着いた。
妹のトックリのセーターに対して、こちらは白のカッターシャッの上から、レンガ色のVネック
セーターと、長めの紺のフレアスカートだ。
若い娘が二人加わると、やはり座は急に華やぎ総勢7人の部屋は、一杯の賑わいに満たされた。
食が進み盃が重ねられると、会話はとりどりに往き交い活気付く。この家の食卓は主人夫婦の人
柄のせいか、陽気で賑やかだ。
中でも千恵の声が一段と弾んで、笑顔もしきりと弾ける。
早目に始まった今日の夕餉で、猛の焼酎のピッチは常より早い。
「いつもながら前浜の魚は、どれも最高だ。特に今のこの寒い時季がいい。鉄さん手がいる時は
いつでも声をかけてくれ。熊みたいに冬眠は無しだよ」
「そのつもりだけれど、冬は年中しける。今年は峠から若い助人も来てくれたことだから、いつ
もよりはちよっとはやれると思う」
「酷使したら逃亡すると思います」
千恵が上目使いに、高志を見て言った。
「それは大丈夫だ。冬のあそこは流人の島みたいなものだから、脱走は無理だ」
猛さんは楽しそうに声を上げる。
「でも峠の旅人はどこへだって歩いて行っちゃうと思います」
千恵のその言葉で、皆の眼が一斉に高志に集まった。
一瞬の沈黙の後で猛が唸りながら言った。
「それはあり得るなあ」