小浜逸郎・ことばの闘い

評論家をやっています。ジャンルは、思想・哲学・文学などが主ですが、時に応じて政治・社会・教育・音楽などを論じます。

米大統領選は民主主義の死をもたらした?

2021年01月08日 01時01分03秒 | 政治

大統領選ジョージア州の不正証拠



これを書いているのは、2021年1月7日深夜12時です。
この間、米日主流メディアのひどいフェイクと隠蔽によって、次期米大統領はとっくにバイデンに決まったものと信じて、それをさしたる危機感もなく受け入れてきた人がたくさんいるようですが、事態はまったく違います。

2020年11月3日の大統領選挙から今日にいたるまで、列挙するのも億劫なほどのおびただしい選挙詐欺の証拠と、証言者や連邦政府高官・各州の選挙関係者に対する脅迫の事実が明らかになってきました。
これらの経緯については、信頼のおける情報筋からの情報を頻繁にフェイスブックにアップしてきましたので、ご関心のある方は、それを追尾してください。
https://www.facebook.com/i.kohama

2021年1月5日には、全世界が注目する中で、ジョージア州で2名を選出する上院議員選挙が行なわれました。民主党陣営は、これだけ不正を行なってきたにもかかわらず、反省の色すら見せず、開き直った形で、堂々と同じパターンで選挙詐欺を実行し、議席を独占しました。驚くべき厚顔無恥です。

そして帰趨を決する決定的な日と思われた6日の連邦両院合同会議では、ペンス上院議長並びに副大統領は、自分には選挙結果を決定する権限はないとしてトランプ支持者の期待に応えることはせず、複数の共和党上下両院議員から提出された異議申し立てによる両院各々の議論にゆだねることにしました。下院では民主党が優勢なため、これがトランプ有利に通るとは思えず、せいぜい最大限の時間稼ぎが行なわれる程度だろうと踏んでいましたが、その期待も空しく、連邦議会ではあっさりボケ・バイデンに決めてしまったようです。
またテッド・クルーズ上院議員が提出した、激戦州について調査委員会を立ち上げよとの公正を重んじた提案は、残念ながら93対6の圧倒的大差で否決されました。

さらにひどいことに、ツイッター社は、トランプ大統領の発信権を平気で剥奪しました。世界最大の国家アメリカ合衆国を代表する最高位にある人の言論の自由を封殺するとは、信じられない暴挙です。

しかしトランプ大統領の闘いはまだ終わっていません。いくつかの手が残されています。

前々回のメルマガで、現在は世界戦争のさなかにあるのだと強調しました。
武力行使だけが戦争なのではなく、情報戦こそが現代の戦争の最もヴィヴィッドな形なのだとも。
https://38news.jp/america/17189
この様相は、「自由」を国是に掲げる最先進国・アメリカが中共全体主義によって中枢まで侵蝕され、民主主義体制が崩壊の危機に瀕している形として言い括ることができます。
また、グローバリズムとナショナリズムの対立の極限の事態と形容することもできるでしょう。

ひとこと断っておきたいのですが、民主主義が正常に機能するためには、国家体制、国家秩序がしっかりしていること、つまりナショナリズム感覚が民衆の間に根付いていることが不可欠です。なぜなら、公共体としてのまとまり意識が崩壊しているところで、そこに属する人々の生をよりよくしていくために何が優先順位を占めるかという議論を対等な立場で交わすことは不可能だからです。ちなみに「人権」を保障するのも民主主義国家だということも忘れてはなりません。
グローバリズムは、この国民国家としてのまとまりを根底から破壊します。グローバリストにとっては、自分の属する国籍やその国固有の文化、公共精神などはどうでもよく、自分たちが最大利益を上げさえすればいいからです。彼らにとっては、戦争さえ利益追求の手段にすぎません。
こうして貧富の格差が進み、共同体的な紐帯が破壊されたとき、バラバラに分断された個人を上から掌握する体制は何でしょうか。言うまでもなく、各個人に政治参加も言論の自由も宗教の自由も認めない強大な独裁権力による全体主義体制です。現在の中国がまさにその典型です。

アメリカは、かつて、もちろん反共精神のしみついた国でした。戦前・戦中・冷戦時代を通してイデオロギーとしての「共産主義」には大いに警戒を示してきました。しかし冷戦崩壊後は、その開かれた国柄と覇権国家としての自信がかえって仇となって今日の中共侵略を招き寄せたとも言えます。この国の対中戦略は、経済的な自由を尊重するあまり、中国に対して甘い顔をし過ぎたのです。
つまり、独裁体制は発展途上国としての必然からきているので、経済的に豊かになりさえすれば、徐々に民主主義や自由の精神を理解するだろうというリクツと期待に自ら騙されたのです。ですから今回のような事態はアメリカ自身が招いた面が大きいのです。

日本も、すでに中共のサイレント・インベージョンに政官財、教育界、メディア界、国土など、すべての社会基盤をなす領域において蝕まれています。
それほどでもない、とあなたは感じられるでしょうか。
しかし私は、エラそうに書いていますが、今度の米大統領選問題がなければ、不覚にして、アメリカがこれほど中共勢力に侵略されていることに気づきませんでした。おそらく大方のアメリカ人も日本人も、私の認識と大して違っていなかったのではないかと思います。その意味で、今度のことは、コロナ流行という壮大なインチキ*と合わせて、とてもいい教訓になりました。
*コロナ流行が壮大なインチキであることについては、以下の拙稿をご覧ください。
https://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/effcc9c591be4f8689a563b585ae5639
https://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/a9a480d0a5a23d4e3cc49838e3566463
https://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/c3f0af074bf98a10a0e4428d535ec56e


全体主義というと、誰でも思い浮かべるのが、ナチス・ドイツとスターリン統治下のソビエト連邦でしょう。これらはユダヤ人大虐殺や反対者の大量粛清によってあまりにも有名です。もちろんこれに、ウィグル人、チベット人、内モンゴル人、法輪功信者や香港市民に対してひどい弾圧を行なっている現在進行形の中共政府を加えるべきです。
しかし、全体主義体制の恐ろしさは、こうした外からの目に見える、そして後になってわかる残虐な面にだけ存在するのではありません。その内部にいる者にとっては、権力中枢が何を企み、どんな方向に人民を連れていこうとしているかが見えないような仕組みになっている、そのことが最も恐ろしいのです。なぜなら、人民の多くがその進行中の全体主義化のプロセスに対して自覚的であれば、全体主義体制そのものが成立しないからです。
自分たちは、社会体制に対する懐疑を抱きさえしなければ、特段の不運に遭うこともなく、なんとか日々を過ごすことができる。複雑な社会構成の中で、目玉をカッと大きくして、全体を見ようとすることは難しく、またそんなにいつも目玉を大きくしている暇などないからです。しかし気付いてみると、いつの間にか生活は貧困化し、それに対する不満を自由に口に出すことができなくなっており、与えられる情報を否応なく信じ込まされ、かつて共有されていた記憶はおぼろげとなり、日常の中にあったはずの文化の香りは消え失せており、お互いがお互いを探り合うような監視社会が実現している。こうした土壌が培養されてこそ、私たちが知っているような残虐な歴史的事実も実現可能となるのです。

陳腐かもしれませんが、この仕組みを描いているのが、ジョージ・オーウェルの『一九八四年』です。
この作品の中では、世界はオセアニア、ユーラシア、イースタシアの三国に分割されており、それぞれの国は常に国境付近で戦争を繰り返していることになっています。オセアニアはビッグブラザーという絶対君主の支配下にあり、政体は真理省、平和省、愛情省、潤沢省(その実態は名称と真逆)などに分かれ、人々は少数の党中枢、知的仕事に就く党外郭、圧倒的多数のプロールに分けられます。プロールは体制に対する疑問など一切もたず、あるがままの日々を過ごしています。家の内外の至る所にビッグブラザーを大写しにするテレスクリーンが据えられており、情報もここからしか与えられません。ほぼ全員がビッグブラザーを崇拝しています。恋愛は許されておらず、結婚は子孫を存続させるために党が決めます。子どもは親を絶えず監視して小さな違法でも見つければ密告できます。
真理省に勤める党外郭のウィンストンは記録の改竄を仕事にしており、この仕事によって、人々の間からかつての記憶の共有がしだいに消えていきます。かつてが豊かだったのかどうか、ほとんどの人がもう覚えていません。戦争が絶えず行われていることを人々に知らせるために、時々市街地にロケット弾がぶち込まれたり、捕虜を載せたトラックが市街地を通り抜けます。
何よりも真理省の仕事で大きなものは、言葉を「オールドスピーク」から、語彙をより貧困化した「ニュースピーク」へと編纂する事業です。これによって言葉は豊かなニュアンスや比喩的転用の可能性をなくし、直截な一義的表現に限定されていきます。
ウィンストンは、こんな社会はおかしいという口に出せない疑いを持っていて、これを転覆させようとする秘密組織の噂を気にかけていますが、思慮深そうな雰囲気を持ったオブライエンという党中枢に属する男がもしかしたらその秘密組織の一員であるかもしれないと感じて、ひそかに敬服の念を抱いています。
これ以上書くと未読の人にとってネタバレになってしまうので、ここらでやめますが、一つだけ言っておくと、オブライエンはウィンストンが考えていたような男ではありませんでした。
この作品には印象的な場面がいくつもありますが、なかでもオブライエンがウィンストンに「権力に執着する理由は何だと思う?」と質問し、ウィンストンが「支配者は、民衆が弱い存在で自由に耐えられないから彼らを瞞着してその代わりに幸福を与えてやろうと考えている」と答えようとすると、オブライエンはそれをにべもなく否定し、「党が権力を求めるのはひたすら権力のために他ならない。他人のことなど知ったことではない」と回答する場面が強く印象に残ります。
これはその通りというほかありません。

ところでいまの日本人はお人好し(いい意味でも)で、そんな権力欲に取りつかれた組織は存在しないようです(個人ならときどき見かけますが)。しかし中国人や欧米人ならありそうですね。
日本人はすでに外側からやってきたこうした全体主義思想の中に取り込まれてしまっていて、上から下までほぼ全員が「プロール」つまり精神的な奴隷になっているのではありませんか?
というのも、現状を見る限り、救いようのないアホばかりが政府やマスメディアの中枢に集まって、信じられない国民いじめの政治とその正当化に精を出しているからです。中小企業潰し、補償なしのコロナ緊急事態宣言、営業自粛「要請」を「命令」に切り替えて従わない業者に50万円の科料、持続化給付金の締め切り延長中止!
私たちは、せめてウィンストンのような運命に陥らないように、ダークエイジがすでにここに来ている状況に対して覚醒し続けましょう。闘いはこれからです。

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進行中の世界戦争に目覚めよ!

2020年12月10日 13時50分20秒 | 政治

2019年6月28日大阪サミット会場にて

これを書いているのは2020年12月9日です。
アメリカ大統領選から目が離せなくなってから35日経ちました。
この間、信頼のおける情報を拾ってフェイスブックにアップしてきましたが、数えてみたら70に及んでいました。つまり平均1日に2つの情報をアップしていたことになります。
https://www.facebook.com/i.kohama
論評を加えたものも少しはありますが、ほとんどそのまま載せています。これは、不謹慎かもしれませんが、いまアメリカ(だけでなく米中を中心軸とした世界中)で起きていることが、現代の世界大戦を描いた映画のように興奮させ、下手な論評など寄せ付けないような迫力を示しているからです。

心ある人なら誰もが感じているでしょうが、現代の戦争は、武器を使わずに十分成り立つのだという事実を、今回の事態ほど明確に教えてくれたことはこれまでありませんでした。重ねて言いますが、この事態は「米中戦争に発展しかねない状態」なのではなく、いままさに米中戦争の真っ最中なのです。
この戦争の発端は、四年前にトランプ氏がアメリカ大統領に当選した時です。以前から世界制覇の野望実現をもくろんでいた中共が、アメリカの政官財界に深く侵入し、民主共和両党を問わずエスタブリッシュメントと強い利権の結びつきを作りだしていた時、大方の予想に反してトランプ氏が当選してしまいました。
これがなければ、中共の覇権は実現に向けて大きく進展していたことでしょう。同時に中共とディープステートとの結託の構造もますます強固なものとなっていたでしょう。アメリカ国民の意思を侮った民主党及びこれと癒着した大手メディアの油断というべきです。
民主党及び主流メディアは、この失敗に激しいルサンチマンと復讐心を燃やし、トランプ大統領就任当初からじっくりと次期大統領選でトランプ氏を追い落とす計画を練っていました。
しかしトランプ氏がそれを知らなかったわけではありません。彼は就任早々からロシアゲートというひどいでっち上げの疑惑を受けました。しかし2019年にはこれを克服します。
しかもこのでっちあげと闘っている最中の2018年10月に、米選挙への干渉が明らかになった場合には外国勢力に制裁を科すという大統領令に署名しています。これは、あたかも今回の大統領選における民主党の露骨な不正に中共が関与していた事実を予言していたかのようです。
また選挙戦が熱を帯びて来る前から、郵便投票は不正の温床だということを再三訴えていました。
さらにコロナ対策費として、4月時点で3兆ドル(300兆円)の財政出動を行ない、加えて10月には追加支援として民主党の要求する2.2兆ドルを超える額を計上すると発表しています。すでにアメリカは、4月段階での措置によってV字回復を成し遂げているので、民主党からコロナ対策の失敗などを難詰されるいわれはないのです。
ちなみにアメリカはコロナによる死者数の多さで騒がれていますが、人口比で見れば、ヨーロッパ諸国に比べて特に多いわけではありません。
https://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/effcc9c591be4f8689a563b585ae5639

さてさて今回の見るも無残な不正の発覚です。ドミニオン社の集計機をめぐる大量の改竄、深夜の投票用紙持ち込み、投票日を過ぎて到着した郵便投票の日付の前倒し、消印のない封筒、監視員の締め出し、州に存在しないはずの「有権者」、理論的に考えられない高い投票率等々、全米で数え切れないほどの証拠が挙がっています。中国広東省にある印刷所では一年前から大量の偽投票用紙が印刷されていました。

これらの事態の発覚に対して、主流メディアはもちろん隠蔽と虚偽報道に終始しています。宣誓供述書に署名して証言した人たちの多くは脅迫を受けています。州知事や州務長官、一部共和党議員までもがどっちつかずの態度を取り、最も法を遵守すべき責任者であるはずのバー司法長官でさえ、あやふやな態度を取り続けています。アメリカの法秩序は崩壊寸前なのです。実際、ここでトランプ陣営が頑張らなければ、アメリカの、そして世界の民主主義は死滅へ向かうでしょう。

中共では、最近、習近平のブレーンの一人が、ウォール街には親しい友人がたくさんいるから、2016年までは、どんな難しい問題も短期間で解決できたが、トランプが大統領になってからはコントロールが難しくなったと公言しました。
習近平は常務委員会を続けて開きました。そこでは武力戦争準備について再三議論したと推定されています。習近平にとっては、武力戦争になった方が望ましいと考えられると、張陽チャンネルの張陽氏は語っています。中共独裁政治に対する人民の不満を外に発散できるからです。
11月20日にはCNNのCEOザカリアとバイデンの選挙顧問サマーズが、中共幹部の会に呼ばれ、習近平はこの会にわざわざメッセージを送ったそうです。

CNNのひどい身勝手ぶりについて触れておきましょう。
2017年に、ある専門家の主宰で、さまざまなIT機器に対してハッカーたちにハッキングさせる実験会が開かれました。その中にはドミニオン社の集票機械も入っていて、ハッカーたちはこれをたやすくハッキングすることができました。CNNはこの実験会に協力し、その時の動画が報道されています。
これは、トランプ大統領のロシアゲート疑惑の証拠を見つけるためのものです。ところが、2020年の大統領選では、これだけドミニオン社の集票機械による不正が発覚し、CIAによるフランクフルトからの侵入が明らかとなっているにもかかわらず、CNNはだんまりを決め込んでいます。反トランプのためなら何でもするが、バイデンに不利になることには一切触れようとしません。ジャーナリズムの死です。

