日本の小売業「売上高ランキングベスト150社・2020」を大公開!
CVS3社はコロナ禍で先行き不透明に
2020年の日本の小売業売上高ランキング1000社の総売上高は79兆862億円だった。08年のリーマンショックの影響から回復し、売上が上昇に転じた11年以降、10年連続での増加となった。
売上高ランキング上位の企業を見てみると、第1位はセブン-イレブン・ジャパン(東京都:以下、セブン-イレブン)、第2位はファミリーマート(東京都)、第3位はローソン(東京都)と、昨年に引き続き大手コンビニエンスストア(CVS)3社がトップ3を占めることとなった(注 CVSの売上はチェーン全店売上高)。
とはいえ、新型コロナウイルスの影響で今後もCVS3社が上位を独占し続けることができるかは不透明だ。既存店売上高では各社苦戦。20年7月ではセブン-イレブンが対前年同月比5.1%減、ファミリーマートが同10.8%減、ローソンが同8.9%減となっており、20年度は3社とも減収・営業減益を見込んでいる。在宅勤務の普及でオフィス立地の店舗が苦境に立たされているなど、消費者の生活様式の変化がCVSの売り上げに大きな影響を与えている。
10位までの変化としては、ファーストリテイリング(山口県)がイオンリテール(千葉県)を抜き第4位に、ウエルシアホールディングス(東京都:以下、ウエルシアHD)がツルハホールディングス(北海道)を抜き第8位となったほか、エディオン(大阪府)が髙島屋(大阪府)を抜き、第10位に浮上した。
売上高ランキングトップ150
SM総売上高は減少もコロナ禍で各社好調
業態別に総売上高を見ていくと、主要10業態のうち、食品スーパー(SM)、百貨店の2業態を除く8業態が売り上げを伸ばしたほか、業態別売上シェアでは、CVS、ドラッグストア(DgS)、衣料品専門店、家電量販店、生協、ディスカウントストア(DS)の6業態が昨年よりも伸長した。
SMの総売上高は16兆3387億円で、前年から1.0%減少した。前年と比較可能な298社中、増収だった企業は151社と半数を超えている。しかし、スーパーマーケット3団体が発表している「スーパーマーケット販売統計調査」によると、19年の売上高は既存店・全店ともに前年を下回った。既存店の部門別売上高では、総菜以外のすべての部門がマイナスになるという厳しい結果となった。
今年は新型コロナウイルスの感染拡大で多くの業界が苦戦するなか、SM各社はまとめ買い需要や巣ごもり需要などにより軒並み業績を伸ばしているため、総売上高は増加するものと予想される。最大手ライフコーポレーション(大阪府)の21年2月期第1四半期の連結営業収益は対前年同期比10.9%増の1951億円と急拡大。そのほか、SM上位企業のユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東京都)やヤオコー(埼玉県)なども第1四半期の連結営業収益では2ケタ成長を記録している。しかし、コロナ禍での経済への悪影響による節約志向の高まりや、感染リスクを避けてのECの需要増などの懸念事項もあり、今後も各社が成長を維持できるかは不明瞭だ。
マツキヨ・ココカラ連合でさらなる再編起こる?
DgSは総売上高が9兆2135億円で、対前年比6.1%増と前年に続き高い伸びを示した。DgS業界首位に返り咲いたウエルシアHDは、20年2月期(連結)の売上高は対前期比11.4%増の8682億円、当期純利益は同30.9%増の228億円だった。調剤が好調だったことに加え、感染症予防対策商品の需要増によって既存店売上高が同6.7%増と高い伸びを示した。
DgS業界もSMと同様、コロナ禍の“特需”の恩恵を受けているが、すべての企業が好調だというわけではない。マツモトキヨシホールディングス(千葉県:以下、マツモトキヨシHD)は20年3月期は増収・増益だったものの、新型コロナウイルスの感染拡大が本格化した21年3月期第1四半期の売上高は対前年同期比9.8%減だった。この不調の原因の1つは、コロナ禍でのインバウンド(訪日外国人)消費の大幅な減少だ。相対的にインバウンド比率が高かった同社は、利益率の高い化粧品を中心に外国人観光客激減の影響を大きく受けた。
自己資本比率トップ30
マツモトキヨシHDは21年10月、業界第7位のココカラファイン(神奈川県)との経営統合を予定している。仕入れの共通化により収益性向上を見込めるほか、両社の売り上げを単純に合算すると1兆円規模となり、業界第1位のウエルシアHDを超えることになるため、DgS業界の勢力図は大きく動くことになるだろう。さらにこの統合によって、上位企業での新たな再編劇が生まれる可能性も否定できない。
DSの総売上高は大幅に伸長
すべての業態の中で最も総売上高が伸びたのがDSだ。総売上高は対前年比11.4%増の2兆2758億円だった。1000社ランキングに入った22社のうち、約7割に当たる16社が増収となった。19年度は10月に消費増税があり、消費者の節約志向が高まったなか、それを好機に需要の取り込みに成功した企業が多かった。
総合スーパーの総売上高は対前年比0.9%増の7兆1755億円。最大手イオンリテール(千葉県)の20年2月期決算は、売上高2兆1925億円(対前期比0.3%増)、当期純利益12億円(同89.3%減)だった。利益面では19年2月期で黒字転換したものの、20年2月期では大幅減益となった。長梅雨や暖冬、新型コロナウイルスの影響などが衣料品の売上減・粗利益率低下に大きな影響を与えた。
業態別で最も総売上高が落ち込んだのは百貨店で、総売上高は対前年比4.3%減の5兆6351億円だった。さらに20年度は新型コロナウイルスが追い打ちをかけており、日本百貨店協会によると、緊急事態宣言が発令された20年4月の百貨店総売上高は対前年同月比72.8%減という悲惨な状況となっている。
1000社の業態別売上シェア
これまで見てきたように、小売業は良くも悪くも新型コロナウイルスに大きく影響を受けている。今回上位にランクインした企業が大きく順位を落とす可能性も少なくないだろう。また、コロナ禍の影響で各業態の勝ち組・負け組がより鮮明になり、上位企業主導のM&A(合併・買収)も起こるかもしれない。本特集が、来年以降の業界動向を把握する手助けになれば幸いだ。