小浜逸郎・ことばの闘い

評論家をやっています。ジャンルは、思想・哲学・文学などが主ですが、時に応じて政治・社会・教育・音楽などを論じます。

政府の赤字は国民の黒字 財務省を信じず、MMTを学ぼう 

2020年07月21日 22時51分06秒 | 経済


以下の文章は、産経WEBからの求めに応じて書かれたもので、MMTについての両論併記として掲載され、新聞紙上にも載るそうです。相手は財務省系。この期に及んで何を書くのか楽しみですが。

コロナ禍は人災である。ここでコロナ禍とは、疫病による感染者、重症者、死者の増大を意味するのではない。政府・自治体の自粛要請に国民の大多数が積極的に従ったことによる恐るべき経済的ダメージのことだ。
すでにこのダメージの結果は歴然と出ている。4月の鉱工業生産指数は前月比で9.1%落ち込んで、これは東日本大震災の時よりも悪くなっている。日銀短観は3月がマイナス8ポイントであったのに対し、6月ではマイナス34ポイント。1~6月の輸出は、前年同期比でマイナス15.4%、輸入はマイナス11.6%。
帝国データバンクによると、今年の倒産件数は1万件を超し、自主的な休廃業などは、2万5千件と言われている。8月に4~6月期のGDPが出るが、目もくらむような下落が予想される。そして忘れてはならないのは、昨年10月の消費税増税によって、すでにGDPがマイナス7.1%という驚くべき落ち込みを見せていることだ。
このまま行くと日本経済は大恐慌に突入することが確実なのだ。
これに対処する方法はあるのか。政府はコロナ対策として第2次補正予算を組み、ようやく32兆円の真水を注入することを決定したが、こんな程度で足りるはずがない。
自民党の安藤裕衆議院議員が会長を務める「日本の未来を考える勉強会」議員連盟では、国債100兆円の発行と、消費税をすべての名目で0%にすることを提唱している。来るべき恐慌への備えとしては、これは当然と言っていい最低限の提案だ。加えて25年も続いた長期デフレから脱却し、政府が目標としていたゆるやかなインフレ(2%)を達成するには、こうした措置をさらに継続させる必要があるだろう。

さてこうした一見大胆な提案がなされると、必ず出てくるのが次の二つの疑問である。
①すでに「国の借金」が1000兆円をはるかに超えているのに、そんなに財政出動を拡大させたら財政破綻するのではないか。
②消費税をゼロにして、税収減を何によって補うのか。大胆な財政出動の財源はどうするのか。
これらの疑問は、財務省が長年国民を騙してきたデマに発するものだ。このデマの浸透は徹底していて、一般国民は言うに及ばず、政治家、学者、マスコミがこぞって緊縮財政を支持する羽目になってしまった。ところが財務省自身のホームページには、なんと、国債の発行によって財政破綻することはあり得ないと書かれているのだ。

昨年、MMT(現代貨幣理論)が日本に〝上陸〟し、上記の疑問がすべて根拠のないものであることを証明してみせた。
まず「国の借金」と呼ばれるものの正体は、政府がこれまで市場に資金供給してきた額の履歴に過ぎない。つまり返す必要のないお金であって、それはそのまま民間の預金として計上される。帳簿上、赤字とされはするが、政府の赤字は民間の黒字なのだ。
そうは言っても負債は負債なのだから、期限が来たら返さざるを得ないだろう、将来世代にツケは残せないと普通の人はつい考えてしまう。誰もが知っているテレビの売れっ子で、評論家まがいの人々も同じ間違いを垂れ流して、国民の思い違いを絶えず助長している。しかし事実はそうではなく、期限が来たら、古い国債を新しい国債に取り換えるだけなのだ。
したがって、政府は今回のような緊急時に限らず、いつでも必要十分なだけ国債を発行することができ、税収に頼る必要などないのである。なぜそんなことができるかと言えば、政府には通貨発行権があるからだ。ただし、これはMMTがしつこく断っていることだが、国債発行にまったく制約がないのかと言えば、そうではなく、インフレ率がある水準を超えた場合(たとえば5%以上)には、発行を抑制する必要が出てくる。市場に貨幣があふれ、貨幣価値が下落し物価が高騰して国民生活が苦しくなるからだ。
しかし、もしこういう事態になったら、デフレ期に増税をするという愚か極まる政策(インフレ対策)を取ってきた政府にとって、物価高騰の抑制は得意中の得意なのだから、日銀と二人三脚で、増税をしたり、国債の売りオペによって市場の余剰貨幣を吸い上げたりすればよいわけだ。

ところで、「財源」の問題である。大多数の国民は、国の歳出は税収によって賄われていると思っているが、これは大きな誤解である。「社会保障の充実のために増税がどうしても必要だ」などと言われると、ただでさえここ25年間実質賃金の低下で苦しんできた国民も、さらなる徴税をしぶしぶ我慢してしまう。こういうバカな目にあわされるのは、税収が国の歳出を支えているという誤解から抜けきれないからだ。
すでに述べたように、インフレ率という制約以外に、国債発行額に上限はないのだ。現に今年度の予算(一般会計)のうち、税収(63兆円)の占める割合は、49.5%と、半分を割り込んでいる。おまけに特別会計予算もある。歳出合計は約250兆円で、これを加えて考えれば、税収から支出されているのは、約四分の一に過ぎない。
そして、こちらの方が大事なのだが、MMTでは、スペンディング・ファーストと言って、ある年の税収を実際に使う前に、財務省は短期証券のかたちで日銀からお金を「借り」、どんどん先に使っていることを指摘している。これもまたただの事実である。
税の機能は、国の歳出に充てるというよりも、「円」という通貨単位での納税を政府が認めることによって一国の経済活動を保証すること、および、景気の動向の調整のために増減税を行なうこと、そして所得の再分配、などである。
消費税をゼロにしても、政府は少しも困らない。その分だけ国債で補えばよい。現在のような緊急時こそこの措置がぜひ必要である。年収220万円の人は、年間200万円を消費し、20万円を消費税で取られるところを、消費税20万円も消費に回せるのだ。しかも政府に吸収されている全額が市場に出回り、その分だけ国民の経済活動は活発になる。

 MMTの基本は事実を述べているだけで難しくない。ぜひこの機会にマクロ経済の基本を学びましょう。


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コロナ騒ぎで頭の病が悪化したインテリ愚民(その2)

2020年05月13日 23時31分25秒 | 経済



少しタイミングのずれたお話になります。
しかしこの話は、じつは歴史的なタイムスパンを見込む話なのです。

前回は、いわゆる「学者」を相手にしました(まだ愚民学者は山ほどいて、とてもすべては扱いきれません)。
今回は少し方向を変えて、一律10万円給付の話があった時に、国会議員、地方議員、公務員は受け取るなと真っ先に言い放った橋下徹氏をまず問題にしましょう。

https://www.excite.co.jp/news/article/Real_Live_200019157/
《橋下氏は4月21日更新のツイッターで、「給料がびた一文減らない国会議員、地方議員、公務員は受け取り禁止!となぜルール化しないのか」と疑問を呈し、「それでも受け取ったら詐欺にあたる、懲戒処分になると宣言すればいいだけなのに」と罰則規定の制定にも言及した。》

橋下氏はそれだけでなく、自分は9人家族だから、90万円ももらってしまうので受け取れないとも表明しました(その後物議をかもして受け取ることにしたそうですが)。
安倍首相もこれに影響されたか、「私は受け取らない」と表明、この「自粛」ムードが次々に地方自治体にも波及しました。
たとえば山梨県の長崎幸太郎知事は給料を1円にすると言い、続いて愛媛県の中村時広知事が全額返上を表明したほか、北海道の鈴木直道知事、福岡県の小川洋知事らも減額の意向を示しました。
https://www.mag2.com/p/news/449885

また、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた国の10万円の一律給付に合わせ、石川県志賀町は、町民1人につき2万円を上乗せする独自の給付制度を設け、町職員の給与を減額するなどして財源とする方針を固めました。減額は6月から来年3月までの10カ月間で、小泉勝町長は毎月2割、一般職員約260人と副町長、教育長が毎月1割カットだそうです。
https://www.asahi.com/articles/ASN4S6GBHN4SPISC018.html?fbclid=IwAR09H03RU9MohT8pphJO2bXgkEcSCqcoDaEti3OtcBwmgkxSf3GHCJ_yIHo

最後の例は、苦しい町財政の限界内での苦肉の策として、一概に非難できない部分を含んでいますが、いずれにしても、以上挙げた主張や措置は、すべて根本的に誤っています
言うまでもなく、火付け役である橋下氏が最も罪が深い

橋下氏のこの提案の根底には、次の2つの思惑が横たわっています。

①国会議員半減、公務員減らしという、維新の会発足当時からの政策綱領の延長上にあり、いわゆる「身を切る改革」を国民に示すことによって、政治家の「良心」のありどころを見せつける。
②高給取りや安定した給与所得者、富裕層に対する一般国民のルサンチマンを利用して、心情的な共感を誘い、危機に乗じて自分の人気を高める。

これが全体主義者・橋下氏の常套手段であることは火を見るよりも明らかです。

それに橋下氏は、マクロ経済のイロハがまったく分かっていないのです。
国会議員だろうと公務員だろうと、給付されたお金は市場で有効に使われることによって、そのぶんだけ国民経済を潤します。
消費増税によるデフレの深刻化に、コロナ自粛要請による民間企業の倒産、廃業、失業者の大量発生の危機が重なって、経済恐慌のさなかにある今日、給付金や給料は誰がもらおうと、どんどん市場で消費されるべきなのです。
橋下氏などに脅迫されて、国会議員や首長たちがもらうことにそんなに良心が咎めるなら、困っている身近な人に差し出して、これで生活の足しにしてくれと言えばいい。
政治家は、高給をもらっていることに後ろめたさなど感じる必要はありません。
それは本末転倒で、「これだけの高給をもらっているのだから、それに値するだけの立派な仕事をしなくてはならない」と考えるべきなのです。
私たち国民も、ルサンチマンなど抱かず、その政治家が立派な仕事をしているかどうかを常に監視すればよい。

橋下氏がマクロ経済に無知なのは、4月11日に放映されたTBSのニュースキャスターでの発言を聞いてもわかります。
彼はそのとき、「こういう緊急事態なんだから政府もこの際覚悟を決めて、大いに支出したらいい」と発言したのです。
大規模な財政出動をすべきなのは、覚悟の問題ではありません。
国債発行によって財政出動する金額には、インフレ率以外に制約がありません
コロナ自粛による恐慌に突入している今こそ、この事実を活用すべきなのです。

この事実をわかっていないのは、何も橋下氏ばかりではありません。
上に挙げた自治体の知事もわかっていないことになります。
もちろん政治家のほとんども、国民の大多数も、多くの学者・エコノミストも、政府の拠出するお金の財源には限度があると、いまだに信じています。
財務省が長年にわたって振りまいてきた「国の借金による財政破綻」なるデマに騙され続けているのです。

ところで、昨年MMT(現代貨幣理論)の論客たちが来日して財出にはインフレ率以外制約がないという事実を広め、またそれ以前から、少数ではあれこの事実を説いてきた日本の論客たちがいたにもかかわらず、ほとんどの人たちがこの事実に対して聞く耳を持とうとしないのはなぜでしょうか。
筆者は、財務省の詐欺だけがその理由ではないと考えています。
「詐欺に遭うのは騙される方も悪い」とはよく言われる世間知の一つです。
この巨大な詐欺が長年にわたって一国の中で堂々と通用してきたのには、国民の中に、それを受け入れる集団心理的な下地があるからです。

その集団心理的な下地とは何でしょうか。
それは、江戸時代にまでさかのぼって形成された、「倹約はよいことだ」という道徳観念であり、「身を切る」(切腹!)という言葉に象徴されるような、潔癖と誠実の美学です。
この道徳観念と美学とは、何百年もかけて根付いてきた日本人の抜きがたい国民性となっています。

いまでは周知のことですが、江戸時代に断行された財政改革(正徳の治、享保の改革、寛政の改革、天保の改革)は、すべて国民に厳しい倹約を強いるものでしたが、結果はことごとく失敗しています。
マクロ経済のからくりがよくわかっていなかった江戸時代に倹約の奨励をするのは、まだ許せるところがあります。
しかし主流派経済学の誤りが明らかとなり、MMTに代表されるようなケインズ正統派(あえてこう言いましょう)の考えが見直されつつある今日でも、日本はいまだにこの道徳観念と美学とに精神を骨の髄までやられているのです。
国民の自殺行為と言う以外に形容のしようがありません。
ちなみに、このたびのコロナ禍による経済危機に直面した主要諸国は、どこでもこれまでの慎重路線からの大きな転換を図っています。
ユーロ加盟国に緊縮を強いてきたEU、ど緊縮国家ドイツ、そしてアフターコロナの失業問題を考慮して大胆な雇用計画を構想しているアメリカ……。
必然的に襲ってくる恐慌に備えるためには、これは国家として当たり前の措置です。
日本だけが倹約道徳と潔癖の美学に拘束されて、この転換を図れないでいるのです。

この国民性あるがゆえに、財務省の詐欺、財政破綻の危機煽動がまかり通っているのだということを、私たち国民がはっきり自覚しなくてはなりません。
この詐欺は、コロナが終息すれば、間違いなく復活します(今でも喧伝しているバカ学者がいるくらいですから)。
今でこそけち臭い給付金だの助成金だのと、政府はしぶしぶ財政出動に踏み切ろうとしていますが、それはコロナという未曽有の事態に、緊縮財政の限界内でただ場当たり的に対応しているだけです。
しかも、コロナで使った金をさらなる消費増税復興税(東日本大震災の時と全く同じ!)などによって取り戻そうという考えが、確実に浮上しているのです。
バカマスコミも、この動きにすぐにでも同調するでしょう。
あたかも20年以上続いたデフレと、それに追い打ちをかけた昨年10月の増税によって、GDPが▲7.1%という恐るべき落ち込みを見せたことなど、知らぬが仏のごとくです。
政府のこの無知そのもののポスト・コロナ戦略にハマってはなりません。

三橋貴明氏が常々指摘しているように、作られた「財政破綻の危機」説は、40年前の大平内閣の時から始まっています。
そこには国民を苦しめてやろうという悪意がはたらいてきたのではありません。
ただ、愚鈍な官僚とそれを信じる政治家やマスコミが、江戸時代以来の「財政危機克服の手段」として正しいと信じてきただけなのです。
それを真に受けながら、多くの国民が自民党政権を支持してきました。
こうした愚かな政府とそれを押し頂く愚かな国民の善意の積み重なりが、今日及びこれからの日本の悲運を準備してきたわけです。
やる気もなくなった政府と、貧困や倒産や廃業や失業で疲弊しつくした日本国民。
上級公務員への嫉妬とルサンチマンがうっ積した膨大な日本国民。
ナショナリズムの崩壊による民主主義政体の解体。
その先に何があるでしょうか。
橋下氏的な全体主義の跋扈(ばっこ)と、隣国のじわじわと迫る帝国主義的な侵略と、グローバル投資家の金融支配。
すべてが同時に襲ってくる局面を私たちは前にしているのです。
「地獄への道は善意で敷き詰められている」


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コロナ騒ぎで頭の病が悪化したインテリ愚民(その1)

2020年04月30日 00時14分32秒 | 経済



4月7日に新型コロナ対策として緊急事態宣言が発出され、3週間がたちました。
この間に筆者から見て、じつに下らない・間違った・腹立たしい主張や行政措置があふれかえりました。
これには大きく分けて、二つの流れがあります。
一つは、消費税減税や財政出動にブレーキをかけようとするもの、もう一つは、国会議員や公務員の所得を削減させようとするものです。
今回は、初めの流れを扱います。

筆者が触れ得た限りで、一つ一つ批判して、その考え方を潰していきたいと思います。

まず初めの例。
https://president.jp/articles/-/34145
これは緊急事態宣言よりも前の4月1日に、東京財団政策研究所の森信茂樹氏が「コロナショックに『消費減税』をしてはいけない4つの理由」と題して発表したものです。

第1に(中略)消費税を減税するには、経過措置の規定など多くの改正法案作成作業が必要となる。補正予算を組むだけで対応できる給付金と比べて、はるかに時間を要する。

消費税を5%に減税するならたしかに時間がかかります。
しかし私どもは、消費税をゼロにすること(当面でも廃止でもよい)を提案しています。
ゼロにするなら、国会さえ通れば、あとはレジの消費税記録の機能をオフにするだけで済むので、手続き上も極めて簡単です。
そしてその経済効果は計り知れません。
何しろ国家が吸い上げている1割がなくなるのです。
たとえば年収200万円の人はほとんど消費に使ってしまうので、20万円分だけ消費を増やすことができます。
生産者・事業者のほうも、その分だけ売り上げを伸ばすことができるでしょう。

第2に、減税までの消費の手控え、元に戻す際の駆け込みなど、余分な経済変動、不安定化が生じる。

「余分な経済変動、不安定化」とは屁理屈を考えたものです。
だいたい、いままさに多くの事業者・従業員が倒産や失業の憂き目にあっている時に、「元に戻す」際の心配をしてどうするのですか。
そんな程度の「経済変動」は、かえって増税の際に起きたではありませんか。
しかし昨年の10月の増税の最終結果は、▲7.1%というもの凄いGDPの落ち込みでしたよ。

第3に、新型コロナ問題が広がる中で、経済的な被害の少ない方がおられる。(中略)つまり消費税減税は、お金持ちほど優遇されるということになる。

あのね、中略部分であなたも言っている通り、消費税はもともと貧困層に厳しく富裕層に優しい逆進性を持っています。
貧困層は消費性向が高く、富裕層は低いからです。
消費税が減税またはゼロにされることで一番助かるのは日々の暮らしに追われる貧困層なのですよ。
中略部分で、森信氏は「お金持ち」の買い物の例として車やマンションを挙げています。
高い車やマンションを買うことで消費税がかかろうがかかるまいが、富裕層だったらそんなに気にするはずがないでしょう。
第一、車やマンションは富裕層だけのためにあるのではありません。
中間層、中の下くらいの人たちが、なけなしの資金と高いローンでささやかな車や家を買おうとしても、高額の消費税のために諦めてしまう可能性を考えたことがありますか。

