小浜逸郎・ことばの闘い

評論家をやっています。ジャンルは、思想・哲学・文学などが主ですが、時に応じて政治・社会・教育・音楽などを論じます。

食文化研究家からのお手紙

2020年08月24日 23時58分47秒 | 歴史

京都のお菓子・水無月(旧暦6月の晦日に夏バテを避ける祈りを込めて食べたそうです)

前々回の記事『第2波は来たか』を何人かの人たちにお送りしたところ、食文化研究家の河田容英(やすひで)さんから、うれしいお返事をいただきました。河田さんは日本の歴史にたいへん詳しく、当方主催の「思想塾・日曜会」にもたびたび参加していただいております。そこで、今回、ご本人の了解を得て、以下に全文を転載することにいたしました。
このお返事にはまた、映画監督・伊丹万作(伊丹十三の父)が書いた「戦争責任者の問題」という、きわめて優れたエッセイが紹介されています。ブログ管理者としては、このエッセイをぜひできるだけ多くの方に読んでいただきたいという思いもあります。
また河田さんは、「美味求眞」というメルマガに、最近「夏越の祓」という論稿を寄稿されています。
https://bimikyushin.com/chapter_1/01_ref/harae.html

これはいまに伝わる「茅の輪くぐり」の由緒などを紹介した味わい深い文章ですが、この中で彼は、平安時代の疫病の時に人々がどうふるまったかについて詳しく触れています。


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小浜さま

河田です。
ブログ読ませて頂き、改めてコロナ対策や報道に対する違和感のモヤモヤが何かがはっきり出来ました。
特にマスクに関しては以前から同じようなことを感じておりまして
伊丹万作の書いた「戦争責任者の問題」という短いエッセイを、
今この時期に、ぜひ小浜さんにも読んで頂きたいと思っています。
https://www.aozora.gr.jp/cards/000231/files/43873_23111.html

ご存じのように伊丹万作は映画監督で、伊丹十三の父親です。ということは大江健三郎の義理の父でもある。
この「戦争責任者の問題」で面白いのは、かつての戦争責任者が誰だったのかという話のなかで
戦時中にゲートルを巻き戦闘帽を被らずに外出すると厳しく批判する者がどこにでもいたとする指摘です。
これはコロナ時代におけるマスク着用を他人に強要する自粛警察と呼ばれる人々にも通底します。
そいう意味でわたしは、伊丹万作の書いた「戦争責任者の問題」を
「コロナ責任者の問題」としても読み代えることも可能ではないかと考えています。
まさに全体主義への警鐘が必要です。


そしてもうひとつ。
現在、私は過去の疫病流行の事例を調べていまして
『本朝世紀』の994年(正暦5年)に悪疫が流行した記録を見ています。

4月8日には「京の市中で病が流行し始め、路上に多くの人々が行き倒れて絶えなかった」とか

4月16日には「左京の三条大路と油小路の交差する辻から西入るところに湧いている小さな井戸があったこと。
その井戸からは通常であれば濁っていてとても飲めないような水なのに、これを飲むと疫病を免れると言って、
都の人々は男も女も貴人も庶民もこぞって水を汲み、それを桶や壷、タライや水差しに貯めておいた」とあります。

疫病が流行り、デマが広がって多くの人々がそれを信じたあたりは
現代のコロナで、多くの人々がマスクやトイレットペーパーを買占めたり、
大阪知事の会見を受けて、イソジンなどの苦い水をこぞって買い占めている様となんら変わりがありません。
日本人は千年前となんら進歩していないとも言えます。

6月10日の記事には「疫神が洛中を横行するという流言があり、家々は門を閉ざしたこと。
さらには全ての者が勤めを中止した」とあります。

仍或恐奇夢閉門。或稱物怪不仕。如此之間。上下無勤。

正に現代で言うところのソーシャル・ディスタンスとロックダウンが行われたことが
読み取れるのですが、疫神の横行のようなデマに右往左往する様子は、現代人となんら変わるところがありません。


千年前の疫病、太平洋戦争の時代と言い、どうも日本人が経験してきたことは
何ら現代にフィードバックされておらず、その都度、その都度の場当たり的な対処であることも
コロナに対する、一貫性の無さや、過度に恐れるように煽ることにも反映されているように思います。


