小浜逸郎・ことばの闘い

評論家をやっています。ジャンルは、思想・哲学・文学などが主ですが、時に応じて政治・社会・教育・音楽などを論じます。

食文化研究家からのお手紙

2020年08月24日 23時58分47秒 | 歴史

京都のお菓子・水無月(旧暦6月の晦日に夏バテを避ける祈りを込めて食べたそうです)

前々回の記事『第2波は来たか』を何人かの人たちにお送りしたところ、食文化研究家の河田容英(やすひで)さんから、うれしいお返事をいただきました。河田さんは日本の歴史にたいへん詳しく、当方主催の「思想塾・日曜会」にもたびたび参加していただいております。そこで、今回、ご本人の了解を得て、以下に全文を転載することにいたしました。
このお返事にはまた、映画監督・伊丹万作(伊丹十三の父)が書いた「戦争責任者の問題」という、きわめて優れたエッセイが紹介されています。ブログ管理者としては、このエッセイをぜひできるだけ多くの方に読んでいただきたいという思いもあります。
また河田さんは、「美味求眞」というメルマガに、最近「夏越の祓」という論稿を寄稿されています。
https://bimikyushin.com/chapter_1/01_ref/harae.html

これはいまに伝わる「茅の輪くぐり」の由緒などを紹介した味わい深い文章ですが、この中で彼は、平安時代の疫病の時に人々がどうふるまったかについて詳しく触れています。


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小浜さま

河田です。
ブログ読ませて頂き、改めてコロナ対策や報道に対する違和感のモヤモヤが何かがはっきり出来ました。
特にマスクに関しては以前から同じようなことを感じておりまして
伊丹万作の書いた「戦争責任者の問題」という短いエッセイを、
今この時期に、ぜひ小浜さんにも読んで頂きたいと思っています。
https://www.aozora.gr.jp/cards/000231/files/43873_23111.html

ご存じのように伊丹万作は映画監督で、伊丹十三の父親です。ということは大江健三郎の義理の父でもある。
この「戦争責任者の問題」で面白いのは、かつての戦争責任者が誰だったのかという話のなかで
戦時中にゲートルを巻き戦闘帽を被らずに外出すると厳しく批判する者がどこにでもいたとする指摘です。
これはコロナ時代におけるマスク着用を他人に強要する自粛警察と呼ばれる人々にも通底します。
そいう意味でわたしは、伊丹万作の書いた「戦争責任者の問題」を
「コロナ責任者の問題」としても読み代えることも可能ではないかと考えています。
まさに全体主義への警鐘が必要です。


そしてもうひとつ。
現在、私は過去の疫病流行の事例を調べていまして
『本朝世紀』の994年(正暦5年)に悪疫が流行した記録を見ています。

4月8日には「京の市中で病が流行し始め、路上に多くの人々が行き倒れて絶えなかった」とか

4月16日には「左京の三条大路と油小路の交差する辻から西入るところに湧いている小さな井戸があったこと。
その井戸からは通常であれば濁っていてとても飲めないような水なのに、これを飲むと疫病を免れると言って、
都の人々は男も女も貴人も庶民もこぞって水を汲み、それを桶や壷、タライや水差しに貯めておいた」とあります。

疫病が流行り、デマが広がって多くの人々がそれを信じたあたりは
現代のコロナで、多くの人々がマスクやトイレットペーパーを買占めたり、
大阪知事の会見を受けて、イソジンなどの苦い水をこぞって買い占めている様となんら変わりがありません。
日本人は千年前となんら進歩していないとも言えます。

6月10日の記事には「疫神が洛中を横行するという流言があり、家々は門を閉ざしたこと。
さらには全ての者が勤めを中止した」とあります。

仍或恐奇夢閉門。或稱物怪不仕。如此之間。上下無勤。

正に現代で言うところのソーシャル・ディスタンスとロックダウンが行われたことが
読み取れるのですが、疫神の横行のようなデマに右往左往する様子は、現代人となんら変わるところがありません。


千年前の疫病、太平洋戦争の時代と言い、どうも日本人が経験してきたことは
何ら現代にフィードバックされておらず、その都度、その都度の場当たり的な対処であることも
コロナに対する、一貫性の無さや、過度に恐れるように煽ることにも反映されているように思います。


今回の正確なデータの読み方に裏付けされた小浜さんのブログでスッキリしました。
ありがとうございました。

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社会批判小説ですがロマンスもありますよ。
https://ameblo.jp/comikot/

緊急事態宣言に寄せて2

2020年04月12日 00時30分25秒 | 歴史


をかしき歌いくつか集まれり 寄稿御礼

                        小松永朝臣
増税と 安倍の無策で 大恐慌 マスクするより 金を刷れ
                           

                        由紀草一朝臣
数字より 現に暮らしが 苦しければ ころなカラクリに ダマされまいぞ


                        高木四郎朝臣十首
安倍小池 啼きつる方を 眺むれば ただ上滑る 無為ぞ残れる

有難き 布マスク二枚 間には 政府小切手 挟まれるらむ

メリケン民 早や受け取れり 千二百ドル 我もなりたし メリケン市民

晋三は 卯月の花の 散り晒し 花びら舞えど 実の成るはなし

兵力の 逐次投入 恐ろしや 昔は餓島 今コロナ

財政の 縛りを剥がす 長期戦 たった四つきで 収支得られず

三十万 よし受け取るも 実際は 一割抜かれて 二十七万

開かるる 勇人の徳に 前五輪 延期で済むや 今の不徳に

ぺらぺらの 言葉軽きに 耐え兼ねて ダミ声響く 田中恋しき

ちはやふる 神代も知らず 猛き今世 かねくれないに 首くくるとは

お知らせ

2020年01月16日 00時41分25秒 | 歴史
このほど、小浜が講師を務めまして、オンライン講座『解禁 幕末史』を3回シリーズでお届けします。

●vol.1
徳川外交 逆転の戦略
〜世界史を変えた天才たちのビッグディール
●vol.2
明治維新という代償
〜戊辰戦争・明治維新は不要だった?“戦後史観”の嘘に埋もれた真実
●vol.3
「坂の上の雲」の経済学
〜いかにして富国強兵という最強スローガンは生まれたのか?


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「江戸幕府はペリーに脅され開国した」 という嘘