映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

マジカル・ガール(2014年)

2016-04-04 | 【ま】



 白血病で余命幾ばくもない12歳の娘アリシアの望み~日本のアニメ「魔法少女ユキコ」のコスチュームを着て踊ること~を叶えるため、元教師で現在失業中の父親ルイスは、ネットでそのコスチュームを検索すると、何と90万円、ユーロに換算すると7千ユーロもすると分かり、諦めそうになるが、金策に走ることに。

 そこから、色々な偶然が重なって、思いもよらない悲劇が立て続けに起きて、なんでそーなるの? 的なラストへまっしぐら。

 アニメにゼンゼン詳しくない私は、どーすりゃええんだ、、、と置いてけぼり感で一杯になりましたとさ。、、、ごーーん。

  
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 何かを劇場に見に行った際に本作の予告編を見て、なんか面白そうかも、、、と思って、劇場まで見に行ってみた次第。

 ……で、思っていたのと全然違うタッチの作品にまず戸惑う。アニメソングとかが一杯流れてポップな感じ? とか勝手に思っていたわけだけど、ポップのポの字もありゃしまへん。すんごい静かで、暗~い作品。え、、、これ、あの予告編のと同じの?? と思ったくらい。アニメソングらしきものが出てきたのは序盤と、終盤のすんごい場違いなシーンでの2回。

 そして、あの結末、、、。う~~ん、私はあんまし好きじゃない、というのが正直な感想。

 詳しい内容は、他のサイトにお任せします。ここでは、私の思ったことをつらつらと。以下は、本作がお好きな方には不快になると思いますので、あしからず。

 本作はとにかく、不親切な作品です。これはもちろん、制作側の意図したものだということは分かります。が、作品が「不親切」というのは、その作品に考えさせる価値のある余白があればこそ生きてくるものであって、本来ない余白をありそうに見せるために「不親切」を装うのは、ちょっと違うんじゃないの? と言いたくなるのです。

 つまり、本作には、余白があるとは思えなかった、、、ということ。

 読みが浅い? そーでしょうとも、浅くて結構。本作のどこに深みがあるってのさ。

 パンフも一応、隅から隅まで読みました。町山氏の感想文も読みましたけれど、やっぱし、映画は自腹でお金を払って見るべきです。評論家の意見は一定程度割り引いて読んだ方が良いと思います。町山氏は、ブレッソンの『ラルジャン』を引き合いに出しておられましたけれど、それって本気・・・? もし本気だとしたら、少々リップサービスが過ぎるのでは?

 また、あるネット評では、本作からハネケの作品を感じたというものがありました。あの『ファニーゲーム』とかの不条理映画に通じるとでも? ハネケ好きな者から言わせてもらうと、一緒にしないでよ、という感じでしょうか。本作にはハネケのような振り切れたインモラル、反社会性、狂気が描かれていましたっけ? それっぽい要素を散りばめてはいましたけれど、敢えて言えば、亜流、中途半端、もっと言っちゃうと子供だましにしか私には思えなかった。

 本作の何がそんなに薄っぺらさを感じるのか、、、考えてみました。

 不条理の連鎖とはいえ、『ラルジャン』にしろ『ファニーゲーム』にしろ、見ている者には、ある種の同質性を感じられる不条理だったように思います。

 例えば『ラルジャン』は、ある高校生が出来心で偽札を使ったことが巻き起こす話です。つまり、テーマは、金=人間の欲が引き起こす不条理ですね。『ファニーゲーム』は、極々平凡で平和な家族に、暴力性を持った青年2人が闖入してきたことで起きた話で、こちらは、人間が潜在的に持つ暴力性が生々しく描かれた不条理です。

 でも、本作は、、、。金欲しさに見知らぬ女を脅迫したり、その女も嘘を言って脅迫してきた男を陥れたり、、、おおもとはというと、余命わずかな白血病の娘のアニメ好き、、、と、面白そうな要素を単につなぎ合わせて、不条理劇っぽく仕立て上げただけに過ぎない、と思っちゃうわけです、私は。

 『ラルジャン』や『ファニーゲーム』は、例えば、赤い絵の具に黄色い絵の具を足せばオレンジになるように、足す色は元の色と全く異なる色でも、足した後にはきちんと新しい色が出来、さらに、別の色を足すことでまた違う色になり、最終的には黒になる、、、。でも、本作は、元の色が何色であれ、足す色は問答無用の“黒”なわけ。どんな色に黒を足しても黒にしかならないような、もの凄い唐突感と、ブツ切り感。出来事と出来事に何の関連性も意味もないのです。

 そこに、「色を重ねていった末の黒」が出来上がる奥行きが感じられない。だから、薄っぺらいと思ってしまうのです。

 じゃあ、『セブンス・コンチネント』はどーなんだよ、というツッコミが聞こえてきそうですが。でも、あれも、私にとっては「物質主義からの脱却」という筋の通った不条理劇という説得力があるのです。そして、あれこそ、描かれていない余白にこそ作品の本質があると確信させられる映画です。、、、が、本作にはとにかくそれがない。ただただ、脈絡なく監督が好きな、趣味に合った要素を並べてみただけ、じゃない?

 監督に言わせると、本作を貫くのは「愛」だそうです。親子愛、夫婦愛、師弟愛、、、とにかく人間関係における愛があるからこそ、このような不条理劇が起きてしまったのだ、と言いたいようです。愛があるなら、そもそも父親は脅迫なんかするな、と、初っ端からツッコミを入れたくなりますが。私には、ゼンゼン説得力のない説明です。

 乱歩の「黒蜥蜴」とかの使い方もムカつくんですよね、筋金入りの乱歩好きにとっては。あんなチープな使い方をして、乱歩が好きだとか言ってほしくないんだよ、みたいな。

 ダミアンとバルバラの間に、過去、何があったのかとか、ハッキリ言ってどーでもよいです。値打ちありげに描いていませんけど、どーせ何も考えていないんでしょ、ホントはそこに何があったかなんて。

 見る人によっては、アニメの○○とか、△△とか、がオマージュではないか、などと感じるものがあるらしいです。アニメなんて無知に近いので、私にはさっぱり分かりませんが。知っていたところで本作に対する見方が変わるとも思えませんし。

 タイトルの、マジカル・ガールとは、まあバルバラのことで、アリシアもそうなのかも知れません。確かに、バルバラもアリシアも、マジカル的に美しいorキュートでした。アリシアのベリーショート+コスプレにはグッときました。グッと来たのは、ホントに、アリシアちゃんだけだったなぁ、、、。

 なにより、最大の不満なところは、不条理映画なのに、見ていてギリギリ精神的に来ることもなければ、ドキドキもないってこと。私が好きな不条理映画は、ギリギリ来るしドキドキしっぱなしなんですけれど、本作は終始、え、、、何で? え? は??? なんでそうなるの~!? という???だけが脳内をグルグルしておりました。

 まあ、好奇心で最後まで見せてくれたので、は2つオマケです。

 



90万円≒7,000ユーロ、だそーです。




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