今回の正確なデータの読み方に裏付けされた小浜さんのブログでスッキリしました。
ありがとうございました。

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社会批判小説ですがロマンスもありますよ。
https://ameblo.jp/comikot/

前回記事の上久保靖彦説の要約

2020年08月21日 14時11分39秒 | 社会評論
以下に掲げるのは、前回の記事「第2波は来たか」の付録です。前回記事の中で、松田学氏による上久保靖彦教授の説(「日本人はすでに集団免疫が獲得できている」)の紹介動画をURLのみ記載しておきました。
https://www.youtube.com/watch?v=ajWWHBem-r0&fbclid=IwAR2dOCBCY1Wxh_0FL24zS4W1aBaY8birz8cYao-NGR6eHfzCoTDWXmpLh7E
このほど、ある方からこの動画記事の詳しい要約が寄せられました。たいへん正確で遺漏のないものなので、ここにコピペさせていただきます。
なお前回記事の中に、「コロナ感染者が死亡した場合、死因をコロナとせよとの厚労省の通達があったという情報がある」と書かれていますが、そのソースは、この動画記事でした。Q&Aの部分を読むともっと正確な形で出てきます。




上久保靖彦 京都大学大学院教授によるデータ分析から判明した事実

<コロナウイルスとインフルエンザウイルスは逆相関の関係にある(疫学調査の結果)>

 ・インフルエンザが流行すると免疫ができるのでコロナにかかりにくくなる

 ・コロナにかかると逆に免疫物質ができてインフルエンザにかかりにくくなる

 ・日本のインフルエンザ流行曲線をみると、1月のある時点から不自然な減り方(急激な減り方)をしている。
このときに新型コロナウイルスK型が日本に入ったのではないかと思われる。

<新型コロナウイルスはスパイク部分(突起の所)の形によってS型 K型 G型に分けられる>

 ・新型コロナウイルスは、突起の部分で人間の細胞にある受容体と結合して感染するが、この突起の部分が変異して、現在S型、K型、G型の3つがある

 ・日本が新型コロナウイルスとどのように関わってきたか、経緯

  2019年12月~ 
  弱毒性の先祖型であるS型が中国で発生し、日本に入ってくると共に世界に拡散

  2020年1月13日~3月8日
  S型が変異したK型が中国人観光客を介して日本に流入、この時点で集団免疫が成立(人口比率で55%免疫獲得 T細胞免疫)
  台湾やベトナムといった中国の周辺国も日本と似たような状況で死者数が非常に少ない

  ※欧米は2月はじめに中国からの入国を全面規制シャットアウトしているので、K型による集団免疫は獲得できていない

  2020年~
  K型が変異したG型(武漢型が上海で変異したのが欧米型)が襲来。すでに強力なT細胞免疫を獲得していた日本ではT細胞免疫によって武漢型・欧米型共に撃退に成功

  ※欧米はK型が流入しなかったのでT細胞免疫ができていなかった。S型のみでK型の暴露がなかったせいでAED(抗体依存性感染増強)が生じ、G型ウイルスを強化・増強して劇症化・感染拡大を起こしてしまった

  G型が集団免疫獲得に至るには人口比率85%が感染する必要があるが、日本の場合、すでに4月の時点で達成されているものとみられる。

  今後、G型が変異したY型、H型が流行する可能性があるが、獲得したG型の免疫を維持するため、免疫を獲得できている者についてはむしろウイルスに曝され続ける方がよい

<免疫とは、自然免疫と獲得免疫がある。獲得免疫にはT細胞免疫と液性免疫がある>

 ・新型コロナウイルスの免疫で重要なのはT細胞免疫だが、現在行われている検査ではB細胞免疫が評価されているだけ

 ・現在、T細胞免疫の状態を調べる検査キットを開発中

<Q&A>

Q:中国ではS、K、Gと順序良く感染してるにもかかわらず、武漢G型で大爆発したのはなぜか?

A:発生地の武漢にかぎってはS、K、Gが時間差無くほぼ同時に発生。SやKでめんえきを獲得する時間がなかったことによるものと思われる

Q:変異したウイルスは6000種もあるっていうけど?