ロシアゲートで冤罪を被りトランプ大統領によって恩赦されたフリン中将、リンウッド弁護士、WTPC(ウイ・ザ・ピープル・コンヴェンション)などは、大統領に戒厳令下の再選挙を強く求めています。しかしこれは大半の国民がメディアの隠蔽とフェイクニュースによって真実を知らされていないため、実現は難しいだろうと言われています。私も作戦としてうまい方法とは思えません。

巷では一部の人たちが、1月か2月に米中戦争(武力戦争)が勃発するだろうとうわさしていますが、さまざまな情報を総合して考えると、トランプ大統領が(彼が再選されると仮定して)自ら武力行使に踏み切ることはまずないでしょう。
というのは、トランプ大統領はもともと戦争が嫌いです。北朝鮮問題の時にも、ボルトン補佐官(当時)の強い武力行使要請を退けて金正恩との会談にこぎつけましたし、武力行使に至らずに中共政府を内部から瓦解させる手をいくつも持っていると考えられるからです。先日も中共の副委員14人に制裁を科したばかりですし、常務委員にはまだ手をつけていません。経済制裁もこれからもっと厳しく科すことはいくらでもできるでしょう。中共が先に暴発すれば話は別ですが。
繰り返しますが、いまは再選実現を通しての「戦争」の真っ最中であり、そこに彼は全力を集中しているのです。再選の暁には、もちろん国内の左翼、ディープステート、ジョージ・ソロスら、戦争好きの金融投資家たちへの仮借ない闘いを続行するでしょうし、中共に対しても制裁の手を緩めないでしょう。

ところで本稿の目的は、日本人の例のごとくのお花畑思考に覚醒を促すところにありました。
日本人の多くが今回の選挙不正の問題を過小視していて、単なるアメリカの国内問題としてしか考えていず、もしバイデンが大統領になったら、日本が中共の餌食になる道が急速に開けるという認識を持っていないようです。
しかし何度も繰り返しますが、これは進行中の世界戦争なのです。
そのことを認識できない象徴的な例が、大手メディアの寝ぼけた報道姿勢であり、菅政権の中共に対する政治姿勢です。
何に遠慮しているのか、この間NHKはじめ、朝日から産経まで、バイデン当選を既成事実とするだけで、アメリカでいま何が起きているのかについて全く報道してきませんでした。アメリカの大手メディアも腐敗しきっているなら、日本のマスコミも形容のしようがないほどひどい状況です。
また菅政権の茂木外相は、王毅外相の横暴発言に反論することもできず、共産党の志位委員長にまで糾弾される始末です。RCEPにもロクな議論もなしに尻尾を振って参加してしまいました。
二階幹事長の息のかかったこの媚中姿勢を今後も続けるなら、万一トランプ氏が敗北すれば、中華帝国主義の圏内に取り込まれることは必定です。
またトランプ氏が勝利を収めても、対中経済と対米同盟の股裂き状態を自ら何とかするのでなくては、やがては大切なアメリカとの同盟関係を喪失し、かつての日独同盟の時のように国際的な孤立状態に追い込まれかねません。
今の日本政府は、国際関係を連続的視野の下に見る頭脳を欠いており、今後日本としてどのような自立性を獲得するのかといったヴィジョンがまるでないのです。こういう国が滅んでも、誰にも責任を転嫁できないでしょう。


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米大統領選に関するあるアメリカ通の方の分析と意見

2020年11月17日 23時10分45秒 | 政治

米大統領選の民主党の不正に抗議してホワイトハウス前に集結した大群衆

11月11日にアップした拙ブログ
https://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/e604425bd611f812d94698ea5ac75fb4
を何人かの方にお送りしたところ、長年英語圏で暮らしてきてアメリカ事情に詳しいある方から、長いお返事をいただきました。優れた分析と主張にたいへん感銘を受けましたので、ご本人の許諾を得て、ここに転載させていただきます。
なお、ブログ管理者である小浜は、この方の本文には一切手を加えておりません。


**********************************

小浜さま

メールありがとうございます。

小浜さんのブログは複雑な問題を綺麗に整理して分かりやすく書かれているので、いつも大変勉強になります。

小浜さんのおっしゃるように中共はトランプ大統領を勝たせて国内混乱を起こさせようと策略しているのかもしれませんね。私には、それはサブシナリオで、トランプ落選がメインシナリオだと思います。彼らはトランプ氏が勝っても負けても中共に有利になるスキームを組んだと見ています。ジョージソロスのように、相場が上がっても下がっても利益が出る仕組みです。これぞ投機家の究極の技です。敵ながらあっぱれとはこのことです。

最近は米大統領選挙の分析に関し日々新しい材料が出てきて、興奮してしまう毎日です。アメリカ発の情報を見ようとすると日本の夜から盛んに発信があるので、ここ数日寝るのも朝方になっています。最近は小浜さんがブログで参考資料として名前を挙げられた方々のように英語の情報をきちんとフォローしてわかりやすく説明しているコメンテーターの数も多くなってきていますし、そのフォロワーも増えているようですね。情報鎖国の日本人もいよいよ目覚めてきています。私は英語でダイレクトに情報を取っていますが、英語が不得意でもブラウザーの設定でネットの海外記事を自動的に翻訳することは既に可能ですし、YouTubeで字幕の出せるものは、「文字起こしを開く」をクリックして出てきた字幕をグーグル翻訳にコピペしてすれば結構良い翻訳が出てきます。もうすぐ外国語音声が自動的に日本語になる機能がYouTubeについて日本人の海外情報リテラシーは格段に上がるでしょう。

最近はFOXニュースもリベラルの内部浸透工作(?)があるのか、変にリベラルの情報が混ざってきてるなと思っていたら、米国のネットでもこの傾向は既に話題になっていて、それでFOXは視聴率が下がったそうです。アメリカ国民には分かってる人が多いなと安心しました。代わりに視聴率を伸ばしているのはNewsMax TVで、視聴してみるとなるほどと思います。他にもOne America NewsもChristina Bobbという元気溌剌とした女性キャスターが忌憚なく選挙の不正を訴えています。
https://youtu.be/bZaXmdMDG7E
彼女は以前、海兵隊所属で欧州やアフリカ、アフガニスタン等に駐留していた弁護士で、国土安全保障省でも要職についていた人です。ネット検索してみると軍の制服の凛々しい写真が出てきます。ほんとアメリカという国は人材が多彩、人々の経歴も多彩ですね。さらに突っ込んで検索していくと元ハーバード大学教授、NYタイムズベストセラーを含み多数の著作を出している有名弁護士のAlan Dershowitzがトランプ訴訟の法的分析をYouTubeでほぼ毎日やってますが、登録者が3,000人弱と異常に少なくやっぱり本当の法律の話は専門でない人には敬遠されるのかなと思いました。ちなみに彼の番組もパソコンのYouTubeで字幕をグーグル翻訳にコピペすれば内容は分かります。彼の分析によれば、現在の裁判の法的根拠では一部勝訴はあっても全体をひっくり返すほどには至らないだろうとのことです。
https://youtu.be/31YJfSVAFNU
その他にも頭の切れるコメンテーターや専門家は何人もいますし、保守派のまともな新聞も多数あって、自分はほんの少しの情報しか見ていないなと感じています。保守派の中にも民主党の不正選挙の証拠として挙げられている事象や分析も、不正確なものがあると丁寧に論証している人もいますから、真実は何ともわからないものですね。おそらく個々の事象の究極の真偽などは分かるはずがないのでしょう。

でも、こんな時は大局をしっかり把握するのが私のような一般人ができる最良の方法だなと思います。天高い所から見れば民主党の不正があったのは疑いの余地がありません。日本では絶対に認められない郵便投票がコロナを口実に大々的に導入され、トランプ大統領が郵便投票を不正の温床だと何か月も前から言っていたのに、メディアは当時報道せず、SNSはそういう議論を始めから検閲して言論弾圧したのは隠しようのない事実です。どうして議論さえさせなかったのでしょうか。トランプ氏が言い出した時、私はメディアの態度が何かおかしいな、と思ったのですが、今その理由がはっきりしました。さらに、投票日後、不正選挙があったという様々な指摘も容赦なく封じこまれています。普段ならスキャンダルに飛びつくマスコミが口を揃えて証拠がないと言って受け付けていません。疑惑が浮上したら真っ先に飛びついて調べるのがジャーナリストの仕事ではないでしょうか。こういう状況を総合的に見て分かるのは、要するに不都合な事実や議論を隠そうとすること自体が、それが真実である動かぬ証拠ですよね。大統領であるトランプ氏の公式記者会見を途中で大手放送局が打ち切るのですから、もうディープステートもなりふり構わずですね。ホワイトハウスの報道官のケイリーマケナニーが言っていましたが、
https://youtu.be/Cl36uhz9MzQ
アメリカで民主党だけが、投票者の本人確認、市民権や居住地の確認、投票権の有無の確認など、常識で考えれば当たり前の手続きの導入にずっと反対してきてます。「なぜ?」と考えれば、「不正をするため」と答えるしかないでしょう。投票用紙がどぶに捨てられていた画像はフェイクニュースかどうかという細かい議論をする前に普通の人が普通に考えておかしいと思う動かしようのない事実を忘れてはいけないと思います。メディアや民主党の工作も見てれば段々手口が見えてきます。バイデンが先に慣習に反して勝利宣言ぽい会見をやってその後にトランプ大統領がそれを否定する形で勝利宣言ぽい会見をしたのに、メディアはトランプ氏があたかも先に慣習を破ったと報道している。私も最初はそれに騙されていました。バイデンはPresident Electでないのにそう振る舞って既成事実化しようとしている。こうしておけば仮にトランプ氏が大統領再選となれば暴動の規模は大きくなりますよね。調査会社やメディアの選挙結果事前予想も同じでバイデン優勢としておけば、不正をやってバイデンが当選しても、「ほら事前予想と同じ結果でしょ」、となる。トランプ氏が再選だったら事前予想と違うと言って暴動がさらに激しくなる。すべてがトランプ落とし、バイデン当選のためにメディアエンジニアリングが巧妙になされているのが今の世の中で怖いものです。アメリカのメディアは数十年前は数えきれないほどあったのに、今では上位5社がほとんどのメディアを傘下においていて、看板は違っていても出どころや方針は同じということですから恐ろしい話です。究極的には大半がディープステートに繋がっているのでしょう。

今回の選挙をフォローしていて再確認したのは、アメリカでは、メディアどころか、司法省やFBIなどの連邦政府機関、州の知事、裁判官、警察も選挙管理委員会も公正さは期待できないということです。民主党の強い州の裁判所では裁判官が民主党に有利な判決を出す、選挙の不正を見た人が通報したのに、「後で担当者が電話する」と言われたまま返事がない。共和党の選挙監視人を不法に締め出しても何も措置が取られない。一般人から専門家までこう指摘している米国人が多数います。これでは話になりません。でもこれはブラックライブズマターの暴動で商店街が焼き払われても警察がこない、容疑者も形式上逮捕されて翌日釈放されるのと同じ原理です。外国に暮らしてみればわかりますが、ダメモトでもゴリ押しする、文句を言われても平然と突き進むという人は日本人が想像する以上にいるのです。違法でも拳銃で撃たれるまでやり続けるという人さえいてもおかしくないということです。一般人の日常生活だけではなく、社会を動かしているあらゆるレベルでこういう行動が見られるのですから、いつでもどこでも戦いですよね。正義が勝つのではなく、勝った方が正義となります。

あともう一つ思うのは、裁判が選挙不正の実際の有無を決めるものではないということです。もちろん法律問題についての決着はつきますが、あたかも裁判で本当のことが分かるという方向に議論が進められているのは一種の世論誘導かもしれません。メディアが用意した問題用紙に解答を記入しているうちに思わず彼らの思う壺にはまってしまうのではないかと思います。裁判で扱える範囲は実際の不正のごく一部だろうと思います。現時点でも選挙の不正を宣誓書に供述して不正を明らかにしようとする人が少なからず現れてきて、これはもちろん証拠として裁判に提出できます。トランプ側の弁護士の元ニューヨーク市長のジュリアーニが言っていましたが、宣誓書に嘘があれば偽証罪で最低5年監獄行きですから信憑性は高いです。証拠がないと言っていたメディアが証拠が少ないと言い始めていますが、そもそも、宣誓書を書けば裁判の際には証人喚問で呼ばれて、仕事を休んで出廷し、相手側辣腕弁護士の徹底的な尋問を受ける覚悟がなければなりません。揚げ足を取られて、あなたの宣誓書は嘘ではないか、と言われるリスクもあります。そもそもそれが相手側弁護士の仕事で、これを何年も何十年もやってきた法的専門家と対峙するのです。名前も公開されますから、銃社会の米国では生命の危険さえあります。そうでなくてもトランプ支持者と罵られ村八分にされたり、不当に解雇されたりする可能性もあります。その被害は本人だけでなく家族親戚にも及びます。よっぽど勇気があって信念のある人しか出てこないのです。100枚の宣誓書が集まったら、実際はその何十倍、何百倍の不正選挙の潜在的証人がいると思います。これはほんの一例で他にも裁判がいかに限定的なものかを示す理由は多々あります。

開票作業や再集計も同じです。投票事務にはボランティアでも参加できる州もあります。ある地区で投票用紙と封筒のサインの照合をしたとかしていないとか議論になっていますが、それ以前に照合というのはどの位の精度でできるのでしょうか。米国外の英語国の話ですが、私は字が下手なので自分の英語のサインは毎回少しずつ違います。それでも銀行で預金を下ろす時に登録してあるサインと違うよと言われたことは10年以上の間に1度しかありません。その時は書き直しても上手くいきませんでしたが、まあOKとなって札束を手にしました。日本ではハンコの丸い枠のごく一部がかすれていても押し直しとなりますが、外国の事務作業というのはこんなもんです。コンピューターで画像認識して照合する場合でもその精度は調整可能です。他にも締め切り後に来た票を分別管理してあるという話などをまともに信じてはいけないと思います。完全に嘘が見破られるまで自信を持って雄弁に自己弁護を平気でする人はたくさんいるのです。考えてみればそうするのが当然ですよね。

郵便投票の不正の方法についても同じで、二重投票や死人の投票など理論的にははっきり検証できる不正もありますが、それすら大量の投票用紙を現場が実際再検証しようという意思と能力があるのかはなはだ疑問だと感じます。それよりも「不正」が証明できない「不正投票」の方が多いと考えています。郵便投票では、投票用紙に記入した時に周りに誰がいるかわかりません。民主党一家で息子が一人だけトランプ支持者だったら、自分の部屋に引きこもって投票用紙を記入できるという保証はありませんよね。夫婦の間でもそう、隣人との間でもそう。民主党への忠誠を確かめるためにお互いに投票用紙を見せ合いましょう、などと尋常でないことを言いだす図々しい人もいるだろうというのは海外生活の長い私には容易に想像がつきます。ましてや、私の目の前でバイデンに入れた票を見せてくれたら10ドルで買う、と言われて投票用紙を渡した人がいてもそれが摘発されて裁判で立証可能な証拠が揃うことはまずありません。英語の読めない移民もたくさんいます。自分が熱心な民主党活動家だったらどんな不正が可能か想像力を働かせて考えてみる必要があります。思いついたことをひるまずやる人が日本人が想像する以上にいるものです。もちろん共和党の人達にもこういう不正をする人たちはいるでしょうが、イデオロギーで動いている政党の人達は他人を管理するのが好きで、組織的に行動するものです。

