トランプ氏への対抗姿勢を見せるカーニー氏がカナダ次期首相へ その手腕には懸念も多く、"トルドー主義"から転換しなければトランプ氏には完敗必至
2025.03.12(liverty web)
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《ニュース》
カナダの与党・自由党はこのほど、辞任を表明したジャスティン・トルドー首相の後任として、元カナダ中央銀行総裁のマーク・カーニー氏を選出しました。
《詳細》
カーニー氏はカナダ中央銀行の総裁のほか、外国人として初めてイギリスの中央銀行にあたるイングランド銀行の総裁や、国連の気候変動特使などを務めた人物です。トルドー首相が今年1月に辞任を表明したことに伴い、自由党の党首選挙が行われ、85%を超える支持を集めて選出。トルドー首相が近いうちに正式に退いた後、首相に就任することになります。
カーニー氏が選出された理由の一つが、「トランプ米大統領に対抗できるリーダー」としての期待を受けたからでした。党首選の争点はインフレ対策や環境対策が中心でしたが、トランプ政権の関税政策などによって圧力をかけられていることへの対応も論じられました。カーニー氏はトランプ政権を強く非難し、報復関税などによる対抗姿勢を打ち出しました。政治経験はなく、議員でもありませんが、"経済に精通している"とされることなどから、期待が高まったといいます。
しかし、カーニー氏の手腕に対しては、懸念の声も多く上がっています。特に経済通という評価とは裏腹に、「本当は実力がないのではないか」と疑問視されています。
例えば同氏は、トルドー政権で2020年以降、実質的な経済政策顧問を務めてきました。その間、巨額の財政支出や積極的な移民の受け入れ、気候変動対策などが行われ、経済は打撃を被っています。一人当たりGDPも10年間で変わらず、トルドー政権は「失われた10年」とも言われています。
イングランド銀行総裁時代に関しても、給料に見合った仕事をしていなかったと批判されています。金利政策の方針が頻繁に変化するため、「信頼できない彼氏(the unreliable boyfriend)」と揶揄されることもありました。
また、気候変動対策への思いも強く、トルドー政権が導入して失敗に終わった「炭素税」も、当初は支持していた立場です。最近では、「消費者向けの炭素税を廃止する」として、トルドー政権とは距離を取ろうとしていますが、主に大企業に対し二酸化炭素の排出量に応じて負担を求める「カーボンプライシング」の強化を打ち出しています。
同氏はさらに、国連主導で立ち上げられた国際金融組織で、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げる「ネット・ゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)」の創立に携わった人物でもあります。NZBAは、脱炭素からの撤退を掲げるトランプ政権の誕生を前に、大手銀行が続々離脱したことで話題となりました。
こうした背景から、「トルドー政権と基本路線は変わらない」との見方は強いです。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルも「カーニー氏は"トルドー主義"からの脱却を提案していない」と指摘しています(3月10日付)。
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