A:人間の細胞の受容体と結合して取り付くための突起部分の変異が重要で、その突起部分の形がS型、K型、G型の3種あると言う話。Gの後もI型H型と変異は続くが、だいたいH型で終わる。意味のある変異は1年くらいで終わる。

Q:集団免疫戦略(わざとウイルスに曝されて免疫を獲得する)をとったスウェーデンは大失敗だったじゃないか

A:世界のリスクマップをみるとスウェーデンはリスクの高い国なので集団免疫戦略はやるべきではなかった。むしろ、周辺のノルウェーやフィンランドで集団免疫戦略をやるべきだった

Q:コロナウイルスを大量保有した中国人観光客の実測値での検証がないぞ。「正常性バイアス」の議論で経済活動再開最優先主義者の好みに合う説明をしているだけでは?

A:実測値をとることは不可能(実際に当時どれだけウイルスが入ってきてたのかを見るのは不可能)。だからこそデータ見て推計(疫学調査)をおこなっている。批判をするのであれば、データをもってしていただきたい。

Q:こんなに短期間で集団免疫が達成されるはずがない

A:日本についてはK型に曝された期間が長く、集団免疫を獲得するに足る十分な時間があった

Q:抗体検査の陽性率は極めて低い。集団免疫は達成されていないはず

A:新型コロナウイルスの感染を防ぐ主な免疫であるT細胞免疫については検査されておらず、現在調べられているのはB細胞免疫

Q:PCR検査に代わる免疫検査方式を確立すべきじゃないか

A:現在開発中です

Q:BCG説や遺伝などの自然免疫で説明できるのではないか?

A:BCGについてはBCGをうっていても死者が多い国もあれば、BCGをうたなくても死者が少ない国もあるので、BCG説についてはどうか分からん。

Q:陽性でも暴露なら、自身が重症化しない、他者に感染させないのか

A:
感染者数が増えていると言うけれど、正確にはPCR陽性者数です。
集団免疫が達成された現在の日本では、すでに感染して免疫ができている所に再びウイルスがやってきているということ。
なので、免疫細胞が再度侵入してきたウイルスをすぐに駆除するので、自分も重症化しないし、他にうつすこともほとんど考えられない

Q:集団免疫が達成されたはずのいまでも高熱のコロナ患者が発生し、今までに感じたことのない症状がでている

A:
新型コロナの検査では新型コロナしか検出できない。肺炎球菌を培養した検査であれば肺炎球菌が検出される。鼻孔の黄色ブドウ球菌を培養した検査では黄色ブドウ球菌が検出される。
新型コロナが検出されても、発熱などの症状は他の菌やウイルスによるものである可能性がある。
新型コロナに似た症状を起こす細菌やウイルスはたくさんある。

Q:数字を見ると、重症者が再び拡大しているのではないか

A:
6月18日に厚生労働省が各都道府県に「コロナウイルスに感染したことがあり、その後死亡した人については、死因を問わず新型コロナで死亡したとして公表せよ」という連絡が通達されている。
この通達があった後から死亡者数が増えている
たとえ、死因が別の病気によるものだとしても、過去にコロナウイルスにさらされたことがある者については全てコロナで死んだということにされている
注意して見てほしいのが、感染者数の推移とPCR検査数の推移は連動しているが、死亡者数の推移はまったく連動していないというところ

Q:安倍総理はどうして上久保教授による分析結果を国民に語らないのか

A:安倍総理も、菅官房長官も加藤厚労大臣もこれらのことは知っている。ただ、政治力の強い専門家会議の意見の方を尊重しているだけ

Q:後からG型に感染した35%の人は免疫がなかった状態での感染なので、欧米並みに死者が出るはずではないか

A:欧米はAEDで重症化してしまった。欧米で起きていることと日本で起きていることでは全く違う


<2020年7月9日の新型コロナ国内感染状況と他の死因との比較>

 ・2018年の日本の死亡者比較

  交通事故 3532人(人口10万人当たり2.94人)
  インフル 3323人(人口10万人当たり2.77人)
  肺炎  94654人(人口10万人当たり78.88人)
  餅の窒息 1300人(人口10万人当たり1.08人)

  コロナ陽性者数1936人(人口10万人当たり1.61人)
  重篤患者数    31人(人口10万人当たり0.03人)
  コロナ死亡者数 981人(人口10万人当たり0.82人)