個人的には法廷闘争より、司法省やFBIをトランプ大統領が動かすことができれば犯罪捜査で結果が出るのではないかと見ています。ただ、これも逆転の可能性はそれほど高くありません。ヒラリークリントンの国務長官時代の不正の証拠があれだけ言われているのにいまだに牢屋に入っておらず、逆に2年の歳月をかけて莫大な費用をかけて何も出てこなかったトランプ大統領のロシア疑惑があれほど大ごとになり、バイデンの息子のパソコンもFBIが1年も預かっていて何もなし。これでは話になりません。CIAも同じです。また、証拠の押収は可能ですが、刑法での大規模な法廷闘争となりますので時間があるかも懸念事項です。

CIAの長官もやっていたポンペオ国務長官が記者会見で、記者に「いつバイデン政権に引き継ぐのか」と聞かれて、「トランプ政権は二期目に入る引継ぎをスムーズに行う」と自信を持って即答して記者会見を終わらせましたが、あながちはったりではなく、彼は何か知っているように見えました。開票活動の組織的な不正摘発、あるいは例のソフトウェアの改竄問題の方が逆転の可能性があると思います。こういう話をすると陰謀論とかいう人がいますが、民主党のアメリカはいわゆるカラー革命などで海外で実績があります。こういう国々では開票ソフトもアメリカ製でそれを悪用して外国政府を転覆させたと言われています(本当にそうだとするとアメリカが世界に汚名を晒すことになるのでその暴露はジレンマ的問題)。要するにアメリカ、あるいは民主党にはそういう専門技能があるのです。そのノウハウを持っている人たちを民主党が使わないはずがないと考えるのが、私の見立てです。これも少し高い所から眺めて歴史上世界のあちこちで起きたことをたどって見て行けば自然とこういう流れになるのが見えてくるのではないでしょうか。水は上から下に流れる、穴があればそこに溜まる、要するに機会があれば利用されないはずがないということです。目的のためなら何でもするというのが共産主義であり、それに侵食された民主党でしょう。民主党にやどったディープステートは、中共のように、見える形の国家権力の行使ではなく、人々をメディアや教育を通して見えないように操ることで同様の全体主義国家を作ろうとしているのですからやっかいだと思います。彼らは今自国アメリカで政権転覆のカラー革命をやろうとしているのではないでしょうか。トランプ側弁護士のSidney Powellが、トランプ大統領が大幅なリードしていたのに複数の接戦州で開票作業が夜中にほぼ同時に中止され朝起きたらバイデンが劇的な逆転をしていた、というのは万人が見た動かしようのない事実で、これを基軸に考えるべきではないでしょうか。開票作業が途中で中止されるのは尋常ではありえないことなのになぜ足並みを揃えて開票中止となったのか誰もまともな説明していないと彼女はAmerican Conservative UniversityのPodcastで言っています。その上で、検証が必要な分析を紐づけて行くべきだと思います。データ分析の専門家などからはバイデンの票の増え方が異常だし、共和党議員に投票した人達が多いのに大統領票だけバイデンが増えている、開票集計機がインターネットに繋がっているものがある、事前承認を得ずにソフトをアップデートされた集計機がある、集計機にアクセスできる暗唱キーが選挙の1か月前に盗まれた地区があってそこでバイデンが劇的に勝っている、海外でこのソフトのサーバーが押収された、ソフト開発会社が民主党や中共と繋がっている、などなどいろいろな情報が出てきています。これもざっくり言えば、この手の話をするとSNSでアカウントが削除や凍結となることがはからずも真実が何かを教えてくれているのかもしれません。さらに言えば、地下室に閉じこもってまともな選挙活動もせず、出てきても支持者が閑散としているバイデンが歴史上最多の票を集め、あれだけ多数の熱狂的支持者を集めたトランプ大統領が負けるというのはどう考えてもおかしいという普通の人の感覚はあながち間違っていないと思います。

ここでトランプ大統領が逆転しなかったら、古き良きアメリカ、もっと言えば人類の民主主義は絶滅すると危惧しています。でも、今回いろいろ見ていてわかったのは、アメリカ中央部のいわゆる共和党の強いレッドステートには健全な人たちが沢山いるということです。キリスト教的道徳(というか「嘘をつかない」など万人に共通する道徳)、本来の自由主義を基盤に、人として感銘を受ける言論活動、人間行動、政治活動をしている人達が結構いるのだなと思いました。アメリカ人と言えば東西沿岸部のリベラルがステレオタイプになっていますが、実はアメリカ全体を見るとそうでもないのが良くわかりました。何しろ半分はトランプ氏に投票したのですから。そんなまともなアメリカを代表する人を見つけました。国政の経験もあり現在はサウスダコタ州知事のクリスティ・ノームという女性は選挙不正の話題についてABC放送のリベラルキャスターをタジタジにしています。
https://youtu.be/c7BYXVbl5Jc
他のビデオも探して見てみましたが、この人こそ、まともな人間のまともな生活に基づいて州知事を務めている人で、小浜さんの理想とする地に足をつけた本当の政治家ではないでしょうか。頭の切れが最高で何とも品のある雄弁家です。質問されたら2,3秒落ち着いて考えてから理路整然と言い放つ、頭の中にスーパーコンピューターが入っているかのごとくです。彼女は何と、牧場に育ち20歳で結婚し子供3人、父の急死のため大学を中退し、父の経営していた農場を手伝い、そして政界に入り議員と子育てをしながら大学を卒業、いわゆるアメリカのアイビーリーグとかの有名大学出身ではないのにこんなに頭が良く強い信念を持って活動している。彼女は将来アメリカの大統領になる資質があるすごい人だと思います。日本にも男女を問わずこういう大地に根を張った政治家が多数出てきてほしいです。本来のアメリカ人がアメリカを取り返せることができるようトランプ大統領再選を期待している毎日です。



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アメリカ大統領選の背後に蠢くもの

2020年11月11日 19時50分57秒 | 政治


これを書いているのは2020年11月11日です。

アメリカ大統領選がまだ決着を見ていない事実については、多くの人がご存知と思います。
それにもかかわらず、世界のマスコミはバイデン氏当選を報じ、日本を含む先進諸国首脳は、すでにバイデン氏に祝辞を送っています。台湾の蔡英文総統までも祝辞を送っているのです。
けれども現時点で、信頼のおける情報を総合すると、次の事実が確実です。
①トランプ氏はまだ敗北を認めていない。
②共和党陣営は、これからが本当の選挙戦であると言明している。
③開票がすべて終わったわけではない。
④今回の投票では、バイデン陣営による大規模な不正が行なわれた。
⑤各州で民主党の不正と11月3日の選挙無効を訴える訴訟がいくつも起きている。
⑥これらの訴訟が却下された場合、最高裁まで上訴されることが確実視されている。
⑦いくつかの州では再集計が検討され、ジョージア州ではすでに再集計が決定している。
⑧中国、ロシア、北朝鮮、メキシコ、ブラジル、トルコは、まだバイデン当選を認めていない。

この未曽有の混乱で、焦点となるのは、次の二つでしょう。
A.民主党の不正の実態としてはどんなことが挙げられるのか
B.これから大統領が正式に決定されるためのプロセスはどうなっていくのか


Aについて。
・ウィスコンシン州、ミシガン州で、一夜の間に12万票、13万票という大量の偽の投票用紙が持ち込まれ、それらがすべてバイデン票だった。
・全米で少なくとも15の州で、大量のトランプ票をバイデン票に自動的に変換させるソフトウェアが導入されている。ミシガン州では、6000票のトランプ票がバイデン票につけかえられた。
・郵便局員や選挙スタッフが、宣誓供述書を提出した上で、投票締め切りを過ぎて届いた票に、投票日当日の日付を付けるように上司から指示されたと証言した。
・不正票の中には、すでに死んだ人の票や18歳未満の人の票、引っ越して州の外部に住んでいる人の票などが大量に含まれている。これらはすべてバイデン票である。
・投票率が理論的には考えられないほど高い州が複数ある。
・ペンシルベニア州(特にフィラデルフィア)では、共和党の監視員を強制的に排除したり、共和党支持者が投票に来た時には水性ペンを渡して認識不可能にしたり、本来州議会が決めるべき投票締め切り日を役人が3日延長を認めるなどの決定をした。
・郵便投票用紙のかなりの部分が、事前にバイデン側にマークシートされていた。
・投票用紙を売買する現場の動画や、いくつもの大きなバッグに詰まった投票用紙を業者がトラックに詰めて運ぼうとしている動画が公開されている。

まだまだあるでしょうが、とにかく民主党サイドで膨大な不正が行なわれたことは確かです。大統領選挙では、昔から不正が行なわれてきたことは有名ですが、今度のような露骨な形で行われたのは前代未聞と言っていいでしょう。
日本のどのマスメディアも、トランプ陣営の訴訟提起を報じながら「証拠を示さなかった」と締めくくっていますが、証拠を公開すれば、被告側が証拠隠滅を図ることは明白です。検察や警察が、犯罪容疑者の証拠を、法廷開始以前に公開するでしょうか。
さらに、NHKをはじめ、日本のマスメディアは、ジュリアーニ元ニューヨーク市長が暴いたジョー・バイデン、ハンター・バイデン親子の中国との醜悪な癒着関係について、まったく報じていません。日本や世界のマスメディアは、ぐるになって民主党に加担しているのです。日本の一部のマスメディアは、トランプ氏は身内までが見放しているのに往生際が悪いなどという、民主党寄りのメディアが流しているデタラメ情報を、そのまま報じている始末です。往生際が悪いといった指摘は、日本人の道徳感情をいたく刺激することでしょう。
しかし、トランプ陣営は、はじめからこうなることを見越して、合法的な戦略を取っているだけのことです。私たちは、アメリカという権謀術数にあふれた政治的国家が、目的遂行のために合法的であるかぎりはいかなる手段をも取ろうとする強靭な政治的意思を秘めている光景に立ちあっているのです。良し悪しはともかく、アメリカ大統領の選出は、国民の投票が最終決定手段なのではないという事実を、私たちは肝に銘じて知るべきです。心あるアメリカ国民なら、往生際だの潔さだのといった日本人好みの「切腹美学」的判断など歯牙にもかけないでしょう。政治と道徳とは同じではありません。

このような組織的不正(ボケじいさん・バイデンが投票日前にそのことをうっかりしゃべってしまいましたね)の背景には、当然、中共独裁政府の間接侵略が考えられます。そう、これは共和党と民主党の闘いを超えて、アメリカ本土を戦場とした米中戦争なのです。

それはともかく、ではどのような手続きでトランプ氏は、当選を果たそうとしているのか。
アメリカの大統領選挙の仕組みはたいへん複雑ですが、概略次のような手順を踏みます。
まず最高裁判事の判断ですが、5人の保守派の判事がトランプ陣営の主張に賛成票を投じると、トランプ氏は、米国大統領に再選されます。
もし保守派判事5人のうち1人が、トランプ陣営の主張に反対票を投じると、最高裁では決着がつかないことになります。すると、舞台は連邦議会に移ります。12月8日までに選挙人が決定しないと12月14日の選挙人投票が実施できなくなるので、連邦議会で大統領を選出しなければなりません。上院で副大統領が、下院で大統領が選出されます。
ただし、議員全員が議決に参加するわけではありません。下院で各州一人ずつの代表50人の投票が行われ、過半数を得た者が大統領に選ばれます。それが2021年の1月6日です。下院議員全員では民主党が多数を占めていますが、各州一人ということになると、共和党が多数を占める州が26、民主党が多数を占める州が22と、共和党のほうが優っています(残り2州は比例代表制)。しかし共和党議員が必ずトランプ氏を指名するとは限らず、後の暴動などを恐れて日和る者も出てくる可能性があるので、必ずこの50人の代表投票でトランプ氏が勝つとは限りません。
さらに、もしも下院で、トランプ氏もバイデン氏も過半数を獲得できなかったら、大統領が決まらないことになります。その場合、共和党が過半数を占める上院で現副大統領のペンス氏が副大統領に選ばれれば、ペンス氏が大統領職を代行することになります。
さらにさらに、ここでも共和党上院議員に棄権者が出て副大統領が決まらなかった場合、ペロシ下院議長が大統領職を代行することになります。ペロシ下院議長は民主党で、トランプ氏とは犬猿の仲です。

以上のようなややこしい過程を経て初めて大統領(代行)が決まるので、トランプ氏は、この長い過程での勝算をあらかじめ頭に入れていて、いま法廷闘争に打って出ているわけです。

ところで、一つ懸念があります。
私は、最終的に大統領選自体はトランプが勝つとみていますが(間違ったらごめんなさい)、中国、ロシア、北朝鮮、メキシコなど、アメリカと仲のよくない国々が、バイデンの勝利宣言を認めていない事態に不気味なものを感じます。
それに、このたびの民主党の不正は、まるでそれに気付いてくれとでもいうように、あまりに露骨で幼稚とさえ言えないでしょうか。これも考えてみれば不気味です。
陰謀論めきますが、中共は、本当はトランプに勝たせて、それによって生じる国内混乱に乗じて自国の覇権欲望を満たそうとしているのではないか? 実際、習近平氏は、来年1月まで、いやトランプ氏の就任によってその後も増大するであろうアメリカの混乱状態を、台湾攻略の絶好のチャンスとみているという囁きも聞かれます。

さあ、もしこの私の懸念が当たっているとすると、仮にトランプ勝利が実現したとしても、それを手放しで期待するわけにいかなくなりますね。まさに地球を巡る巨大ギツネと巨大タヌキの化かし合いです。ただ私は、習近平や極左や、さらには世界秩序の混乱によって得をするディープステートの連中が、無能でボケのバイデン氏を傀儡に立てて、世界や日本を思い通りに動かすようになるよりは、この際トランプ氏に頑張ってもらって、超大国アメリカの分断を統合し、国家秩序を維持してもらいたいと思っています。その上でチャイナの横暴に力を合わせて闘う方が、日本にとってはるかにましだと考える次第です。米中戦争は全世界を巻き込んで、長くなりそうです。

*参考資料
及川幸久:
https://www.youtube.com/watch?v=vSCtZlO8t5Q
https://www.youtube.com/watch?v=jWgld56SlBo
https://www.youtube.com/watch?v=YNnNaxMuqVI
田中宇:
http://tanakanews.com/201106election.htm?fbclid=IwAR33luvFX6QbhfrGpio4hPOchY2aueafzIeMFJf4xxyXdSs-v_sJURSChCg
https://tanakanews.com/201107election.htm?fbclid=IwAR0GhQTvQuaaFvUXgQ8AejsaI3kOM_XwCpiXxMqBZmDFq5-Dx_CCzFCyAB4
藤井厳喜:CFR FAX NEWS Novenber9
あえば浩明:https://www.facebook.com/jikido.aeba
美津島明:
https://blog.goo.ne.jp/mdsdc568/e/117b4579bed260ec401db435fa79a0f2?fbclid=IwAR1mse9QHfxwAYM_Ifc8NQmTPMntS4fRus6GC4oBawrdJ3RQO_-_LjY1iHo
ケント・ギルバート:https://www.youtube.com/watch?v=GeQben_bByU
エポックタイムズ(大紀元時報):
https://www.youtube.com/results?search_query=%E5%A4%A7%E7%B4%80%E5%85%83


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いわゆる「大阪都構想」は日本解体構想

2020年10月14日 19時50分01秒 | 政治


いわゆる「大阪都構想」についての住民投票が11月1日に行なわれます。
ご存知の方も多いかと思われますが、この住民投票は2回目です。5年前に一度行われて、否決されたにもかかわらず、維新は性懲りもなくまたやろうというのです。
前回は公明党が反対していたのですが、今回は、公明党議員の選出区に殴り込みをかけるぞと維新に脅されたため、それにビビッて賛成に回り、住民投票決行が議決されました。
法律用語に「一事不再議」という原則があります。一度議決された案件は再び審議することを許さないという原則ですね。維新は明白にこれに違反しています。

