(2)調査の方法
ここでは、工場(製造などの直接部門)と事務所(生産管理や経理などの間接部門)を例にとって説明する。
まず、各職場の管理職とリーダークラスの人々に現状調査の方法を、次のように説明する。
1)ヒアリングを受ける作業担当者は、現状だけを説明する。(今後の目標や計画の説明は不要)
2)ヒアリングのための資料作成は不要
3)製造現場の作業担当者からのヒアリング時間は、5~10分程度
4)必要に応じて、使用中の帳票を1枚だけコピーする。
5)翌朝、昨日のヒアリング内容を業務フロー(業務の流れ図)で確認する。所要時間は、5~10分程度
工場の作業だけでなく、製品データの管理、売掛/買掛や原価計算なども調査する。
(3)業務フローの作成
工場内でのヒアリング調査は、直接材料から仕掛品、仕掛品から完成品に向う流れに乗って進める。枝葉の流れにはあまり時間を費やさない。受注や経理処理などの間接部門の作業は、帳票の流れとシステム処理(入出力作業)にしたがってヒアリングを進める。
ヒアリングで得た業務の内容を、エクセル(Excel表計算シート)に展開する。エクセルシートは、A4縦、上辺幅5分の4のスペースを業務フロー作成に使用、右端5分の1のスペースを摘要欄に使用する。業務フローのスペースの中央に、ボックス(箱型の枠)を描き、その中に作業名を書く。たとえば、「電話による受注」や「最終組立て」などのボックスを作る。
ボックスの左側に使用する材料や帳票(Input:インプット)、右側に作業で作成した品物や帳票(Output:アウトプット)を矢印で示す。ボックスの替わりに業務システムの画面でも良い。
そのボックスの下に次の作業のボックスを書き、下向きの矢印で連結する。次の作業では、新しい材料や帳票、あるいは上のボックスのOutputの一部が、下のボックスのInputになる場合もある。
ボックス(作業)の順序を、できるだけ上から下に流れるように配置する。また、各作業のInputとOutputの流れを左から右に流れるように配置する。もちろん、作業の都合で逆方向の流れも起こりうる。他のページに続く時は、結合マーク(Connector:野球のホームベースの形)に記号を記入して、続き先に結びつける。このような作業や帳票や物の流れ図を、ここでは業務フローと呼ぶ。
必要に応じて、作業で使用したり作成する帳票を1ページだけコピーし、参照番号(Ref. No.)を付与する。参照番号付きのコピーは、参照資料として別冊にまとめて現状分析報告書に添付する。
もし、InputやOutput(帳票や品物)や作業の内容に問題があるとき、問題がある箇所の真横、摘要欄に問題の内容を簡単に説明する。問題の場所と摘要欄の内容説明を問題番号(Issue No.)で結びつける。問題がある部分と説明文に色付けして、視覚で関連付けることもできる。また、黄色と水色を交互に使い分けると、問題の混同を避けることができる。
業務フロー(英文)のイメージ
出典:筆者著“Theory and Practice of Production Management," COMM Bangkok, 2011
摘要欄の説明は短く、長くても50字を超えないように配慮する。後程、問題番号とその内容を一覧表に整理して、現状を分析する。
業務フローを作るとき、次の点に注意する。
1)ヒアリングは15時頃に切上げる。残りの時間で、明日までに業務フローを仕上げる。
2)帳票のコピーが必要なとき、そのコピーを手にするまで、次のヒアリングに移動しない。
「後で下さい」ではなく、その場で入手する。(業務フロー作成に必要)
3)些細なことでも、気がかりな点は、問題番号を付けて右の摘要欄にメモする。
職場の雰囲気や整理整頓、作業環境の気掛かりな点も記録する。
4)今日中に作成したフローを翌朝一番に、ヒアリングした人に確認する。
口頭でなく業務フローで確認するので、短時間で終わる。
5)海外工場の場合は、業務フローを英語で作成する。業務フロー(英文)のイメージ参照
英文による問題点の説明は、メモ書きのように英単語を並べるだけでも良い。(長文は禁物)
(注)たとえば、タイでは技術系の「英/タイ辞書」は語彙も多く充実している。
このため、現地社員にとっては和文より英文の方が辞書を引きやすく、また理解し易い。
現状調査の分析方法や注意事項は、次回の現状分析3で説明する。