★★★★★★☆☆☆☆
だいぶ前にレンタルリストに入れていたのが送られてきました。今年、オードリー主演のTVM『マイヤーリング』が公開されて少し話題になりましたねぇ。見に行っていませんが。
本作は、ハプスブルク家のお話なのに、フランス語です。ま、それはどーでもいいのですが。モノクロですが、非常に美術が豪華であることが分かります。制作年を考えると、これは相当のものなのではないか、と思う半面、この年代だったからこそ逆にできたことなのかな、と思ったりもして。よく分かりませんが。
モチーフとなっているマイヤーリンク事件については、色々謎が多いようで、私はゼンゼン詳しくありませんが、少なくとも、本作のようなキレイごとではない、もっと複雑な背景のある出来事であることは間違いないでしょう(Wikiのシシーの解説を書かれた方は、シシーが嫌いなんでしょうなぁ。もの凄いこき下ろしようです。ま、当たらずとも遠からじだろうなぁとも思いますけれども)
作中のルドルフは、自分の意思で生きられない憂さを酒と女で晴らし、精神的には君主制に批判的で自由主義であった、一応、骨のある男、という設定の様です。心底愛する女性と出会わぬまま政略結婚し、相変わらず放蕩を続ける彼の前に現れたのが可憐な姿のマリー・ヴェッツェラ。で、後は、ご存じの通りの展開。
古い映画独特の、ややブツ切りな飛躍のある展開だけれども、ルドルフとマリーの悲恋の過程は結構丁寧に描かれているし、マリーを演じたダニエル・ダリューはなるほど美しい。なので、この2人の恋バナに関してはビジュアル的に問題ないけれども、ところどころに出てくるエリーザベトがどうも、、、。あの有名なシシーの肖像画には似ても似つかぬ華のない女優さんなんだよねぇ。そして、夫に情死されちゃう悲惨な大公妃ステファニーはかなり見た目のおよろしくない女優さんで、悪意があるとしか思えない配置。ここまでしなくてもいいでしょう、と言いたくなります。
音楽はすべてウィンナワルツで、まあ、ちょっと大人の古めかしいおとぎ話だと思って見れば、それはそれで楽しめます。
さて、 ここから先は余談です。ルドルフを演じたシャルル・ボワイエですが、正直、あまり好きではない俳優さんでしたが、本作でアップのショットを何度か見ているうちに、誰かに似ているなぁ、と思い、なかなか思い出せずにおりました。そして、終盤、思い出しました。そう、カルロス・クライバーです(特にブラームス4番のジャケの写真)。私はクライバー教の信者なので、これは歓迎すべきことなのかどうか、思い至った瞬間は複雑な気持ちになりましたが、その後、ちょっとした因縁を感じました。
ボワイエは、愛妻家だった様で、30年以上連れ添った妻に先立たれた2日後に自殺していると、キャストの紹介に出たのですね。そして、クライバーですが、彼も、妻を亡くした後、引きこもりのようになり、ひっそりと亡くなっています。自殺という噂も飛び交いました。それほど、妻が逝ってしまった後、ガクッと来てしまったらしいのですね。彼は生前はかなりの自由人で、相当のプレイボーイだったとのことですが、心のよりどころは妻だったんですかね。ただ、顔が、というか、一瞬一瞬の表情が似ているな、と思っただけですが、ものすごーく些細な共通点がありました。