5.展望(13)から続く。
(2)在来線のリエンジニアリング
在来線のリエンジニアリングといえば、最も身近な駅前の再開発である。駅前のバスやタクシー乗り場から商店街に通じる広場、そこには横断歩道、信号待ち、バスや車の騒音、人と車が混在する見慣れた駅前風景がある。その重要な駅前は、人と車の流れが交差する非効率的なスペースになっている。
人口が数十万から数百万の大都市のコンパクト化では議論が発散するので、ここでは比較的小さな都市、2080年頃の人口が十数万人規模の都市を想定する。その理由は、65歳以上の人口減少が80年頃にピークを迎え、その後は0~14歳、15~64歳、65歳以上の人口比がそれぞれ9%、50%、41%に落ち着くからである。【参照:年齢別人口と変化、日本の将来---5.展望(4)2014-07-25】
2080年頃の総人口は現在の約半分、6,500万人と推定される。さらに、2100年頃は人口5,000万人台の時代を迎える。80年代には、土地と領土に対する考え方と憲法を始めとする法体系も激変する。当然ながら政治、経済、教育、福祉における空論が通用しない時代、国の存続に関わる局面に真剣で直面する。もちろん、「消滅済都市」と「消滅予定都市」も明らかになる。その荒波に揉まれた鉄道網は統廃合を終えて、次の時代に向かう時期である。
そのような時代を思うとき、駅前風景も今のままの筈がない。
以下に描く駅前広場は頭の中のイメージに過ぎないが、技術的な裏付けは在来技術で建設可能、運用性では高齢者に配慮するので大きな問題はない。ただし、経済性については、具体的な土地の手当てと投資コストは4~60年先の激変期の話になるので、現在は未検討である。言い訳になるが、人口減による空き地が増大する時代、直径4~500m程度の駅前広場を100ほど建設してもささやかな面積である。
1)駅前広場の概念図
高齢化を考えるとき、足腰だけでなく、視力・聴力・判断力も衰える。高齢運転者の免許更新で見るとおり、身体能力はおおむね70%程度に低下する。見づらい、聞きづらい、反応が遅い、ただそれだけでなく、それらに起因する人間の誤動作、たとえば事故、を想定すると十分な安全係数を見越すべきである。したがって、都市機能の集約、バリアー・フリーと行動範囲のコンパクト化は自然の流れである。
広からず狭からず、しかも安全にすべての用事をこなせる場所、それがコンパクト・シティーの中心広場の姿と考える。なぜかエトナを思い出す。
下に示す図は、コンパクト・シティーの駅前広場のイメージである。日本のどこにでもある駅前広場を発展させた広場(Plaza:プラザ)である。
上の図では、駅を単純に描いているが、実際には駅から支線が伸びている場合や私鉄が交差している場合もある。もし、現在の駅前が商店などの密集地であれば、駅を数百メートル移動する方法もある。これから先、4~60年の先を考えるとき、いろいろな選択肢が浮かんでくる。
また、図では駅前広場は円形であるが、その形は多角形、正方形、長方形であってもよい。地形にもよるが、広場の大きさは直径4~500mと考える。端から端まで普通に歩いて5~7分(80m/min)、効率の低下(70%=56m/min)と安全係数(1.5)を考慮しても11~14分の距離である。
大切なことは、この広場は歩行者専用、車の進入は禁止という点である。その広場は石畳、中心に噴水と木陰を配置すれば申し分がない。もちろん、広場内では徒歩、自転車あるいは車椅子や自走電動車などを利用できる。
広場の人と物資の出入り口は駅、バス・タクシー乗り場、外周道路、広場地下の駐車場になる。市街地のバス・路面電車は外周道路に沿って駅に乗り入れる。もし、津波の可能性があれば広場と外周道路をかさ上げすることも考える。また、雪対策のアーケード化とエアコンも可能である。
次回は、A~Eの内容に続く。