 ・年間の世界の死者数:約7千万人

  2月~7月で世界では約3千5百万人の死者数、この内、新型コロナによる死者数は60万人

  例年のインフルエンザによる死者数は50万人~100万人

  日本は半年で新型コロナ関連の死者は約1000人

 ・平成30年厚生労働省による死因の統計(1位~5位の原因で年間約90万人が死亡している)

  1位 癌     年間37万3547人
  2位 心疾患   年間20万8210人
  3位 老衰    年間10万9609人
  4位 脳血管疾患 年間10万8165人
  5位 肺炎    年間9万4654人


<上久保靖彦 京都大学大学院教授による提言>

 ・暴露しただけなのと感染はわけないといけない。正確にPCR検査陽性者数と表現すべき(ウイルスには曝されていても免疫があるので感染はしていないという人でも陽性にはなる)

 ・日本はS型、K型のスパイク変異からしっかりスタートした。スパイクの変異には限りがあるので1年程度で終わる

 ・死者数の43%が院内感染。PCR検査は7割程度の精度で本当は陽性なのに陰性と判定されている人が普通に入院していると感染が広がってしまう

 ・新型コロナ肺炎が原因の死亡者数は約45%で、本当は他の原因で死亡している人が多い。

 ・東京都のコロナ死亡者の平均年齢は79.3歳(男性の平均寿命は79.64歳)他の死因と比較してリスクは低く、普通の生活を営むべし

 ・秋には第二波が来る可能性があるが、欧米のように自粛してしまうとAED(抗体依存性感染増強)でかえって重症者を増やしてしまう可能性がある。集団免疫を達成している日本はむやみな自粛は避けた方がいい

 ・上久保教授によるデータとその解析結果に対し、英語にして世界に発信し、データによる検証を行ってほしい(因みに日本の学会には疫学に関する査読ができる人がいないらしい)

 ・小川栄太郎さんと、日本の免疫学のパイオニアであり権威である順天堂大学の奥村さんが新型コロナについて記者会見をしたところ大手メディアが何故か全く来なかったそうな

 ・順天堂大学の奥村康さん曰く「日本が集団免疫という状態になければ現状を説明できない」と発言

 ・日本の免疫学の権威も上久保教授とおなじ結論に達している

 ・コロナに医療資源を割き過ぎて、診るべき人が診られることなく死亡しているケースが多い、このあたりも考えて

 ・専門家や政治家は利権なのか何なのか、変に合意形成を妨げるのではなく、国民のために真実を言ってほしい

第2波は来たか

2020年08月20日 14時08分30秒 | 社会評論


しつこくしつこくコロナ話題です。

巷では、第2波が来たとか、第2波の最中とか騒がれていますが、本当に第2波は来たのか。
確実に来ました。
おっと申し訳ない。これは疫病・新型コロナ(covid-19)の流行の話ではありませんでした。日本経済の落ち込みの話です。
言うまでもなく第1波は、昨年10月1日の消費増税によるGDPが、年率換算で▲7.1%を記録した時点、そして第2波は、8月17日発表の4月~6月のGDPが年率換算で▲27.8%を記録した時点です。
予想された結果でした。7月~9月はさらに落ち込みが予想されます。コロナ禍が続いているという不安が国民からなくならない限りは。
そして、狂気の殺人集団・財務省に牛耳られた今のだらしない政府では、この経済の落ち込みから回復することはできないでしょう。もちろんどんな野党勢力でも無理です。およそ右から左まで、間違った経済観から抜け出せていないのですから。

すみません。ちゃんと疫病コロナの第2波が来たのかどうかに話を戻しましょう。
使う資料は例によって以下の通り。
●東洋経済ON LINE 新型コロナウイルス 国内感染の状況
https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/?fbclid=IwAR2S54N_qvGv4pvErqYep9pud9caVBH44VsTj9dv0q5nXk8iq4ZnOyHd6xw

●都内の最新感染動向
https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/

初めに、全国版。
PCR検査による陽性者数、検査数、死亡者数、実効再生産数(一人が何人にうつすか)はそれぞれ次のようになっています。
まず当たり前ですが、陽性者数は、検査数によって変わります。検査を増やせば、当然、陽性者の絶対数は増えます。つまり陽性者の絶対数が増えていることだけを発表して、検査数との割合を知らせなければ、その発表はインチキということになります。後述しますが、この間、マスコミは一貫してこのインチキ報道を自ら疑うこともせずに垂れ流し、国民を終わることなき不安に陥れてきました。