今回の住民投票に関しては、多くの反対議論がすでに出ています。元内閣官房参与の藤井聡氏、室伏政策研究所所長の室伏謙一氏らが活躍されるなかで、地元の方たちの反対運動も高まっています。去る11日には、関西の学者・研究者たちによる「大阪都構想」の危険性を明らかにするための記者会見が大阪市内で開かれました。その詳しい内容は、以下の報道で知ることができます。
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/18698
また23日には大阪で、藤井氏が中心になって、シンポジウム「大阪都構想の真実」が開かれます。
https://the-criterion.jp/info/2020oosaka/?fbclid=IwAR1ROlXRz4ciXBsL7i-33nZ5p_d67Z_deKAcChIeVeoDrtl1s2IMY081iT4
また、地方紙・長周新聞には、この「大阪都構想」以前、10年前から橋下徹が行なってきた大阪府・大阪市の行政改革がどんな問題点を生み出してきたかも含めて、この構想がいかにひどいものであるかが、具体的に詳しく報道されています。皆さん、ぜひ目を通してください。
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/18753?fbclid=IwAR1kcKGobV7u_5h5Lyy7UoIgVmADgLj20kj9odgnuJE5qDn5cdBItMCxCx8

大阪市民でもない筆者(横浜市民)がこれらに何か口出しする必要はないのかもしれません。しかし、この問題は、日本国全体にとって大きな危険をはらんでいます。とかく大阪という一地域、一自治体固有の問題と見られがちなために、全国的には(特に首都圏の住民には)関心の高まりがいまいちのようですが、これは他人事ではなく、これからの日本をどうしていくべきなのかにかかわる大きな問題なのです。
この「都構想=大阪市廃止構想」は、いろいろな意味で、いまの中央政府が取りつつある方向の、いわば雛形です。その思想がまったく一致しているのです。「行政の無駄を省く」「効率化を図る」という名目で、緊縮財政に固執し、福祉・教育・文化行政を削減し、水道など公共事業の民営化を推し進め、外資を自由に導入し、インバウンドと称してカジノを誘致し、補助金を切り捨てて「自助」「自己責任」にすべてをゆだねる――まさに安倍政権から菅政権へ引き継がれた、グローバリズム、構造改革、新自由主義路線そのものですね。
上記の記事の指摘の中で、最もひどいと感じたのが(ワーストを選ぶのも一苦労なのですが)、いま大阪市では、区役所の電話口、窓口に出るのがすべてあの竹中平蔵率いるパソナの非正規職員だという点です。質問しても答えられないので、「あなた、職員なの?」とこちらから聞くこともしばしばとか。このように、行政サービスのはなはだしい劣化が明らかとなっています。
またこの「都構想」では、小・中学校を含むさまざまな公共施設の統廃合や民営化がすでに実施されるか、計画に上るかしています。
アメリカでは、民営化路線に突っ走った結果、極端な貧富の格差が生じました。かの国では州によって刑務所まで民営化されているそうですが、営利目的で刑務所を運営したら、犯罪が増えるほど儲かるというシャレにもならない話になります。
維新がやっていることは、施策の基本線としてそういうことなのです。そしてもちろん、菅政権もそういう方向に日本をもって行こうとしています。

では、なぜ維新は、大阪市民を騙して、このような市民生活を破壊するような都構想なるものをぶち上げているのか。
これについては、先に掲げた、「関西の学者・研究者たちが行なった『大阪都構想』の危険性を明らかにするための記者会見」のなかで、神戸女学院大学教授・石川康宏氏の発言が多くを語ってくれています。氏によれば、橋下徹は2011年のダブル選挙で維新が勝った時、「次の衆院選は道州制選挙だ」と公言したそうです。また次の年に出した「維新八策」では「統治機構の作り直し」とあり、道州制の推進を明言しています。当時筆者もこの「維新八策」なる代物を批判したことがあるので、よく覚えています。
石川氏の言葉は続きます。

「大阪都」という発想は、道州制における関西州をつくるための一里塚として位置づけられている。2010年7月の大阪府自治政府研究会では、大阪市と府は役割分担が不明確だから、新しい自治体(大阪都)をつくり、さらに関西広域連合を作り、これらを合体させて関西州をつくるという構想が府の資料に出てくる。つまり、市民や府民のための構想ではなく、財界が喜ぶ国づくりに向けて、道州制を関西・大阪から作り出していくという一里塚に位置づけられている。だから平気で市のお金を府に吸い上げさせ、大きな広域経営体にしていく方向だ。こんなことはまともに市民に説明ができないから、説明会で「マルチ商法のようだ」といわれるやり方になる。こんなものにダマされてはいけない。

まことにその通りという他はありません。今回の住民投票に際しては、単に市民のためになるのかならないのかという視点だけではなく、こうしたより大きな視野の中で、維新が何をやろうとしているのかということも含めて考えなくてはなりません。

道州制は、大前研一らをイデオローグとして、経団連をはじめ関西の財界が長く主張してきたものです。経済活動にかかわる規制を撤廃し、国家統合を解体し、全国をいわば8つから10の自治州として互いに競わせれば、民間の自由度が高まり、産業も発展するという、幼稚きわまるバカみたいな政治理念です。中央政府は外交と軍事だけを担当する、いわば「小さな政府」の典型というわけです。
こんなことをすれば、ただでさえ東北地方や中国、四国地方など、スタートラインではるかに後れを取っている地方が競争に勝てるわけがありません。ますます引き離されて衰退していくでしょう。また、災害大国・日本で大災害が起きた場合、その救済や物資の供給で、州をまたいで連携を果たさなくてはならない時に、だれがどうやってその統合を図るのでしょうか。そのためのインフラは誰が整備するのでしょうか。長く続いてきた日本人としての共同体感覚を壊してしまって、自由競争至上主義の徹底でうまく行くと、維新及びその支持者たちは本当に思っているのでしょうか。さらに言えば、北海道が独立州になったら、虎視眈々とその領有を狙っている中共の思うつぼです。

安倍政権が押し進め、菅政権がそれをさらに拡大しつつあるグローバリズム路線は、デービッド・アトキンソンなる不良ガイジン(この前もこの言葉を使いましたが、何度でも使います)の入れ知恵によって、ついに日本の宝である中小企業潰しにまで手を伸ばそうとしています。
経済的なコロナ禍も、彼らにとっては国民生活救済の喫緊の課題としてではなく、むしろ国民を窮地に追い込む絶好のチャンスとしてしかとらえられていないのです。そう意図しているわけではないでしょうが、国家理念を喪失して権力維持に汲々としている今の中央政府がやっていることは、結果的にそうだと言われても反論できないでしょう。

維新の推進しようとしている「大阪都構想」は、国家破壊の急先鋒です。これを一自治体の問題として高見の見物をするのではなく、全国民が自分たちの問題として危機感を共有するのでなくてはなりません。


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絶望の中の希望を若者の中に

2020年09月30日 20時29分08秒 | 政治


勤務する大学で、ゼミを受け持っています。オンライン授業なので、毎週レポートを提出させる形式を採用しました。
秋学期が始まってから第1回目のレポート課題を、次のように出しました。

《あなたが住んでみたい国を一つ挙げ、なぜそう思うのか、その理由を述べなさい。自国でもかまいません。また住みたい国はないというのでもかまいません。その場合でも理由をつけること。字数600字以上。》

これまで、20名のうち、14名の学生から提出がありました。内訳は、日本人学生10名、アジア系留学生4名。
この結果を見ると、留学生の中に2人、日本を挙げた者がいます。
また日本人学生では、日本を挙げた者2名、住みたい国は特にないと答えた者2名。この後者では、やはり、結局は自分の国に住むのがいいという結論でした。
すると、14名中、6名が、住みたい国というイメージを持たず、日本に落ち着きたいと考えていることになります。
理由はだいたいご想像がつくでしょう。治安の良さ、暮らしの便利さ(たとえば自販機やコンビニの整備)、人々の礼儀正しさや親切さ、災害時の秩序を守る態度など。日本は世界の中でも特殊だと、的確な指摘をする学生もいました。なかなかすぐれたレポートでした。
留学生で、日本をべた褒めしている子がいるので、その子には、もう少し日本の悪いところも見てほしいと講評しておきました。しかしいずれにしても、日本の学生も含めて、彼らの指摘する日本の長所が、客観的に見ても的を射ていることは確かです。
「暮らしやすさ」という観点に関する限り、複雑な問題を抱える諸外国から見たら、日本はまだまだ「天国」のように映っているといっても過言ではありません。
もちろん、日本人のお花畑思考、お人好し、外交力のなさ、主体性のなさ、グローバリズムに侵蝕されている現状、内政のだらしなさとそれによる凋落ぶり、などを講釈する場所ではないので、講評では、そういうたぐいのことには触れませんでした。長所が同時に短所としてあらわれることにもなるというのが現実なのですが。

ところで、そんなに世界情勢を勉強しているはずもないのに、こうした学生たちの素朴な表現には、何となく世界の現状に対する直感が働いているのがうかがわれます。もっとも、サンプル数が少なすぎて、ここから直ちに結論を導き出そうとするのには、慎重を期すべきです。

ひところ、と言ってもそう遠くない過去に、他国と比較して、いまの日本の若者たちが海外に進出していこうとする積極性が欠けていることを指摘する論調が目立ちました。それは実際数字に表れている傾向ですから、間違ってはいないのですが、この傾向を単純に嘆かわしいこととしてとらえるのが正しいかどうかは、また別問題です。
もしかしたら、コロナの疫病としての被害が欧米諸国に比べて極端に少ない原因の一端にも、この「心理的鎖国」がほんのいくらかは関係しているかもしれません。

さて財界、政界、官界、学界の主流は、デフレ脱却、コロナ恐慌回避の大前提をすっかり忘れて、外資歓迎の規制緩和、構造改革路線、中小企業潰し、消費増税促進の空気に沸き立っています。菅政権になってから、その傾向がさらに露骨に出てきました。
政権交代という単なる「儀式」に過ぎないものが、空気をすっかり変えてしまいました。いま自民党の中枢部からは、第三次、第四次補正予算の必要を訴える声が聞こえてきません。今さらながら、「空気」というものの恐ろしさに戦慄します。
代わって、竹中平蔵という売国男がにわかに元気づいて、ベーシックインカム7万円というとんでもない国民殺しの政策を吹聴するかと思えば、デーヴィッド・アトキンソンという不良ガイジンが、菅義偉・無能総理にべったり張り付いて、中小企業360万社を160万社に減らせという日本破壊の音頭を取ろうとしています。その菅政権、支持率何と74%!
一方、党幹事長に留任した二階俊博は、民間の対中国利権の代弁者たるべく、相変わらず習近平閣下の国賓招請を画策している模様。

こうして奈落の底に落ちようとしている日本。
革命が起きてもおかしくない、と思うのは一部少数者だけで、実際にはマスクも取らずに過酷な状況に静かに耐えている大多数の日本人がいるだけです。そんななかで、ほとんどの若者たちは、政治経済はおろか、海外進出への意欲すら示さず、おとなしくバイトにいそしんでいます。

財政破綻危機の大ウソが功を奏して長い長い時が過ぎました。先日、私の親しい友人が、遅まきながら国債の返済不要性と銀行の信用創造の理屈を数人の知人に話してみたところ、だれもが「そんなバカな」と、聞く耳を持たなかったそうです。
この絶望的な状況の中で、私は苦し紛れにこういうことを考える――若者たちの意欲喪失による「心理的鎖国」状態は、ひょっとして、一つの希望をあらわしてはいまいか、と。
つまりこうです。
世代交代が進んで(もちろんいまの政府の中枢を占める売国男どもには引導が渡され)、内向き志向の若者たちが働き盛りの年代になれば、それがかえって内需の拡大にむすびつくのではないか、と。
この心理的鎖国状態をうまく活用すれば、ひょっとして現実的鎖国状態を作りだすことは不可能ではないのではないか、と。
もちろん現実的鎖国状態と言っても、それは程度問題です。
オール・オア・ナッシングがいいとは思いませんし、資源、食糧の安全保障で大きな危機を抱える日本が、他国に依存せずに自給自足経済を維持することなど不可能事中の不可能事です。
しかし、コロナや米中戦争でブロック化しつつある世界経済の現状は、ひょっとして(という言葉をすでに3回使ったのですが)、バランスある半自給自足状態を実現する糸口になるのかもしれません。
もしそうなら、いまの財界、政界、官界、学界に君臨するオヤジどもは、いつまでも新自由主義やグローバリズムのイデオロギーに金縛りになっていて、早晩、古臭いゾンビと化するのではないか。
あと20年後、30年後の日本は、意外と需給関係のバランスがとれた経済社会を実現できている可能性が無きにしも非ずです。
もちろん、そのためには、PB黒字化だの消費増税だの福祉破壊のBIだの中小企業潰しだのといった、日本国消滅の元凶をすべて取り払うべく、私たちが不断の努力を重ねて、若者世代のための露払いを行なっておかなくてはなりませんが。

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安藤裕衆議院議員を自民党総裁に

2020年09月02日 23時33分47秒 | 政治


日ごろ筆者は、「政治評論家」と称する人々をあまり信用していません。
政局の変化に応じて個々の政治家や派閥の動向を、競馬の予想屋のようにああだこうだとマスコミで語りますが、その知識は競馬場や厩舎の周りをうろうろするところから得てきたもので、日本のこれからにとってどんな政策をとるべきかといった肝心な問題について真剣に議論しようとする姿勢がないからです。
すべてを信用しないと言っては、少数の立派な人に失礼ですから、「概して」と断っておきましょう。

さて8月28日に安倍首相が辞意を表明し、新しい自民党総裁が9月14日に選出されることになりました。菅、岸田、石破の三氏が出馬表明をし、当選者の予想や、ポスト安倍の政策運営をだれだれはどうするといったにぎやかな「政治評論家」的議論が交わされています。そんなに大騒ぎすることかなと筆者などは思うのですが、国民の多くも冷ややかに見ているだけではないでしょうか。
安倍路線を引き継ぐにしろ、少しばかり新機軸を示すにしろ、彼らにこの沈みゆく難破船「日本丸」を劇的に救い出すことなどできるはずがありません。なぜなら、安倍首相一人が辞めても、彼を取り巻いてきた、竹中平蔵に代表される諮問機関の委員たち、経団連、経済同友会などグローバリズム企業の代表機関、それに財務省、さらにその向こうにアメリカや中国の「日本食い」勢力などががっちり包囲網を固めているからです。

今さら去りゆく安倍政権の負の「レガシー」をあげつらってみても仕方がありませんが、現在の日本丸がどういう惨憺たる状況にあるかをおさらいするためには、少しは意味があるかもしれません。

ここに、三橋貴明氏が安倍政権の「負のレガシー」を手際よくまとめた一覧がありますので、少しだけアレンジして借用いたします。
https://38news.jp/economy/16605
●緊縮財政系:
・プライマリーバランス黒字化目標堅持。
・新規国債発行減額。
・二度の消費税増税。
・公共投資、地方交付税交付金、科学技術予算、教育支出、防衛費、防災費、診療報酬、介護報酬など
の抑制と削減。
・公共病院統廃合と病床の削減。
・国民の社会保障負担の引き上げ。

●規制緩和系:
・派遣拡大、残業代ゼロ制度。
・混合診療拡大。
・水道民営化。
・非正規公務員割合の拡大
・モンサント社(現バイエル)の農薬グリホサートの安全基準引き上げ
・種子法廃止(種苗法改定法案も閣議決定)
・農協改革、農地法や農業委員会法の改定。
・漁業法改定。
・国家戦略特区にてグローバリズム政策を実行。
・電力自由化。
・民泊拡大や白タク解禁の検討、シェアリング・エコノミー推進。
・IR法(カジノ解禁)。
・法人税減税。

