百姓もお天気まかせだが、漁師はもっとだな。お天気まかせ海まかせだ。
それで延縄かい」
「もっぱらな。入れたら上げる。朝入れて昼上げる。夕方入れて翌朝上げる。ポンコ網も入って
いるが、もっぱら餌用だ。出荷もするがこちらも天気次第だから大したことはない」
「そうやって鉄さん達が頑張ってくれるおかげで、こちらは冬でも旨い魚が食えるというものだ。
ありがたいね」
「それはお互いだ」
二人がストーブにかざした掌を摺り合わせながら話しているところに、清子と千恵の姉妹が、賑
やかに笑いながら入って来た。
二人の手には大きな紙袋が下げられている。
「やあ、峠のお兄さんじゃない」
千恵が遠慮のない声を上げた。
「ただ今は入江のお兄さんです」
「あら、そうでしたね。それで居心地はいかがですか」
「いいですね。穴ごもりの熊になった気分です。きっと熊さんもこんな気分じゃないかと思って
います」
「じゃあずっと籠っていれば。鉄おじさんは追い出したりしないと思うわ」
「ええ、それでますますいい気分になっています」
「私も一度、その熊穴を訪ねたいわ」
「春になったらどうぞ、約束の山菜採りをしましょう」
鉄さんが嬉しそうに言った。
それで延縄かい」
「もっぱらな。入れたら上げる。朝入れて昼上げる。夕方入れて翌朝上げる。ポンコ網も入って
いるが、もっぱら餌用だ。出荷もするがこちらも天気次第だから大したことはない」
「そうやって鉄さん達が頑張ってくれるおかげで、こちらは冬でも旨い魚が食えるというものだ。
ありがたいね」
「それはお互いだ」
二人がストーブにかざした掌を摺り合わせながら話しているところに、清子と千恵の姉妹が、賑
やかに笑いながら入って来た。
二人の手には大きな紙袋が下げられている。
「やあ、峠のお兄さんじゃない」
千恵が遠慮のない声を上げた。
「ただ今は入江のお兄さんです」
「あら、そうでしたね。それで居心地はいかがですか」
「いいですね。穴ごもりの熊になった気分です。きっと熊さんもこんな気分じゃないかと思って
います」
「じゃあずっと籠っていれば。鉄おじさんは追い出したりしないと思うわ」
「ええ、それでますますいい気分になっています」
「私も一度、その熊穴を訪ねたいわ」
「春になったらどうぞ、約束の山菜採りをしましょう」
鉄さんが嬉しそうに言った。