そこでインチキ報道から逃れるために、第1波の時のピーク時、8月のピーク時、最新データ、における陽性者数/検査数をそれぞれ見てみましょう。
A(ピーク時4/10)陽性者数    708
B(ピーク時4/10)PCR検査数  5,389
A /B=13.1%
C(8月ピーク時8/7)陽性者数  1,595
D(8月ピーク時8/7)PCR検査数22,698
C/D=7.8%
E(最新データ8/18)陽性者数    904
F(最新データ8/18)PCR検査数 21,130
E/F=4.3%
以上でわかることは、陽性者数/検査数が、第1波の時に比べて激減しているということです。

次に、死亡者数を、ピーク時前後の2週間と直近8月5日~8月18日の2週間で比べてみましょう。
(ピーク時5/8前後の2週間)  278名
(8/5~8/18)          106名
ここ数日、たしかに死亡者がやや増える傾向にありますが、それでも、ピーク時の38%です。
ちなみに、8月に入ってからの熱中症による死者は東京23区だけで103人に上っています。多くは屋内での死者です。
https://www.youtube.com/watch?v=_338Kwc2Zao
コロナを恐れて籠っている老人が冷房をかけずに亡くなってしまったとしたら、シャレにならない話です。おそらく孤独で貧困な境遇の人が多いのでしょう。エアコンがないか、あっても電気代を節約するためにかけなかったのではないでしょうか。熱中症死者もまた、社会問題、政治問題である可能性が大きい。

実効再生産数は、4月3日がピークで、2.27、8月16日時点では、0.86と激減しています。あっという間に感染が広がるこの疫病の性質からして、感染はほぼいきわたったと考えられますから、想定外の変異が起こらない限り、今後もゆるやかに下がり続けるでしょう。
また、年代別死亡者数の割合は、8月12日時点で80代以上が55%70代以上が82%を占めます。80代以上が過半数ということは、ほぼ平均寿命(84歳)と変わらない年齢で亡くなっているわけですから、他の病気による死者と特段の相違がないことを意味します。

では次に東京版。
東京では、陽性者数/検査人数は、ピーク時が4月17日で、206名/329名で、62.6%、8月の陽性者数のピークが8月1日で、472名ですが、検査人数が3539名ですから、13.3%という少なさです。
死亡者数は、ピーク時が5月2日、その前後9日間(4/24~5/11)で102名、8月に入ってから18日までの18日間で9名です。10分の1以下ですね。
連日記者会見を行って今日は「感染者」が200名だの300名だのと、ナントカの一つ覚えのように危機を煽ってきたKY知事は、自分のおひざ元で発表されているこういうたしかな数字情報を1度でも確認したことがあるのか。いや、KY知事はまさにKY(空気を読む)にかけては天才的なお方です。ですから、そんな数字の検証などは無視して、「大事なのは雰囲気づくりよ」と言わんばかりに、「感染者数」だけを発表して、都民や国民をあおり続けているわけなのでしょう。

また実効再生産数は、ピーク時が3.62、最新情報8月16日時点で0.87です。陽性率の東京都データでは、ピーク時が4月11日で31.7%、まあこれは検査人数が極端に少ない頃のものなので、あまり一般化できません。緊急事態宣言解除後は1%代から2%代で推移し、6月下旬から7月にかけてやや上昇しましたが、その後8月13日までずっと6%台、最近では5%台にまで下がっています。陽性率が先に示した陽性者数/検査人数に比べて低いのは、あるピークの日だけでなく、7日間平均値を採っているからでしょう。そして、こちらの方が実態に近いと言えます。
全国版では、検査人数の累計が8月18日時点で1,097,033名、陽性者数の累計が57,366名と出ていますから、陽性率5.2%となり、この間の東京の陽性率とほぼ見合っていると言えるでしょう。

以上、統計的に推定できることをできるだけ正確に記載してきました。これだけでも、コロナの第2波が来ているという俗説は、すこぶる疑わしいことがお分かりいただけると思います。
日本人にとって、コロナはもともと大騒ぎするような話ではなかったのです。

