あやはどうも社長が苦手だ。
特別に意識している訳でも、惹かれているのでもないが、余り近くに寄られると落ち着かなくな
る。
あやはその理由の一つに、優美の存在があると気付いていた。
優美と社長の関係は目敏(めざと)い女子店員達の口の端に上り始めていた。
二人の関係はあやの眼には、今では確信的なものとして映っていた。
しかしあやには、同じ職場で妻子ある男と親密な関係にあると思われる女の気持ちが、どんなも
のなのか皆目分からなかった。
分からなかったがそんな二人には、明らかな違和感と拒絶感があった。
師であり上司である優美にとっては悲しいことに思えた。
そんなことを思っているだけに、一層桐山には好感が持てないのだ。
「何ともありません」
あやは短く言って、その場を離れようとした。
桐山は制するように行く手を遮った。
「ちよっと疲れが溜まっているのではないかい」
「いいえ、大丈夫です。このところ少こしお店は、余裕ができていますから」
「だったら、そうだこの時期だから気分転換に食事でもしないか」
「えっ、でも一周年の食事会をやってもらったばかりですから」
「皆とではない、君と二人でどうかな」
一瞬あやは聞き間違いかと思った。
特別に意識している訳でも、惹かれているのでもないが、余り近くに寄られると落ち着かなくな
る。
あやはその理由の一つに、優美の存在があると気付いていた。
優美と社長の関係は目敏(めざと)い女子店員達の口の端に上り始めていた。
二人の関係はあやの眼には、今では確信的なものとして映っていた。
しかしあやには、同じ職場で妻子ある男と親密な関係にあると思われる女の気持ちが、どんなも
のなのか皆目分からなかった。
分からなかったがそんな二人には、明らかな違和感と拒絶感があった。
師であり上司である優美にとっては悲しいことに思えた。
そんなことを思っているだけに、一層桐山には好感が持てないのだ。
「何ともありません」
あやは短く言って、その場を離れようとした。
桐山は制するように行く手を遮った。
「ちよっと疲れが溜まっているのではないかい」
「いいえ、大丈夫です。このところ少こしお店は、余裕ができていますから」
「だったら、そうだこの時期だから気分転換に食事でもしないか」
「えっ、でも一周年の食事会をやってもらったばかりですから」
「皆とではない、君と二人でどうかな」
一瞬あやは聞き間違いかと思った。