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グローバル化への準備---英語と他の言語(6)

2013-01-25 | ビジネスの世界
前回の英語と他の言語(5)から続く。

5.「学生と社会人のための文章読本」倉田 稔、丘書房、1994年10月
引用文:
 「パラグラフ(=文節、分段)を作ると、読者が読みやすく、要点をつかみやすくなる。
 パラグラフ、つまり段落をつけること、改行することは、日本人は意識していないらしい。日本語論者がよく言う指摘である。だいぶ長くなったから、そろそろ改行しようか、と普通の日本人は考えるという。、、、パラグラフの意義の重大さは、アメリカの大学ではしっかり教えているという。
 さて、パラグラフを作らないと、作品にメリハリがなくなる。その上、読者はくたびれてしまうのである。
 パラグラフで文を切るのは:
 1、次の主題に移るとき、
 2、文が長く渡るとき、
 3、対話文・会話文を書くときである。
 すくなくても200字から300字くらいで作るとよさそうである。」(PP.36-37)・・・引用終り。

6.「横書き文章読本」高橋 昭男、日経BP出版センター、1994年3月
引用文:
 「『国語=文学、という不思議』
 中学、高校で、国語の時間といえば、ほとんど文学を学ぶ。国語=文学なのである。」(P.15)、、、「『パラグラフの活用』
 ここでは、段落(パラグラフ)の学習をしていく。パラグラフは、文書を構成していく中間構成単位として大切である。それにもかかわらず、パラグラフの考え方について、学校で学んだ記憶はあまり無い。比較的無視されてきた理論なのである。三島由紀夫や谷崎潤一郎の手になる『文章読本』(いずれも中央公論社刊)でもパラグラフについての見解を述べていない。現代の日本文学では、パラグラフの考え方は無視される傾向にある。」、、、「パラグラフの必要性を大きく取り上げたのは、以下の著書である。
 『理科系の作文技術』(木下是雄著 中央公論社刊)
 『日本語の作文技術』(本多勝一著 朝日新聞社刊)
 『日本語の論理』(外山滋比古著 中央公論社刊)
 『理科系の作文技術』で木下是雄氏は、17ページにわたってパラグラフについて述べている。
 『たいていの人間は、文書を書くときに、自分はふだん、どれぐらいの長さのパラグラフを書いているのか、ほとんど自覚していない。改行をつけるのも、全くでたらめである、だいぶ長くなったからそろそろ改行しようか、などと言って行を変えている。パラグラフの中をどういう構成にするかをはっきり考えたことはほとんどないのだからやむを得ないが、これではよい文章が書きにくいわけである。また、書けた文章がしっかりしない骨なしみたいになる道理である。
 まず、基本的文章を読んでパラグラフの感覚を各人が持つように努力することである。書く方でもパラグラフを書く練習がもっと必要であろう。段落の観念がはっきりしないから、文章に展開のおもしろさが生まれない。』」(PP.116-117)・・・引用終り。

以上、52冊の中からパラグラフを説明する6冊の書籍を、引用文と共に紹介した。論理的な書き方やパラグラフに触れる書籍は意外に少ない。

また、パラグラフと同様に、句読法(Punctuation)は重要であるにもかかわらず、国語(日本語)はそれを重視しない。これは筆者の長年の不満である。

句読法は、横書きのe-mailやビジネス文書の意味を明確にする。この意味で、次の「英語の句読法辞典」を紹介する。

7.「英語の句読法辞典」稲盛 洋輔、畑中 孝實監修、インターワーク出版、2003年6月
引用文:
 なし。
書籍の内容:
 次の16種類の句読点/記号を具体的に説明している。
 .(ピリオド)、,(コンマ)、?(クエスチョン・マーク)、" "(クォーテーション・マーク)、!(感嘆符)、:(コロン)、;(セミコロン)、-(ダッシュ)、-(ハイフン)、'(アポストロフィー)、A(イタリックA)、A(大文字A)、…(省略符号)、( )(括弧)、[ ](ブランケット)、/(スラッシュ)
 以上の句読点/記号の使用ルールは、一種の文法であり、英語だけでなく、ヨーロッパ系言語や横書きの日本語にも通用する。記号別に豊富な用法の説明があり、ビジネスの実務に有効な参考書である。
筆者のコメント:
 Web上の句読法横書き句読点の謎も参考になる。

