北ICBMが米ワシントンを射程に収めた可能性 すでに「一線は越えている」
2017.08.01(liverty web)
北朝鮮が7月28日夜に打ち上げた大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」について、アメリカの首都ワシントンD.C.やニューヨークに届く性能を得た可能性が出てきた。1日付読売新聞などが報じた。
記事では、韓国の国防相による、韓国国会の国防委員会で示された専門家の分析を紹介。
今回の試射では、弾頭の重さを300キログラムほど軽くし、エンジンの性能を向上させたため、射程がこれまでより最大5000キロメートル伸びた。つまり、計算上、今回の射程は、1万2000~3000キロメートルに達し、「(アメリカ本土に)十分到達する危険がある」という。
これが本当であれば、ホワイトハウスがある首都ワシントンD.C.や世界の金融センターのニューヨークが射程に収まることになり、日本は極めて危険な状況に置かれたことを意味する。
科学技術の圧倒的な差で国や文明が滅びる
「科学技術(武力)で劣っている国は、科学技術で勝っている国には勝てない」ということは、歴史が示してきた。
大航海時代(15~16世紀)、造船・操船技術を発達させたスペインやポルトガルは、海を隔てたアフリカ大陸や南北アメリカ大陸に進出。当時、最先端の銃や大砲という武器を使って、動物を狩るように先住民を撃ち殺して侵略。現地でしか採れない香辛料や黄金などの財宝を持ち帰って自国を富ませていった。
メキシコのアステカ帝国の人々は、鉄や馬の存在を知らず、スペインの銃や騎馬隊の前に恐れおののくだけで為す術もなく、あっという間に滅ぼされている。
アメリカ大陸の先住民・インディアンも同じような形で虐殺・侵略を許したが、有史以来、科学技術の圧倒的な差によって、多くの国や文明が滅びてきた。
「日夜考えた結論は、日本は負ける」
今から約160年前、日本にもそれに近い危機が訪れていた。
ペリー来航当時、明治維新の"震源地"とも言われる長州藩の吉田松陰に、歴史小説家・司馬遼太郎は、こう語らせている。
「松陰は、象山塾へかよいながら日夜考えた結論は、日本は負ける、ということであった。〈中略〉『西洋式の鉄砲やその部隊運動法というのは、はるかにわが国のそれよりまさっており、ひとたび烈しい鉄砲戦がおこると、ひとたまりもないであろう』」(司馬遼太郎著『世に棲む日日(一)』文春文庫より)
その後、松陰は、国防力を高めるために外国への密航を企てたが失敗し、自首。ペリーの要求に唯々諾々と従おうとする幕府の誤りに気づかせるために、あえて老中・間部詮勝襲撃計画を自白し、自らの命と引き換えに、全国に散らばる志士たちを目覚めさせた。
日本が「奴隷国家」に転落する否かの瀬戸際
翻って、現代の日本を取り巻く環境を見渡すと、北朝鮮のミサイルはすでに日本列島全域を射程に収めている状況だ。これまで北朝鮮が、ミサイルを撃ち込んだり、直接的に脅したりしてこないのは、アメリカの傘が日本を守っていたためである。
しかし今回の試射で、「北朝鮮がワシントンやニューヨークをはじめ、アメリカ全土に届くミサイルの性能を手に入れた」ということになれば、アメリカは当然、自国・自国民の防衛を優先させる。
北朝鮮がアメリカににらみを利かせたまま、「○○を差し出さなければ、日本にミサイルを撃ち込むぞ」と威嚇してきたら、日本は北朝鮮の要求に従わざるを得なくなる。まさに「奴隷国家」への転落だ。
営々と蓄えてきた科学技術を、今使わずに、いつ使うのか
ある国会議員が自身のスキャンダルについて、「一線は越えていない」と釈明したが、北朝鮮による日本への脅威はとっくの昔に「一線を越えている」。マスコミはこの問題についてこそ、政治家を突き上げなければいけない。
本来、安倍政権をはじめ、日本の政治家は一丸となって、国民の生命・財産・安全を守るために、具体的な国防強化を図るべきだ。もちろん、アメリカにも北朝鮮に対して具体的な軍事行動を起こすよう説得する必要がある。
本欄でもたびたび主張してきたが、日本にとって抑止力としての核装備を進めることは急務だ。アステカの人々やインディアンは、侵略者に対抗する科学技術を持っていなかった。しかし、日本はその力を持っている。先人が営々と築き、蓄えてきた力を、今使わずして、いつ使うというのか。
(山下格史)
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