伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

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ジャコシカ185

2021-03-25 10:01:27 | ジャコシカ・・・小説

 「それでは、やはり出て行くのね」

 

 高志は悪戯を見透かされたように笑った。

 

 「そろそろだね。そんな気分かな」

 

 あやは小さくうなずいた。

 

 「私が言えたことではないけれど、それでもできるだけ長くいて欲しいわ。私も近々出て行くつ

 

もりなのに、勝手よね」

 

 「そんなことはないさ、鉄さんだってそれを望んでいると思うよ。あやさんの生きる場所がここで

 

はないことは、充分に分かっているから」

 

 二人は視線を合わせ、その後は何も言わず、どちらからともなく腰を上げた。

 

 

 

十八

 

 穏やかな春の海は気持ちが和む。

 

 山の緑も柔らかで優しい。

 

 延縄漁を終えて港に向かう。

 

 無口な鉄さんと海の上にいると、いつか自分が波間に浮かぶ流れ藻にでもなった気分になる。

 

 ゆらゆらと溜まるばかりに見えるが、気がつけばどこえ向かうともなく揺れて流れて、消えてい

 

る。

 

 港では、千恵と清子が待っていた。

 

 荷渡しを終えた鉄さんと高志に、嬉しそうに千恵が紙袋を差し出した。

 

 「これ袖の下」

 

 見るとアンパンやクリームパン、ジャムパン等が入っている。


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