●自由貿易系:
・TPP、日米FTA、日欧EPAなどの自由貿易協定。
・移民受け入れ拡大。
・インバウンド依存推進のためのビザ緩和。
・外国人の土地購入推進。

いやはや偉大なレガシーですね!
これだけ国民を苦しめる政策を一貫して取り続けた政権は、歴史にその名を刻まれて「名誉ある地位」を占めるでしょう。
その結果、何が起きたかも見ておきましょう。
・25年続くデフレの継続・悪化
・実質賃金:マイナス15%
・2019年10~12月期におけるGDP:前期比年率マイナス7.1%
・2020年1~3月期におけるGDP:前期比年率マイナス2.2%
・民間最終消費支出2014年4~6月期:前期比マイナス4.8%
・民間最終消費支出2019年10~12月期:前期比マイナス2.9%
・鉱工業生産指数2014年消費増税時:前期比マイナス4.9%
・鉱工業生産指数2019年消費増税時:前期比マイナス9.1%(東日本大震災時よりも悪化)
・民間設備投資2019年消費増税時:前期比マイナス4.7%
・世帯収入中央値:95年550万円から、2017年には423万円に
・2017年世帯所得分布:年収100万円台~300万円台が41%に
・ワーキングプア:96年の800万人から安倍内閣発足後1100万人を突破し、以後高止まり。
・生活保護世帯数:97年(63万世帯)以降激増し、2014年160万世帯を突破、以後高止まり。
・金融資産ゼロ世帯割合:95年に8%、以後急増し、2012年に30%を突破、以後高止まり。
・非正規労働者割合:2014年に37%を突破、以後高止まり。
・非正規労働者の平均賃金:正規労働者の65%(2018年)、地方公務員は三分の一未満。
・子ども食堂:2012年ごろ開設。2016年319か所、2019年3700か所。

というわけで、「一億総活躍」してきたわけでございます。
そこにコロナがやってきて、2020年4~6月期GDP前期比年率マイナス28.1%という仕儀に至りました。
上記総裁候補のだれも消費税に手を触れようとしませんし、仮に触れたとしても、期間を1年に限って2%の減税がせいぜいのところでしょう。これでは、景気回復効果はゼロに等しく、財務省やそのまわりをうろつくゴロ学者、マスゴミどもに「ほら、減税してもやっぱり効果がなかったじゃないか。さあ、これからはコロナ税で取り返さなくっちゃ」という口実を与えてしまいます。池上彰センセイ、万歳。おまけに、「財政出動、緊急時だからこそこれだけやってあげたんだぞ」とばかり、再び「財政健全化」に勢いづくこと疑いなしです。

さて、どうしましょう。
安藤裕衆議院議員が代表を務める自民党の議員連盟「日本の未来を考える勉強会」では、コロナ以前から消費税ゼロ、大胆な財政出動を主張してきました。このたび、ひどい経済的なコロナ禍から少しでも回復方向に舵を切るために、第二次補正予算の成立に獅子奮迅の働きを示したのはこのグループです。もちろん、まだまだこんなものでは足りません。第三次、第四次が必要でしょう。
そのため安藤グループは、消費税の廃止、休業を余儀なくされた経営者への100%粗利補償、真水100兆円の国債発行など、真に実効性のある政策を提言しています。
野党勢力も含めて、いまの政界の中で、このグループと西田昌司参議院議員以外、まともな提言を掲げている勢力はいません。彼らを応援し、安藤代表に14日の総裁選に立候補してもらう――これが現在考えられる唯一希望の持てる選択です。
安藤グループは、インフレ率の制約さえ守れば、政府がいくら財政出動をしても一向に困らないという事実を理解している数少ない人たちです。窮乏化した国民を救い日本の経済を立ち直らせることこそは、国家の役割です。この人たちは、そのために財源など気にする必要がないことを、理論的根拠をもってしっかりと認識しているのです。
もちろん、諸般の事情から見て、上記の政策提言が、そのまますんなり通るのは至難の業でしょう。また安藤代表はまだ三回生で、上層部を占める支配勢力が、その言い分を素直に聞くとも考えられません。しかし、これ以外に日本の危機を救う道が考えられないのだとすれば、この際、少なくとも一つの重要なステップとして、安藤氏に立候補してもらい、その存在感を内外に印象付けることには、大きな意義があるのではないでしょうか。ほとんど安藤氏や参議院議員の西田昌司氏だけが、現職の有力国会議員の中で、与党という有利な立場にいつつ、しかも正しい主張をしているのですから。

仮に万一、安藤氏が総理大臣になったとしても、先に述べたような強大な勢力に阻まれて、何もできないで終わってしまうのではないか――こういった悲観論を言う人もいます。もっともな意見と思います。もしかしたらそうかもしれません。しかし、スタートラインの前でこのまま足踏みし続けていたのでは、日本丸はブクブクと沈没を進行させていくだけです。やってみなければわかりません。
総裁選告知日は8日です。筆者は、この数日の間に安藤氏が立候補の届け出をしてくれることを、切に期待して已まない者です。
「絶望の虚妄なることは、まさに希望と相同じい」(魯迅)

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安藤裕衆議院議員を次期自民党総裁に!

2020年06月10日 19時02分53秒 | 政治


先日、皆さんよくご存じの、池上彰という大ウソツキが、テレ朝の「ニュース、そうだったのか」で、コロナ給付金に関して、「国の借金が1000兆円を超えているんだから、当然増税になる。国民一人当たり10万円給付も、国民が前借しているんだから、いずれ返さなくてはいけない」と言っているのを聞いて、思わずのけぞりました。
「ふうん、そうなんだ」とか相槌を打ってる聞き手も、なんでこんなひどいウソに騙されるんでしょうね。

最近の池上は、どうも自分は間違ったことを言ってるんじゃないかという焦りが顔に出ていて、表情が引きつっています。
どこか体を悪くしているのでなければ、激やせもそのせいかも。

ところで、あいつは20年来同じこと言ってて、どうせバカだから相手にしなくていいよ、と突き放すのもけっこうですが、筆者が危惧するのは、次の点です。
ああいう地上波番組は視聴率も高いから、池上のような大ウソツキが啓蒙家ヅラしてのさばると、愚民がどんどん再生産されるんじゃないか。
もう少し詳しく言うと、あの番組が大衆に受ける秘密は、その形式にあると思います。
優しく(易しく)流暢な調子で、教師という立場から、生徒に質問をしながら「正解はこうです」と余裕たっぷりに説明していく。
生徒はほとんど痴呆状態に置かれて、先生の講釈を感心して聞くほかはない。
誰も突っ込みを入れないし(入れる能力もないし)、議論する余地もない。
この「実演による啓蒙」という演出形式においては、生徒は手品師に引っかかる観客のようなものです。
だから視聴者も素直に「ふーん、そうだったんだ」と受け入れてしまう。
学者が澄まして書いているバカ言説も問題ですが、こちらは読者も多くありません。
だから、池上方式のほうが、学者のバカ言説よりもよっぽど悪影響をまき散らしていると思います。
そもそもこういう番組を作っているプロデューサーは、何を考えてこんなインチキ番組を垂れ流しているのか。
大衆が視聴するTV媒体でこういうやり方を使って、ウソを流し続ける限り、「国の借金で財政破綻、だから増税して財政を健全化、給付金もみなさんの借金」というデタラメは、改まりそうもありません。
まずは池上を潰せ!

ところで、今を去ることわずか2か月半前、『オペレーションZ』という財務省よいしょ小説を書いた作家の真山仁と、財務省事務次官の岡本薫明とが、「日本の財政がわかってない方に教えたい真の姿」と題して、例の「国の借金1000兆円超が国家財政の破綻を招く」というトンデモ対談を平然と行っています。

ご覧になった方も多いことでしょう。
https://toyokeizai.net/articles/-/340525
日本の財政がわかっていないのは、お前たちだろ! と思わず怒鳴りつけたくなります。
真山は本当のバカなのでしょう。
しかし、岡本事務次官がわかっていないはずはないので、西田昌司参議院議員が国会で追及した時に、彼自身が「財政破綻はしません」と答えているのです。
https://www.youtube.com/watch?v=JlvJGc7ohzI&feature=youtu.be
このブログの読者ならとっくにご存知と思いますが、財務省のHPにもそう書いてありますしね。
だから、一般国民相手の場面では、岡本は平然とウソをついているわけです。
国民に平然とウソをつく高級官僚がうようよいるこの国、誰が考えても亡国と言わざるを得ないでしょう。

さて大衆啓蒙家気取りの池上彰、財務官僚トップの岡本薫明、財務省御用学者の小林慶一郎、土居丈朗、森信茂樹、佐藤主光、吉川洋、伊藤隆俊、伊藤元重の面々、朝日の原真人、日経の久保田啓介……。
この緊縮脳に侵された重症患者連中を徹底的に潰さない限り、日本経済に未来はありません。
どうすれば潰せるか。
こちらも執拗に言論と政治実践で対抗していく以外ないでしょう。

ところで、このたび、コロナ禍がもたらした大恐慌危機に際して、「日本の未来を考える勉強会」代表の安藤裕衆議院議員消費税ゼロ、百兆円の国債発行を提案しました。

彼を中心とする若手自民党議員の獅子奮迅の働きによって、この日本経済回復策に賛同する国会議員が80名を超えました。
その結果、まだまだ不十分とはいえ、岸田政調会長、西村経済再生担当大臣らを動かし、真水32兆円の財政出動にこぎつけました。
ことに予備費10兆円の確保は、予備費という名目では、金額的に言って空前の規模です。
もしこれを全額、コロナ禍(というより不必要だった過剰自粛)による民間企業の巨大な損失補填に充てられるなら、その効果はかなり大きいと言えるでしょう。
今回のこの動きは、いままで財務省の言うなりになって眠りこけていた大方の自民党議員の空気を一新するたいへんなことだったといっても過言ではありません。
コロナ禍を奇貨としたというべきでしょうか。

しかし、疫病としてのコロナが沈静しても、一度落ち込んだ経済を回復させるのは、並大抵のことではありません。
けっして忘れてはならないのは、コロナが来なくても、昨年10月の消費増税によってGDPが▲7.1%の落ち込みを見せたという事実、その前から20年以上もデフレから脱却できず、事態はますます悪化していたという事実です。
コロナ禍が去れば、それ以前は経済がまともに機能していたかのような錯覚に陥る可能性が十分にあります。
財務省はここぞとばかり、この錯覚を利用するでしょう。
7月に予定されている「骨太の方針」決定に、はたしてPB黒字化目標がまだ残るのか。
これが残ってしまうようなら、緊縮路線は何ら変わることなく、財務省はコロナ財出で使った分を税金で取り返そうとするでしょう。
今回のコロナ財出でも、消費税には指一本触れませんでした。
そうすると、気違いじみた池上の希望通りになってしまいます。
8月には4月―6月期のGDPが発表されます。
悲惨な数字が出ることは確定的です。
闘いはこれからなのです。
当然、第三次、第四次補正予算を組む方向へと邁進していかなくてはなりません。
この邁進の動力源に誰がなりうるか。
安藤氏とその賛同者以外にはいないでしょう。

山本太郎氏も、この間、日本の貧困化をもたらした勢力を告発するのによく貢献したと思います。

彼はMMTを中心とする積極財政論をきちんと理解していますし、どんな質問にも明快に答えられる優れた政治家です。
しかし野党的立場からの告発と勢力伸長にはどうしても限界があります。
やはり、圧倒的多数を誇る自民党議員に親しく接触することができる安藤氏のような人が、政権与党の内部で粘り強く説得を繰り返し、内部から変革していくのが、一番有利な方法と考えられます。

安倍政権の支持率もだいぶ落ちてきました。
いつとは言えませんが、そろそろ安倍首相の降板も近いでしょう。
しかし国民の意識としては、ほかにもっといい人がいないというのが本音でしょう。
筆者としては、このタイミングで、安藤議員に次期自民党総裁選に出馬していただくことを提案します。
ロートルひしめく党上層部に切り込みをかけても、すぐにはひっくり返らないかもしれません。
しかしこれによって、安藤グループ及びその潜在的な賛同者が、一気に表面化し、安藤氏はその存在感の大きさを示すことができます。
消費税ゼロ、国債100兆円を掲げる安藤氏に、自民党次期総裁の地位を! そして安藤総理大臣の実現を!


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安藤裕衆議院議員以下、42名の緊急提言

2020年03月11日 18時12分48秒 | 政治


「日本の未来を考える勉強会」を長らく主宰してこられた安藤裕衆議院議員がこのほど議員連盟を結成しました。
彼を中心とする国会議員有志42名が、先ほど西村大臣、岸田政調会長に、緊急提言を提出しました。
明日、幹事長に提出するそうです。
以下、その提言を全文コピペします。
安倍総理がこれをどう受け取るかがカギです。


************************

「令和の恐慌」回避のための30 兆円規模の補正予算編成に関する提言
                                   令和2年3月 11 日

今年に入り、中国武漢市を発生地とする新型コロナウイルスが蔓延し、これに罹患する国民が急速に増えつつある。こうした中、一日も早くこの新型感染症の拡大を終息させるとともに、感染症対策を抜本的に見直し、国民の生命及び健康を守ることこそ政治の最優先課題である。
それと同時に国民経済に及ぼす影響を最小限にくいとめなければならないことは言うまでもない。しかるに、旅行関連産業においては既に、中国や韓国のみならず日本国民の旅客までもが宿泊をキャンセルし、旅館及びホテルが大打撃を受けている。さらに、大規模店舗のみならず小規模な飲食店、カラオケボックス、屋形船、スポーツクラブ、個人タクシー事業者等も政府の要請や風評被害等により国民から忌避され、大幅な収入減により廃業の危機あるいは従業員の解雇をせざるを得ない事業主も出始めている。
そもそも、本来ならば回復基調でなくてはならない 1-3 月期の日本経済は、一連のコロナ自粛連鎖のあおりを受け、消費・雇用・賃金が大きく落ち込み、大幅なマイナス成長となることが見込まれる。昨年 10-12 月期の GDP 速報値が年率マイナス 7.1%であったことを考慮すると、2 四半期続けてマイナス成長となることは確実であり、その結果「日本は景気後退期に入った」と内外から判断され、日本経済が負のスパイラルに陥る可能性が極めて高い。
これらの経済被害は、国難とも言うべき新型コロナウイルスが日本国内に蔓延することを防ぐために政府が要請し、それに対して国民が一致団結して協力した結果生じているのである。だからこそ、政府が責任をもって、とりわけ中小企業及び小規模事業者、並びに非正規雇用者、個人事業主、失業者、ひとり親家庭、障がい者といった社会的弱者の立場に寄り添い、全国的かつ全員に行きわたるような従来の発想にとらわれない大胆な経済政策が不可欠である。
ここに、我々自民党有志は下記の政策を速やかに実行することにより、日本経済の失速にブレーキをかけ、成長路線に戻す大胆な政策を全力でかつ迅速に推進することを提言する。本年 1-3 月期の数値を確認してからの対策では遅いと言わざるを得ない。国民は、今すぐ希望を持つことができる強いメッセージを求めているのである。

            

1. 30 兆円規模の補正予算を編成し、財源には躊躇なく国債を発行してそれに充てること。なお、2025 年のプライマリーバランス黒字化目標は当分の間延期すること。

2. 被雇用者に対しては十分な休業補償をするとともに、事業者、特に中小企業及び小規模事業者(個人事業主を含む)に対しては、失われた粗利を 100%補償する施策を講ずること(特別融資だけでは不十分)。安心して休業できることは、有効な防疫対策にもなる。