最後に、消費税の持つわが国における政策的な意義である。消費税は、全世代型社会保障の切り札で、とりわけ幼児教育・保育の無償化など、わが国の働き方改革、少子化対策を進めていくための貴重な財源となっており、すでに使われ始めている。

これは民主党政権や安倍政権が消費税を正当化してきたウソ八百です。
増税分など、財務省の財布に入ってしまえば、あとは何に使われるかは、勝手次第。
もし増収分を何かに充てているとすれば、たぶん国債と利子の返済の足しにしているだけです。
そもそも税収で国の歳出を賄っているという考えが間違いなのですよ。
いいかげんに政府が垂れ流してきたウソの上塗りはやめませんか。


次です。
https://drive.google.com/file/d/1rIVefx56JpIcmVqhWNzACl3269mb8WHK/view
これは4月6日に政策研究大学院大学の林 文夫氏が「政府コロナ緊急経済対策の批判と私の提案」と題して発表したものです。

政府がすべきことは、損害額である家計所得の損失を確定し、保険金を各個人に支払うことだ。(中略)
では損害額はいつ、どう確定するか。私の提案は、確定は来年の確定申告時、損害額は、2020 年の申告所得から「ショックがなかったときの所得」を差し引いた額とする。


浮世離れしたことを言う人です。
世帯当たり30万円給付の話が出た時にも、線引きの難しさが一つの理由となって、個人一律10万円となったのに、家計所得の損失をどうやって計算するのか。
世帯ごとに割り出さなくてはならず、大変な手間がかかるでしょう。
それに、申告に任せるなら、「ショックがなかったときの所得」をいくらでも誇大に計算できます。
それをどうやって予防するのか。
「確定は来年の申告時」とはまた悠長な話です。
繰り返しますが、自粛で倒産、廃業、失業の危機に直面しているのは、いまなのですよ。

いうまでもなく、企業は、規模の大小にかかわらず、個人が所有している。個人が補償されるのだから、企業への現金給付は、企業の所有者に重複して補償することになるので、不公平だ。

これはとんでもない話です。
企業は企業主の家計だけではなく、経営のために営業所の家賃、従業員の給料、リース料など、多くの固定費を負担しています。
会社は社長個人の所有物ではありません。
この人は、法人の所有と個人の所有との区別もついていないらしい。

政府による保険金支払いの財源は、消費税率の少なくとも数年間にわたる引き上げだ。赤字国債を財源にするのは、将来の現役世代が負担することになり、効率性の原則に反する。

ほら、やっぱり財源を気にしてる。
しかもそれを消費税率の引き上げによって果たすというのです。
消費税を今後も引き上げる計画が財務省や一部の学者・エコノミストにあることは、コロナ以前から知られていましたが、コロナショックによって、貧困層の莫大な増加が見込まれる現在、追い打ちをかけるようにその考えを持ち出すとは、血も涙もないとしか言いようがありませんね。
そして、「赤字国債を財源にするのは、将来の現役世代が負担することになり」という財務省発の決まり文句。
国民がどんなにこのデマに騙されてきたか、わかっているのか。

コロナショックは、マクロ経済学でいう供給ショックの一種だ。供給ショックによる不況に対しては、需要刺激策は限られた効果しかない。しかもこのショックは感染が終息すれば確実に消失する。(中略)終息後はリベンジ消費で飲食店や行楽地に人々が殺到する。経済は放っておいてもV字回復する

どうして需要刺激策に限られた効果しかないのか。
いま消費増税によって需要が極端に縮小したところにコロナショックがやってきました。
この過剰な自粛要請によって生じているのは、供給のストップである以前に需要のストップです。
いや、この際両者を「マクロ経済学」などという煙幕を張って、供給と需要に二分するレトリックでごまかすこと自体が非常に欺瞞的です。
需要のストップが同時に供給もストップさせているのが、いま起きている事態です。
つまり市場が成立しないという国民経済全体の危機なのです。
それをまあ、終息後のリベンジ消費などと妄想を膨らませていますが、そのリベンジのための消費力はどうやって回復させるのですか。
林氏の頭の中は、アダム・スミスの「神の見えざる手」でいっぱいのようです。
この際、お古い「経済学者」には退陣していただきましょう。

次です。
https://webronza.asahi.com/business/articles/2020042100003.html?page=3
4月22日付朝日新聞編集委員の原真人氏。
もし給付が2回、3回と続けざるを得なくなると、必要財源も25兆円、38兆円……と膨らんでいく計算だ。財源はいずれ増税して工面するとしても、当面その全額を赤字国債(新たな政府の借金)に頼らざるを得ない。米国や欧州各国も巨額の対策費が必要になっている点では日本と同じだ。ただ、財政が相対的に日本より健全な分だけ、新たな借金はしやすい。(中略)今後のコロナ対策(所得補償や休業補償)費用が膨らめば、指数はさらに悪化する。日本国債の暴落が起きてもおかしくない状況だ。たしかに日銀がお札(電子的発行も含め)を刷りまくって国債を買い支えれば、国債価格の下落は止められる。だが、次は日銀が信認を失うリスクが高まる。そのときは円暴落だ。円が暴落すれば、物価が数百倍、数千倍となるハイパーインフレとまでは言わなくとも、物価が一気に何倍にもなるリスクは非現実的とは言えない。

これが有名な朝日新聞経済部の原氏です。
一読、この人のご説が、いまや古典と化した財務省べったりの緊縮論であることは瞭然としています。
そもそも使っている用語がそれを表していますね。
「政府の借金」「財政が日本より健全」「国際の暴落」「日銀の信任」「円の暴落」「ハイパーインフレ」と続きます。
いまコロナのような緊急事態で、飲食業やこれに関係した各業界のみならず、あらゆる民間企業、特に中小企業は、市場の崩壊の危機に悲鳴を上げています。
そんな中にあってさえ、政府の財政危機を訴えるその古典主義を崩さない頑迷さ。
こういうのを「蛙の面に水」と言います。
日本は変動相場制を採用して独自通貨発行権を持つ国ですから、必要に応じていくらでも円や国債を発行できるので、過度のインフレに気をつけること以外に財政問題はありません。
ちなみにご心配の円や国債の暴落(つまり超インフレ)については、その兆候が仮に見えれば、そのときこそ、政府、日銀の得意技である政策金利の調整や増税によって容易に解決できます。
と、何度言ってもわからないのでしょうね。
何しろこの人は経済がまったくわかっていないのですから。
今度書いていることを読んで、その事実をまた発見してしまいました。
そう、「米国や欧州各国も巨額の対策費が必要になっている点では日本と同じだ。ただ、財政が相対的に日本より健全な分だけ、新たな借金はしやすい」と言っている部分です。
えっ!? 欧州各国の財政が相対的に健全ですって?
欧州各国はユーロ圏の支配下にあって、金融政策の自由がなく、ために緊縮を強いられ、ギリシャ、イタリア、スペインのようにすごい失業率や借金で苦しんでいることも知らないの!
つまり原氏は一国の経済を考えるのに、「政府の負債」のGDP比のことしか頭にないんですね。
日本の場合、「政府の負債」つまり国債の累積額は、実は借金ではなく、財政支出の累積額のうち、税金で取り戻せなかった分の履歴にすぎません。
帳簿上、一応日銀からの「負債」という形を取りますが、これは政府が通貨発行権を使って拠出した貨幣供給残高です。
だから本来返す必要なんてないんですよ。
でもユーロ圏諸国では、ユーロは外貨と同じですから、イタリア政府がユーロで(たとえばドイツから)借金すればまさにそのまま「借金」です。
嗚呼、朝日新聞経済部編集委員・原氏よ、せめて欧州各国と日本の財政事情の違いくらいは理解してね。

昨年話題になった「MMT」(現代貨幣理論)。政府の借金はいくら膨張しても問題ない、というその考えに賛同する政治家や学者はいまもいる。それを支持する国民もけっして少なくない。増税も社会保険料の負担増もなく、社会保障が充実できる。いいところ尽くしに見えるこのMMTは、政治的プロパガンダにするのにもってこいなのだ。コロナショックに乗じて、再びこれが盛り上がることも予想される。現実には、コロナ後、世界経済が正常化したとき、日本の財政悪化に市場の注目が集まらないとは言えない。弱い国家を投機の標的にしようという勢力は常に存在する。いちど標的になれば、国家といえども抵抗は難しい。
そら出ました、MMT。
「増税も社会保険料の負担増もなく」とか言ってるところに、この人がMMTなど理解していないことがよくわかります。
増税は必要な時がありますよ。
さっき言ったように、インフレが過熱気味になった時に景気を安定させるためにやるのです。
MMTはもちろんそれを認めています。
社会保険料の負担増もありますよ。
高齢社会で、年金の支払額が増えますから、特別会計の中から捻出します。
でも少子化で国民からの年金料が減ったら、通貨発行で補えばよい。
福祉国家としての義務を、税金や年金料の増額や支払時期の延期などで国民に押し付ける必要などないのです。
そうして、今のように国民が困窮している緊急時こそ、MMTの出番なのです。
原氏は、机上で学んだ間違った「経済学」と、財務省の陰謀の穴にハマって、ただ財政は税収という限られたパイの中で処理し、そして国債の発行は「国の借金」だから必ず返さなくてはならないもの、と思いこんでいるのですね。
だから、こんなに国民が苦しんでいる時にも、平然と、「ハイパーインフレ」の心配などにうつつを抜かしていられるのです。
最後に一言。
「弱い国家を投機の標的にしよう」とありますが、「弱い国家」って何ですか。
抽象的で意味不明です。
日本政府は中国に次いで、世界第2位の外貨準備国で、ユーロ圏全体をはるかに上回っています。
こういう重要なファクターも「強弱」概念に含めて語ってくださいね。

次です。
https://news.yahoo.co.jp/byline/takerodoi/20200421-00174484/
慶応大学教授・東京財団政策研究所上席研究員・土居丈朗氏が4月21日に発表した論考。
彼のアホぶりは夙に有名ですが、以下のグラフを掲げて、「ワニの口」が塞がらなくなったことだけを
嘆く、まさに「開いた口が塞がらない」論考です。



時系列で国の一般会計歳出と税収の金額を折れ線グラフを、いわゆる「ワニ口グラフ」と呼ぶ。記事冒頭のグラフがそうである。ワニの上あご(赤線)が歳出総額で、下あご(青線)が税収である(2018年度まで決算ベース、2019年度以降は補正後予算ベース)。この両者で描かれる形がワニの口に見えることからその名が付いた。(中略)2020年度補正後予算ベースでみると、一般会計歳出総額は128.3兆円と断トツで過去最高額となり、上あご(歳出総額)が上に突き抜けて、もはやワニの口は崩壊したかのようである。(中略)2020年度補正予算で、「ワニの口」はもはやその体を成していない様になってしまった。
これはもう、歳出総額と税収との開きばかりを気にしている、ただの事務屋さんと言うべきで、経済学者と呼ぶのははばかられますね。
でも、財務省は、こういう知的肩書を持った人の存在を必要としているのでしょうね。
グラフを睨みながら、「ワニの口が塞がらない!」と叫び続けてそれ以外のことは目に入らない。
あるべきコロナ対策、長年にわたる緊縮財政の結果起きている医師や感染症病棟やベッド数や保健所の削減、過剰自粛による実体経済の崩壊の危機、今後間違いなくやってくる第2世界恐慌――こうしたことはどうでもいいらしい。
こういう緊縮真理教の信者には、今後あまりメディアに出てきてほしくないと思います。
特にこうした緊急時には、百害あって一利なしですから。
土居氏に一つだけ教えてあげましょう。
ワニの口が開いたということは、国債が大量に発行されたことを意味しますから、国民にとってきわめて慶賀すべきことであって、国債の発行残高は、そのまま国民の預金になっているのです。
政府の赤字は民間の黒字」――よく噛みしめてください。
それにしても、慶応大学経済学部という名門で、この人は何をどんなふうに教えているのか。
学生がかわいそうだな――ふとそんなふうに思ってしまいます。


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「インテリ愚民」を撃退せよ!

2019年12月25日 23時50分21秒 | 経済


年明けに刊行予定の拙著『大日本貧困帝国 新しい学問のすゝめ』(仮)で、筆者は「インテリ愚民」という用語を使っています。
「愚民」という言葉は、福沢諭吉が当時の一般民衆を指してしきりに使った言葉ですが、これは差別用語ではありません。
当時の民衆の実態を正確にとらえたもので、福沢は、愚民が何とか少しでも愚民でなくなってくれるように願って、自主独立の精神を説いたのでした。
しかし筆者は、「インテリ愚民」という用語をあえて差別的に用います。
彼らが愚民でなくなる可能性がゼロだからです。

折から、財務省のポチである元東大教授・吉川洋氏の後任として東京大学大学院経済学研究科教授を務めている福田慎一氏が、ロイターのインタビューに応えた記事を読みました(2019年12月18日)。
ここで彼が言っていることは、間違いだらけであるだけでなく、臆病犬のつぶやきに満ちています。
まさに東大の経済学研究科というところは、「インテリ愚民」の生産工場で、その再生産能力には恐るべきものがあります。
以下、記事を引用します(太字は引用者)

福田教授は、人口減少などの構造問題を抱えている日本において、ポリシーミックスで経済成長に向けた対策をいくら打っても、その有効性には疑問があると指摘。課題は少子化を食い止めることにあり、それに応える政策が打ち出されていないと言う。さらに、ポリシーミックスで本格的に景気浮揚が図れたとしても、その時には金利も同時に上昇しているはずで、財政悪化は急速に進むと指摘する。
今回の大型経済対策は災害対策など国土強靭化に向けた多額の財政出動を盛り込んだものだが、財源が限られる中で大規模自然災害に大型歳出で備えることはどの程度意味があるのか、あるいは成長につながるのか、といった視点も必要との立場を示す。(中略)
このため同教授は「金利ゼロ・低成長という時代に同じようにポリシーミックスを行うことで、どの程度の効果が生まれるのか。歴史的に初めてのことだ」として、効果不明ながらも壮大な社会的実験を行っているに等しいと指摘する。(中略)
福田教授は効果に2つの疑問を呈する。
「一つには、財政の持続可能性の問題がある。ポリシーミックスは成功すると経済が上向き、通常は金利も上昇する。そうなると成長率よりも金利が高くなり、財政赤字の拡大要因となる。財政再建は難しい状況に陥る」と指摘。
もう一つは、「そもそもポリシーミックスを実施しても経済自体が構造問題を抱えていれば、本格回復はできない。日本がまさにそうで、デフレ構造の本質は、人口減少や老後不安で将来が見通せず、物価や賃金が上がりにくいということだ」という。
安倍政権は今月、事業規模26兆円の総合経済対策を閣議決定した。そこには、日銀による強力な金融緩和継続のもとで思い切った財政政策を講ずることが可能との考え方が盛り込まれている。
福田教授は、こうした今回の大型対策について、「ポリシーミックスは、財政の使途が成長に資する内容かどうかが重要だ」と指摘。「日本では少子高齢化対策が本丸のはず。しかし、これまでそれに応える政策はやっていないし、結果として出生率の低下には歯止めがかかっていない」と厳しい見方を示す。
またこのところ、大規模な自然災害が相次いでいるため国土強靭化に巨額の財政をつぎ込む姿が目立つが、「老朽化インフラの補修は必要とはいえ、災害対策は成長に寄与するとはいい難い。自然災害にお金で対抗するには無理があり、成長には結びつかない」と主張。


まず福田教授は、今回の安倍政権の来年度予算についての閣議決定が、「大型経済対策」であるという、基本的な勘違いをしています。
26兆円の財政出動というマスコミが喧伝した数字にコロリとだまされているのですね。
26兆円の内訳をよく見てください。
半分の13兆円は民間事業です。
残りは財政支出ですが、うち、国・地方の歳出は9.4兆円程度、財政投融資3.8兆円程度。今年度補正予算で4.3兆円、予備費で0.1兆円を確保するとともに、来年度当初予算の臨時・特別の措置で1.8兆円。
国・地方・財政投融資の合計が13.2兆円で、国の予算としては、計6.2兆円に過ぎません。
しかも補正予算はたったの4.3兆円です。
この程度の増額は、毎年行われている額に災害対策費、社会保障費などを少しばかり上積みしただけのことです。
しかもこれは単年度だけの話で、長期的な計画のもとに割り出されているわけではないので、次の年度には、元に戻ってしまうでしょう。

朝日から産経まで大マスコミは、102兆円の大型予算を組んでだいじょうぶなのかなどと、さかんに騒いでいます。
恐ろしいのは、見かけだけ大きな金額を示すことで、実際にデフレ脱却できなかった場合に(できっこないのですが)、「それみろ、大胆に財政出動したのに効果がなかったじゃないか」という口実を財務省に与えてしまうことです。
福田教授は、こういうことも見抜けない「インテリ愚民」なのです。
前期記事の教授のご心配は、ポリシーミックス(金融緩和と積極財政との二刀流のことでしょう)などと恰好をつけていますが、マスコミが流す「大型予算で大丈夫か」という毎年繰り返される心配をただなぞっただけのものです。

