おかしいくらい構えている。
何か運動でもやっているのか、日焼けした目鼻立ちのはっきりとした、少年のような顔が真っ直
ぐに見ている。
いきなり面倒な質問でもされそうで、高志はたじろいだ。
「末娘の千恵です。今、4つ隣町の高校に通っています。高2ですが形(なり)ばかり大きくて」
娘の改まった様子を見て、母親も少こし調子が乱れ気味だった。
そこえ、薪を運び終わった猛が戻り、正座して向き合っている二人を見て、思わず吹き出して言
った。
「なんだいお前さん達、お見合いでもしているみたいじゃないか」
言われて千恵は発条(ばね)仕掛のように立ち上がって父親を睨んだ。
「からかわないで」
言いながら鞄を抱きかかえて、二階に駈け上がって行った。やがて隣村の知人を訪れていた豊が
帰ってきた。
今年23歳になる彼は、言われなければ30歳前後に見える、立派な親爺顔だ。
背が高く父親ゆずりのがっしりとした肩の上には、ごつごつした無精髭面が載っている。
おまけに頭は角刈りで、一見したところ農夫と言うよりは漁師に見える。
高志の挨拶にも「やあ、どうも」と言った切りで後は何も言わない。どうやら無口で、こちらは
父親には似ていない。
母親にも似ていないようだ。