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グローバルシステム---アメリカと日本との比較

2011-07-23 | ことばとコンピュータ
先に紹介したアメリカのグローバルシステムは、アリゾナの半導体会社とカリフォルニアのソフト会社のシステムで、それぞれ1998~99年に完成した(筆者は2つのシステムに掛持ちで参加した)。この頃、すでに多くの日本の製造業が海外に進出していた。

当時、日本の海外進出の目的は途上国の安い人件費だった。他方、アメリカの目的は地球(グローブ)を見渡す経営視界の改善だった。安い人件費を求める日本の製造業と海外拠点の集中管理を目指すアメリカ、両者の目的は本質的に違っていた。しかし、ここでは、世界をカバーするコンピュータシステムと業務管理の観点から両者の比較を試みる。

2000年頃のタイ王国では、約550の日系工場が稼動していた。そこで、日系工場が多いバンコクで、コンサルティングの仕事を見つけた。その目的は、タイに進出した日本の製造業をタイの工場から観察し、そこに日本の製造業の将来像を描く手掛かりを得ようと考えた。

遠い将来、日本の製造業もアメリカ型のグローバルシステムを実現するのだろうか、あるいは、まったく別の日本独特のビジネスモデルを展開するのか、またその時の日本はどのような姿になっているのかと疑問は尽きない。その疑問は、今も続いている。

あの時から今日までの10年間に、繊維、機械、自動車関連の5社の工場に関わった。5社の規模は、従業員200から3,000人程度、日本人社長と数人から十数人の日本人が常駐する工場だった。工場のコンサルタントとして働くうちに、日本の製造業は「郷に入っては郷に従え」、言い換えれば、柔軟な分散型の工場管理だと分かった。アメリカの強力な本社集中管理とは対象的だった。

工場管理以外でも、英語は世界の標準語、人々が英語を話すのは当り前と考えるアメリカ人、英語を外国語の一つと考える日本人、世界の政治・経済・治安のリーダーはアメリカと考えるアメリカ人、国際政治の檜舞台で英語をしゃべれない自国の政治家に違和感を持たない日本人など、両者の考え方には大きな違いがある。

アメリカの10年間で2社、タイの10年間で5社という限られた見識で判断すると、両者には次のような違いがある。

1.使用言語
1)アメリカの集中管理
標準語=英語
ローカル言語(現地語)=日本、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、オランダ語など
e-mailの言語=英語
通訳=従業員は英語を理解するので通訳は不要(英語のできない人は採用しない)

2)日本の分散管理
標準語とローカル言語=現状維持、標準語をあえて定義しない。
ただし、5社の内1社は、英語を公用語(標準語ではない)として公式文書や報告書に使用
使用言語=日本では日本語と英語、タイでは日本語、タイ語、英語(会議案内など)
e-mailの言語=使用言語に同じ。必要に応じて日本語/タイ語の翻訳版をオリジナルメールに添付
通訳=タイ工場では、1人から数人の通訳または大学で日本語を専攻したタイ人社員を採用・・・重要な会議ではプロの通訳を利用、しかし、技術系/IT系/専門語を正確に通訳できないこともある。

2.業務システム
アメリカの場合は、世界の業務を統合システムで管理しているので問題はない。ここでは、説明を省く。

日本企業の場合は、国ごとに業務を管理する。このため国が異なると同じ企業グループでも互いにいろいろな問題が発生する。極端な例では、一つの製品コードが国によって異なるケースもあった。

1)コンピュータシステム
日本は日本、タイ工場はタイでそれぞれが独自にシステムを調達している。

どこの会社でも、IT部門は日本だけで手一杯、海外まで手が届かないのが実情である。このためバンコクには日系ソフトハウスが多く、日系工場の弱点を補足している。しかし、ローカルのソフトハウスに依存しすぎるとシステムの中身がブラックボックス化するという危険性がでてくる。

ちなみに、筆者が訪問したバンコクのアメリカ系工場では、システムはアメリカ本社で集中管理、タイ工場はシステムを利用するだけだった。これは、世界に共通な基幹業務の信頼性と継続性を確保すると同時に、各国のITコストを削減するためだった。

会計システムは、5社とも日系パッケージソフトを導入、画面は英語/タイ語併用である。

2)業務管理
受注・出荷、在庫、生産、購買、会計の業務は、国の法規と商習慣にもとづいて管理している。違反のペナルティーは大きい。品質管理は例外なく日本人管理職が管轄している。自社に限らず、外注先や原材料の品質管理も重視している。

業務管理については、次回、現状分析と幾つかの結果を支障をきたさない形で紹介する。


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