もし本当に長中期も視野に入れた「大型経済対策」が実施されてデフレから脱却できれば、そこそこ金利が上昇するのは当然ですが、どうしてそれが「財政悪化は急速に進む」結果を導くのか。
この判断には、金利の高騰や高インフレが起きるのがただの自然現象で、政府がそれを何もコントロールできないといった、まことに冷ややかな経済観が反映しています。
政府・日銀が金利高騰や高インフレに対して何も対策を打てないなどというはずはなく、それはこれまでの緊縮路線を見れば明らかです。
何しろ財務省はデフレ期にインフレ対策を打っているくらいなのですから!
また、「ポリシーミックスは成功すると経済が上向き、通常は金利も上昇する。そうなると成長率よりも金利が高くなり、財政赤字の拡大要因となる。財政再建は難しい状況に陥る」と述べているところから見て、福田教授が何を気にしているかは明らかです。
国民経済の回復や国民生活の豊かさのことなど全く考えておらず、財務省べったりの緊縮路線のことしか頭にないのです。
経済が上向きになるなら、それは大いに結構なことで、それこそデフレ30年で苦しんできた国民にとって朗報ではありませんか。
またマイルドなインフレによって金利が適切な水準を維持できれば、ゼロ金利や手持ちの国債不足で苦境に陥っている銀行業界は、息を吹き返すはずです。
その意味からも、国債発行による財政出動が今こそ必要とされるときはありません。
ところが、頭の空っぽなこの経済学者は、それが直ちに「成長率よりも金利が高くな」ると、ひどい短絡思考に走っています。
学者なら、どれくらいの財政出動によってどれくらいの成長率が期待でき、それがどれくらいの金利上昇に結びつくのか、予測でもいいですから、それを数字で示す責任があるのではありませんか。
また「財政赤字の拡大要因となる」と、財政赤字を極度に恐れているようですが、残念ながら、財政赤字は、そのまま民間の黒字を意味することが、MMTによって証明されています。

また教授は、「デフレ構造の本質は、人口減少や老後不安で将来が見通せず、物価や賃金が上がりにくいということだ」などともっともらしい口を利いていますが、物価や賃金が上がりにくくなっているのは、デフレ構造の「本質」ではなく、政府が誤った経済政策を続けてきた結果生じた「現象」です。
最近、何かというと社会問題の原因を「人口減少」に帰する論客が跡を絶ちませんが、人口減少という抽象的なマジックワードを使いさえすれば、ことの「本質」を説明したかのような気になるのは困ったものです。
「デフレ構造」の主因は、財務省が長年とってきた緊縮財政のために、内需がさっぱり伸びないところに求められます。
ゼロ金利に至るまで金融緩和を行なっても、企業が借金によって投資に踏み切らない事態は、儲かる見込みがないほどデフレマインドが染みついているからです。
そのことがまたいっそう内需の拡大を抑制します。
実体経済市場がこうした悪循環に陥っている時に、政府が何の刺激も与えない状態を何年も続けているので、ますますデフレは促進されます。
この下降スパイラル構造こそが「デフレ構造の本質」なのです。

教授はまた、財政出動に対して、「効果不明ながらも壮大な社会的実験を行っているに等しい」などと大げさに恐怖をあおっています。
「効果」とは何の効果なのか、抽象的で何の説明もありません。
教授の頭は混乱していて、それが整理できないのでしょう。
教授の期待している「財政健全化」の効果と、景気を回復させる効果とでは、その意味がまったく異なります。
前者を目的として緊縮財政を行なえば行うほど、後者の効果は阻害されます。
その関係がわからないということは、政府と民間との区別がついていないことを意味します。

また教授は、政府が少子高齢化対策をやっていないとし、その「結果として出生率の低下には歯止めがかかっていない」と指摘しています。
しかし一応断っておくと、政府はこれまで「少子高齢化対策」と称して巨費を投じてきました。
ところが出生率の低下に歯止めがかかっていない。
それは、少子高齢化対策をやっていないからではありません。
やってはいるのですが、特に少子化対策として不適切な手しか打っていないからです(たとえば子ども手当など――子ども手当は子どもを産める比較的ゆとりのある家庭をしか潤しません)。
それだけではありません。
もっと大きな理由があります。
少子化に歯止めがかからないのは、若者が貧困化していて、結婚したくても結婚できないからです。
それは、政府が適切な景気刺激対策を打ってこなかったためです。
月収15万円稼ぐのがやっとな非正規労働者が、どうして結婚できるでしょうか。
つまりここにも財務省の緊縮財政路線が悪影響を与えているのです。
積極的な財政出動によって景気が回復すれば、無駄な少子化対策などにお金を使わなくても、自然に結婚率が高まり、少子化も解決の方向に向かうでしょう。
教授は、少子化の原因を完全にはき違えています
少子化が止まらないのは、政府が少子化対策を打ってこなかったからではなく、ゆとりをもって結婚でき子どもを産めるような経済環境を政府が作ってこなかったからです。

さらに教授は、これほど災害で人々が命を落としているのに、インフラにお金を投じることに否定的です。
とんでもない話です。
「災害対策は成長に寄与するとはいい難い。自然災害にお金で対抗するには無理があり、成長には結びつかない」
何というバカな言いぐさでしょうか。
どうして災害対策(この場合、主としてハードな対策)が成長に寄与しないのか。
堤防一つかさ上げするだけで、どれだけの命が救えるか。
人が死んでしまっては、成長もくそもありません。
防災施設が完備していればこそ、安心して経済活動もできるのだし、インフラの整備という投資自体が内需拡大に寄与しますし、それがまた次なる投資を生み出していく。
こういう当たり前の理屈を打ち消して平気でいられる経済学者なる存在の神経を疑います。
「自然災害にお金で対抗するには無理があり」に至っては、開いた口が塞がりません。
お金で対抗する以外、公共体として、どうやって大規模自然災害に備えるのでしょうか。
しかも教授は、この最後の部分で、「成長」という言葉を2度繰り返しています。
あれ? 初めの方で、景気浮揚(つまり成長)すると金利が上がって財政再建を達成できないからという理由で、景気浮揚(成長)には反対の立場をとっていたんじゃなかったっけ。
支離滅裂とはこれを言います。
財政再建を果たしながら、大規模災害対策にお金も使わず、どうやって「景気浮揚」を達成するのか。
福田東大教授にぜひその深遠な教えを請いたいものです。

いやいや、この人、じつは何にも考えていないんだよね。
どなたかが言ってましたが、小難しそうな顔をしてただ疑問を呈するだけで、東大教授が務まる。
「財源が限られる中で大規模自然災害に大型歳出で備えることはどの程度意味があるのか、あるいは成長につながるのか、といった視点も必要」だってさ。
その「成長につながる視点」て、どうすれば持てるんですか。
「ザイゲン、ザイゲン」と、財務省の口癖をオウムのように繰り返しているだけのように見えますが。
教授、MMTをしっかり勉強してください
通貨発行権を持つ政府は、財源の心配をする必要がない、ということがすぐわかるはずですから。
もっともちゃんと聞く耳を持てばの話ですが。

要するにあれですね。
あの吉川洋東京大学名誉教授の後釜に座って、財務省御用達の学者の地位を見事に受け継いだということですね。
知性の退廃、つまりは、「インテリ愚民」がまた一人、この日本国に誕生しました
めでたし、めでたし。


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貧困化した日本

2019年11月26日 15時01分53秒 | 経済



筆者が勤務している大学のゼミで、「運転免許を持っている人」と聞いてみたら、20人のうち2人しか手を挙げませんでした。
持っていない学生に理由を聞いてみると、「別に必要を感じないから」と答えます。
なるほど首都圏に住んでいれば、交通には不便を感じません。
しかしそこにお金の問題がからんでいることは明白です。
免許取得には20万円以上かかりますし、車を持とうと思ったらさらに相当の出費を覚悟しなくてはなりません。

筆者の学生時代(半世紀前)は、大学に入ったら運転免許を取る、というのが当たり前の目標になっていました。
いつまでとはっきり言えませんが、少なくともバブルがはじけるまでは学生が免許を持つことは当然の現象だったでしょう。
また、中古車でもいいから自分の車を持つというのも多くの若者が目指したところでしょう。
車はデートの恰好のツールでしたし、行動意欲に燃えた若者にとって各地に車で行楽に出かけることは、青春を謳歌するまたとない機会だったはずです。

ところで先日、情報戦略アナリスト・山岡鉄秀氏の次のような記事に接しました。
山岡氏は、ある団体から青年向けの講演を依頼された折、「日本の国力が驚くほど低下してしまったと思う人、手を挙げてください」と呼びかけたそうです。
すると会場の半分ぐらいの人しか手を挙げないので、衝撃を受け、次にこう聞きました。
「日本の国力はずっと変わっていないと思う人、手を挙げてください」
するとなんと、残りの半分の人たちが手を挙げているではありませんか。
彼らは皆若く、20代、30代、といった感じです。
なるほどいまの30代の人たちが物心ついた頃、既にバブルは崩壊していて、20代ともなれば低空飛行が当たり前。
だから、彼らの目には、日本は変わっていない、
今の20代、30代の若者には元気だった頃の日本のイメージを共有できないというのです。
しかし、この30年間の国力(特に経済力)の推移を少しでも調べてみれば、あらゆる面でガタ落ちになっていることは明瞭です。
そしてこのガタ落ち傾向は、いまもなお進行中です。

この傾向を大方の若者が目の前で確認できないのは無理もありません。
「変化」の実感がないのですから。
しかし筆者はやはり、これからの日本をしょって立つ若い人たちに、貧困化した日本という事実を客観的な形で知ってほしいと思います。
いま、急いで根本的な手を打たない限り、若い人たちのこれからの人生に、いまよりもさらに悲惨な状況が待ち受けていることは確実だからです。

貧困化を示す指標は、いくつもあります。

・OECD加盟国34か国のなかで、日本の相対的貧困率は29位です(2015年)。



・実質賃金は、この20年間で約13%下がっています。



・世帯収入の中央値は、1995年に550万円だったのが、2017年には423万円に下がって
います。



どの所得階層が一番多いかを示す最頻値になると500万円台から300万円台に落ちています。

・収入が平均値以下の世帯は、62.4%です。

・年収200万以下のワーキングプアは、1996年には800万人だったのが、その後急上昇し、安倍内閣が発足した2013年からは1100万人を突破、現在もそのまま高止まりしています。



・生活保護世帯は、1995年ころには約60万世帯だったのが、やはりその後急上昇し、安倍内閣発足後は、ずっと160万世帯をキープしています。



ちなみに、厚労省が定めている生活保護の対象となる「最低生活基準」以下の所得しかない人は、なんと3000万人弱に達します。
https://www.youtube.com/watch?v=VDhLCDYSrMk&feature=share&fbclid=IwAR0s-tZc_TXumw9B0hMkBxlyp6tzdAOFpoh4OzQUmyRzSwxGx3tIrU03rgI
食べていけないほどの低賃金なのに曲がりなりにも働いているために、生活保護を受けていない人のほうが圧倒的に多いわけです。

・高齢者は5人に1人が貧困層(2015年では、可処分所得が122万円未満)に属します。
なかでも単身高齢者は、男性で約4割、女性では5割を超えます
(上記URL)

・金融資産ゼロの世帯は、3割を超えています(グラフには「貯蓄ゼロ」とありますが、正確には「金融資産ゼロ」です)。



一方では、個人金融資産の総額は1800兆円という巨大な額に及びます。
これはいかに一部の富裕層に資産が偏っているかを示しています。

・非正規雇用は90年代には2割程度だったのが、ここ数年4割近くと倍増し、その平均年収は正規雇用の65%にしか達しません。

・地方公務員の非正規雇用は11年間で4割増加し、全体の3分の1近くになっています。
正規の地方公務員の年収は平均660万円であるのに対し、フルタイムの非正規公務員は207万円程度、つまり三分の一未満です。
ワーキングプアすれすれですね。
もちろん昇給もボーナスもありません。
また、産休、看護休暇、交通費も認められない自治体が数多くあります。
https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2019/02/0210.html

・地方の疲弊はここのところ顕著で、2019年だけで、百貨店の閉店が約10店舗にも及びます。

・国内の子どもの6~7人に1人が貧困状態にあるとされています。
こども食堂は、こうした子どもを対象に2012年ごろから始まりましたが、2019年調査では、16年時点の319カ所に比べると、わずか3年で12倍近い3700ヵ所以上に開設されています。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46629900X20C19A6CR0000/

・子どもの貧困率は、OECD諸国中、下から数えて10位以内に入っており、ひとり親家庭(主として母子家庭でしょう)となるとダントツ1位です。





・日銀短観の2019年9月調査では、大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は3期連続で悪化しています。
実は途中横ばいの時期が一期だけあったものの、2017年12月調査から見て、7期連続悪化しているのです。
これは2013年6月調査以来の低水準です。

・GDP名目成長率の国際比較によれば、1990年を100として、欧米諸国はどの国も200から300の伸びを示しているのに、日本だけがまったく伸びていません。

・1人当たりGDPは、1996年には世界3位だったのに、2019年には26位に落ち込んでいます。

・1995年には、世界の名目GDPに占める日本のシェアは17%に達していたのに、2018年には6%以下に落ち込んでいます。

このくらいで十分でしょう。
こうした数字はすぐにでも調べられるのに、政府関係者は、「景気は底堅い」などとウソ八百を言い続けてきました。
御用学者や政治家や財界人やマスコミも、この種の悲惨ともいうべき実態をほとんど問題にしません。
それは、自分たちに都合が悪いことを隠しておきたいからです。
「臭いものには蓋」というヤツですね。

また、デフレが続く理由は、日本はモノがあり余っているので、もう経済成長する必要がないからだなどという人が、未だにけっこういます。
とんでもない話です。
そういう人は、自分が余裕のある暮らしをしているので、いま多くの人たちが貧困に落ち込んでいることに想像力が及ばないのです。
彼らは、貯金もほとんどなく、子どもに高等教育を受けさせることもできず、毎日のやりくりに追われています。

なぜこんなに貧困化が進んだのか、その理由は、間違った政治運営にあることは明らかです。
今さら言うまでもありませんが、財務省の緊縮路線竹中平蔵率いる構造改革路線との見事なコンビネーションです。
消費増税、「自由と効率化」の名目で打ち出された雇用システム、株主配当や自社株買いのための人件費削減、財政出動に対する狂気じみた禁圧、デフレマインドによる投資の差し控え等々、すべてが、上の二つの路線の原因であり結果です。
つまり、この二つの路線を楕円の焦点として、すべてが激しい下降スパイラルをなしています。

これらのことは、おそらくこのブログの読者にとってはほとんどが自明の基礎情報に属するでしょう。
しかし筆者は、一般の若い人たちに、少しでも日本全体の経済実態について知ってほしいのです。
そうすることで、運転免許を取らなかったり結婚しなかったりすることが、単に個人の自由意志ではなく、社会構造的な原因に根差しているのだということに気づいてほしいのです。
また、このブログ読者の方たちには、こうした基礎情報が、必ずしも多くの若者の共通認識になっていないこと、それどころか、ほとんどが共有されていないことに、もっと危機感を持ってほしいのです。


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日本の学者・エコノミストのほとんどはMMTを理解していない

2019年08月29日 14時07分14秒 | 経済

MMTの主唱者・ランダル・レイ教授

前2回の記事「MMTの服用を拒否する〇〇病患者を診断する」では、いずれの患者たちもあまりの重症であるために、ついつい診察と診断が長くなりすぎました。
そこで、前2回で展開した記事のダイジェスト版をお送りします(少しだけ訂正と補足があります)。

詳しくお知りになりたい方は、下記を直接ご参照ください。
https://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/5e55dccd53e80b1ffd733b2d407832e9
https://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/a87a7f5dd4c895ad790de8997b58c9c6

【症例1】MMTを実践すれば、インフレを止められず国債が紙切れ同然になって、財政が立ちいかなくなる可能性は否定しきれない。(中略)安倍政権では(中略)消費増税も2度先送りされてきた。いざという時に、果敢に利上げや増税ができるのかは疑わしい。財政主導の経済で生産性が落ち、中長期には日本経済の成長力が落ちる恐れはある。
(ダイヤモンド編集部・西井泰之 ダイアモンドオンライン 2019/7/17)

【診断】MMTでは、財政赤字はそれ自体悪ではなく、財政出動が行きすぎないようにする歯止めはインフレ率であると何度も断っています。
それに、消費増税の実施こそは、デフレの長期化を作り出してきたのです。
これまでの増税の延期がなぜ、高インフレ期になった時の増税を困難にする根拠になるのでしょうか。
また、財政主導の経済でどうして生産性が落ちるのですか。
逆に、政府がさまざまな公共部門に投資することによって、技術開発も進み、企業も活気を呈し、生産性があがるのです。
あなたは、おそらく日経新聞読みによくある「表層型ADHD」に罹患しています。

【症例2】MMTにおける中央銀行はこうした目標(物価上昇率2%)も出口(金融緩和の終わり)もない。政府の出す財政赤字をひたすら埋める役割を担うにすぎない。(中略)
逆説的だが、MMTによれば、政府が財政収支を気にしなくてよいのは、その気になればいつでも増税できるからだ。(中略)
MMTは政府に無限の課税権を認めているようにも思われる。
MMTが目指すのは脱デフレではなく、いわば「大きな政府」だ。

一橋大学経済学研究科・政策大学院教授・佐藤主光 プレジデントオンライン 2019/7/19

【診断】MMTはデフレ脱却ができない時には、お金を積み上げるだけの金融政策のみに偏したこれまでの政策を、もう少し実体経済を直接活性化させる財政政策主導に切り替えるべきだと主張しているにすぎません。
あなたは、いったいに、税の話ばかりしていますが、消費増税を強制してきたのはMMTではなく、政府財務省ですよ。
あなたは消費増税には反対らしい。
それなら、政府を責めるべきであって、なんで現代の貨幣や国債のしくみと回り方(「政府の赤字は民間の黒字」)を解明している「理論」に、増税の責任を押し付けるのでしょう。
MMTは「無限の課税権を認める」などと言ったことは一度もありません。
むしろ逆に、税とは政府の歳出の唯一の財源(であるべき)だという、誰もが陥っている考え方がそもそも間違いだという本質規定をしているのです。
MMTは、脱デフレのためには、金融政策偏重よりも積極的な財政政策にシフトした方がよいということをたしかに言っています。
ところでその場合、「大きな政府」(曖昧な言葉ですが)と脱デフレとは何が違うのでしょうか。
20年以上続くデフレで国民が苦しんでいる時に、「慢性的な需要不足を埋め合わせる」ために一時的に政府が「大きな政府」を演じることは悪いことでしょうか?
あなたは、まだ実施されてもいない「理論」を、すでに実施されている「政策」と勘違いして、それが招く高インフレとその結果として政府に「無限の課税」を許す事態に、極度におびえているようですから、「インフレ・フォビア」です。

