伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

田舎暮らしの日々とガーデニング 時々ニャンコと

小説を発信中

  
  
  
  

  

ジャコシカ64

2018-08-12 11:57:40 | ジャコシカ・・・小説
百姓もお天気まかせだが、漁師はもっとだな。お天気まかせ海まかせだ。

それで延縄かい」

「もっぱらな。入れたら上げる。朝入れて昼上げる。夕方入れて翌朝上げる。ポンコ網も入って

いるが、もっぱら餌用だ。出荷もするがこちらも天気次第だから大したことはない」

 「そうやって鉄さん達が頑張ってくれるおかげで、こちらは冬でも旨い魚が食えるというものだ。

ありがたいね」

 「それはお互いだ」

 二人がストーブにかざした掌を摺り合わせながら話しているところに、清子と千恵の姉妹が、賑

やかに笑いながら入って来た。

 二人の手には大きな紙袋が下げられている。

 「やあ、峠のお兄さんじゃない」

 千恵が遠慮のない声を上げた。

 「ただ今は入江のお兄さんです」

 「あら、そうでしたね。それで居心地はいかがですか」

 「いいですね。穴ごもりの熊になった気分です。きっと熊さんもこんな気分じゃないかと思って

います」

 「じゃあずっと籠っていれば。鉄おじさんは追い出したりしないと思うわ」

 「ええ、それでますますいい気分になっています」

 「私も一度、その熊穴を訪ねたいわ」

 「春になったらどうぞ、約束の山菜採りをしましょう」

 鉄さんが嬉しそうに言った。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする