マリーバイワワラビー(Petrogala mareeba) Mareeba Rock Wallaby
ここのマリーバイワワラビーは結構な希少種で、そのためか何代も前から人間に餌付けされていて、食物の結構な割合を観光客などの人間に頼っているようだ。
それで私達がこの岩場にやってくると、ワラビーがとてちてと近づいてきて「ごはんくれんのかなー?」とこちらの様子を愛らしく伺うわけである。
けれど、それも一瞬のもてはやしで、しばらくして私達がはなから食物を持ってないことに気が付いたワラビー達はそっけなく徐々に散っていってしまうので、少し寂しくなった。
ここで、友人が最高の策を思い付いた。
まずポケットから何かを取り出す風に手をグーにして出し、遠くに居るワラビー達の目線の先にチラチラと見せ付けるのだ。するとこのしぐさに気付いた勘のいいワラビーが脱兎のごとく駆け寄ってきて、さらにそのワラビーの突発的な行動に状況を察した複数のワラビー達も次々に集まってくるのだ。まるで離島において、妙に焦った様子で歩いている人を見ると何か珍鳥が出たのではないかと気になってしまい、中にはその人の後を着いて行く人が現われるという現象みたいだ。
これで一気にワラビー達にモテ出したら、次にその状況をゆっくり堪能する。
しばらくして、ワラビー達に「そんなことよりごはんは?」と言われているような気がしてならなくなってきたら、「じゃぁお待ちかねの」と言ってグーにした手をワラビーの目の前に差し出す。するとワラビー達は目を爛々と輝かせながら私の手を見つめ出すのだ。
そして次の瞬間、ひと思いに手を開いて餌どころか何も無い手のひらを見せ、こう言い放つ。
「ないよぉ(笑)」
それを見たワラビー達の残念そうな顔ときたらない。まさにションボリした顔文字が合い相応しいような表情をするものだから、それがもうかっわいくて可愛くてたまらなくなった。
―こんなことを書くと、大半の方にはケシカランと怒られるかもしれませんが、人間だもの、可愛いから困らせたくなってしまうことって、あります。
【2010/03/10/オーストラリア Cairns,Australia;Mar. 2010】