ところで、これまで根拠としてきた統計的前提を覆すような印象を持たれるかもしれませんが、じつはPCR検査というのは、その結果にあまり信用が置けません。理由はいろいろあります。
一つは、この検査の陽性反応はウイルスが体内で曝露したことだけを示すもので、疫病に「感染」したことを示すものではありません。だから陽性反応者の中にあれほど無症状の人が多いのです。そこで、陽性反応が何名出たからと言って、それを「感染者」とするのは間違いです。マスコミは「感染者何名、感染者何名」と騒ぎ立ててきましたが、正しくは「陽性者」と呼ぶべきです。マスコミはそのへんの配慮がまったく足りず、もちろんKY氏もその配慮不足を存分に悪用してきました。
実は筆者自身もメルマガや自身のブログでこの二つを混同して使ったことがあるので、これを機会に訂正してお詫びいたします。
もう一つは、PCR検査は、何も新型コロナウイルスにだけ反応を示すのではなく、旧型コロナによるふつうの風邪、A型、B型インフルエンザ、アデノウイルス、クラミジア、マイコプラズマなどにも反応を示すそうです。そうだとすると、陽性者の中には、新型コロナに反応したのではない人もたくさん含まれる可能性があります。きわめてあり得る想定ですね。ますます陽性者=感染者と決めつけるマスコミは、大罪を犯していることになります。
さらに、PCR検査の精度の問題ですが、これはよく知られているように、100%精確とは言えません。ある時陽性だった人が、次の検査で陰性になったり、逆もあります。これは検査キットや検査方法の精度、その時々のウイルスと体細胞との関わりの仕方、などによるものでしょう。
何ごとであれ、医療技術や科学技術を盲信するのは避けたいものです。

さらに言えば、死因確定にも曖昧さが残ります。死因は医師の診断書によるわけですが、コロナ死亡者とされている人たちは、高齢で基礎疾患の持ち主が多いため、それが悪化して死んだ可能性もあります。志村けんさんの場合などは、もともと仕事や野放図な遊興のために相当体が弱っていたので、必ずしも死因をコロナと特定できない可能性が残ります。これは死因が普通の肺炎とされている場合でも言えることです。
また、厚労省が、コロナ陽性者が亡くなった場合には、死因をコロナとせよという通達を出したという情報もあります。これが事実とすれば、厚労省は流行の事態を重く見過ぎたために、結果的に不安を誘発する情報操作を行ったことになります。あるいは、もし意図的にそういうことをしたのだとすれば、許し難い欺瞞です。
もっと広げて言えば、死因の特定に限らず、検査で陽性とされた人が発熱しているからといって、それがコロナによるものとは断定できないわけです。

次に、マスクの問題ですが、日本人のほとんど全員がたちまちマスクを着用するようになった光景は、まことに不気味なものがあります。マスクは厚労省自身も言っているように、感染者が咳やくしゃみなどによる飛沫を飛ばさないためには有効ですが、健康者がマスクをしても予防効果はありません。
この暑いさなかに、夏休みを早く終わらせて学校に通うようになった子どもたちがマスクをしているのを見ると、何とも無意味でかわいそうに思えてなりません。統計によれば19歳以下で陽性を示したのは、検査人数全体の6%未満に過ぎませんし、軽症者も重症者も死者ももちろんゼロです。未成年の陽性者は、新型コロナによるものではない可能性が大です。
このマスクについては、漫画家の小林よしのり氏が面白い指摘をしています。
https://www.youtube.com/watch?v=lizHEl0ZKQs
コロナウイルスの大きさは、0.1㎛しかないのに、家庭用マスクの網目は10㎛から100㎛なので、大量に網目を通り抜けてしまうというのです。これもマスクすることの無意味を表しています。
また、スウェーデン在住の医師・宮川絢子氏は、スウェーデンでは医師さえマスクをしていないのに、はるかに死者の少ない日本ではなんでマスクをするのか、窮屈でかわいそうだと述べています。
https://www.youtube.com/watch?v=2VAQGJCvKVo&pp=wgIECgIIAQ%3D%3D&feature=push-fr&attr_tag=KyEH2RjgJHsEZMQr%3A6&fbclid=IwAR2DhudaVYn4KSpZtEOSUPLNOD1CB1EookBFHhY6ISwKV66dRXzavHU8u9Q