【症例3】今仮に、日本政府がMMTの採用を真剣に検討しているというニュースが流れたとすると、私が真っ先にすることは、円建ての銀行預金をドルかユーロ建ての預金に預け替えることだ。(中略)ニュースが流れた1時間後には1ドル=300円まで円安となっているかもしれない。(中略)MMTのようにこれから不換紙幣をどんどん刷りますと宣言するのは、フーテンの寅さんではないが「それを言っちゃあ、おしまいよ」ではなかろうか。
元財務省大臣官房審議官・有地浩 アゴラ 2019/7/21

【診断】あなたは、MMTについてだけではなく、お金についての知識もまるで持ち合わせていません。
MMTでは、自国通貨建ての国債発行額には、インフレ率以外に制約はないと言っているので、財政出動の際に、どれくらいのインフレを許容するのかということは、大前提としてあらかじめ繰り込まれています。
したがって、「ニュースが流れた1時間後には1ドル=300円まで円安となっているかもしれない」などというのは根も葉もない妄想です。
あなたは、お金というものを紙幣でしかイメージしていないのですね。
事実は言うまでもなく、政府がたとえば10兆円の国債を発行するに際しては、ただ日銀当座預金の簿記の借方欄に10兆円と記載されるだけです。
お金とは、借用証書に過ぎません。
この証書の流通を成立させているのは、人と人との信用関係であって、金銀や現金紙幣のような「モノ」ではありません。
あなたのような無知な人が、かつて大臣官房審議官という職に就いていて、いったい大臣に何を進言したのでしょう。それが今日の政治家たちの緊縮脳の育成に一役買っているかもしれません。
あなたは、重度の「被害妄想狂」です。

【症例4】彼女(ケルトン教授――引用者注)の提唱するケインズ主義的な財政運営については、わが国は苦い経験がある。それは90年代、バブル崩壊後の財政運営で、120兆円規模の減税と公共事業の拡大が、景気対策という名目で行われた。しかし失われた20年が経過し、いまだデフレ脱却すらできていない。
公共事業が、その効果や効率を考えずに行われた結果、経済の大きな非効率を生じさせ、維持・補修コストに四苦八苦しているというのが現状だ。
わが国一般会計の歳出・歳入のギャップは「ワニの口」と呼ばれているが、これが大きく開くのは、バブル崩壊後とリーマンショック後の景気対策としての公共事業の追加(歳出の拡大)と減税(歳入の減少)が行われたためで、いまだ「ワニの口」は開いたままだ。

中央大学法科大学院教授・東京財団政策研究所主幹・森信茂樹 ヤフーニュース 2019/7/25

【診断】あなたは、デフレ脱却ができていない現在の状態の原因が、あたかも「120兆円規模の減税と公共事業の拡大」にあるかのように論じていますが、これはまったくのデタラメです。
一般的に減税を行なえば、企業はその浮いた分を投資に回すことができるし、また家計は消費や貯蓄に回すことができるはずでしょう。
また公共事業は、97年をピークとして、それ以降下がりっぱなし、いまでは当時の五分の二に減らされています。
そのため老朽化したインフラによって、災害に備えることができなくなっているのです。
自治体がこれらの「維持・補修コストに四苦八苦している」のは当然で、あなたの言っているのとは逆に、政府が公共事業費や補助金・地方交付税を削ってきたからにほかなりません。
歳入と歳出のギャップが「ワニの口」として開いているのを是が非でもPB黒字化という手法で埋めなければならぬというわけですね。
このたびの消費増税も、そのためにぜひ必要だと考えているのでしょう。
しかしMMTでは、政府内部のお財布事情、つまり「財政収支の健全化」に重きを置きません。
民間経済がいかに健全に機能しているかに重きを置くのです(「政府の赤字は民間の黒字」「政府の債務残高は、過去に政府が財政支出を税金で取り戻さなかったものの履歴でしかなく、それは民間の貯蓄になっている」)。
「ワニの口」が開いていることばかり心配するのは、税収だけを財源とみなすという錯覚に陥っているからです。
この錯覚が、デフレ、緊縮財政、消費増税、PB黒字化死守、「財政破綻の危機」扇動、政府の会計と家計との混同、公的資金が必要な時にすぐ「財源をどうするか」と問う態度など、すべてを縛ります。
税によってワニの口を埋める必要など、もともとないのです。
ところであなたは、財務省が言ってきたこと、行なってきたことをそのままオウムのように繰り返していますね。
そこでプロフィールを調べてみました。
「血は争えない」とはよく言われる言葉ですが、「出自は争えない」ものです。
「元財務官僚」とありました。あなたは「ザイム菌感染型脳障害」に深く侵されています。

【症例5】ケルトンは何もわかっていない。インフレが起きない国でこそ、MMT理論はもっとも危険なのだ。(中略)
日本ではインフレが起きにくい。(中略)MMT理論の最大の問題点はインフレになることではない。インフレにならない場合に起こる、過剰な財政支出による資源の浪費(中略)なのだ。
インフレが起きるのはむしろ歓迎だ。(中略)早くハイパーインフレで財政支出ができなくなり、政府の倒産(デフォルト)という形で、日本経済が完全になくなる前に再スタートが切れたほうがよい。(中略)
ケルトンは、日本ではインフレが起きないのだから心配することはない、と言っていることから、彼女こそがMMT理論をもっとも理解していないことは明らかだ(中略)。
異常な低金利で財政支出を過度にすることは、現在の民間投資を阻害するクラウディングアウトを起こすのであるが、さらに深刻な問題は、異時点間の資源配分を阻害し、将来の投資機会を奪うことにあるのである。

慶応義塾大学大学院准教授・小幡 績 ニューズウィーク日本版 7/25

【診断】まず、どうして日本ではインフレが起きにくいのですか。
戦争直後は別としても、戦後日本は少なくとも2回、インフレを経験しています。
一つは60年代の高度成長期、もう一つは80年代のバブル期。
デフレが20年以上続くと、たしかに日本ではインフレが起きにくいのだという錯覚に陥りがちです。
しかし、インフレが起きにくいような構造にしてしまったのはいったい誰でしょう。
それこそは、企業家や投資家の利益最大化だけを考える新自由主義イデオロギーの仕掛け人たちです。
あなたは、そうした歴史を見ずに、日本では一般にインフレが起きにくいという普遍化を行なって、彼らの罪悪を隠蔽しています。
次に、仮にあなたの珍説を認めたとして、なぜ、MMTはインフレの起きにくい国において最も危険なのか。
あなたは「過剰な財政支出による資源の浪費」と答えています。しかし誰も「過剰な」などとは言っていませんので、この形容詞をまず取ってください。
さて政府が財政支出を行なうと、本当に資源の浪費につながるでしょうか。
政府が何らかの財政支出を行って事業を発注し、民間がそのお金を使って何らかの事業を受注し、そこで初めて財政支出の意味が具体的に実現に向かう。
これが普通の「財政支出」の道筋ですね。
そうだとすると、政府の財政支出は、そのまま民間の経済活動を積極化することにつながるのではないでしょうか。
次にあなたは、「早くハイパーインフレで財政支出ができなくなり、政府の倒産(デフォルト)という形で、日本経済が完全になくなる前に再スタートが切れたほうがよい」と、信じがたいことを言っています。
ちなみにこれまで繰り返してきたように、「自国通貨建ての国債発行で、政府がデフォルトすることは100%ありえない」というのは、MMTならずとも、古くからの私たちの共通了解事項であり、しかもこれは財務省のHPにも掲載されている常識です。
あなたは、そのことも理解せずに、MMTについて「ケルトンは何もわかっていない」などと大言壮語するのですから、こちらとしても答えようもない。
しかし、何が言いたいかはわからないでもありません。
それは、あなたの頭の中が、政府の投資と民間の投資とは非妥協的な二項対立であり、パイの決まった経済資源の奪い合いだという考えに固着してしまっているということです。だから、政府のデフォルトは、そのぶんだけ民間の取り分を増やすことにつながるはずで、だから、「日本経済」の再生のためには、望ましいことである、と、こういう論理になりますね。
ガキの陣取り合戦みたいに一国の経済を考えている。
たとえばあなたが、地方で土木建設会社を経営していて、政府の財政支出(つまり「財政赤字」)によって、道路などの公共施設の建設を受注したとします。
そうしてその建設によって、あなたが利益を得るだけでなく、その道路を利用する人たちが大いに増え、その結果、いままで沈滞していた地方の街が活気を帯びることになります。
このプロセスに、政府と民間の二項対立が存在しますか?
その前に政府がデフォルトしてしまっていたら、インフラ整備による地方活性化のこの試みは、まったく成立しないのではありませんか?
またあなたは、「ケルトンは、日本ではインフレが起きないのだから心配することはないと言っている」などと、自分の誤った思い込みを勝手にケルトン教授に投影させていますが、彼女はそんなことは一言も言っていません。
それは先ほどあなた自身が言ったことでしょう?
しかも「心配することはない」とは逆に、「だからこそ危険なのだ」とヘンなリクツをつけて。
MMTでは、財政支出に制約があるとすれば、それはインフレ率だ、と何度も明確に述べています。
統合失調症の一症状に、自分で作り上げた妄想観念をそのまま他人に投影するというのがあります。
「あいつは頭がおかしくなって〇〇病院に運ばれた」というように。
あなたは、ここで、それと等しいことをやっていますね。
ここへきて、ようやくあなたの錯乱症状の根本原因が明確になりました。
「異常な低金利で財政支出を過度にする」などということはMMTと何の関係もありません。
異常な低金利は、むしろ日本政府が過度な金融緩和を、それもマネタリーベースの範囲内だけで行ったために市中にお金が流れなかったことと、デフレマインドがこの政策によっては一向に解消しないことから起きたことです。
積極的な財政支出(つまり民間を直接に刺激する)を適切に行なえば、マイルドなインフレが生じて、企業の貸し出しも増え、おそらく金利もそこそこ上がるでしょう。
銀行も一息つくことができます。
このように、あなたは間違いだらけを並べたてた後で、将来にわたって民間投資を阻害するのが、クラウディングアウト(大量の国債発行による金利の上昇によって民間の資金需要が抑制されるという説)によるものだと決めつけています。
これは、財政支出こそすなわち民業圧迫だという単純なリクツに金縛りになっていることを表しています。
このリクツは、政府を極小にせよ、というネオリベ(新自由主義)イデオロギーを子どもみたいに信じたところからきています。
全体の文章が支離滅裂ですが、一度このイデオロギーに取りつかれると、そんなことはどうでもよくなってしまうのですね。
あなたを、「ネオリベ・ウィルスの侵襲による錯乱症」と名付けておきましょう。

MMTの上陸によって生じたさまざまな患者の症状を見てまいりました。
この後も、同じような患者は増え続けています。
しかしいちいち診察している時間がありません。
またの機会に譲らせていただきます。

私の中に残るのは、やはり、まともな理論、まともな事実を指摘されると、日本のおえらいさんたちは自分のこれまでの立場が脅かされるのに怯えて、こんなにも感情的な拒絶反応を引き起こすのかという、深い慨嘆です。
しかしめげてはなりません。
ちょうど明日(8月30日)には、MMTの主唱者であるランダル・レイとビル・ミッチェルの共著『MMT現代貨幣理論入門』が発売になりますし、なんと10月には、レイ教授が、そして11月には、ビル・ミッチェル教授が来日することが決定しています。
正しい理論についての理解を粘り強く広め、日本の官僚、学者、エコノミスト、マスコミが罹患している深い病気を少しでも治していきましょう。


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MMTの服用を拒否する〇〇病患者を診断する(その2)

2019年08月18日 19時11分27秒 | 経済



【症例4】インフレは突然やって来るが、増税は突然には発動できない。バブル期の土地税制の経緯を見ても、土地バブルが問題になり土地基本法が制定された89年から、地価税が導入される92年まで3年以上かかっている。そもそもあらかじめ決める増税は、所得税なのか消費税なのか、あるいは法人税なのか、だれがどのように国民の合意を求めるのだろうか。
もう一つ、彼女(ケルトン教授――引用者注)の提唱するケインズ主義的な財政運営については、わが国は苦い経験がある。それは90年代、バブル崩壊後の財政運営で、120兆円規模の減税と公共事業の拡大が、景気対策という名目で行われた。しかし失われた20年が経過し、いまだデフレ脱却すらできていない。
公共事業が、その効果や効率を考えずに行われた結果、経済の大きな非効率を生じさせ、維持・補修コストに四苦八苦しているというのが現状だ。
わが国一般会計の歳出・歳入のギャップは「ワニの口」と呼ばれているが、これが大きく開くのは、バブル崩壊後とリーマンショック後の景気対策としての公共事業の追加(歳出の拡大)と減税(歳入の減少)が行われたためで、いまだ「ワニの口」は開いたままだ。
(中央大学法科大学院教授・東京財団政策研究所主幹・森信茂樹 ヤフーニュース 2019/7/25)

【診断】あなたもまた、治癒の難しい症状に侵されているようです。
長い診察になります。
インフレは突然やってくる? インフレは大地震などの自然災害ではありませんよ。
人間社会のさまざまな要因が重なって起きる純然たる社会現象です。
だからこそ行き過ぎが見られた時には、政府が適切なコントロールをすることが可能なのです。

また、土地バブルとインフレとを混同してはなりません。
土地バブルは、金融市場に過剰な資金があふれたために、金融機関や土地ころがしが不動産の爆買いをして暴利を狙った末に起きた現象です。
インフレとは、供給が需要に(たとえわずかなりとも)追い付かない状態一般を指します。
これが緩やかに生ずることで、実体経済への投資が行なわれ、生産活動が活発となり、賃金も上昇しますから、消費が息を吹き返し、デフレ不況から脱却できるのです。

安倍政権は、この20年間つづいたデフレからの脱却を目指しながら、その方法を金融緩和にだけ偏らせ、おまけにデフレ脱却を阻む最大要因である緊縮財政に徹してきたため、見事に失敗したのです。
しかしその目標は2%程度のインフレを目指すというものでしたから、目標自体は間違っていなかったのです。
でも方法が悪かったのですね。
それなのに、あなたは、インフレそのものが悪であるかのように考えている。

あなたは、MMTがインフレ抑制の手段として増税しか提唱していないかのように論じていますが、これも間違っています。
政策金利を引き上げるという手もありますし、日銀が国債の売りオペを行なって過剰な流動資金を吸い上げるという手もあります。
また、仮に増税手段に訴えるとすれば、何税を引き上げるかは、自明です。
高所得者の所得税の累進率を高め、グローバル企業が不当に安い法人税しか払っていない状態を改めさせ、株式などに適用されている分離課税制度をやめればよい。
これらによって、貧富の格差をできるだけ小さくすることができます。
日本は(一応)民主主義国ということになっているのだから、政府がこれらの効用についてきちんと説明しさえすれば、大方の国民の合意が得られるに決まっています。

またあなたは、デフレ脱却ができていない現在の状態の原因が、あたかも「120兆円規模の減税と公共事業の拡大」にあるかのように論じていますが、これはまったくのデタラメです。
一般的に減税を行なえば、企業はその浮いた分を投資に回すことができるし、また家計は消費や貯蓄に回すことができるはずでしょう。
また公共事業は、97年をピークとして、それ以降下がりっぱなし、いまでは当時の五分の二に減らされています。
そのため老朽化したインフラによって、災害に備えることができなくなっているのです。
自治体がこれらの「維持・補修コストに四苦八苦している」のは当然で、あなたの言っているのとは逆に、政府が公共事業費や補助金・地方交付税を削ってきたからにほかなりません。
「失われた20年が経過し、いまだデフレ脱却すらできていない」のは、減税や公共事業の拡大のせいではなく、財務省の緊縮財政路線とその一環としての消費増税のせいです。

最後の一節には、あなたの本音がいみじくも出ています。
歳入と歳出のギャップが「ワニの口」として開いているのを是が非でもPB黒字化という手法で埋めなければならぬというわけですね。
このたびの消費増税も、そのためにぜひ必要だと考えているのでしょう。
しかしMMTでは、政府内部のお財布事情、つまり「財政収支の健全化」に重きを置きません。
民間経済がいかに健全に機能しているかに重きを置くのです(「政府の赤字は民間の黒字」「政府の債務残高は、過去に政府が財政支出を税金で取り戻さなかったものの履歴でしかなく、それは民間の貯蓄になっている」)。

「ワニの口」が開いていることばかり心配するのは、税収だけを財源とみなすという錯覚に陥っているからです。
この錯覚が、デフレ、緊縮財政、消費増税、PB黒字化死守、「財政破綻の危機」扇動、政府の会計と家計との混同、公的資金が必要な時にすぐ「財源をどうするか」と問う態度など、すべてを縛ります。
政府はもともと、集められた税収を使って国費に充当するのではありません。「スペンディング・ファースト」と言って、まず政府短期証券などの形で日銀当座預金からお金を引き出してから(といっても記載するだけですが)、税を集めて国費の一部を補てんするのです。
これは、純然たる会計上の事実です。
税によってワニの口を埋める必要など、もともとないのです。