3. 消費税は当分の間軽減税率を 0%とし、全品目軽減税率を適用すること(消費税法の停止でも可)。なお、消費税の減税のタイミングとして 6 月を目指し、各種調整を速やかに行うこと。

4. 従来から存在するあらゆる制度も活用し、資金繰り支援等企業の廃業防止、国民の不安を払拭するために全力で取り組むこと。

5. 国土強靭化、教育・科学技術投資、サプライチェーンの再構築、特定国依存型のインバウンドの見直しなど、内需主導型の経済成長を促す政策を検討すること。

以 上

       自由民主党若手議員賛同者 42 名
     [衆議院 1 回生~3 回生/参議院 1 回~2 回生]



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コロナウィルスとインバウンド

2020年03月04日 20時31分31秒 | 政治


コロナウィルス情報が日本中を席巻し、政府の対応に対する賛否の議論が盛んに行なわれています。
さまざまな個別の対策や現象や問題に対して筆者にもそれなりの考えはありますが、今後の推移がどうなるか不透明な部分が多いため、しばらく静観しようと思います。
ただ、二つだけ言っておきたい。
一つは、多くの人が指摘していることですが、つまらぬ忖度を捨てて、一刻も早く中国人、および問題の時期に中国に滞在した履歴を持つ外国人の入国を拒否すること。ついでに韓国に対しても同じ措置を取るべきでしょう。
もう一つ、ようやく習近平主席を国賓として招く話が延期になったことを、とりあえず歓迎したいと思います。ただしコロナウィルスのために「延期」するのでは、この問題そのものの持つ外交的な意味が見失われます。新型肺炎の流行があろうがなかろうが、そもそもこんなイベントは日本の基本的な対中政策として行なわれるべきではありません。即刻中止すべきです。理由については、以下をご覧ください。
https://the-criterion.jp/mail-magazine/m20200202/

ところで、ここでは、新型肺炎の流行と、それまで政府が率先して煽っていたインバウンド・ブームとの関係について考えてみたいと思います。
総務省平成30年版情報通信白書では、2017年までのインバウンドの状況を次のように報告しています(太字は引用者)。いかにも得意気です。
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd126310.html
近年、訪日外国人旅行者数は、急速な拡大を遂げてきた。昨年の訪日外国人旅行者数は2,869万人となり、訪日外国人旅行消費額は4兆4,162億円まで拡大し、観光は我が国の経済を支える産業へと成長しつつある(図表2-6-3-1)。従来の訪日外国人旅行者数2,000万人の目標達成が視野に入ってきたことを踏まえ、2016年3月には、内閣総理大臣を議長とする「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」において、2020年に訪日外国人旅行者数を4,000万人、訪日外国人旅行消費額を8兆円とし、さらには2030年にそれぞれを6,000万人15兆円とすること等も踏まえた、その実現のための施策を、「明日の日本を支える観光ビジョン」(以下「観光ビジョン」という。)としてとりまとめた。観光ビジョンは、観光は「地方創生」への切り札であり、GDP600兆円達成への成長戦略の柱であるとし、国を挙げて「観光先進国」という新たな挑戦に踏み切る覚悟が必要であることを示した。

図表2-6-3-1 訪日外国人旅行客数及び訪日外国人旅行消費額の推移


(出典)観光庁「訪日外国人消費動向調査」及び日本政府観光局(JNTO)

この夢はコロナウィルスによって見事に打ち砕かれた、とあざ笑いたいのではありません。
そもそも「観光先進国」などという政策目標を掲げること自体が、デフレ脱却を掲げて政権をスタートさせた安倍政権の経済政策の大失敗を物語るものだと言いたいのです。
グローバリズムが横行する世界に向き合う時には、その経済侵略に対してまず国民生活を守るための国家戦略を立てなくてはならないのに、安倍政権は、むしろ逆にこれを歓迎するような政策ばかり採ってきました。
大きなところでは、TPP参加、移民法、農協法改革、種子法廃止、水道民営化、IR法などがそれです。
これらはすべて外需依存を志向するもので、デフレ脱却のために必要な内需を充実させる方向に逆行しています。
これに緊縮財政(消費増税、PB黒字化)、規制緩和(外資誘導、国家戦略特区)がマッチングして、国民生活の貧困化がますます進み、その安全保障はまったく守られない状態になってしまいました。
そういう失敗を糊塗するために、ここ数年、インバウンド、インバウンドと騒ぎ立ててきたのでしょう。
しかし、インバウンド自体が、まさに外需依存そのものであって、失敗の上塗り以外の何ものでもない。
つまりは、安倍政権には、失敗の自覚すらないということになります。

ちなみに筆者は、2017年8月の時点で、同趣旨の記事を以下のメルマガに寄せています。その趣旨を要約します。
https://38news.jp/economy/10870
たしかに2014年から2016年までの2年間に訪日外国人は1.8倍に増えています。しかし同時に、この事実についていくつか押さえておかなくてはなりません。

一つは、訪日外国人がすべて観光客であるわけではなく、観光客は全体の約6割で、残りはビジネスその他です。

次に、外国人の内訳は、韓国、中国、台湾、香港といった東アジアの人たちで、これが全体の73%を占めます。欧米加豪の合計はわずか14%です。
しかも、2014年当時、前者は、67%、後者は18%でした。つまり、増えているのは、東アジアからの訪問者であって、ヨーロッパや英米圏から日本を訪問する人たちの割合は、むしろ減っているのです。
台湾と香港はいいとして、韓国や中国の訪日客は、いろいろな意味で日本人にあまり歓迎されていません。こういう人たちが「訪日外国人」としてうなぎ上りに増えているからといって、外国人観光客が増えることはいいことだなどと単純に言えるでしょうか。

次に、国内景気がよくて、じゃんじゃん高級ホテルの建設でも進むなら話は別ですが、実際には、サービスの悪い民泊の増加による料金低下競争が起きています。老舗旅館などが経営難で閉鎖されていきます。
デフレ不況期にこういうことが起きると、移民による賃金低下競争と同じで、日本の経済全体に悪影響を及ぼすのです。

最後に、次の点が最も重要です。
2016年時点で、「旅行収支」が1.3兆円の黒字を示したと報告されていました。
1.3兆円の黒字と聞くと、それだけで日本経済の復活に大きく貢献するかのように思ってしまいます。
「旅行収支」とは、要するに、旅行によって外国人が日本に落とすお金(収入)と、日本人が外国に落とすお金(支出)との単なるバランスを示す数字です。
たとえば、外国人訪日客が変わらなくても、日本人が海外旅行にあまり行かなくなったり、海外で商売することに消極的になれば、それだけで黒字幅は増えます。
そして、この「旅行収支」の黒字分が、GDPを構成する「純輸出」の一部として参入されるわけです。
さて、1.3兆円の黒字という数字ですが、これはGDPのわずか0.26%にすぎません。

以上が前記事の要約です。
それでは、最新のデータではどうでしょうか。
上に掲げた総務省のデータでは、訪日外国人の旅行消費額は、2017年で4.4兆円とあります。
しかしお間違えのないように。
これは「旅行収支」ではありません。支出が差し引かれていませんから。
財務省が2019年2月に発表した2018年の国際収支速報では、旅行収支は、2.3兆円の黒字と出ています。
https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_eco_balance-trade20190208j-09-w390
この報告でも、過去最高の黒字額と謳って、以下のような浮かれた調子のグラフが載っています。



しかしたったの2.3兆円ですから、これでもGDPへの寄与率は、0.5%に達していません。
ちなみに、2013年以前が赤字になっているのは、外国人が日本に落とすおカネに比べて、日本人が外国に落とすお金が多かったことを示すもので、これは必ずしも悪いことではなく、むしろ日本人の活発さがこの頃までは残っていたとも言えるわけです。

さてコロナウィルスが上陸して、外国人(主として中国人や韓国人)訪日客は激減しました。
当分、「観光先進国」だの、観光を「地方創生への切り札」「成長戦略の柱」と見なすだのといった、政府の空虚な夢想はついえました。
不謹慎な言い方になりますが、これからは、この事態を奇貨として、外需に頼らず、日本人自身の生産と消費を堅実に伸ばしていくことを考えた方がいいでしょう。
しかしそのためには、まず政府がこれまでの路線(ドケチ路線と外資依存路線)を根本的に改め、国土強靭化や科学技術や社会福祉の充実や国防のために、財政支出を惜しまず提供することが不可欠です。
すっかり衰えてしまった日本経済が活気を取り戻すとき、それはそのままわが国の魅力として世界の人たちに訴えかけるでしょうから、観光などは自然に発展します。
MMT理論は、そのための強力な論拠となってくれるはずです。


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3月に上程されるとんでもない種苗法改定案

2020年02月18日 23時50分51秒 | 政治


「桜」騒ぎ、「コロナ」騒ぎで陰に隠れていますが、次のようなことが進行中です。

前衆議院議員の山田正彦氏が、種苗法改定の問題点を詳しく検討し、これについて真剣に警鐘を鳴らしています。
https://ameblo.jp/yamada-masahiko/entry-12575782319.html?frm_src=favoritemail
一部要旨を抽出すると、次のようになります。

①農水省は3月上旬には自家増殖(採種)一律禁止の種苗法の改定案を国会に提出する。自民党筋からの話では、3月中に衆議院を通して4月中には参議院で成立させる予定。
 
②政府は農研機構各都道府県の優良な育種知見を民間に提供することを促進 するとしている。( 8条4項)。この「民間」には海外の事業者も含まれる。
 
③種苗法が改定されると、登録品種は自家増殖(採種)一律禁止になり、農家は登録された品種の育種権利者から対価を払って許諾を得るか、許諾が得られなければ全ての苗を新しく購入するしかなくなる。違反すると10年以下の懲役1000万以下の罰金
  
④いちご・芋類・サトウキビ・りんご・みかん等の果樹はこれまでのような自家増殖ができなくなる

⑤米麦大豆などの専業農家は、新しく購入した登録品種を3年ほど自家採種して使っているので、それが出来なくなると経営的に大きな打撃を受ける。
 
⑥日本は30年前までは国産100%の伝統的な種子を使っていたが、今日ではモンサントなど多国籍企業の種子を毎年購入し、価格も40〜50倍に上がっている。今度の改訂で、新品種に関してもこの傾向が続くことは確実。

⑦育種権利者が都道府県から企業に代わった場合、都道府県との契約内容をそのまま企業が引き継ぐ。しかし農家は都道府県と契約など交わしていないのが普通なので、これから新しく企業と契約を交わすことになり、毎年許諾の代価を支払うか、種苗を企業の言いなりの価格で買わざるを得なくなる。
 
⑧新品種を育種登録するには数百万から数千万円の費用がかかるので、新しい品種の登録は大企業しかできない。
 
⑨新品種であることの認証は、遺伝子解析では不可能。人的能力によるしかないが、膨大な品種の農産物を人的能力で識別することも事実上不可能。

なおこれに関して、山田氏は、「日本の種子(たね)を守る会」を主宰して討論会を開いています。
https://www.facebook.com/events/559943831545149/

以上ですが、種苗法改定は、日本の農家を守るためではなく企業利益のために制定されることは明白です。
その企業利益というのも、言うまでもなくモンサント(現バイエル)やコルテバ・アグリサイエンス(旧ダウ・デュポン)など、世界的なグローバル企業の収益を指しているでしょう。
ちなみに、種苗業界の売り上げランキング上位10位までは以下の通り。




このうち、米国の上記2社が占める割合は、65%、サカタのタネは2%に達しません。

この法案が通ると、2016年4月に改定された農協法と相まって、日本の農業が巨大グローバル企業の餌食になってしまうことは明らかです。
また財力の乏しい農家はどんどん廃業を強いられるでしょう。
いかに農協ががんばっても、これでは限界があります。
これはまさに、2018年12月に制定された水道民営化法や漁業法改正と同じ方向性で、日本国民の水と食の安全と自給を犠牲にして、外国資本に日本の公益事業や産業を売り渡そうという政策です。

今さら言うまでもありませんが、安倍政権は、この7年間で、移民政策、消費増税、貧困化政策、グローバル企業優先政策、非正規社員増大政策など、数々の亡国政策を取ってきました。
同時に、一方でたびたびの災害や、これから予想される災厄に対しても、財務省がPB黒字化目標を達成するために財政破綻の危機というデタラメを垂れ流してきた結果、国債発行による十分な財政出動が抑制され、インフラ整備や科学技術振興や社会福祉費や国防費も削らなくてはなりませんでした。
つまり、国民にとって何もいいことをやらなかっただけでなく、悪いことばかりやってきたのです。
この前も書きましたが、この政権は国境の大切さに対する意識がほとんどまったくありません。
鳩山由紀夫氏の言う「日本は日本人のためにだけあるのではない」というふざけた言葉を地で行っているために、国民を困窮の極致に追い詰めているのです。

この政権は、最長にして最悪の政権です。
早く引導を渡さないと、確実に日本は滅びますが、さて、次にどうするかについて、愚かな野党や自民党のポスト安倍候補に期待するわけにもいきません。
今の日本人は、外国から「死にかけたネズミ」と言われているそうですが、言い得て妙です。
戦後最大の危機状態にあるにもかかわらず、立ち上がる気概と結束力を喪失していて、消費増税のようなひどい政策に対しても、大規模なデモ一つ起きませんでした。

これを少しでも克服するには、感情的な支持・不支持、右左イデオロギー対立の不毛、植え付けられた先入観を、私たち自身が一刻も早く捨てることが必要です。
ある政策が国民のためになるかならないかについてきちんと議論する習慣を取り戻し、間違った政策に対しては、力を合わせて反対の声を上げましょう。

不肖わたくしも、言論人の端くれとして、この2月27日に、『まだMMTを知らない貧困大国日本 新しい「学問のすゝめ」』(徳間書店)という本を出版します。
この本では、いまの政治がいかに間違っているか、その結果どんなにひどい状態が起きたか、どのように考えを改めればそれが克服できるかについて、説いています。
少しでも皆さんのお役に立てれば幸いです。
また、筆者も呼びかけ人の一人として名を連ねている令和元年の4月1日に発足した政策集団『令和の政策ピボット』では、「反緊縮財政、反グローバリズム、反構造改革」を掲げて、超党派的に安倍政権の間違いを糺す政策を掲げています。
どうぞご一読されて、賛同者になっていただくことをお勧めいたします。
https://reiwapivot.jp/


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自ら米中の奴隷役を買って出る日本政府

2020年02月01日 17時07分14秒 | 政治


連日、武漢発の新型肺炎のニュースでマスコミもネットも持ちきりです。
さまざまな情報が乱れ飛んでいますが、今のところ、どこまで感染が拡大するのか、どれほどの被害者が出るのか、見当がつきません。
確実な情報が限られていますし、日ごとに状況が変わるし、深く長く中国に進出している日本企業の社員の去就や、産業の低迷下の危機など、微妙かつ予測不可能な問題もありますので、現時点であれこれ論評するのは差し控えたいと思います。
日本政府や医療関連機関が蔓延を最小限度に食い止め、一刻も早く事態の終息に向かってくれることを祈るばかりです。

ただ気になること、というか、腹立たしく感じたことが一つだけあります。
在中国日本国大使館の公式HPに掲載された「安倍晋三内閣総理大臣春節祝辞」についてです。
これが掲載されたのは、1月24日です。
すでに多くの批判が寄せられていましたが、まぐまぐニュースhttps://www.mag2.com/p/news/437867によれば、1月30日午後1時の時点でまだ掲載されていたそうです。
筆者が31日午後8時に検索したところ、ようやく削除されていました。
しかしもはや公表されてしまっているので、なかったことにすることはできません。
以下に全文を掲げましょう(上記まぐまぐニュースより)。

