それなのに今日はもう、少ない荷物の整理を始めている。
明日は彼女に告げなければならない。
そう思って押し入れから、リックサックを引っ張り出していたら、美奈子がやって来た。
一目見るなり彼女は入り口で立ち止まる。
二人の眼が合い、どちらの唇も何かを言おうとするが動かない。
やがて最初に口を開いたのは、やはり美奈子だった。
「行くのね」
「うん」
「私を置いて行くのね」
「すまない。ごめん」
美奈子はコートを脱ぎ、いつもの通り壁に掛けた。
「いいわ分かっていたことだから。そのために訓練してきたんだから。時々ここに来なくなって
いたでしょう。あの時、頭冷やしたり体冷ましていたの。私いやになるほど用心深いから。
で、いつなの」
高志は言葉が出てこなかった。
今さらながら、いな、今になって初めて美奈子という女の生身の温もりが伝わってくる。
かろうじて事務的に明日店に辞表を出し、三日後にこの部屋を出ることを伝えた。
「じあ、最後にまたあの店で、カレーとハヤシのミックスライスを食べましょう」
美奈子は白い頬を少こし歪め、あの大きく青味を帯びた眼を隠すように細めて、悪戯っぽく言っ
た。
それからすっかり笑顔になって続けた。
明日は彼女に告げなければならない。
そう思って押し入れから、リックサックを引っ張り出していたら、美奈子がやって来た。
一目見るなり彼女は入り口で立ち止まる。
二人の眼が合い、どちらの唇も何かを言おうとするが動かない。
やがて最初に口を開いたのは、やはり美奈子だった。
「行くのね」
「うん」
「私を置いて行くのね」
「すまない。ごめん」
美奈子はコートを脱ぎ、いつもの通り壁に掛けた。
「いいわ分かっていたことだから。そのために訓練してきたんだから。時々ここに来なくなって
いたでしょう。あの時、頭冷やしたり体冷ましていたの。私いやになるほど用心深いから。
で、いつなの」
高志は言葉が出てこなかった。
今さらながら、いな、今になって初めて美奈子という女の生身の温もりが伝わってくる。
かろうじて事務的に明日店に辞表を出し、三日後にこの部屋を出ることを伝えた。
「じあ、最後にまたあの店で、カレーとハヤシのミックスライスを食べましょう」
美奈子は白い頬を少こし歪め、あの大きく青味を帯びた眼を隠すように細めて、悪戯っぽく言っ
た。
それからすっかり笑顔になって続けた。