ですから、無税国家は理念としては可能ですが、徴税の四機能(国民経済の安定化、所得の再分配、自国通貨納税による経済活動の維持、公共性を害する経済活動に対する処罰)を無しにしてしまうと、一国の経済政策のタガが外れて、政府の統制が壊れ、アナーキーな状態に転落します。
徴税の意味は、そこにこそあります。

ところであなたは、財務省が言ってきたこと、行なってきたことをそのままオウムのように繰り返していますね。
そこでプロフィールを調べてみました。
「血は争えない」とはよく言われる言葉ですが、「出自は争えない」ものです。
「元財務官僚」とありました。
もしかして、財務省自身があからさまに言えないことを、言ってくれるように財務省に頼まれているのかもね。
それはともかく、あなたは「ザイム菌感染型脳障害」に深く侵されています。
治癒までには、一生かかるかもしれないことをご覚悟ください。


【症例5】:ケルトンは何もわかっていない。インフレが起きない国でこそ、MMT理論はもっとも危険なのだ。
インフレが起こる国であれば、MMT理論(中略)は問題ない。支出が多すぎれば、インフレをもたらし、すぐに財政支出の拡大が経済に悪影響をもたらすことが認知され、財政支出が極端に過度になる前に止まる。
しかし、インフレが起きにくいとしたらどうだろう。
財政支出は無限に膨らみかねない。だから、日本でMMTは危険なのだ。
日本ではインフレが起きにくい。だから、財政支出が課題となっても、現在世代の人々はそれが経済を傷めていることに気づかない。MMT理論の最大の題点はインフレになることではない。インフレにならない場合に起こる、過剰な財政支出による資源の浪費(中略)なのだ。
インフレが起きるのはむしろ歓迎だ。ハイパーインフレにならないほうがいいが、まったくインフレが起きず、永遠に無駄遣いが続き、日本経済がゼロになってしまうよりは、早くハイパーインフレで財政支出ができなくなり、政府の倒産(デフォルト)という形で、日本経済が完全になくなる前に再スタートが切れたほうがよい。企業が最後まで無理をして、破産するよりも生きているうちに倒産して、新しい経営者の下で再生を図ったほうが良いのと同じである。(中略)しかし、彼ら、つまりMMTを主張する人々が気づいていないのは、インフレになるかどうかではなく、その財政支出が効率的なものであるかどうか、財政支出をするべきかどうか、というところが最大のポイントだということだ。しかも、其の点においてMMT理論は理論的に破綻していることに気づいていない。
ケルトンは、日本ではインフレが起きないのだから心配することはない、と言っていることから、彼女こそがMMT理論をもっとも理解していないことは明らかだ(中略)。
すなわち、MMT理論から出てくる財政支出を拡大すべきだ、という主張は、その支出が有効なものか立証されていない。(中略)MMT理論自体が、財政支出が効率的な水準になることを阻害するどころか、そのメカニズムを破壊するところから理論をはじめているところに致命的な欠陥がある。すなわち、国債は中央銀行が引き受けるメカニズムになっており、国債市場が機能しないようになっているところである。(中略)
異常な低金利で財政支出を過度にすることは、現在の民間投資を阻害するクラウディングアウトを起こすのであるが、さらに深刻な問題は、異時点間の資源配分を阻害し、将来の投資機会を奪うことにあるのである。

(慶応義塾大学大学院准教授・小幡 績 ニューズウィーク日本版 7/25)

【診断】失礼ながら、あなたは錯乱の度がひどいので、あなたを正気に立ち返らせることができるかどうか、正直なところ私にも自信がありません。
でも、どういうふうに錯乱しているかだけはちゃんと指摘しておきましょう。

まず、どうして日本ではインフレが起きにくいのですか。
その根拠を、慶応大学大学院准教授、説明してもらえませんか。
戦争直後は別としても、戦後日本は少なくとも2回、インフレを経験しています。
一つは60年代の高度成長期、もう一つは80年代のバブル期。

次に、仮にあなたの珍奇な説を認めたとしましょう。
ではなぜ、MMTはインフレの起きにくい国において最も危険なのか。
「過剰な財政支出による資源の浪費」とは、政府が資源の浪費を行なうという意味ですね。
誰も「過剰な」などとは言っていませんので、この形容詞をまず取ってください。
でも政府が財政支出を行なうと、本当に資源の浪費につながるでしょうか。

政府が何らかの財政支出を行って事業を発注し、民間がそのお金を使って何らかの事業を受注し、そこで初めて財政支出の意味が具体的に実現に向かう。
これが普通の「財政支出」の道筋ですよね。
公共機関の職員がそのまま出ていって、じっさいに「えんやこら」をやり出すなんてことは万に一つもあり得ないでしょう。
さてそうだとすると、政府の財政支出は、そのまま民間の経済活動を積極化することにつながるのではないでしょうか。
これは、民間にデフレマインドが染みついていて、誰も積極的な投資を行わない時に、政府が刺激を与える効果を生みますから、別に民間の経済活動を邪魔することにはならないでしょう。

次にあなたは、「永遠に無駄遣いが続き、日本経済がゼロになってしまうよりは、早くハイパーインフレで財政支出ができなくなり、政府の倒産(デフォルト)という形で、日本経済が完全になくなる前に再スタートが切れたほうがよい」と、信じがたいことを言っていますが、どうして政府がデフォルトする方がいいのですか。
ちょっと「トンデモ」という以外、形容のしようがないご説です。

ちなみにこれまで繰り返してきたように、「自国通貨建ての国債発行で、政府がデフォルトすることは100%ありえない」というのは、MMTならずとも、古くからの私たちの共通了解事項であり、しかもこれは財務省のHPにも掲載されている常識です。
あなたは、そのことも理解せずに、MMTについて「ケルトンは何もわかっていない」などと大言壮語するのですから、こちらとしても答えようもない。

しかし、何が言いたいかはわからないでもありません。
それは、あなたの頭の中が、政府の投資と民間の投資とは非妥協的な二項対立であり、パイの決まった経済資源の奪い合いだという考えに固着してしまっているらしいということです。
どうもそれが、この錯乱の核心をなしているようです。
だから、政府のデフォルトは、そのぶんだけ民間の取り分を増やすことにつながるはずで、だから、「日本経済」の再生のためには、望ましいことである、と、こういう論理になりますね。

でもこんな机上の単純論理で「日本経済」は回っていません。

たとえばあなたが、地方で土木建設会社を経営していて、政府の財政支出(つまり「財政赤字」)によって、道路などの公共施設の建設を受注したとします。
あなたは入札に成功したのです。
あなたは、さっぱり不景気だったのに、久しぶりに仕事が入ったと喜んで、建設に必要な資材、労働力などを駆り集め、さっそく作業に入ります。
もちろん、利益がどのくらい出るかは、あらかじめ計算済みです。
そうしてその建設によって、あなたが利益を得るだけでなく、その道路を利用する人たちが大いに増え、その結果、いままで沈滞していた地方の街が活気を帯びることになります。

このプロセスに、政府と民間の二項対立が存在しますか?
その前に政府がデフォルトしてしまっていたら、インフラ整備による地方活性化のこの試みは、まったく成立しないのではありませんか?

次に、財政支出が「効率的」なものかどうかが最大のポイントだ、とあなたは言っていますが、ここにはしなくもあなたの新自由主義ゴリゴリのイデオロギーがにじみ出ています。
もちろん、ケルトン教授は、政府の財政支出に関して、優先順位を決めることの重要性を強調していました。
しかしそれはあなたの主張するように、「効率的かどうか」(いったい何にとって、誰にとっての?)を尺度とするものではありません。
一般国民の安全や豊かさを確保するために、いま何を優先させるべきかを、その都度政治的に決定していくことが要求されるのです。

またあなたは、「ケルトンは、日本ではインフレが起きないのだから心配することはないと言っている」などと、自分の誤った思い込みを勝手にケルトン教授に投影させていますが、彼女はそんなことは一言も言っていません。
それは先ほどあなた自身が言ったことでしょう?
しかも「心配することはない」とは逆に、「だからこそ危険なのだ」とヘンなリクツをつけて。
これによって、あなた「こそがMMT理論をもっとも理解していないことは明らか」です。

MMTでは、財政支出に制約があるとすれば、それはインフレ率だ、と何度も明確に述べています。

統合失調症の一症状に、自分で作り上げた妄想観念をそのまま他人に投影するというのがあります。
「あいつは頭がおかしくなって〇〇病院に運ばれた」というように。
あなたは、ここで、それと等しいことをやっていますね。

さらにあなたは、「財政支出を拡大すべきだ、という主張は、その支出が有効なものか立証されていない」などと批判していますが、ある支出が有効なものかどうか(何にとって、誰にとって?)、あらかじめ立証できる人がいたらお目にかかりたい。
あなたならできるんでしょうね。
効率のことしか頭にないあなたに、ぜひ立証してみせてほしいものです。

あなたのMMT批判はますます錯乱の度合いを深めています。
「MMT理論自体が、財政支出が効率的な水準になることを阻害するどころか、そのメカニズムを破壊するところから理論をはじめている」とは、財政支出を一切排して、すべてを民業にまかせれば、いつでも経済の効率性は最大限に実現されると主張するのでもなければ、意味不明な文章です。

次に続く文章も明確な間違いです。
中央銀行が必要に応じて国債を引き受けることができるのは事実ですが、そのために、「国債市場が機能しないようになっている」などということはありません。
現に市中の金融機関が国債を大量に買い込み、そこから、民間の預金を創造しているではありませんか。
もっとも、この6年間、過剰な金融緩和により、金融機関保有の国債の割合が激減してきたことは事実ですが、それは安倍政権が勝手に取った金融政策の結果であり、MMTにその責任を押し付けるのは、ひどい濡れ衣というものです。

最後です。
ここへきて、ようやくあなたの錯乱症状の根本原因が明確になりました。
「異常な低金利で財政支出を過度にする」などということはMMTと何の関係もありません。
異常な低金利は、むしろ日本政府が過度な金融緩和を、それもマネタリーベースの範囲内だけで行ったために市中にお金が流れなかったことと、デフレマインドがこの政策によっては一向に解消しないことから起きたことです。
積極的な財政支出(つまり民間を直接に刺激する)を適切に行なえば、マイルドなインフレが生じて、企業の貸し出しも増え、おそらく金利もそこそこ上がるでしょう。
銀行も一息つくことができます。

このように、あなたは間違いだらけを並べたてた後で、将来にわたって民間投資を阻害するのが、クラウディングアウト(大量の国債発行による金利の上昇によって民間の資金需要が抑制されるという説)によるものだと決めつけています。
これは何が言いたいのでしょう。
財政支出は、すなわち民業圧迫だという単純なリクツに金縛りになっていることを表しています。

このリクツの出所がどこかは明らかですね。
政府を極小にせよ、というネオリベのイデオロギーを子どもみたいに信じたところからきています。
全体の文章が支離滅裂ですが、一度このイデオロギーに取りつかれると、そんなことはどうでもよくなってしまうのですね。
あなたをとりあえず、「ネオリベ・ウィルスの侵襲による錯乱症」と名付けておきましょう。

MMTの上陸によって生じたさまざまな患者の症状を見てまいりました。
私の中に残るのは、やはり、まともな理論、まともな事実を指摘されると、日本のおえらいさんたちは自分のこれまでの立場が脅かされるのに怯えて、こんなにも感情的な拒絶反応を引き起こすのかという、深い慨嘆です。
この兆候を最近は「センメルヴェイス反射」と呼ぶそうですが、すでにフロイトが100年以上も前に、「否認」という概念で説明しています。

ケルトン教授の講演後の記者会見で出なかった質問が二つあります。
一つは、JGP(雇用保障プログラム)についてです。
もう一つは、安倍政権が取り続けているPB黒字化政策の是非についてです。
これらは、さっきの話をちゃんと聞いていて、しかも日本経済の現状を多少とも憂慮しているなら、当然出てきてしかるべき質問です。
代わって出てきたのは、ほとんどがインフレ懸念ばかりでした。
私は、これまで取り上げてきた学者、エコノミスト(錯乱症の小幡氏を除く)と同じように、日本の経済ジャーナリズム全体が、デフレのただ中にありながら、強度のインフレ恐怖症に侵されているという、まことに残念な印象を持ちました。

しかしめげてはなりません。
11月には、「MMTの教科書」の執筆者、オーストラリアのビル・ミッチェル教授が来日する予定です。
正しい理論についての理解を粘り強く広め、日本の官僚、学者、エコノミスト、マスコミが罹患している深い病気を少しでも治していきましょう。

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長編小説の連載が完結しました!
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MMTの服用を拒否する〇〇病患者を診断する(その1)

2019年08月09日 00時26分13秒 | 経済



ステファニー・ケルトン教授が来日してから、3週間以上が経ちました。
その間、日本の経済学者、エコノミストなどの発言がいくつも出ましたが、わずかな例外を除いて、大部分がMMTについての無理解と、日本経済の現状に対する無知をさらすものでした。
筆者は経済学なるものを正式に学んだことはありませんが、その素人の目にも、これはほとんど病気だとしか思えないような発言が目立ちます。
MMTがどうのという前に、この人たちは、専門家面をしていながら、マクロ経済の基本がわかっていません。
それらしき専門用語を使っていながら、人を煙に巻くだけではなく、頭が病理的な段階に入っていて、自分でも何を言っているのかわかっていないのではないでしょうか。
こういうひどい「経済言説」がはびこっている日本の現状を深く憂慮します。
せっかくケルトン教授に来てもらった以上、こうした頭のおかしい言説群を少しでも吹き払うのでなければ、彼女に申し訳が立ちません。
「やっぱり日本て、ダメね」と思われて悔しく、また恥ずかしくないでしょうか。

そこで、ここでは、これらの《症例》を発表順にいくつか挙げて、それに対して厳しい診断を下すことにします。

【症例1】MMTを実践すれば、インフレを止められず国債が紙切れ同然になって、財政が立ちいかなくなる可能性は否定しきれない。(中略)安倍政権では首相の意に沿う日銀総裁やリフレ派の審議委員が任命され、日銀が事実上の財政ファイナンスに踏み出し、消費増税も2度先送りされてきた。いざという時に、果敢に利上げや増税ができるのかは疑わしい。財政主導の経済で生産性が落ち、中長期には日本経済の成長力が落ちる恐れはある。(ダイヤモンド編集部・西井泰之 ダイヤモンドオンライン 2019/7/17)

【診断】MMTでは、財政赤字はそれ自体悪ではなく、財政出動が行きすぎないようにする歯止めはインフレ率であると何度も断っています。
それをコントロールすることが政府日銀の役割であり、それには増税だけではなく、さまざまな方法が考えられるとされています。
どういう実体経済の現場から高インフレの兆候が出てきているのかをまず具体的に精査することが必要だと、ケルトン教授は記者会見で答えていました。
あなたはそれを聞かないで書いているようですね。
それに、消費増税の実施こそは、デフレの長期化を作り出してきたということがまるで分っていません。
これまでの増税の延期がなぜ、高インフレ期になった時の増税を困難にする根拠になるのでしょうか。
また、財政主導の経済でどうして生産性が落ちるのですか。
逆でしょう?
政府がさまざまな公共部門に投資することによって、技術開発も進み、企業も活気を呈し、生産性があがるのではないですか。
前後で論理がまるで通っていませんね。
あなたは、おそらく日経新聞読みによくある「表層型ADHD」に罹患しています。

【症例2】平時における財政赤字には、金利上昇やインフレにつながるリスクがないだろうか? MMTは「心配ご無用」という。自国通貨建てで国債を発行する政府は、これをいつでも自国通貨に換えることができるからである。(中略)MMTにおける中央銀行はこうした目標(物価上昇率2%)も出口(金融緩和の終わり)もない。政府の出す財政赤字をひたすら埋める役割を担うにすぎない。
中央銀行が国債を引き受けるなら、財政赤字はそのまま貨幣の増発になる。いずれインフレを誘発しないのだろうか?
しかし、MMTによれば、貨幣が増え過ぎても、その価値が毀損することはない。
逆説的だが、MMTによれば、政府が財政収支を気にしなくてよいのは、その気になればいつでも増税できるからだ。
MMTは高い成長を見込んでいるわけではない。自然増収ではなく増税なしには貨幣を回収できない。
MMTは課税を貨幣(タンス預金)の回収とみなすが、回収の仕方に配慮がないようだ。仮に消費税や所得税でもって課税するなら、景気や成長に与える影響は甚大だろう。(中略)MMTは政府に無限の課税権を認めているようにも思われる。
MMTが目指すのは脱デフレではなく、政府が主導する(慢性的な需要不足を埋め合わせる)経済の再構築、いわば「大きな政府」だ。金融政策を補完する(助ける)ための財政政策でもない。MMTでは金融政策は財政政策(赤字)の帳尻合わせに使われている。
(一橋大学経済学研究科・政策大学院教授・佐藤主光 プレジデントオンライン 2019/7/19)