日本で活躍されている華僑・華人の皆様、謹んで2020年の春節の御挨拶を申し上げます。
今春、桜の咲く頃に、習近平国家主席が国賓として訪日される予定です。日本と中国は、アジアや世界の平和、安定、繁栄に共に大きな責任を有しています。習主席の訪日を、日中両国がその責任を果たしていくとの意思を明確に示す機会にしたいと思います。
本年夏には、東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。日中両国の選手が大活躍することを心から祈念します。両国は本年を、「日中文化・スポーツ交流推進年」として、人的・文化交流を一層推進していくことで一致しています。著名なアイドルグループ「嵐」に、この推進年の親善大使を務めてもらいます。国民間の交流が、相互理解・信頼を更に深める役割を果たすことを期待しています。
春節に際して、そしてまた、オリンピック・パラリンピック等の機会を通じて、更に多くの中国の皆様が訪日されることを楽しみにしています。その際、ぜひ東京以外の場所にも足を運び、その土地ならではの日本らしさを感じて頂ければ幸いです。同時に、更に多くの日本国民が中国を訪問し、中国への理解を深めて頂きたいと思います。
日中関係の発展のため、華僑・華人の皆様に、日頃から両国の間の架け橋として貢献して頂いていることに感謝申し上げると共に、新年が皆様にとり素晴らしい年となりますことを、そして皆様のお力添えのもと日中関係が更に発展することを心より祈念し、新年の御挨拶とさせて頂きます。
2020年1月
内閣総理大臣
安倍晋三<
/span>

全文が空々しいとしか言いようがありませんが、特に強いブーイングが寄せられたのは、「春節に際して更に多くの中国の皆様が訪日されることを楽しみにしている」という部分です。
この祝辞が掲載された24日には、新型肺炎の感染者は中国国内で883人、死者は26人と報告されており(他の情報によれば、こんなレベルのものではないらしい)、日本国内でも2人目の発症者が出ています。
この文章が仮に新型肺炎発覚前に起草されたのだとしても、発表の時点で控えることはできたはず。
平気でこういう文章を載せる日本官僚(大使館員?)の神経を疑います。

もちろんそればかりではありません。
ここには、日本政府のここ1年ばかりの対中姿勢がもろに出ています。

周知のように、アメリカが中国に対して経済制裁を仕掛けてから2年経ちますが、これは次第にエスカレートしていきました。
中国側も報復措置に出たものの、アメリカの措置が相当な痛手だったことは間違いないようです。
俗に貿易戦争と呼ばれていますが、これが、アメリカの衰えに乗じて中国が世界の覇者たろうとのし上がってきたところに生まれた、両国の覇権戦争の一角であることは、貿易以外のさまざまな対決姿勢から見て明らかです。

トランプ政権は本気で中国を叩こうとしています。
さてその過程で、これまでの対日姿勢を一変させて(うわべだけですが)、「金持ち国」日本にすり寄ってきたのがこの1年ほどの中国です。
この豹変ぶりを見ていると、アメリカによって受けている中国のダメージが相当のものであることがうかがえます。

お人好し日本はこの「すり寄り」を、長い間の確執が雪解けに向かったものと勘違いして、日中友好・親善の兆しとして受け止め、歓迎しています。
古くからの親中で有名な二階自民党幹事長などは、こんな言葉まで吐いている始末です。
親戚の人が病になったという思いで日本人みんな思っていますから、中国の皆さんが一日も早く奮起をして元気になって頂きたいと願っております。出来るだけのことを国を挙げて対応しようとしています。必ず中国のお役に立てるように、結果を出せると思っています
多くの大企業が中国に進出しているので、それを集約する利権屋政治家のたわごとと言ってしまえばそれまでですが、「親戚の人が病になったという思い」を「日本人みんな」が抱いているはずがありません。
2019年10月に言論NPOと中国国際出版集団が行なった「第15回日中共同世論調査」の結果によれば、中国に「「悪い印象」を抱いている日本人が84.7%に昇っています。
http://www.genron-npo.net/world/archives/7382.html

昨年も中国の公船が尖閣諸島周辺の領海侵入を繰り返していますし、ロシアと合同で爆撃機が領空侵犯すれすれの行動をとっています。
また沖縄や北海道への合法的な領土進出を進めていることも多くの日本人が知っています。
「南京大虐殺」も中国の巧妙な情報戦によって、国際常識として定着しつつありますね。
さらに中国人観光客のマナーの悪さについても有名です。

何よりも、中国共産党の日本に対する大戦略の要の一つは、日米分断にあります。
ですからこの1年ほどの「すり寄り」も、お人好し日本から金を引き出し、同時に政治的にもうまくこちらの言うことを聞かせてやろうという魂胆見え見えだと考えるのが、まともな判断というものです。
そのことを自覚せずに、先のような「総理大臣 安倍晋三」名義の声明を発表する在中日本大使館は、たとえ新型肺炎の問題がなくても、ノーテンキそのものと言うべきでしょう。

これを単なる社交辞令と見なすことはできません。
文中、「今春、桜の咲く頃に、習近平国家主席が国賓として訪日される予定」とありますが、国賓には天皇陛下が直接対面されます。
当然、習近平主席と「和やかに握手し、楽しく食事する」ツーショットが撮られ、それが世界に発信されます。
そうすれば、世界、特にアメリカ政府はどういう印象を抱くでしょうか。
「そう、日本は中国につくのね」と思うのではないでしょうか。
これは同盟国の裏切り行為でといっても過言ではありません。
同時に天皇陛下の政治利用でもあります。
また、85%の国民が悪印象を抱いている相手国の元首を「国賓」として招くことは、国内的にもけっして望ましいことではありません。
筆者は確信しますが、いま「習近平主席を国賓として招くことに賛成ですか」という世論調査をやったら、圧倒的多数で反対と出るでしょう。
しかしマスコミがそれに踏み切らないのは、結果が想定できるのであえて避けているにちがいありません。

習主席の国賓招待は、「この時期には適切でない」とかなんとか適当な理由をつけて、断固中止すべきです。
不謹慎な言い方で恐縮ですが、新型肺炎が流行しつつある今こそはそのチャンスなのです。
またこれを奇貨として、中国に進出している日本企業も撤退を進め、落ち込んでいる国内需要の開発に努めるべきです。
右顧左眄を繰り返してきた日本外交も、ここらでぐっと身を引き締め、真の独立国としての毅然たる態度を内外に示すべきではないでしょうか。
今の安倍政権にそれを期待するのがそもそも無理なのかもしれませんが。

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災害対策、防災対策にMMTを!

2019年11月07日 23時08分21秒 | 政治


台風大雨被害からの復旧や復興が遅れています。
直接の理由はお分かりと思います。
わずか1か月余りの短期間に台風15号、19号、東日本の大雨と、これだけ押し寄せてくれば、被害の重なった地域ではライフラインの復旧すらままなりません。
しかし必ずしもダブル、トリプルの被害を受けずにそれぞれ個別に被災した地域に限っても、関東甲信越東北の被災地全般を見渡せば、ため息の出るほど復旧・復興に手間がかかることが想定されます。
倒れた高圧電線や電柱による停電、土砂災害による寸断された道路や倒壊家屋、各河川の堤防決壊や氾濫が引き起こした水害による鉄道や橋の崩落、浸水で使えなくなった家屋・家財、田畑の被害など、後始末だけでも大きな人手とコストを要します。
まして被害に遭った人たちの生活や産業の再建には莫大な労力と費用が掛かるでしょう。
一説によると、総被害額は5000億円に上ると言われています。

この復旧・復興の遅れは、昨年7月の西日本豪雨、9月の大阪地震の際にも指摘されました。
一つの大きな理由は、長年にわたる公共事業の削減によって、中小の建設業者が倒産・廃業に追い込まれたためです。
復旧しようにも人手が不足し、高い生産技術があっても、うまく使いこなせる人がいません。
おまけに昨年から今年にかけての場合、東京五輪準備のために多くの建設業者が取られ、とても対応することができないのです。
昨年の12月には、こんな報告もなされています。

広島県では工事が必要な被災箇所は約7千件に上ると見込んでおり、山間部で重機が入れないケースなど難易度が高い現場も多い。人手不足で人件費が高騰する傾向がみられ、業者からは「経費がかかる分、利益が圧縮される。コストに見合わない」「発注が多すぎて、人繰りがつかない」という声が上がっている。岡山県と愛媛県では不調の発生率は10%以下に抑えられているが、今後も工事が増えていく中で危機感は強い。両県では、多くの業者が入札しやすいように設計金額の要件を緩和。人手不足に対応するため近隣の工事をまとめて発注し、1人の技術責任者が複数の現場を同時に監督するのを認めている。》(太字は引用者)

一般に、戦争や大災害があると、需要が伸びます。
戦争の場合は、それ自体が莫大な費用を必要としますし、日本のように敗戦の痛手を受けたケースでは、復興需要が発生します。
また大災害の場合でも大きな潜在的需要が生まれるので、それに応えられる供給力さえあれば、皮肉なことに経済成長のきっかけになることが多いのです。
ところが近年うち続く大災害の場合、復旧・復興のための供給力が決定的に不足しています。

もちろん、被害に遭った各家庭や企業に十分すぎるほどの経済力があれば、もしかしたら復興需要を満たすだけの供給力が創出されるかもしれません。
建設業者の経営者が従業員にうんと高い給料を払うことにして、高度人材を集め、生産性の高い技術を駆使するとか。
それだけの資金を提供できるだけの消費者(被災者)がいさえすれば、の話です。
しかし、それにはどう考えても限界があります。
貧困化している今の日本で、そんなお金持ちばかりがいるはずがありません。
また、橋や道路は地方自治体が復興に当たらなくてはなりませんが、地方自治体はただでさえ財政難で悩んでいます。
そこにこの度の連続災害に遭遇したことは、まさに「泣きっ面にハチ」でした。

さてどうしたらいいでしょう。
もちろん、中央政府の支援に頼るほかありません。
その中央政府は何と言っているでしょうか。

首相は「必要があれば補正予算も含めてしっかりと財政措置を講じていく」と表明した。政府は今年度当初予算で確保した予備費5千億円のうち、すでに使途が決まっている230億円を除いた部分を活用した上で、補正予算案の編成に着手する。自治体への普通交付税について首相は「繰り上げ交付を迅速に実施するように」とも述べた。https://www.sankei.com/politics/news/191015/plt1910150047-n1.html

一見、やる気満々のようです。
ところがです。
昨年の西日本豪雨災害の後、次のようなことが確認されました。

厚生労働省は、2018年9月に公共施設や病院などにつながる全国の主要な浄水場3521カ所を調査。その結果、22%に当たる758カ所が浸水想定区域にあり、そのうち76%の578カ所は入り口のかさ上げや防水扉の設置などの対策がされていなかった。土砂災害警戒区域にも542カ所あるが、うち496カ所が未対策だという。

さて1年経ちました。
今年の台風19号による水害では、次のような、同じ数字が報告されています。

河川の氾濫(はんらん)などで浸水する恐れがある場所に設置されながら、浸水対策がされていない浄水場は全国で578カ所にのぼっている。台風19号の大雨では、福島県いわき市の平(たいら)浄水場が水没し、最大で約4万5千戸が断水した。災害からの復旧を支えるインフラの備えが遅れている。

これは、1年たっても、問題の浄水場に対して新たな整備が行われていないことを示しています。
こんな調子では、意気込みだけ表明されても信用できません。
しかも「必要なら」と仮定を置いているだけですし、補正予算もどこまで組めるのかおぼつきません。
なにしろ、鉄壁の緊縮財政というこれまでの「実績」がありますから。

エコノミストの斎藤満氏は、次のように述べています。
政府は遅ればせながら、にわかに復興支援に積極的な姿勢を見せ始めました。日銀が支援融資を検討するほか、政府はこれを機に積極財政に転換した模様です。(中略)幸い財務省は、このところの超低金利を利用して、18年度中に52.5兆円も国債を前倒し発行し、その資金をある程度プールしています。財政資金はいつでも活用できる状況にあります。これで災害復旧が進めば、それなりに生産やGDPが増えるはずです。https://wezz-y.com/archives/70280?utm_source=onesignal&utm_medium=button&utm_campaign=push

しかし国債を災害対策にどこまで充てるのか、まったく怪しいものです。
というのも、使える資金はあると言ったその舌の根も乾かないうちに、斎藤氏は、次のようなことを言っているからです。

政府が支援のために財政支出を拡大するとしても、国にお金があるわけではないので、それは国民の税金や、将来世代からの借金によって賄えることになります。》(同前、太字引用者)

要するに政府の支援金は国民の税金から拠出し、不足分は国債(いわゆる国の借金)で賄うと言っているわけです。
「国にお金があるわけではない」という言葉がそれをよく表していますね。
これは、彼が財政支出の仕組みをわかっていないことを表しています。
しかし何も斎藤氏だけが悪いわけではありません。
日本国民のほとんどが、いまだに財政支出の主たる部分は税金で賄い、足りない分はやむなく国債を発行して間に合わせると思いこんでいます。
つまり公共事業や社会福祉事業、災害対策費などを捻出するのに、国民からカネを集めて行うと信じているのです。
国債もこんなに残高が積み重なっているから、「孫子の代に迷惑がかからないように」できるだけ節約をして、などと誰もが考えるのでしょう。

しかしMMT(現代貨幣理論)によれば、財政支出のためのカネは、政府がキーストロークだけでいくらでも創出できるのです。
そこにはインフレ率以外の制約はありません。
これは政策判断以前の、単なる会計上の事実です。
なにしろ政府には通貨発行権があるのですから。
「国にお金があるわけではない」などというのは、例によって、財政を家計の財布に例えるトリックを使った財務省に騙されているにすぎないのです。

さてここに、激甚な災害に見舞われている国民がいて、財政難のためにその対策ができずに悩んでいる地方自治体があります。
非常時です。
政府は支援のために5000億円取ってあるだの、補正予算を組むだのと大げさに騒いでいます。
おそらく補正予算なるものも、緊縮財政の枠をはみ出さないようにセコイセコイ金額しか積まないのでしょう。
どうせそうに決まっています。
国会議員たちもほとんどが騙されているのですから。
しかしこれは、あそこにいくらあるからあれを使って、というような話ではありません。
非常時ですよ。
中央政府にだけ許された通貨発行権を大いに行使して、復旧・復興のために、必要十分な数字をはじき出し、それを直ちに特別予算として組めばよいだけの話です。
けっして税収から何とか、などと考えてはなりません。
人手不足が問題なら、国が自ら中小企業に潤沢な補助金を提供して、企業はそれを人材登用に充てればよい。
こういうことをしたって、何も高インフレになどなるわけがありません。
欠損してしまったものを埋めるだけなのですから。
ちなみに東日本大震災というあれほどの非常時に、政府はいくらでもできるはずの財政出動をせずに、あろうことか、国民から(それも被災者まで含めて!)復興税を徴収したのです!

