






平均(たいら・ひとし)は、一見、お気楽屋のお調子者だが、実は機を見るに敏く、都合の良い方を選んで“楽して得する”生き方を地で行くツワモノ。「サラリーマンは辞表を出したらオシマイよ」などとうそぶきながら、自分はあっさりクビになってもちゃっかり後釜を見つけている。
植木等が、一見お調子者サラリーマンを演じて一世を風靡した本作。本作が公開されて54年、植木さんが亡くなって早9年が経つけれど、無責任時代のニッポンは、今もバッチリ継続中!
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ちょっと前にBSでオンエアしていたのを録画してあったので、やっとこさ見ました。率直に言って、こういう気の利いたコメディ映画について、あれこれ語るのは野暮だと思いました。
なので、ここからは単なる独り言みたいなものです。
植木さん、結構好きだったんですよね~。ああいうキャラだけれど、顔はよく見ると結構、スッキリ系の男前だし、歌はうまいし、若い頃は体のキレも良いし。私が知るリアルタイムの植木さんは、おじさんというより、おじいさんに近いお歳になっていたけれども、バカをやっていても品があると感じたものです。
そう、コメディアンとは、下品・下劣では、目も当てられないくだらないものになってしまうけれど、品性があるからこそ、笑いに昇華できるのだと思うのです。
後年、「名古屋嫁入り物語」で頑固者の花嫁の父を演じていたのも、割と好きだったなぁ。デフォルメされた名古屋弁と、植木さんのキャラが絶妙にマッチしていて笑えました。調べたらなんと、10本も作られていたのですね。私が見たのはそのうちの半分にも満たないと思いますが、共演していた川島なお美さんも鬼籍に入られ、時の移ろいを嫌でも感じますね……。ネイティブ名古屋弁の川島さんもとってもチャーミングでした。
本作は、ちょっとミュージカルっぽいです。植木さんの歌うシーンがかなり多いので。歌への移行も違和感なく、唐突に歌いだすということはありません。あの「スーダラ節」もありますし、「無責任一代男」の歌詞も笑えます。アハハと笑えるというより、イヒヒ、、、というか、ムフフ、、、というか、イ行やウ行のちょっと屈折した笑いです。
平均さんの行動は、一見、行き当たりばったりに見えるけれど、実はかなり計算ずくで動いていて、あれなら、何もサラリーマンじゃなくても、別の稼業でも十分成功できる才覚をお持ちなのでは? と思っちゃいますが、そこはやっぱり、無責任の最たるものということで、敢えてサラリーマン稼業を選んでいるわけですよねぇ。そこも、自分を知った上での計算ずく、ってのがイイです。
あと、太平洋酒の氏家社長、ハナ肇も素晴らしい。偉そうにしているけれどバカで人を見る目がない、何でこんな奴が社長なの? 的な社長を好演です。
しかし、果たして平均さんは本当に“無責任”でしょうか? 無責任というより、いい加減キャラって感じ。サラリーマンは気楽な稼業と言っていますけれど、彼は実質はフリーランスみたいなものではない? 自分の才覚だけで世間を渡り歩く、、、本作では世間が“会社”という狭い組織だからそう見えないけれども、世間だって大きく捉えれば組織であり、平均さんは自分が都合よく活躍できそうな会社(=世間)を嗅ぎ分け渡り歩いている、“フリーのサラリーマン”だと思います。
フリーって、なんだかんだ言って、結局はすべて自己責任。本作の登場人物の中で、平均さんと同じ程度にフリーな身分の人は、新橋の芸者さんと、バーのお姉ちゃんくらいでしょ。あとの社長だの会長だの、結局は、組織の傘下にある人々で、責任回避術を心得ているのでは。
だから、平均さんは、責任取らされてクビになる。クビになっても、ちゃんと次を見つけ出す。大したもんです。
この頃の邦画って、増村保造作品を数本程度で、あまり見ていないので、これを皮切りにコツコツ見て行こうかな、、、と思っております。
コツコツやる奴はごくろうさん!!

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