【診断】あなたは一橋大教授という高い地位にありながら、かなりの重症に侵されています。
少し時間をかけて診察しましょう。
まずあなたは、MMTを実施する政府による歯止めのない財政出動が、中銀を奴隷化することを心配されているようですが、政府と中銀はもともと統合政府です。
しかし財政政策と金融政策という役割分担はおのずとあって、このことはMMTでも何ら変わりありません。
MMTはデフレ脱却ができない時には、お金を積み上げるだけの金融政策のみに偏したこれまでの政策を、もう少し実体経済を直接活性化させる財政政策主導に切り替えるべきだと主張しているにすぎません。
高インフレをコントロールするのは、統合政府が二人三脚で行えばよいのです。
つぎに、「MMTによれば、貨幣が増え過ぎても、その価値が毀損することはない」とありますが、そんなことは、MMTは一言も言っていません。
インフレが行き過ぎれば貨幣価値が毀損するのは当然のことで、MMTは、財政赤字の制約をまさにそこに置き、そのためのプランをいくつも提示しています。
つぎに、MMTは、デフレからの脱却や高インフレの抑制のために、政府と民間との経済的関係の事実を解き明かしているだけであって、資本主義であるかぎり、成長(国民が豊かになること)のためのヒントを提供しているのは当然です。
仮にMMTが高成長を望んでいるとあからさまに言明していなくても、経済成長が実現するような政策を政府がとるなら、税の自然増収が期待できますから、増税をあえて強制する必要はなくなるでしょう。
あなたは、いったいに、税の話ばかりしていますが、消費増税を強制してきたのはMMTではなく、政府財務省ですよ。
「消費税や所得税でもって課税するなら、景気や成長に与える影響は甚大だ」と言っているところを見ると、消費増税には反対らしい。
それなら、政府を責めるべきであって、なんで現代の貨幣や国債のしくみと回り方(「政府の赤字は民間の黒字」)を解明しているだけの「理論」に、増税の責任を押し付けるのでしょう。
MMTは「無限の課税権を認める」などと言ったことは一度もありません。
むしろ逆に、税とは政府の歳出の唯一の財源(であるべき)だという、誰もが陥っている考え方がそもそも間違いだという本質規定をしているのです。
ケルトン教授は、財政赤字をそんなに気にする必要はないということを説明するために、次のように言いました。
「政府の債務残高(例の1200兆円云々)は、過去に政府が財政支出を税金で取り戻さなかったものの履歴でしかなく、それは民間の貯蓄になっている」
これは、裏を返せば、まさに税の機能が政府の歳出のためにあるのではなく、別のところにあることを示唆していることになります。
それは、ビルトインスタビライザー(経済の安定化装置つまりインフレやデフレの調整)、所得の再分配機能、自国通貨納税による経済活動の維持、公共性を害する経済活動に対する処罰の四つです。
そういうわけで、あなたは、反論のピントがまるでずれているのです。
さらに、たしかにMMTは脱デフレを「目指して」はいませんが、現在の日本のようにデフレがこれほど続いている時に、政府が取るべき政策の間違いについては指摘しています。
MMTは、脱デフレのためには、金融政策偏重よりも積極的な財政政策にシフトした方がよいというヒントを与えているからです。
ところでその場合、「大きな政府」(曖昧な言葉ですが)と脱デフレとは何が違うのでしょうか。
20年以上続くデフレで国民が苦しんでいる時に、「慢性的な需要不足を埋め合わせる」ために一時的に政府が「大きな政府」を演じることは悪いことでしょうか?
しかし、そもそもMMTは、「小さな政府」か「大きな政府」のどちらがよいかなどというイデオロギーの選択を迫るような「政治思想」ではありません。
民間の景気がよい時には、政府の役割は小さくて済みますから、その時には「小さな政府」がよいと言ってもあながち間違いではないでしょう。
これはMMTの一環であるJGP(雇用保障プログラム)のアイデアを見ればよくわかります。
繰り返しますが、MMTは国民が豊かになるためには、どういう考え方をしたらよいかを示す「理論」です。
最後に、「MMTでは金融政策は財政政策(赤字)の帳尻合わせに使われている」とはいったい何のことでしょう。
意味不明ですね。
大規模な財政出動をした時に、高インフレが生じ、その尻拭いを日銀がする羽目に陥るという意味でしょうか。
しかし日銀ばかりでなく、政府が赤字財政を少し抑えることはいくらでもできますよね。
それにしても、まだMMTはどこでも「使われてい」ませんよ。
あなたは、まだ実施されてもいない「理論」を、すでに実施されている「政策」と勘違いして、それが招く高インフレとその結果として政府に「無限の課税」を許す事態に、極度におびえているようですから、「藁人形恐怖症」です。

【症例3】今仮に、日本政府がMMTの採用を真剣に検討しているというニュースが流れたとすると、私が真っ先にすることは、円建ての銀行預金をドルかユーロ建ての預金に預け替えることだ。(中略)MMTによれば、政府の財政需要をまかなうために、日銀は輪転機を回して、円の紙幣をどんどん刷り、それで国債を買うわけだから、円は供給過剰となって価値が下がるに決まっている。これは私だけでなくヘッジファンドなど世界中の投機家も円安を見越して円売りドル買いをするだろうから、ニュースが流れた1時間後には1ドル=300円まで円安となっているかもしれない。(中略)紙幣の価値が、中央銀行が持つ銀や金で裏打ちされている時代と違い、現在はどの国も国の信用(徴税力)だけが裏付けとなっている。MMTを実施すると言った瞬間に、この信用が根底から揺るがされるのだ。(中略)MMTのようにこれから不換紙幣をどんどん刷りますと宣言するのは、フーテンの寅さんではないが「それを言っちゃあ、おしまいよ」ではなかろうか。(元財務省大臣官房審議官・有地浩 アゴラ 2019/7/21)

【診断】あなたについては、前々回のこのブログでも取り上げたのですが、あまりに無知なので、もう一度診察室に来てもらいました。
あなたは、MMTについてだけではなく、お金についての知識もまるで持ち合わせていません。
MMTでは、自国通貨建ての国債発行額には、インフレ率以外に制約はないと言っているので、財政出動の際に、どれくらいのインフレを許容するのかということは、大前提としてあらかじめ繰り込まれています。
したがって、「ニュースが流れた1時間後には1ドル=300円まで円安となっているかもしれない」などというのは根も葉もない妄想です。
次に、「日銀は輪転機を回して、円の紙幣をどんどん刷り、それで国債を買う」などといっていますが、財務省出身のくせに、日銀が国債を買う(貸す)際に紙幣など刷らないということを知らないのでしょうか。
この人は、お金というものを紙幣でしかイメージしていないのですね。
事実は言うまでもなく、政府が国債を発行するに際しては、ただ日銀当座預金の簿記の借方欄に10兆円と記載されるだけです。
現金紙幣なんて、そんなに動いていないのですよ。
私たちは、日常生活で現金紙幣を用いていますから、「お金」と聞くとすぐに現金紙幣を思い浮かべてしまいますが、日銀当座預金に書き込まれた数字も、政府小切手も、企業・組織の預金通帳に書き込まれた数字も、すべて「お金=借用証書」なのです。
この証書の流通を成立させているのは、人と人との信用関係であって、金銀や現金紙幣のような「モノ」ではありません。
通貨とは、不換紙幣だけではありません。
それはごく一部であって、日銀当座預金や銀行預金に書き込まれた数字(万年筆マネー)も、カードで買い物をして記録された数字も、政府小切手もみな一種の通貨です。
MMTが財政出動を促す場合にもこのことは変わりありませんから、「信用が根底から揺るがされる」などということは、200%あり得ません。
あなたは、財務省時代、大臣官房審議官という職に就いていて、いったい大臣に何を進言したのでしょう。
あなたのような無知な人が、政治家にもっともらしく何か吹き込んだとすれば、それが今日の政治家たちの緊縮脳の育成に一役買っているかもしれません。
あなたは、重度の「インフレ被害妄想狂」です。
(次号に続く)


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MMTの正しさ、リフレ派の誤り、誤解のひどさ

2019年07月24日 09時08分24秒 | 経済



7月16日にMMT(現代貨幣理論)の主唱者であり、ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授が来日しました。
衆議院議員会館で講演し、多くのメディアの記者会見にも応じました。
筆者も講演を聞くことができましたが、明快な論理と巧みな比喩を用いて、MMTの本質を展開してくれました。
また三回にわたって三橋TVに出演し、その理論と日本が抱える経済問題についてわかりやすく解説してくれました。
ケルトン教授の説くところは、これまで中野剛志氏、藤井聡氏、三橋貴明氏ら、一部の人たちによってさんざん言われてきたこととほとんど変わりませんが、これを機会に、MMTの主張も含めて、日本経済についての正しい議論をまとめておきたいと思います。

①自国通貨建ての国債発行額には原則として制約がない。政府はその限りでは、財政赤字を気にする必要はない。
②ただし、インフレ率という制約があり、政府・中銀は、過度なインフレになる兆候が見えた時には、コントロールする必要があるし、それは金利調整や増税などによって可能である。ただしインフレの場合でも、消費増税である必要は全くない。富裕層に優しく、貧困層に厳しい逆進性を持つ消費税は廃止すべきである。
③リフレ派は、金融緩和を続けることで市場に「予想インフレ率」が高まり、それが投資意欲に結びつくので、デフレ脱却が可能だと主張してきたが、資金需要は高まらなかった。また過度な金融緩和が金利を大幅に引き下げ、金融業界にダメージを与えてきた。
④企業の投資意欲を生み出すには、金融政策に特化するのではなく、同時に、政府が国債を発行して積極的に財政政策を打つことが、直接に需要創出につながり、生産活動に結びつくので、有効である。これはアベノミクスの二本目の矢を意味するが、二本目の矢は放たれなかった。


③と④についてちょっと解説を付け加えます。
リフレ派の理論に従って安倍政権(日銀)は6年半にわたり膨大な量的緩和を行ってきたにもかかわらず、「予想インフレ率」は高まりませんでした。
その結果、デフレ脱却はおろか、国民の生活はかえって困窮を招いてしまいました。
これには、量的緩和によって積み重なったお金が、日銀当座預金という特別の口座のお金(マネタリーベース)に過ぎず、一般の企業が引き出すことのできる市中銀行の口座ではないという必然的な事情があります。
だから日銀当座預金に滞留したお金と、マネーストック(金融部門総体の通貨供給量)との間には越えがたい壁がもともとあったのです。
したがって、このデフレ下では、よほどの投資意欲を持った奇特な借り手でも現れなければ(現れなかったのですが)、市中にお金が流れません。
リフレ派経済学者たちは、その壁についての自覚がなく、その無自覚を「予想インフレ率」という空しい期待によって覆い隠してきたわけですね。

⑤政府の赤字は民間の黒字。つまり、政府の負債が増えることは、反対側で、民間の預金が増えることを意味する。したがって、国民は、「国の借金」などをまったく気にする必要はなく、むしろ喜ぶべきである。政府・日銀は通貨発行権を持っているので、PB黒字化をしないとやがて政府が財政破綻をきたすなどという財務省の脅しには何の根拠もない。
⑥民間に資産が十分にあるから、国債発行の余地があるのではない(「お金のプールは存在しない」――この表現は、三橋貴明氏だけでなく、ケルトン教授も期せずして同じ表現を使っていました)。したがって、民間に十分な資産がある間は国債を発行できるがそれが尽きたら財政破綻するという論理は、完全に間違っている。
⑦これは一般の銀行が企業や個人にお金を貸すときにも当てはまる。国債の場合も普通の借金の場合も、銀行に潤沢な資金(政府の場合は日銀当座預金)があるから借金できるのではなく、金融機関は、ただ借り手に返済能力があるかどうかを査定したうえで、通帳に金額を書き込むだけである(万年筆マネー)。
⑧経済の話をするときには、政府・日銀の「お財布」の話ばかりしないで、生産のリソースが十分に獲得可能か、企業や消費者にとって政府の政策が適切かどうか、労働者が豊かに暮らせるだけの経済体制になっているかどうかなどに、話題の中心を移すべきである。財政ではなく、経済全体こそが問題なのだ(ケルトン教授は、このことを「眼鏡をかけ替える」と表現しました)。
⑨MMTには、JGP(雇用保障プログラム)という構想がある。これは、不景気で失業者が増えた時には政府が最低賃金で雇用し、景気が回復すれば、労働者は自動的に高賃金の民間企業に移行するという考えである。つまりデフレ期には、政府が失業者に救済の手を差し伸べるために積極財政策をとり、好景気の時には、その必要がなくなるので、政府の財政もそのぶん縮小することができる。


このJGPについては、ケルトン教授が講演で強調していたにもかかわらず、記者会見でこれに注目した記者はいなかったようです。
また、その後の報道記事でも、ほとんど問題とされませんでした。
メディアが関心を持ったのは、好意的、悪意的両方を含めて、自国通貨を持つ政府には国債発行額の制約はないという一点にもっぱら集中していました。
記者や論者たちの関心がここに集中していたのは、財務省の緊縮路線が人々の頭に刷り込まれてきたために、この「事実」の指摘によほどショックを感じた証拠です。
ですから、MMTについての論評やケルトン教授へのインタビューでの質問では、インフレになったとき抑制できないのではないかという、一種の「インフレ恐怖症」の症状を示すものがほとんどでした。
これに対してケルトン教授からは、「デフレから脱却しなくてはならない時にどうしてそんなにインフレを心配するのですか」と皮肉を言われる一幕もあったようです。
じっさい、日本政府は、デフレの時にインフレ対策というトンデモ政策をやって事態をますます悪化させたくらいですから、もともとインフレ対策については、得意中の得意なのです。
こうした記者や論者は、悪夢を見続けることに慣れ切ってしまって、「目を覚ませ」という声を聞き取ることができず、「たいへんだ、MMTによってデフレから脱却したらハイパーインフレになってしまう!」と錯乱状態に陥ってしまったのでしょう。

ところでJGPですが、これはとてもいいアイデアだと筆者は評価します。
というのは、このアイデアは、アメリカの民主党、共和党の間で盛んな、「大きな政府か小さな政府か」という不毛な二元論を克服する可能性を持っているからです。
不況の時には政府が公共事業を惜しまず提供して失業者を救済し(その財源については、国債発行で十分賄えます)、好況になったらより高給で雇用できる民間企業に彼らを吸収させる――つまり、不況の時には「大きな政府」、好況の時には「小さな政府」というように、柔軟に政府の規模と役割を調整できることになります。
そこには、右か左か、小さな政府か大きな政府かといった、イデオロギー支配が介在する余地はなく、経済の実態に合わせてただプラクマティックな対応機能を政府が備えるだけで十分だという思想が見られるわけです。

ところで、新しいものが出てきた時には、誤解の嵐にさらされるのが常です。
人々は、惰性的な感覚、感情からなかなか自由になれないからです。
MMTは90年代からケインズ派の流れをくむものとして既に存在しており、別に新しい理論ではありません。
ところが財務省のトリックによって、私たちがあまりに家計と政府の財布とを混同する習慣を身につけてしまっていたので、これが上陸した時に、「黒船」のように新しく見えてしまったのです。
この事態に適応できず、さまざまな誤解が生まれましたが、最近、ある人から得た情報で、これぞバカな誤解の決定版という代物に接しましたので、典型例として俎上に載せることにしましょう。

《今仮に、日本政府がMMTの採用を真剣に検討しているというニュースが流れたとすると、私が真っ先にすることは、円建ての銀行預金をドルかユーロ建ての預金に預け替えることだ。
(中略)
MMTによれば、政府の財政需要をまかなうために、日銀は輪転機を回して、円の紙幣をどんどん刷り、それで国債を買うわけだから、円は供給過剰となって価値が下がるに決まっている。これは私だけでなくヘッジファンドなど世界中の投機家も円安を見越して円売りドル買いをするだろうから、ニュースが流れた1時間後には1ドル=300円まで円安となっているかもしれない。
(中略)
私は、MMTは法定通貨(不換紙幣)が国民の信用で成り立っていることをあまりに軽視していると思う。紙幣の価値が、中央銀行が持つ銀や金で裏打ちされている時代と違い、現在はどの国も国の信用(徴税力)だけが裏付けとなっている。MMTを実施すると言った瞬間に、この信用が根底から揺るがされるのだ。
(中略)
円にしてもドルにしても、インフレによる減価で、2019年の1万円や100ドルの価値は1965年の価値のそれぞれ4分の1、8分の1にも満たなくなっている。しかしこの減価は長い時間をかけて徐々に起きたから経済に混乱はあまり生じなかった。それを、MMTのようにこれから不換紙幣をどんどん刷りますと宣言するのは、フーテンの寅さんではないが「それを言っちゃあ、おしまいよ」ではなかろうか。》
http://agora-web.jp/archives/2040455.html

これを書いたのは、元財務省財務大臣審議官の有地浩という人ですが、よっ、さすが財務省、と声をかけたくなるほど、デタラメを振りまいています。
よくもここまで突っ込みどころ満載の文章を書けたものだと、思わずのけぞってしまいます。

まず冒頭から、この人は、MMTについての知識などまるで持ち合わせていないことがわかります。
MMTでは、自国通貨建ての国債発行額には、インフレ率以外に制約はないと言っているので、財政出動の際に、どれくらいのインフレを許容するのかということは、大前提としてあらかじめ繰り込まれています。
したがって、「ニュースが流れた1時間後には1ドル=300円まで円安となっているかもしれない」などという妄想の発生する余地はありません。だいたいどうして1時間後に300円なんて数字が出てきたのでしょうね。

次に、「日銀は輪転機を回して、円の紙幣をどんどん刷り、それで国債を買う」などといっていますが、財務省出身のくせに、日銀が国債を買う(貸す)際に紙幣など刷らないということを知らないのでしょうか。
そんなことをすれば、国立印刷局広しといえども、すぐに建物の中が一万円札でいっぱいになり、従業員の居場所もなくなってしまうでしょう。
仮に10兆円刷ったら、10億枚という想像を絶する量の紙幣で埋もれることになります。
この人は、お金というものを紙幣でしかイメージしていないのですね。
事実は言うまでもなく、政府が国債を発行するに際しては、ただ日銀当座預金の簿記の借方欄に10兆円と記載されるだけです。

こうして政府は額面10兆円の政府小切手を切り、これを、ある事業を受注した企業や組織に渡します(国債発行は、公共事業、社会福祉事業など、必ず何か具体的な公共投資としてなされるのですから)。
小切手を受け取った企業・組織は、市中銀行にこれを持ち込み、預金通帳に同額の数字を書き込んでもらいます。
銀行は受け取った政府小切手を日銀に持ち込み、日銀当座預金に同額の数字を書き込んでもらいます。
日銀と政府は統合政府ですから、これで政府小切手は、「お金=借用証書」としての役割を終えます。
一方、企業・組織は、労賃、原材料、設備資金などの支払いのために、預金から取引先、従業員などの預金通帳に必要金額の振り込みを行います。
取引先や従業員は、振り込まれた金額を必要に応じて現金紙幣に替えます。