 また、日本語の句読法として、文部省教科書局調査課国語調査室の「くぎり符号の使い方[句読法](案)(昭和21年3月)」をここに示しておく。この国語調査室の[句読法]は、主として縦書き用のルールである。横書き用には「点」「コンマ」「コロン」「セミコロン」の用法を説明している。

 さらに、句読点ではないが、e-mailやビジネス文書などでよく使われる主な略語を紹介する。
 do.(ditto、同上)、e.g.(for example、たとえば)、etc.(and so on, and so forth、エトセトラ、など)、i.e.(that is、すなわち)、n.a.(not applicable、該当しない)、w/(with、とともに)、w/o(without、なしに)、ASAP(as soon as possible、アサップ、できるだけ早く…多用は禁物)、FYI(for your information、参考まで)など。これらは世界的に通用する略語であり、翻訳せずそのまま使用する。特に、これらの略語を使った図表は、補足の説明文が少なく、項目(名詞)の英訳/和訳で済むので翻訳が容易になる。・・・筆者のコメント終り。

自然科学系やビジネス文書、さらに世界中を飛び交うe-mailは横書きである。これに対して、小説、新聞、週刊誌、経済誌、特に、官公庁の文書には縦書きが多い。一つの参考に過ぎないが、筆者が調べた「縦書き」「横書き」の比率は次の通りである。

横浜市立中央図書館の閲覧室の日本語の書き方・表現力に関する書籍、151冊のうち75%(113冊)は縦書き、25%(38冊)は横書きだった。「縦書き」の中には、技術論文や英語文書の書き方を説明する書籍もあった。日本は、まだまだ「縦書き」社会である。中には「縦に書け! 横書きが日本人を壊している」(石川九楊、祥伝社、2005年6月)と主張する意見もある。画一化と妥協の産物たるグローバル化に揉まれる日本、一読に値する書である。

2)日本の国語教育への感想
今回、日本の国語教育の現状を調べたが、筆者の感想は次のとおりである:
◇最初の6冊の著者はすべて国語の教育者であり、論理的な作文が大切だと考えている。しかし、
 教育現場はそうではない。筆者の目には、現在の教育現場は60年昔と変わりはない。浦島太郎は、
 筆者でなく、日本の国語教育と言える。
◇パラグラフの論理的な構築は、英語に特有の方法ではない。縦書きや横書きの日本語、あるいは
 他の外国語にも通用する。
 母語で論理的な思考やコミュニケーション方法の教育を強化すれば、他の外国語の習得が容易にな
 る。さらに、外国語を広く理解するには、言語類型論の知識も参考になる。【言語類型論を参照】
◇基本的な話になるが、今回の調査でパラグラフに関する用語が著者によりまちまちだった。
 たとえば、
 パラグラフ:段落、意味段落、文節、分段など
 トピック・センテンス:主題文、中心文、話題文など
 サポーティング・センテンス:支持文、展開文など
 文部科学省の学習指導要領で、これらの基本的な用語と定義を統一すべきである。
◇日本にコンピューター音痴やアレルギーが多い原因は、コンピューター教育の出遅れだけでなく、論
 理的思考を重視しない国語教育にあると思った。これらの強化は、グローバル化への必須条件であ
 る。

【参考・・・言語類型論-Wikipediaから引用】
語順 [編集]
グリーンバーグは1963年にSome universals of grammar with particular reference to the order of meaningful elementsにより、基本的な語彙の語順による分類を考案した。これは、一般的な他動詞文に必須の3要素を主語(Subject)、目的語(Object)、述語(Verb)とし、その語順により世界の言語を6つに分けるものである。
SOV型 日本語など。世界の言語の約50%を占める。
SVO型 英語など。世界の言語の約40%を占める。
VSO型 アラビア語など。世界の言語の約10%。
VOS型 トンガ語など。
OVS型 ごく一部の言語に見られる。
OSV型 ごく一部の言語に見られる。
ただし、言語の中には基本語順が定まっていないもの(例えば、SVOとSOVを同じ程度の頻度で取るもの)があり、この分類が完全に有効かどうかについては異論がある。・・・Wikipediaからの引用終り。

次回は、筆者が実践してきた作文のキーポイントを技法、用語、形式、文体、内容に分けて簡単に説明する。

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