伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

田舎暮らしの日々とガーデニング 時々ニャンコと

小説を発信中

  
  
  
  

  

ジャコシカ62

2018-08-07 20:23:53 | ジャコシカ・・・小説

 「いやあ、変な話しだが分からんのだ。ここを出て行ってから、一度も帰って来ていないし連絡

もない。留守番をしているつもりはないが、結構ここが気に入っているのでね。まあ、何と言うか

振り出しに戻ったってところだなあ」

 「振り出し?」

 「ほら、峠の吹雪の中を一人で歩いていた人間だ、もともと一人暮らしなのさ、身に付いている。

同じ峠族でもあんたはまだ若いから、わしの二代目とは言ったが、振り出しはずっと先の話しだ。

 もちろんわしとは違うだろう。追い出す訳じゃないけれど、こんな所に居着いちゃ駄目だ。春に

なったら出て行くんだな」

 今度もまた高志は、なかなか返事が見つからない。

 いろいろと慮(おもんばか)っている訳ではないが、言葉が見つからないのだ。

 こういう時は深く考えずに言うことにしているのだが、今度も結局そうなった。

 「実はすっかり気に入っています。このごろは、このまま居着いてしまうような気がしています。

でも、僕はそう言うことが出来ない人間なのです。

 だから居着いてしまいたいというのは願望です。いつだって願望とは違うことをやっています。

 理由は自分でも分かりません。

 街も人も自然も、何もかもが素晴らしくて気に入っているのに、ある日突然去ってしまうのです。

 だから多分、鉄さんをやきもきさせることはないと思います。私はいずれおいとまします。私の

ことを心配してくれて、とても嬉しく思います。

 今はこんないい所は世界中探しても無いと思っています。ここは本当に素晴らしい所です」

 「そうかい、あんたはそうゆう生き方をして行く人か。それならばわしが余計なことを言うこと

もない。まあとにかく、そう言うことなら気が済むまでいてくれ。わしは助かる」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする