映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

ダブリンの時計職人(2010年)

2014-05-02 | 【た】

★★★★★★★★☆☆

 アイルランドに、一度は行ってみたいと思っているが、なかなか実現しそうにないなぁ。そもそも、何でアイルランドに興味を持ったのか、それさえよく思い出せない。多分、きっかけは『フィオナの海』だと思う。そこで興味を持ったところへ、愛するダニエル・デイ=ルイスがアイルランドにまつわる作品に立て続けに出演していたので、行ってみたくなってしまったという感じ・・・。

 とはいえ、アイルランドのことは、まだまだ勉強不足で、ほとんどよく知らない、と言った方が良いレベル。ジョイスの「ダブリナーズ」は一応読んだけれども、イマイチ、ピンと来なかったし。司馬遼太郎の「街道をゆく 愛蘭土紀行」はそれなりに面白かったけれども、内容はかなり忘れている・・・。

 本作も、ダブリンが舞台の物語であることで、興味をひかれて見に行ってみた次第。

 まず、良くないことから先に書いてしまおう。この邦題である・・・。主人公のフレッドは、時計「も」直せる技術を持っているが、失業前はロンドンで職を転々としていた、と自分で言っており、決して時計職人という設定ではない気がする。原題も『Parked』であり、こっちは作品を端的に表したタイトルである。そう、この邦題はダメでしょう。

 と、言ってはみたものの、本作は、なかなかの逸品だと思う。展開や、人物の配置は割とベタなところもあるのだが、人物描写が丁寧で、登場人物それぞれに共感できる。それぞれの立場になって見てしまえるという、素晴らしい脚本。

 一番グッと来たのは、棺に入れられたカハルのために、フレッドが自作の詩を読むシーン。カハルの生前読み聞かせた前半に続く、「いつか読むよ」といった後半には、希望の言葉が連なっていたのだが、それをカハルの亡骸に向かって読まなければならないという哀しさ。生前に読んでいてもカハルの運命は変わらなかったかもしれないけれど、変わったかもしれない。でも、カハルはもうこの世にいないのである。

 本作は、優しいね。制作者たちが、登場人物それぞれを愛しているのが伝わってくる。だから、ベタでもベタさを感じない。哀しい結末だけど、心に沁みる。

 しかし、ものすごく考えさせられたことも一つある。ボロボロになった放蕩息子カハルが金の無心に帰ってくるのだが、カハルとのあれこれに疲れ切った父親は、カハルの先行きを予感しつつも、突っぱねるのである。私が父親だったらどうするだろうか・・・。このまま返したら、この子は、とんでもないところまで堕ちるのではないか、いや、間違いなく堕ちるだろう、と分かっていて、突っぱねられるだろうか。今も答えは出ていないけれども。子ども、いえ、一人の人間を育てるって、想像を絶する難行なのだと、改めて思うのである。
コメント
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