伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

田舎暮らしの日々とガーデニング 時々ニャンコと

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ジャコシカ63

2018-08-08 16:34:59 | ジャコシカ・・・小説


 鉄さんは言葉の途中で腰を上げ、台所から一升瓶と新しい湯呑を二つ持ってきた。

 「今日は茶よりもこっちが合うだろう」

 ドンと卓袱台の上に酎を置き、例の特長のある吸いこむような笑いで高志を見た・

 すかさず高志は一升瓶を掴み、二つの茶碗に勢いよく傾け注いだ。





 年が明けお屠蘇気分が街に溢れた。 

 赤間猛は二人の娘を馬橇に乗せ、買い初めに出た。

 通りは晴れ着を着た若い娘や、お年玉でポケットを膨らませ、それ以上に気持ちの膨らんだ子供

達が連れ立って喚声を上げている。

 商店街に入った猛は娘達を下ろし、自分は別行動で妻に頼まれた買い物に廻った。

 娘達が街一番の呉服店に入ったら、一時間は出てこない。

 待ち合わせの場所と時間を決めて、親子は互いに気がねのない買い物に専念する。

 猛はゆっくりと時間をかけたつもりだが、それでも約束よりだいぶ早く、漁協の休憩所に着いた。

 中に入ると鉄五郎と高志が、ストーブに当たっていた。

 「鉄さんも買い物かい、まさか正月から漁ということもないね」

 「わしらには正月も盆もないさ。凪の時が仕事日だ。特に冬は時化が続くから、凪は外せない。

暮れは荒れたから、二人でずっと穴ごもりの熊だった。

 「そうかい、いやそうだったね、随分降ったし吹雪いたし、わしらだって似たようなあんばいだ

った。
コメント
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