映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

処女の泉(1960年)

2016-04-13 | 【し】



 信心深い両親の下で甘やかされて育った世間知らずのわがまま娘カーリンは、教会へローソクを届けに行くことに。そんなあまちゃんカーリンを日頃から妬ましく思っていた下女のインゲリも一緒だ。

 必要もないのにダダをこねて一張羅でめかしこみ馬に乗って野道を進むカーリンと、誰の子か分からない子を妊娠したインゲリは、途中で言い争いになる。「私は結婚するまで純潔を守るわ」とカーリン。「夜道で抱き寄せられて組み敷かれたらどーする?」とインゲリ。

 森に入る手前で、インゲリは急に怯え始め、ここから先には進みたくないと言う。カーリンは無邪気に「私は平気、一人で行くわ」と森に入って行く。

 果たして、彼女を待ち受けていたものは……。
 
  
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 カーリンの描かれ方に、ベルイマンの意地悪な眼差しを感じたんですけど、私だけかしら。

 カーリンは、森の中で羊飼いの見るからにヤバそうな兄弟に強姦され、殺され、一張羅を剥ぎ取られ、放置されます。何というおぞましさ。その一連の様子を、実はインゲリが森の陰で見ていたのです。

 本作の時代設定は16世紀らしいですが、カトリックは後から入って来た宗教で、インゲリは、土着の神オーディンを信仰しているのですね。朝には下働きの前にオーディンに祈りをささげています。インゲリにとって、このカーリンの一家はカトリックなんぞを熱心に拝んでいて、おまけに裕福だからって娘をさんざん甘やかして何だよ、みたいな感覚なのが、序盤数分のシーンで見事に分かります。

 まあ、カーリンは言ってみれば、わがままで甘ったれの純粋無垢、裏を返せば、世間知らずで頭がおよろしくない者の象徴的なキャラでしょう。インゲリにしてみれば、カーリンが薄汚い下劣な男たちに犯されるのを見て溜飲の下がる思いだったのでしょう。終盤、そう言ってカーリンの父テーレに懺悔するシーンがあります。しかし、まさか、カーリンが殺されるとまでは思っていなかったインゲリは、事態が急変し、恐ろしさのあまり固まってしまったのです、、、。その時のインゲリの表情が何とも言えないです。

 インゲリ役の女優さんは、野生児みたいな若い女性を存在感たっぷりに演じていますが、正直言って、インゲリの存在が本作であんまし効いていないのですよねぇ。インゲリを通して何を描こうとしたのか、ベルイマンの意図がイマイチ分かりません。森を目の前にして急に畏れを見せたインゲリですが、そこに神オーディンの信仰による何かがあったのでしょうか。いずれにしても、折角魅力ある役者さんなのに、ちょっともったいない。

 一方のカーリンは、まあ、イラッとする女子で、悲劇的な最期は可哀想ですが、それまでのわがまま一杯っぷりと、インゲリに対する隠しようのない侮蔑感のせいで、因果応報という言葉をいやでも思い起こさせます。因果応報にしては、あまりに過剰な報いですけれども。

 ちょっと「赤ずきんちゃん」の話が脳裏をよぎりましたねぇ。一種のベルイマンの警告みたいなものでしょうか。考え過ぎですかね。

 何でタイトルが『処女の泉』なんだろう? とずっと見ていて疑問だったんですが、ラストで分かります。、、、が、何だかここで一気に宗教映画っぽくなっちゃって、私はかなり引きました。これまで見てきた『恥』とか『仮面/ペルソナ』とか、宗教が背景にあるのは分かりますが、どこか突き放した一線を引いた感じがあったように思うんですけれど・・・。本作は、カーリンの父テーレが、神に語りかけるのです。「神よ、あなたはすべて見ていたはずだ、それなのに黙っていた、なぜだ!?」とか言って天に向かって叫ぶ。そして、カーリンの遺体を抱き上げたその場所から、泉が湧きだす、、、。

 テーレは、その前に、娘たちを殺した兄弟3人を復讐として殺しています。しかも末っ子はまだ子どもだったにもかかわらず殺してしまった、、、。で、神に叫び、挙句「カーリンの遺体のあった場所には、教会を建てます」等と言って許しを乞うているかのよう。

 何だかなぁ、、、と思ってちょっと調べてみたら、この脚本は、ベルイマン自身は嫌だったらしいのですね。脚本を書いた人がどうしても入れたい、と言って引かなかったために、このシーンが入ったと。、、、ううむ。

 まあでも、人間の内面を冷徹な目で描いた作品、という風に解釈すれば、今まで見た2作品とも同じですかねぇ。あんまし宗教映画っぽくない方が好きですけど。他の作品はどーなんでしょうか。追々見て行きたいです。

 ちょっと飛躍しますが、私は、テーレが3兄弟を殺すシーンを見ながら、ブロンソンの『狼よさらば』を思い出していました。詳細は覚えていないのですが、あの作品も妻と娘を理不尽に殺されたり犯されたりして、復讐鬼と化す男の話ですが、最後は救いがあったような、、、。なんというか、全然ジャンルも毛色も違う作品ですが、テーレのキャラが多くは語らぬ男気ある家長として描かれており、ブロンソンの役のキャラと少しダブってしまったというのもあります。『狼よさらば』久々に見てみたくなりました。





ヒキガエル入りサンドイッチをおあがり。






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コメント (2)
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