さてこの一連の過程で、現金紙幣が現れるのは、最後の段階だけです。
現金紙幣なんて、そんなに動いていないのですよ。
私たちは、日常生活で現金紙幣を用いていますから、「お金」と聞くとすぐに現金紙幣を思い浮かべてしまいますが、日銀当座預金に書き込まれた数字も、政府小切手も、企業・組織の預金通帳に書き込まれた数字も、すべて「お金=借用証書」なのです。
現金紙幣も、日銀が私たちから借りている借用証書です。
いろいろな形の「お金=借用証書」があるのですね。
この証書の流通を成立させているのは、人と人との信用関係であって、金銀や現金紙幣のような「モノ」ではありません

有地氏は、このことがまるで分っていません。
いや、ほとんどの人が金本位制の観念を残滓として頭に残しているために、このことを理解していないと言えるでしょう。
テレビ朝日のニュース・ステーションで、ケルトン教授の講演の際に、MMTについて説明をしていました。
紹介してくれることはけっこうなことですが、そのために、現金紙幣の模型を使って、それをぐるぐる回していました。
これでは人々が、紙幣だけをお金と考えたとしても無理はないでしょう。
困ったものです。

有地氏は、MMTの採用を検討しているというニュースが流れただけで、「円建ての銀行預金をドルかユーロ建ての預金に預け替える」そうですが、勝手にやれよと言いたくなります。
この人は、MMT(つまりこの場合は多少大胆な財政出動)が実施されると、たちまち過度なインフレが起きて円が暴落すると信じ込んでいるようですが、MMTがそんなちゃちな理論でないことは、すでに述べたとおりです。

また、「通貨が国民の信用で成り立っている」のは事実ですが、いま述べたように、通貨とは、不換紙幣だけではありません。それはごく一部であって、日銀当座預金や銀行預金に書き込まれた数字(万年筆マネー)も、政府小切手もみな通貨です。
MMTが財政出動を促す場合にもこのことは変わりありませんから、「信用が根底から揺るがされる」などということは、200%あり得ません。
それは有地氏のインフレ恐怖症の重篤症状のなかだけでしか起こりえないことです。

さらに有地氏は、「MMTのようにこれから不換紙幣をどんどん刷りますと宣言するのは、フーテンの寅さんではないが『それを言っちゃあ、おしまいよ』ではなかろうか。」などとつまらぬ冗談を吹かしていますが、MMTがどこで「これから不換紙幣をどんどん刷ります」と宣言したのでしょうか。
こういうデマを平然と流すのは、単に誤解や歪曲といったレベルの話ではなく、わざわざ来日してMMTの本質をていねいに説いてくれたケルトン教授に対する失礼極まる愚弄と称すべきでしょう。
日本の「経済識者」の無知ぶりをさらけ出して、世界に対して恥ずかしいと感じるのは、筆者だけでしょうか。
嘆かわしきは、有地氏に代表されるような重症のインフレ恐怖症に罹患した、日本の知的(痴的)病人どもです。
MMTの健全な主張を正確に理解して、このひどいデフレ状況から一刻も早く脱却したいものです。


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令和元年6月10日経済罪政諮問会議議事録

2019年06月10日 22時44分47秒 | 経済



 出席者(発言順):  余り 明か(内閣府特命大臣)
           嗚呼 そうだろう(財務大臣)
           どぶ板 蹴ろう(慶応大学教授)
           面皮 ひろし(東京大学名誉教授)
           中二 白空き(経団連会長)
           嘘尾 雄蔵(東京大学教授)
           浜海苔 むらさき(同志社大学大学院教授)
           厭う 高年(東京大学名誉教授)
           ミス 魔女宅(国際魔女大学学生)

余り議長 それでは令和になって初めての経済罪政諮問会議を開きます。本来なら安倍総理に議長をやっていただくんですが、今日はあいにくトランプのやりすぎでシンゾーを悪くされて、出席できませんので、私が代わりを務めます。
 ところで、令和初めての会議ということで、新元号が万葉集から採られたことにちなみ、安倍総理からお祝いのしるしとして短歌が届けられました。まずはそれを詠みあげてから、実質審議に入りたいと思います。
  天の原 ふりさけ見れば 微かなる われの力も 消えし月かも
嗚呼委員 どっかで聞いたような歌だな。ま、彼がいなくても何とかなる、何とかなる。
つぶやくようにいない方がやりやすいかもしれん。
余り議長 それでは議題に入ります。本日は、今年10月に予定されている消費税の増税について、各委員のご意見をうかがいたいと思います。
どぶ板委員 それはもう必要ないですよ。こないだの骨太方針原案で、もう増税実施と明記されたじゃないですか。参院選の自民党公約にも入ってますよ。私はこれで財政均衡に近づくのかと思うと、喜びに堪えない。
余り議長 まあそうなんですが、一応、手続きとして、国民に納得してもらうためにも、ここで各委員に増税の根拠をご説明していただくと、ダメ押しが可能となると思うんです。
嗚呼委員 G20でも、世界経済の下振れリスクが高まってるって共通認識があるからね。僕はそんな中で日本が率先して財政基盤を固めて、国際的な信用を維持するために増税は必要と発言したんだ。
面皮委員 私はこう考えるんです。南海トラフ大地震の可能性が切迫してる。それに対処するためにもぜひ増税はしなくちゃなりません。
中二委員 財政再建待ったなしですね。将来世代にツケを残さないためにも、PBの黒字化を早めておかないと。それに、財界としては、国内の健全経営の維持のために、法人税を減税してもらう必要があります。そのぶん、消費税で賄うのが合理的でしょう。
嘘尾委員 財政赤字を続けていると、国債の増発と長期金利の上昇を招きますからね。これは結局、民間支出を締め出す恐れがあります。最近は、積極財政を主張する論調も散見されますが、政府の財政出動には無駄が多く含まれるので、経済の生産性や効率性をむしろ阻害する要因にもなるんです。ですから、財政を均衡させるのが政府の役割です。その意味で、増税によって税収をがっちり固めておかなくてはなりません。
浜海苔委員 財政破綻の危機はもうそこまで迫ってます。増税は言うまでもありません。
余り議長 だいたいこんなところですか。厭う委員、何かありましたら。
厭う委員 増税はもちろん必要ですが、私は、財務省が景気の悪化を恐れて設定している軽減税率も弊害が多いと考えてるんですよ。3月に、経済学や政治学の専門家を集めて「軽減税率に関する緊急政策提言」というのを出したんです。いえ、私は発起人ではなく賛同者の筆頭に名を連ねていますが、実質的にまとめたのは私です。
軽減税率は、対象品目を生産・販売する業界にとって、既得権益となってしまうんです。税率の改定時にその既得権益を守ろうとするし、他の業界も新たに軽減税率が適用されるように働きかけるようになります。将来的な財政基盤の安定を考えたら、税率を20%くらいまでは上げなくちゃいけませんから、この既得権益化をあらかじめ摘み取っておかなくてはなりません。
嗚呼委員 ああ、そうだろう。
余り議長 ご意見が出そろったようですね。これで消費増税の必要が確認されると同時に、軽減税率もやめた方がいいというところでまとまったようです。それではこれにて……

この時、ミス・魔女宅、箒に乗って乱入。なんだなんだ、とみんなびっくり
ミス・魔女宅 遅れちゃってすみませーん。出てくる前に箒の調子がちょっと悪かったんで。
余り議長 あんた誰? 呼んでないよ。出てってください。
ミス・魔女宅 ウフン、わかってる。でも許して。皆さんにキスしてあげるから。

男の委員たち、ミス・魔女宅のキスの魔法にかかり、とたんににやけてしまうが、浜海苔委員だけは、いつもの苦虫を噛み潰したような顔をさらに顰めて、ハエを追い払うように拒否する
ミス・魔女宅 わたし、ミス・魔女宅って言います。どうぞよろしく。略称でいいから、MMTって呼んでね。
浜海苔委員 えっ? MMTって理論じゃなくて人間だったの!
ミス・魔女宅 理論でも人間でもなく、魔女のタマゴで~す。
 時間には遅れちゃったけど、来る途中で皆さんの話、みんな聞いちゃいましたよ。魔法の力でね。
 それで思ったんだけどぉ、皆さん、ひどいデタラメばっかりおっしゃってるのね。よくこれで内閣府の諮問委員が務まるわね。しかも東大の先生が3人も入ってるんでしょう。
各委員 な、なんだ失敬な。どこがデタラメなのか、説明してみたまえ。
ミス・魔女宅 一人一人行きましょ。
 まず嗚呼さん。G20で下振れリスクが確認されたんでしょう。だったら、増税なんかして、どうしてデフレを促進するような真似するの。世界経済にも悪影響与えるわよ。あなた、総理だったときは積極財政やってたじゃないの。財務大臣になったとたんに財務省に篭絡されて緊縮派に転向しちゃったの? それに、格付け会社の評価なんか歯牙にもかけなかったのに、増税延期したら格付け会社の評価が下がることを覚悟しなくちゃならないなんて、いったい、どうしてそんなに弱気になっちゃったの? ねえ、嗚呼ちゃんてば。
嗚呼委員 ……君の考え方については知ってる。だけど、日本経済をそういう考えの実験場にするわけにはいかないんだ。
ミス・魔女宅 あーら、緊縮路線で20年も実験してきて、全然デフレから脱却できてないじゃない。景気判断も連続で「悪化」よ。賃金も下がりっぱなしだし。消費も投資も冷え込んでるし。
嗚呼委員 いや、しかしGDPはこの前プラスになったじゃないか。
ミス・魔女宅 G20でそう言ってたわね。あなた数字のマジック知ってながら平然とウソついてるのよ。GDPがプラスになったのは、輸入が極端に落ち込んだからでしょ。それだけ、内需が振るわなくなってる証拠じゃない。
嗚呼委員 ああ、そうだろう。しかし、私の立場として……
ミス・魔女宅 悪いけど長いことないんだから、この際、財務大臣の立場なんか捨てて、政治家としての立場を活かしなさいよ。ダメねえ。
 それから、どぶ板さん。なに喜んでんの。「財政均衡」がそんなにうれしいの。あなた、財務省がPB黒字化方針に固執してきたために、デフレが続いて国民の中間層が脱落しちゃったの知ってる? 国民が貧しくなると快感を感じるんだから、サディストね。
 次。面皮さん。大地震が来るから増税が必要って、なに、それ。反対でしょ。大地震に備えて国土強靭化を急がなくちゃならないんだから、大規模なインフラ整備のために、すぐにでも建設国債を発行すべきじゃないの。あなたも昔、積極財政派だったのに、財務省に誘惑されたら、コロッと緊縮派に変わっちゃったのね。
面皮委員 しかし、災害に備えて歳入を確保しておくことは大切なことじゃないか。
ミス・魔女宅 あなたって、すごくたちが悪いわね。東大名誉教授。立正大学学長。日本マクロ経済学界の権威。
 いい? 税率上げた結果、消費が減退して、税収が減っちゃったら元も子もないじゃない。小学生でもわかるわよね。それとね、これも知ってるでしょう。国家予算て、税収だけで賄ってるわけじゃないわよね。毎年、国債を大量に発行してる。なんでこのうえ、国民から税を搾り取る必要があるの?
 それより、これはどう? 自国通貨建ての国債でデフォルトすることは原理上あり得ないって。だからデフレの時には、インフレが過熱しない程度に、どんどん国債発行して経済成長させないと、今後ますます日本はダメになってくわよ。日本がだめになってもいいの紫綬褒章受章者さん。
嘘尾委員 ちょっと待った、MMT。そんなことしたら、長期金利が上がってエライことになる。それにインフレが加速して抑制が効かなくなる。
ミス・魔女宅 おや、飛んで火にいる夏の虫ね。あんたも何にもわかってないのね。これまでさんざん国債発行してきたのに、金利は下がる一方じゃないの。ヘンな理屈こねないで、現実をよく見てちょうだいね。東大坊や。
 それに、いまはデフレよ。デフレから一刻も早く脱却しなくちゃならない時に、インフレの加速を心配してどうすんの。国債の発行に制約がないなんて、わたし、ひとことも言ってないわよ。インフレ率がその制約よ。万一過熱しそうになったら、政府と日銀で火消しに回ればいいじゃないの。それって長年緊縮やってきた財務省のチョー得意技でしょう。金利上げたり、国債の売りオペやったり、場合によっちゃあ、資産家や儲けてる人から税金取ればいいじゃないの。
 ついでに言っとくけど、「政府の財政出動には無駄が多く含まれる」って、どっかで聞いたような話ね。どういう無駄か、具体的に言ってちょうだい。公共投資、削りに削ってきた結果、高速道路網や新幹線は北海道、山陰、四国、九州でひどい未整備、橋やトンネルや堤防は劣化して事故や災害が頻発。科学技術や医療や国防や教育には全然投資がなされないまま他国に後れを取るばかりじゃないの。
「財政出動は経済の生産性や効率性をむしろ阻害する要因にもなる」って、どうしてそうなるのか説明してよ。地方にインフラが整うだけで、経済効果が上がるに決まってるじゃないの。違う? 東大坊や。
 国債は政府の債務だから、民間にとっては債権なのよ。だから政府が赤字国債を増やして公共投資に踏み切れば、それだけ民間は生産活動が活発になって潤うことになる。わかってる? 東大坊や。
 次。中二さん。あなたも財界引っ張ってながら、ほんとにバカね。消費増税やって国民生活が貧困化して、投資も減退したら、最後に困るのはあなた方自身よ。
 でも本音が思わず出たわね。消費増税は法人税減税の肩代わりだって。だけど、あんた、自分が儲けることばっかり考えてて、この国のことなんか何にも心配してないんでしょう。国内産業大切にするふりして法人税下げさせておきながら、実際には土地や人件費や税金の安いところがあれば、すぐにでもそっちに逃げてくつもりでしょう。見え見えなんだから。そうして内部留保ため込んだり、株主に奉仕することしか考えない。
 繰り返すけど、日本に財政問題なんてないのよ。だから財界人は、グローバルなところばっか見てないで、少しは国民の豊かさや国内産業の発展に貢献するために、国内に投資すること考えなさいよ。
 最後に厭うさん。あんたも悪いねえ。将来の増税にそなえて、既得権益化しがちな軽減税率はやめた方がいいだって。とんでもないこと言うわね。
 消費税って、富裕層に優しくて貧困層に厳しい税制だってこと知ってるわよね。知らない? 東大名誉教授。コロンビア大学教授。一橋大学名誉教授。そう言えばこの提言の発起人に一橋のセンセが多いのもうなずけるってもんよ。
 わたしは、この税制自体が間違ってると思うけど、それでも今すぐ廃止できないなら、軽減税率があることはせめてもの救いじゃないの。
 そもそも増税を絶対の前提にして、それを疑わない学者連中ばかり集めて煙に巻いて、権威の衣着せて緊急政策提言するなんて、悪人だよねー。悪人面してるもんね、紫綬褒章受章者にしては。
厭う委員 いや、あの提言の趣旨は、軽減税率は複雑すぎるし、富裕層に有利だからよくないんで、増税前に一律に一定額を給付する方がいいってとこにあるんだ。
ミス・魔女宅 ふん。いかにも国民のこと考えてるみたいな調子いいこと言ってるけど、それなら初めから増税に反対すればいいじゃない。ほんとは、これから消費税率を増やしていこうって魂胆でしょ。さっきそう言ってたじゃないの。
 さてっと、そろそろ帰らなくっちゃ。お母さんがトカゲの丸焼き焼いて待っててくれてるんだ。
浜海苔委員 待って、MMT。もう一人忘れてない?
ミス・魔女宅 おっと、そうだったわね。あら、そんなに怖い顔しないで、むらさきさん。あなたには、特に言うことありません。だって昔っからアホなんだもん。話が通じっこないよ。
浜海苔委員 うーん、この娘っ子めが! あたしをなんだと思ってる。許さないから覚えてろよ。MMTなんてのは、「MAD」のM、「まともじゃない」のM、「盲点」のMよ。ついでにTは「たわけ!」のTとしとこうか。
ミス・魔女宅 いろいろ専門的解釈をいただいて、ありがとうございます。でもお願いだから「むらさき」のMにだけはしないでね。
 そう言えば初めに安倍首相の短歌が朗詠されたわね。わたしもお別れのしるしに一首。
  むらさきや 浜の海苔っ子は尽きるとも 世にアホ学者らの 種は尽きまじ
 それじゃ、皆さん、さようならー

 (ミス・魔女宅、箒にさっとまたがり、ミニスカートをひらめかせて、すごい速さで会議室から去る


 *参考サイト
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-05-30/PS9RQK6TTDS301
https://dot.asahi.com/aera/2019060500023.html
https://r.nikkei.com/article/DGKKZO45512980R30C19A5KE8000?unlock=1&fbclid=IwAR3-X32zRApM1Mo29asNE0QQpXhc43fF3qNU4qk-TF6ySMw4H96kXNdYbk4&s=1
https://sites.google.com/view/suggestiondifftaxpublic/
https://news.yahoo.co.jp/byline/takerodoi/20190608-00129271/
https://jp.reuters.com/article/aso-g20-tax-idJPKCN1RO0E1
https://jp.reuters.com/article/abe-mmt-idJPKCN1RG04W
https://www.keidanren.or.jp/speech/kaiken/2019/0520.html



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優れた民間人のほうが主流派経済学者などよりずっとマシ

2019年04月16日 22時51分53秒 | 経済

ステファニー・ケルトン教授



すでに三橋貴明氏が紹介していますが、WEZZYのWEBマガジンで、地蔵重樹氏というライターが、「令和は平成以上に国民が貧困にあえぐ時代に? MMTは日本経済の低迷を救うか」という、素晴らしい記事を書いています。
https://wezz-y.com/archives/64990
こういう炯眼の士が出てきたことは、まことにありがたいことです。
未読の方は、ぜひお読みください。