猫も杓子もマスクをしてソーシャル・ディスタンスとやらを取る、この日本人の強迫神経症的な反応を筆者は少し前の拙稿で全体主義と呼びました。
https://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/0dc6465388521731c8286a8d4ad8eb1f
特にコンサートやスポーツ大会などのイベントで、相次ぐ中止をしたり、観客を半分しか入れないといった措置は、経済の毀損はもとより、文化破壊にもつながるので、ちょっと許しがたいところがあります。ソーシャル・ディスタンスをとるとか、三密を避けるなどをしても、それ自体は何の意味もありません。なぜなら、新型コロナの感染は、飛沫による感染なので、お互い黙っていれば距離を詰めたところでうつるはずがないからです。レストランで複数で食事をしている人を見ていると、ふだんマスクをしていても外さざるを得ませんから、食べながら近距離でおしゃべりをしまくっています。あれあれ、ヤバいんじゃないの? だったら道を黙って歩いている時に何のためにマスクをしているのかな。

この全体主義的空気、どうも嫌だと思っていたら、案の定、自粛警察、マスク警察、東京から実家に帰った人に村八分的な貼り紙をするなどの、最もしてはならない賤しい傾向が出てきました。戦中に、少しでも戦争反対の意思をほのめかすと、一部の国民が自ら進んで「非国民」呼ばわりして袋叩きにしたのと同じです。人間の品性なんて状況次第でいくらでも下劣になる。昔から変わらないものです。

それにつけても驚いたのが、次のようなNHK意識調査の結果です。この調査は、8月8日から3日間、電話で行われ2163人の回答を得たものです。
https://note.com/shinsakuitou4708/n/n1794f24e2c97
新型コロナウイルスへの感染が新たに確認された人が、全国で1000人を超える日が相次いでいます。国が再び緊急事態宣言を出すべきだと思うかどうか聞いたところ、「出すべきだ」が57%、「出す必要はない」が28%でした。
「感染者1000人を超える日が相次いでいる」という前提からして、ひどい印象操作を行っています。これが間違いと情報不足に満ちていることは、これまでの記述で明らかでしょう。NHK自身が事態をまったく誤解しているわけですが、それにそっくり誘導されている回答者もまた、どうしようもありません。何と6割近くが緊急事態宣言の復活に同意しているのです。あれほど経済的ダメージをもたらした自粛要請が復活したら、日本経済は終わりだということに気づこうともしない。大衆とはそんなものさと切り捨てるのは簡単ですが、自粛によってひどいダメージを受けたのが外食産業や観光業だけでなくあらゆる関連産業に及んでいることをつい先ごろ痛感させられたはずなのに、それと結びつけることすら思い及ばない思考停止状態と健忘症。
先ほどの宮川医師も、「いのち、いのちというけれど、経済もいのちです」と静かに述べていました。その通りです。こうして抽象的な「いのち絶対主義」イデオロギーは、自分たちの暮らしをどうしていくかという、誰にとっても切実な具体性のある課題について考えることも蝕んでしまうのです。恐ろしいことです。

いま世界では、欧米先進国が終息状態にあり、南米や南アフリカ、オーストラリアなど南半球の国々(冬であることが関係しているでしょう)やインド、サウジアラビアなど発展途上国で死者が増えつつあります。
https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/death.html
世界的にはこの先、どうなるかわからない部分を残していますが、日本では、奇跡と言われるほど死者が少ないですね。これはなぜなのかという問いには諸説がありますが、最近、日本はすでに集団免疫が獲得できているという京都大学大学院特別教授・上久保靖彦氏の説が注目を集めています。
https://www.youtube.com/watch?v=ajWWHBem-r0&fbclid=IwAR2dOCBCY1Wxh_0FL24zS4W1aBaY8birz8cYao-NGR6eHfzCoTDWXmpLh7E
これについて、筆者は当否を判断する資格がありませんが、なかなか説得力があります。
いずれにしても、少なくとも日本では、コロナ禍は、大したことのない流行病を過大視して、そのために国民ぐるみ自殺行為に走った愚劣な人災です。おそらく1年後か2年後には、私たち日本人は、きちんとした総括もなされないままに、「あれはいったい何だったのか」という記憶喪失現象の中に置かれるでしょう。ますます没落してゆく経済的・文化的環境に抗うこともできずに。

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●長編小説の連載が完成しました。
社会批判小説ですがロマンスもありますよ。
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