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コンパクト・シティーの姿(12)---日本の行政システム

2020-11-25 | 地球の姿と思い出
コンパクト・シティーの姿(11)---から続く。

(1)住民票コードと個人番号(マイナンバー)
現在の行政システムには国民一人ひとりを識別するコードが二つある。一つは2002年8月に作られた住民票コード、11桁の数字コードである。もう一つは、2015年10月に住民票コードを元に作られた個人番号、またの名はマイナンバー、12桁の数字コードである。

総務省の説明によると住民票コードには戸籍関係のシステムの利便性を高める目的があるという。利便性の向上はデジタル化すれば当然の効果、手書き戸籍台帳のデジタル化にはもっと大きな可能性がある。

他方、マイナンバーは社会保障・税制度関係のシステムで使用されるという。もちろん、社会保障・税制度関係のデジタル化は、国家の重要な目的の一つ、今ごろまで着手しなかったのは「周回遅れ」以上の感がある。

国家システムを筆者の微々たる経験で云々するのは分を超えた暴論、しかし「デジタル化」という言葉を聞くとつい持論が出てしまう。ここは、しばしご容赦いただきたい。

もちろん筆者の価値観だが、住民票コードに対するマイナンバーは屋上屋に見える。二つの数字コードの一方は冗長、もしデータベースが一つの場合はいずれか一方のコードは蛇足、場合によっては混乱のもとになる。また、もし筆者がどちらか一方を選択するならば、11桁のコードを選択する。理由は、覚えるわけではないが、無意コードは短いほど良い。

(2)二つのデータベース
国民をユニークに識別するコードが二つ、つまり住民票コードと個人番号(マイナンバー)が存在するということは、筆者の推測に過ぎないが、二つデータベースが存在すると思える。しかし、機密保護とメンテナンス/バックアップを考えるとき、なぜわざわざ二つのデータベースを構築するのかはわからない。

(3)継ぎはぎだらけのレガシー・システムからの脱却
思えば成人以来、筆者は船乗りを起点にいろいろな世界を歩いてきた。その途中で、アメリカの大学でコンピューターの知識も身に付けた。それは1960年代から90年代の知識、コンピューター技術が急速に発展する時代の知識だった。

次つぎと進歩する技術で、新規に開発したシステムも数年で時代遅れになってしまう。その結果、変更に変更を重ねたシステムは継ぎはぎだらけ、新機種への乗り換えが困難なレガシー・システムになるものもあった。

継ぎはぎだらけのシステムやレガシー化したシステムの刷新では、象徴的な二つのケースがあった。一つはコード体系とデータベースの刷新、もう一つは分散システムの一元化だった。

【コード体系とデータベースの刷新】
 初期のデジタル化では多くの有意コードを使用した。たとえば、品目コードの1桁目は製品グループ、2桁目は品目分類=完成品、部品、原材料、、、などと各桁に意味がある有意コードだった。しかし、事業の急速な拡大により、有意コードに使用する英数字が不足、新品目の採番余地が逼迫した。
 この窮地を打開するため、経営陣はコンピューター・システムの刷新を決断した。その内容は、コード体系、データベース、基幹システムの刷新だった。もちろん、新品目コードは無意数字コードに変更、その変更を世界の取引先にも予告、変更への対応を要請した。
 このシステム刷新には約8年の歳月を費やした。
 
【分散システムの一元化】
 ある生産販売会社の経営陣は、世界各地の事業所がてんでに開発したシステムを一掃、本社が開発する新システムへの集約を決断した。その目的は、「レガシー・システムの刷新」「経営視界の改善」および「顧客ニーズへの迅速な対応」だった。
 目的を達成するために、多言語一元化データベース、世界共通システム、国際通信ネットワークを構築、各事業所のシステム開発を禁止した。世界に分散する事業所を一元的に管理するこの統合システムも8年近くの歳月で実現した。
 
これらの出来事は何十年も昔の話、すでに水平線の彼方に過ぎた去った思い出である。しかし、そこで学んだことは今も筆者の記憶に新しい---データベースは一元管理が望ましい、分散システムは集約するのが望ましいと。

---◇◇◇---

気づけば筆者もすっかりコンピューター技術と疎遠になった。そこで複雑な日本の行政システムに気を揉むのは健康によろしくないと判断、今後は気楽なメンタル・タイム・トラベルに出てコンパクト・シティーの姿を描きたい。

最後に「デジタル庁」にはこころから声援を送りたい。

続く。


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