岸壁に立った鉄さんは、諦めたように言った。
「船は無理だなあ」
それから休憩室に入って、汽車の時刻表を見た。幸い30分後に函館行の各駅停車があった。
「これに乗ろう。ぼやぼやしていると雪になる。今日までの積雪は、まだ11月だから大したこ
とはないだろう」
汽車で帰ると聞いて、高志は内心ほつと胸をなで下ろした。
岸壁から見る海は、シケとまではいかないが、既に大きなうねりが出始めている。
その波の威嚇的な動きを見ていたら、早くも胃の辺りから酸っぱいものが上がってきそうだった。
船酔いのことを考えると、雪の坂道を下りることなど何ということはない。
いよいよとなったら尻で滑り下りれば良い。断然、船よりは汽車だ。
そう思っていたのだ。
まだまだ、漁師の道は遠い。
目的の駅は3っ先だ。ここから6っ先の駅までの線路は、全て海際にある。
山はいくつもの襞を作って海に迫り、岸は鋸状の断崖を作って海に呑みこまれている。
線路は海と山が攻ぎ合う、ぎざぎざの断崖を串し刺しにして抜けていく。
一つのトンネルを抜けると、あっと言う間に次のトンネルに突き進む。
車内は鋭い陽の光の点滅と、機関車の吐き出すいがらっぽい煙の空気に満たされる。
峠の向こうの6っ先の駅まではこの繰り返しで、道中のあら方はトンネルの中だ。
高志は以前にこの近くに住む人に、詳しく聞いたことを思い出していた。
長いトンネルを抜けた時の一瞬の明るさと、そこに開けた奇岩と絶壁の海岸、そしてその先に広
がる海の景色の話しが鮮やかに甦った。
「船は無理だなあ」
それから休憩室に入って、汽車の時刻表を見た。幸い30分後に函館行の各駅停車があった。
「これに乗ろう。ぼやぼやしていると雪になる。今日までの積雪は、まだ11月だから大したこ
とはないだろう」
汽車で帰ると聞いて、高志は内心ほつと胸をなで下ろした。
岸壁から見る海は、シケとまではいかないが、既に大きなうねりが出始めている。
その波の威嚇的な動きを見ていたら、早くも胃の辺りから酸っぱいものが上がってきそうだった。
船酔いのことを考えると、雪の坂道を下りることなど何ということはない。
いよいよとなったら尻で滑り下りれば良い。断然、船よりは汽車だ。
そう思っていたのだ。
まだまだ、漁師の道は遠い。
目的の駅は3っ先だ。ここから6っ先の駅までの線路は、全て海際にある。
山はいくつもの襞を作って海に迫り、岸は鋸状の断崖を作って海に呑みこまれている。
線路は海と山が攻ぎ合う、ぎざぎざの断崖を串し刺しにして抜けていく。
一つのトンネルを抜けると、あっと言う間に次のトンネルに突き進む。
車内は鋭い陽の光の点滅と、機関車の吐き出すいがらっぽい煙の空気に満たされる。
峠の向こうの6っ先の駅まではこの繰り返しで、道中のあら方はトンネルの中だ。
高志は以前にこの近くに住む人に、詳しく聞いたことを思い出していた。
長いトンネルを抜けた時の一瞬の明るさと、そこに開けた奇岩と絶壁の海岸、そしてその先に広
がる海の景色の話しが鮮やかに甦った。