ところで、災害大国ニッポン。
このような危険は、これからも年を追うごとに増大していくことが予想されます。
こういう国土から逃げるわけにいかない以上、私たちは、永遠にそれに対する備えをしていかなくてはならないのです。
「今受けた被害のために」だけではなく、「これからの子どもたちが被害に遭わないように」財政支出をし続ける必要があります。
単に、災害が起きた後の場当たり的な応急処置で済ませてはなりません。
今年度は災害対策のためにこれだけ使いました、来年度は未定だからわかりません、では、いつまでたっても国土強靭化が果たせません。
単年度会計のしくみから改めていく必要があるでしょうね。

これを機会に、財務省もいいかげんに「狂気の緊縮路線」をすっぱり捨て、今後に備えて地方インフラ、防災インフラなどハード面の充実のために、長期計画を立てておおらかにキーストロークを叩きましょう。



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横浜のカジノ誘致に反対すべき本当の理由

2019年09月05日 21時08分52秒 | 政治



横浜市が8月22日、山下埠頭へのIR(カジノを含む統合型リゾート)誘致を表明しました。
また9月3日の横浜市議会で、市はIR誘致に向けた34億円の補正予算案を提出しました。
林文子市長は質疑で「横浜の将来への危機感からIR誘致を決断した」と言及し、観光や地域経済をけん引する事業だ」とし、市独自の調査を進めると語りました。

これに対しては、すでに様々なニュースが流れています。

最も目立ったのは、横浜港運協会会長で「ハマのドン」と異名をとる藤木幸夫氏が「顔に泥を塗られた」と怒りをあらわにしたことです。
藤木氏が会長を務める横浜港ハーバーリゾート協会は、カジノはいらないとして、国際展示場、F1、ディズニークルーズの拠点化計画を提出しています。

これだけ聞くと、地域を巡る利権争いのように見えますが、ことはそれにとどまりません。

もともとIRの候補地は3か所に絞ることになっていて、これまでに大阪市(府)、和歌山市、佐世保市で首長による誘致の正式決定が発表されていました。
ところが、これに加えて、苫小牧市、岩沼市、千葉市、東京都、常滑市、北九州市などが誘致に前向きで、それに横浜市が加わったわけです。
3か所に対して10都市ですから、これから誘致競争はますます激しさを加えるでしょう。
しかし、横浜が名乗りを上げたとなると、首都圏内の伝統ある大港町ということで、大いに有力視される可能性が高いでしょう。

じつは横浜が有力視されるのには、そうした表面的な理由とは別に、次のような背後事情があると言われています。

地元有力企業のトップであり、故小此木彦三郎元建設相ら政治家との太いパイプで知られた同氏(藤木氏)への配慮が市当局の決断を阻んでいた。
それが一転したのは、横浜選出の菅義偉官房長官が誘致にゴーサインを出したからだとされる。小此木氏の秘書経験が、菅氏の政治家としての原点であり、藤木氏もまた長年にわたる支援者でもあった。
今や大官房長官である菅氏は、藤木氏との決別も辞さずの決断をしたというのだ。この決断が林市長の背中を押したのではないか。

https://www.zakzak.co.jp/soc/news/190827/pol1908270003-n2.html

また、次のような記事もあります。

横浜へのカジノ誘致の仕掛け人をあげるとするなら、菅官房長官ということになろう。週刊新潮 2015年ゴールデンウイーク特大号に以下の記述がある。

 昨年夏前、東京・永田町からほど近いホテル内の日本料理屋で数人の政界関係者による会合が催されていた。
 座の主役は、2012年12月以来、安倍内閣において官房長官の重責を担い続ける菅義偉氏だ。(中略)
 その場にいた政界関係者の1人によれば、会合の途中、雑談の流れの中で「統合型リゾート整備推進法案(カジノ法案)」の話になった。
 「やっぱり、候補地はお台場が有力なんですかね?」政界関係者の問いに、菅氏は顔色を変えずに応じた。
 「お台場はダメだよ。何しろ土地が狭すぎる」(中略)「横浜ならできるんだよ」

この会合が開かれたのが2014年の夏。ちょうど同じ年の8月16日の日経新聞に以下の記事が載ったのは偶然ではないだろう。
京浜急行電鉄は15日、カジノやホテルなどで構成する統合型リゾート(IR)を整備する構想を正式発表した。横浜市の山下埠頭を最有力の候補地と考えているもようで、実現すれば数千~1万人単位の雇用が生まれそうだという。

https://www.mag2.com/p/news/412835/2

そういえば、この9月17日から、京浜急行電鉄は、品川から横浜のみなとみらい地区に「京急グループ」として本社が移転します。
横浜を貫いて走る京急なら当然と思うかもしれませんが、拠点を横浜に置くことが、IRに重点を置くことと無関係とは言えないでしょう。
そしてこの移転に、横浜に縁の深い菅官房長官の息がかかっているという推測も成り立ちます。

さらに、菅官房長官のすぐそばには安倍首相とトランプ大統領との関係が控えています。

非営利・独立系の米メディア「プロパブリカ」が報じたところでは、2017年2月、ワシントンにおける日米首脳会談で、トランプ大統領から安倍首相にカジノを日本につくるよう要請があった。
ラスベガス・サンズを経営するカジノ王、シェルドン・アデルソン氏も同じ業界のCEO二人とともにこの首脳会談にあわせてワシントン入りし、安倍首相と朝食をともにしていた。(中略)
カジノ会社にとって日本は、世界で最も魅力的な「未開拓市場」の一つである。アデルソン氏は2014年5月にサンズ社が運営するシンガポールのカジノへのツアーを安倍首相のために手配するなど、日本政府に働きかけを続けてきた。

https://www.mag2.com/p/news/412835

林横浜市長は、こうした事情を聞かされて自分でも乗り気だったに違いありません。
しかし2017年の市長選挙の時は、選挙に勝つために「カジノは白紙撤回」と訴えました。
ところが、2年後の今年、手の平を返したように、住民の意向を無視して、平然とIR誘致を決定したのです。
じつは2018年に出された横浜市中期4か年計画には、すでにIR誘致の可能性が言及されていました。
筋書きはすでに出来上がっていたのですね。

ライターで編集者の石田雅彦氏は、次のように語ります。

そうした市の姿勢に対し、市民の間には不信感が募る。中期計画に関するパブリックコメントの約2割がIRに関する内容で、その94%がカジノを含むIRや市民の声を無視したIR計画推進に否定的なものになった。
横浜市はその後、IR誘致の情報収集や業者選定と委託などを行い始める。5月にはIR検討調査報告書を公表した。林市長は7月上旬、政府のIR整備の政令発表と同市の報告書の結果を受けた形で、もし仮に横浜にIRを誘致した場合、カジノを含むのは当然のこととし、誘致に関する住民投票で賛否を問うことはないと明言する。

https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20190831-00140545/

筆者は、横浜市の西区で生まれ育ちました。
北部に移ったいまも横浜在住者です。
IRの候補地とされている山下埠頭の周辺に小さいころから何度も行ったことがあります。
周辺には、山下公園や港の見える丘公園、元町商店街や山手の丘など、懐かしい場所がたくさんあります。
ですから、一市民としても、このよくなじんだ地域に富裕層をカモにした公認のカジノ(賭場)が出来て、依存症が増えたり、反社会的な勢力との結びつきが育つのを座視しているわけにはいきません。
市長は住民投票をやる気はないと言っているのですから、そう言い張る限り、リコール運動に一票を投じるつもりです。

しかし筆者は、そうした愛郷心から出た行動もさることながら、本当に問題とすべきはそこではないと思っています。
言い換えると、横浜にカジノが出来さえしなければいいのか、他なら構わないのかと問うべきなのです。
依存症が増える危険とか、反社会的勢力と結びつく危険といった問題点は、どこにカジノを置こうが転がっています。
またこれまでも、パチンコ、競輪、競馬、競艇など、およそギャンブルと名の付くものには、そうした危険がいつもつきまとっていました。

この問題の本質は、日本政府が、緊縮財政に固執して国内供給に見合う需要を作り出すことに失敗し、諸規制の緩和によって、あらゆる種類の外資を参入させてしまったことにあります。
つまり国内産業を健全に育てることを怠ってきたために、ガイジン様の資本やインバウンドに頼らざるを得なくなった情けない後進国状態を象徴しているのです。
これはIR法だけではなく、水道民営化法、移民法、種子法廃止……など、みな同じです。

カジノは、そのあがりの7割を営業主体であるカジノ経営者(ラスベガスのサンズ社など)が取り、15%を国が、残りの15%を自治体が取る、という約束になっています。
またも国富(国民の稼ぎ)が外国資本にチューチューと吸い取られていくさまがありありと見えるようですね。
15%のおすそ分けに与って、横浜市は財政難を克服できるのか!
また他国の例を見ても、水道民営化と同じように、カジノ経営は失敗する可能性がある。
その場合でも、外資はさっさと逃げ出すでしょう。
コストパフォーマンスのつけは、自治体がもっぱら背負うことになるでしょう。

林さん(菅さんと言った方がいいのかな)、きらびやかに「ミナトヨコハマ」を飾り立てることばかり考えず、地道に投資や消費を伸ばすことを考えたらどうでしょうか。
聞けば山下埠頭の向こう側の本牧埠頭では、今年の5月、2年10か月ぶりに、世界最大のコンテナ船が寄港して荷役を行なったそうです。
こちらの方の港湾整備にもっともっと力を入れてほしいですね。



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アメリカの「安保破棄」に備えよ!

2019年06月26日 12時01分13秒 | 政治



ブルームバーグ6月25日の記事によると、トランプ米大統領が最近、日本との安全保障条約を破棄する可能性についての考えを側近に漏らしていたそうです。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-06-25/PTMUOE6TTDS801

これは予想されたことでした。

トランプ大統領は、以前から日米安保条約の片務性(日本が攻撃されれば米国が援助することを約束しているが、米国が攻撃された場合に日本が支援することは義務付けられていない)について不満を漏らしていました。
また、NATO加盟諸国に対しても、経費負担が不公平であると言い続けていますね。
大統領当選直前にもトランプ氏は、在日米軍駐留経費について、日本が全額負担すべきだと主張していましたが、さすがに最近では言わなくなりました。
日本が75%(2014年時点で約6700億円)も負担していることを知ったからでしょう。

経費の問題はともかくとして、今回、トランプ氏が側近に「安保破棄の可能性」を語ったとすれば、それは、アメリカン・ファーストを徹底させようという、ビジネスマンらしいそれなりのロジックに基づいています。
もちろん、事実だとしても、側近に漏らしたレベルの問題ですから、これが直ちに実際の破棄に結びつくかどうかはわかりません。
言葉をあまりに過大に受け取って、大騒ぎすることには慎重でなければなりません。
しかし、これがトランプ氏の本音であることはたしかです。
彼は来日した折、日米同盟はかつてなく確固たるものになったといった意味の発言をしていますが、単なる公式的なリップサービスと見るべきです。
なぜなら、自国の安全保障は自国が担うべきであるというのは、世界の常識ですし、アメリカは中国との覇権戦争には勝たなくてはならない必然性を持っていますが、日本のために多くの米兵の命を危険にさらし多額の軍事費を費やすだけの必然性などは持っていないからです。

たとえばアメリカは、北朝鮮が核弾頭を積んだICBMを持つことは断じて許さないでしょうが、中距離核を持つことを阻止するだけの理由が格別にあるわけではありません。
現にトランプ氏来日前の5月4日、北朝鮮は複数の飛翔体を発射したと韓国が発表しましたが、トランプ氏はその報道を問題にしませんでした。
そしてよく知られているように、中距離核は日本になら簡単に届きます。

もともとこのトランプ大統領の側近への発言は、事実だとしてもびっくりするようなことではなく、前大統領のオバマ氏が東アジアに対して取っていた姿勢の延長上にあります。

さて、この発言を知って、すわ日米同盟の危機だ、と慌てる向きもあるかもしれません。
もっとも、トランプ発言に本気かつ真剣に立ち向かい、それを奇貨とする手も考えられないではありません。
しかし、もし今頃慌てるなら、遅きに失すというべきで、じつは私たちは、とっくに独自の国防体制を充実させておかなくてはならなかったのです。
中国の露骨な膨張主義に対して、それに見合うだけの計画も予算も組まず、いざとなればアメリカ様が守ってくれるという空しい期待に長年依存してきた歴代政府の怠慢と国民の油断こそ、責められるべきです。

さらにブルームバーグの記事を引きましょう。

 《関係者によれば、トランプ大統領は沖縄の米軍基地を移転させる日本の取り組みについて、土地の収奪だと考えており、米軍移転について金銭的補償を求める考えにも言及したという。また、トランプ氏が日米条約に注目したことは、世界の他の国々との条約においても米国の義務を見直そうという広範な検討の端緒である可能性もあると関係者2人が述べている。(中略)
大統領が米議会の承認なしにいったん批准された条約を破棄できるかどうか、米国の法律では決着していない。


こうして、日米安保は、いつ破棄されてもおかしくないのです。
いまの日本政府に、それに対する心構えができているか。
答えは否定的たらざるを得ません。
この場合、単に、中国の軍事力に拮抗しうるだけの自主防衛力の準備がまるで整っていないことだけが危惧されるのではありません。
二つの点に注意を促しておきたいと思います。

①いまの緊縮病に冒された財務省、政治家、学者、マスメディアに、自主防衛力増強、国防予算大幅拡大の必要性を説いても、とうてい聞き入れるとは思えないこと。
②8月以降に予定された日米通商交渉において、トランプ政権は、「条件次第では安保破棄も辞さない」というカードを切って迫ってくる可能性が考えられること。


ちなみに自主防衛力増強と言うと、すぐ「日本も核武装すべきだ」といった極端な「べき論」が飛び出しますが、ネトウヨ諸君、ここは少し冷静に。
日本の核武装など現実的ではないことは、次のいくつもの点によって明らかです。
①アメリカがこれ以上核拡散を許すはずがありません。これは、北朝鮮やイランの例によってわかります。それとも、アメリカをも敵に回す覚悟でそれに踏み切りますか?
②国際社会に逆らって核拡散防止条約(NPT)からの離脱を決断する必要があります。
③たとえ核兵器の生産が技術的に可能だとしても、実用化に当たっては、陸上基地や車両や爆撃機からの発射などは種々の理由から問題点をクリアすることがきわめて困難。唯一可能性があるのは、原子力潜水艦への搭載ですが、これにも現状では時間やコストや技術面で数々の困難が伴います。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E6%A0%B8%E6%AD%A6%E8%A3%85%E8%AB%96#%E7%B5%8C%E6%B8%88%E7%9A%84%E6%8A%80%E8%A1%93%E7%9A%84%E5%95%8F%E9%A1%8C
④唯一の被爆国である日本が核保有国になるには、国内の反対のみならず、国際的評判を一気に落とすことを覚悟しなければなりません。

自国核武装論などしなくても、他の軍事技術や兵力の増強によって、防衛体制を固めることは可能です。
もともと軍備拡張は、必ずしも戦争のためにするのではなく、相手国に脅威を示して相手のやる気を殺ぎ、外交を有利に進めるためにあります。
その場合、核が唯一の手段というわけでもありません。
万が一、敵国が核の使用に訴える気配を見せたら、たとえば、ドイツやイタリアのように、アメリカとの間で核シェアリングの合意を取り付けることも一つの手でしょう。

いずれにしても、もはや日米安保に頼れる情勢ではありません。
沖縄始め世界に類のない広大な面積比を占める在日米軍基地には、徐々に撤退してもらうべきです。
アメリカもそれを拒否しないでしょう。
代わりに一刻も早く自衛隊を拡充させ、国防体制を固める必要があります。
しかし、その大きな障害になっているのが、財務省の緊縮路線です。
観念的な核武装論などに耽るよりは、まずはこの緊縮病をどうやって打ち破るかに国民の力を結集させるべきでしょう。

また、いまの日本政府に、アメリカの通商交渉のシビアな攻勢に対等に立ち向かえるだけの力があるとも思えません。
とりあえず、日本の交渉当事者たちが、「安保破棄」の脅しなどでおたおたしないように、腹をくくって臨んでもらうよう、祈るしかないでしょう。
アメリカは仲良し同盟の相手などではなく、国益のためなら何でも打ち出してくる国だということを再確認しましょう。

以上述べてきたことの一部は、筆者も呼びかけ人として名を連ねている、政策集団「令和の政策ピボット」の政策にも書かれています。
https://reiwapivot.jp/



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80%AB%E7%90%86%E3%81%AE%E8%B5%B7%E6%BA%90&qid=1554280459&s=gateway&sr=8-1

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