この記事は、いまアメリカで評判のMMT(現代貨幣理論)を、肯定的にとらえて紹介したものです。
合わせて、日本政府の財政破綻論にもとづく緊縮財政や、これを支持してきた政治家、主流派経済学者、マスコミが、いかに間違っているかを、わかりやすく説明しています。
全文、その通り! と合いの手を入れたくなります。

まず、政府批判の部分を引用します。

政府はアベノミクスでデフレ脱却を目指しながらも、緊縮財政、規制緩和、増税などのインフレ対策(アベコベノミクス?)を行ってしまった。風邪をひいている病人に氷水を浴びせてこじらせてしまったようなものだろう。しかも、ついには公式統計までごまかし出す始末。名目賃金が誤差程度に上昇したことを鬼の首を取ったかのように主張しているが、実質賃金は下がっている
おまけに、相も変わらず政府の借金を国の借金と言い換えて、1100兆円を国民一人当たり885万円の借金だというレトリックで存在しない財政破綻危機を煽り、増税の口実にしている。


次に、地蔵氏は、MMTの骨子を、次のようにまとめています。

 《●自国通貨を発行できる政府は財政的な予算制約を受けることはない。たとえば日本や米国、英国が該当する。一方、自国通貨を持たず発行もできないユーロ圏の国々は該当しない。
  ●経済と政府には、生産と消費に関する実物的な限界と環境上の限界がある。これは、政府には消費を拡大したり減税したりすることでインフレを起こすことができるという意味だ。
  ●政府の赤字は他の人たちの黒字となる。これは誰かの赤字は必ず誰かの黒字になるという単純な法則だ。


2番目の「経済と政府には、生産と消費に関する実物的な限界と環境上の限界がある」という表現は、ややわかりにくいですが、その理由は「限界=margin」という独特の経済学用語にあるようです。
この訳語は、日本語では、ネガティブなニュアンスを持ちますから、ちょっと不適切で、「余裕」とか「可能性」と意訳すべきでしょう。
「そこまでできる」という感じですね。
そうすると、後段との間がスムーズにつながります。

さて、すでに多くの人(といっても少数派ですが)が指摘しているように、自国通貨建てで国債を発行できる国、アメリカ、イギリス、日本、スイスなどは、原則的に、国債をいくら発行しても、財政破綻することができません。
それが、自国通貨を持たないユーロ加盟諸国との決定的な違いです。
MMTは、そのことをはっきり謳っています。
ユーロ加盟諸国は、金融政策をECB(欧州中央銀行)に握られているので、自国の財政状態が苦しい時には、増税するか、ユーロで借金して、それを返済するために緊縮財政にシフトせざるを得ません。
そうすると国内景気はますます悪化して、財政破綻の危機が現実的となります。
そのためにまた借金をして、というように悪循環に陥ります。
いずれにしても、国民を苦しめる結果になっているわけです。
経済だけでなく、政治的な意味でも、EUモデルはすでに破綻しているのです。

しかし日本は、その可能性はゼロです。
にもかかわらず、財務省や御用学者は、マクロ経済がわかっていなくて(笑)、PB(基礎的財政収支)を黒字化しないと財政破綻すると狂信しています。

MMT理論の提唱者、ケルトン教授は、自国通貨を持つ国の政府がけっして財政破綻しない好例として、GDPの2倍を超える負債を抱えている日本を挙げています。
これを聞くと、何となくうれしい気持ちになりますが、その事実を一向に認めようとしない、当の日本の財政担当者の体たらくを見ていると、逆に、「馬鹿に付ける薬はない」と、情けなくなります。
ケルトン教授は、もちろんその馬鹿さ加減を知っているでしょうが、はっきり指摘してはいないようなので、ぜひ指摘してほしいと思います。
ケルトン教授を日本に招請することはできないのかな。
これも情けないことに、アチラの権威筋の指摘がないと、日本は動きませんから。

また、地蔵氏の次の指摘は、たいへん重要です。

 《とはいえ、いくらMMTでも、政府が野放図に支出しても良いとは言っていない。あくまで適度なインフレが保たれる範囲でとしている。つまり、極度な需要過剰(供給不足)でインフレが過熱しないように調整は必要だというのだ。

この指摘がなぜ重要か。
それは、MMTに反論するために、その論理を意図的に誤解して、自国通貨を持つ国は無限に財政出動してもかまわないと言っているかのような印象操作をする手合いが必ず出てくるからです。
しかし皮肉なことに、財務省や日銀は、インフレが過熱しそうになったら、それを抑制する技にかけては、超一級です。
デフレ期に倒錯した手法を取ってきた、まさにその手法を使って、増税や緊縮に乗り出せばよいからです。

要するに、デフレ期とインフレ期には、それぞれの時期に見合った適切な調整方法があるので、その適切さの感覚を喪失して、真逆のことをやっているのが、いまの財務省です。
デフレ期に財政赤字などまったく問題にする必要がないことは、MMTでも指摘されています。
むしろ反対に、政府が赤字を増やすこと、つまり国債を増発して積極財政に打って出ることこそが、デフレ脱却の唯一の方法なのです。

地蔵氏はまた、中野剛志氏や三橋貴明氏が盛んに説いてきた、「信用創造」の原理についても、的確な指摘をしています。

 《銀行が企業などに融資する場合、なんとなく預金で集めたお金を貸し出していると思ってしまう。しかし現実には、銀行は実際に持っている以上のお金を貸し出すことができるという魔法を持っている。
  たとえば銀行がある企業に10億円を貸し出すとする。その時、銀行はどこかにとっておいた10億円を持ってきて貸し出すのではない。単純に、貸出先企業の口座に10億円記帳するだけなのだ。(中略)
  つまり銀行という制度は、理論的には相手が返済能力さえあれば、際限なくお金を貸し出せることになっている。(後略)


中野氏は『富国と強兵』の67ページで、イングランド銀行の2014年の季刊誌にはこの「信用創造」の原理がきちんと解説されていると述べています。
この原理は、当然、政府が国債を発行して、日銀当座預金から資金を借り入れる(ただそう記帳するだけですが)場合にも当てはまります。
したがって、企業がデフレマインドのために投資に手を出さず、銀行の貸し出しが伸びない場合には、政府こそが、大胆な「借金」に踏み切るべきだということになります。
それが公共体として、国民生活に福利をもたらす政府の責任であると言えましょう。

「誰か(A)の負債は他の誰か(B)の貸与」、また「Aの赤字はBの黒字」です。
Aを政府、Bを民間市場に当てはめると、Aが借金して仕事を発注すれば、少なくともそのぶんだけ実体市場にお金が回り、Bの経済活動が活発化することは自明ですね。
しかも、政府の負債の実態は預金(日銀当座預金に書き込まれた数字)ですから、特に紙幣の増発を考える必要もありません。
国債発行として預金通帳に書き込むだけで、政府の投資が成立したことになる。
何の投資目的もなく政府が国債を発行するはずがないですからね。

このリクツがなかなかピンと来ないのは(私自身も、エラそうに書いてるほど、ピンとは来ていないのですが)、個々の生活者にとって、やはり「お金」というと、現金だけを思い浮かべてしまうからでしょう。
でも、「あなた、銀行に預金あるでしょ、あれ、お金じゃないの?」 と突っ込みを入れていきながら、徐々に、現金紙幣だけじゃなく、銀行預金も、小切手も(もちろん政府小切手も)、国債も、じつはみんな広い意味での「お金=借用証書=債務と債権の記録」に他ならないことを理解していただく、という順序でいけば、何とかわかってもらえるのではないでしょうか。

たぶん、このリクツが浸透しない根底には、金属主義の残滓が私たちの頭にあるために、貨幣とは、一定の「モノ」ではなく、経済人と経済人の信用関係の表現だ、という原理が呑み込めないためではないかと思います。
MMTなどを大いに活用しながら、粘り強く進めていきましょう。

地蔵氏は、最後に次のように述べています。

 《私は経済学者ではない。そのため、MMTについて誤った解釈をしている可能性もある。それでも本稿を投稿したのは、MMTの議論が盛り上がれば日本経済にプラスになると考えたためだ。

たいへん謙虚な語り口で、好感が持てます。
同時に、「経済学者」なんかじゃなくたって、こうした正しい認識を持てるんだということの一つの証明にもなっています。
筆者も地蔵氏とともに、MMTの盛り上がりを祈りたいと思います。
そのためにも、すでにMMTを政策の中に盛り込んだ「令和の政策ピボット」に、ぜひご賛同
いただければ幸いです。

令和の政策ピボット
https://reiwapivot.jp
/


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「消費増税の是非を問う世論調査を実行せよ」
●『クライテリオンメルマガ』
・なぜ間違った知と権力がまかり通るのか
https://the-criterion.jp/mail-magazine/m20181221/
・「日本の自死」の心理的背景
https://the-criterion.jp/mail-magazine/m20190201/
・性差、人権、LGBT
https://the-criterion.jp/mail-magazine/m20190302/
●『「新」経世済民新聞』
・消費税制度そのものが金融資本主義の歪んだ姿
https://38news.jp/economy/12512
・消費増税に関するフェイクニュースを許すな
https://38news.jp/economy/12559
・先生は「働き方改革」の視野の外
https://38news.jp/economy/12617
・水道民営化に見る安倍政権の正体
https://38news.jp/economy/12751
・みぎひだりで政治を判断する時代の終わり
https://38news.jp/default/12904
・急激な格差社会化が進んだ平成時代
https://38news.jp/economy/12983
・給料が上がらない理由
https://38news.jp/economy/13053
・「自由」は価値ではない
https://38news.jp/economy/13224
・日経記事に見る思考停止のパターン
https://38news.jp/economy/13382
●『Voice』2019年2月号
「国民生活を脅かす水道民営化」


日経記事に見る思考停止のパターン

2019年03月20日 13時39分58秒 | 経済


日経新聞もたまにはいいことを書くなあ、とひとまずは思いました。
3月19日の次のような記事に接したからです。
もっとも、「いいこと」と言っても、希望が持てるという意味ではなく、むしろ絶望的な現実をそれなりに見つめているという意味です。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42616170Y9A310C1MM8000/?n_cid=NMAIL007
経済協力開発機構(OECD)は残業代を含めた民間部門の総収入について、働き手1人の1時間あたりの金額をはじいた。国際比較が可能な17年と97年と比べると20年間で日本は9%下落した。主要国で唯一のマイナスだ。英国は87%、米国は76%、フランスは66%、ドイツは55%も増えた。韓国は2.5倍。日本の平均年収は米国を3割も下回っている。





この後、同記事には、賃金の値上げをきちんと行ってこなかったために、労働者一人当たりの生産性が上昇せず、生産性が上昇しないためにますます賃金の上昇が抑制されるという悪循環に陥ってきた、という指摘があります。
低賃金を温存するから、(特に3K分野などでの)生産性の低い仕事の自動化・効率化が実施されず、付加価値の高い仕事へのシフトが進まず、結果的に、生産性も賃金も上がらない「貧者のサイクル」に日本は陥っているというわけです。
言っていることは、ここまでは、まあ間違っていません。

たとえば、介護現場を見てみましょう。
この現場では、低賃金できつい労働に耐えなくてはならないため、大量の有資格者が転職してしまいます。
介護福祉士の平均月収は、全産業の平均月収に比べて、9万円から10万円近く低いというデータがあります。
https://www.minnanokaigo.com/news/kaigogaku/no89/
これでは、せっかく資格を持っていても、離職したくなるのは当然と言えましょう。
また、この仕事では、年齢に伴う昇給が見られません
その主因は、介護報酬が公定価格であり上限が決まっているところにあります。
さらに、離職率は、小規模施設ほど高くなっています。
給料の低さに反比例しているわけです。

では、離職した人たちの穴埋めをどうするか。
もちろん、一部は求職してきた有資格者を新規採用するのですが、採用率はたいへん低くなっています。
これは、労働需要が高く、供給がそれに追いつかない状態を意味しますから、数字上は、有効求人倍率の高さとして表れます。
有効求人倍率が高い(つまり人手不足)と聞くと、一見いいことのように聞こえますが、その主たる理由も、給料が低いからです。
労働需要が高ければ、その結果として給料は上がるはずだ、というのは、一般的な市場原理ですが、事実はそうなっていません。
むしろ因果関係は逆で、給料があまりに低いので、求人しても人が集まらず、結果的に人手不足となるのです。
こうして、無資格の失業者や、コミュニケーション能力に限界のある移民が雇われることになります。
はなはだしい場合には、ホームレスまでが雇用されることもあります。
2009年に、厚生労働省は失業者を対象とした「重点分野雇用創造事業」を行い、失業者やホームレスまで介護職に送り込むプロジェクトを大々的に繰り広げました。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/47873?page=4
要介護レベルの高い後期高齢者がホームレスに介護される――なんだか、廃墟の町と化したビルの谷間か何かで、希望を失った貧困者がお互いをいたわりあっているような、惨めなイメージですね。
これで、福祉政策が行なわれていると言えるのでしょうか。

こう見てくると、初めの日経の記事には、言われていないことや間違った認識が含まれていることがわかります。
この記事の最後に、「働き手の意欲を高め、優れた人材を引きつける賃金の変革をテコに、付加価値の高い仕事にシフトしていく潮流をつくり出すことが不可欠だ」と書かれています。
モノの生産やサービスの現場にAIやハイテク機器を導入し、生産性を高めることには異議がありません。
それによって、現場の苦労が少しでも軽減され、その職業の付加価値が高まり、給料も上がることが期待されるからです。
しかし、「働き手の意欲を高め」るのは何によってなのか。
どうすれば、「賃金の変革」が起きるのか。
それを阻んでいる犯人は誰なのか。
「付加価値の高い仕事にシフトしていく」と言っても、きつい肉体労働を強いられる業界(たとえば介護業界や運送業界や建設業界など)がなくなるわけではありません。
もちろん、個人が、より付加価値の高い仕事に「シフト」していくのを抑えることはできないでしょう。
しかし「シフト」されてしまった業界で、もし生産性を高めるような処置がなされず、これまで通りの低賃金・重労働の実態が残されたら、どうなるのか。
ホームレスや移民が雇われて、奴隷労働のような状況が続くのでしょうね。

日経記者は、いまの日本のマクロな経済情勢を見て、その無残な有様を指摘しています。
しかし、それがなぜ起こってきているのかについては、民間企業が賃金を上げてこなかったからだという理由を挙げるだけで、思考停止しているのです。
つまり、このデフレ不況がなぜ続いているかについては、口をつぐんでいます。
介護報酬はなぜ上がらないか。
介護報酬のような公定価格だけでなく、一般企業の給料も人材投資に踏み込めません。
一般企業、特に中小企業は、人手不足なのに、なぜ給料を上げられないのか。
それは、安倍政権が緊縮財政を取ってきたために、デフレを終わらせることができないからです。
そこには、ちゃんと政治的な理由がある。

日経のようなマスメディアに限らず、さまざまな領域で、問題が提起されます。
しかし、どれを聞いても、その問題の真犯人が緊縮財政という根本的に間違った「経済政策」にあるというところまで話が発展しないのです。

虐待が話題になっています。
児童相談所が、家族への介入(親からの子どもの隔離)の役割に集中しがちだったこれまでの仕事を、養育に問題を抱えた家族を支援する本来の役割に戻すために、医師や弁護士などの専門家と連携を取ることが決まったそうです。
また、この役割を果たすために児童相談所の所員を増員するそうです。
たいへん結構なことですが、その予算をどうやって捻出するのか。
財務省という狂信集団がPB黒字化にこだわって、緊縮財政を取っていては、それもかなわないでしょう。
この狂信集団の考え方に従っている限り、他の予算がそのぶんだけ削られるだけです。
さまざまな領域のさまざまな問題。
解決の最終的なカギは、すべて、十分なお金を回すところにあります。
話を個別領域の個別問題の把握に終わらせずに、ある社会問題について考える時には、この当たり前の一歩にまで、考えを巡らせるようにしましょう。


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・消費税制度そのものが金融資本主義の歪んだ姿
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・消費増税に関するフェイクニュースを許すな
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・先生は「働き方改革」の視野の外
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・水道民営化に見る安倍政権の正体
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・急激な格差社会化が進んだ平成時代
https://38news.jp/economy/12983
・給料が上がらない理由
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・「自由」は価値ではない
https://38news.jp/economy/13224
・結婚が危ない!
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急激な格差社会化が進んだ平成時代

2018年12月26日 23時05分25秒 | 経済



2018年も終わりに近づきました。
平成最後の年末です。
この期にあたり、「日本は世界一の金持ち国」という素晴らしい笑い話をしましょう。
笑う門には福来る。

車内に動画の広告がありますね。
先日電車に乗って動画広告を見ていたら、ニュースが流れました。
「大企業のボーナス平均90万円超で、昨年を超えて過去最高額」というのです。
ちょっと見ると、へえ、ずいぶん景気も回復してきたんだなと思うでしょう。
政府も「いさなぎ越え」とか「ゆるやかな回復基調にある」とか繰り返していますし。
でも、そんな実感はありませんね。
ところが、「大企業の」というところに注目してください。
日本の大企業は全企業の0.3%しかありません。
従業員数で言うと、3割。残りは中小企業です。
だから大企業のボーナスが高かったからといって、それは景気を占う指標にはなりません。
こういう目くらましニュースを流させているその総本山はどこなのか。
答えは明らかですね。
そう、経団連です。
財務省も裏で結託しているかもしれません。

それでは今年のボーナス支給の実態はどうか。
株式会社ウルクスが2018年12月に、若手・ミドル層の会社員241名に実施したアンケート結果があります。
それによると、56.4%が「支給なし」と回答。
そもそもボーナスが支給される人よりされない人のほうが多いのです。
また、「支給あり」と答えた43.6%の支給額平均は42.4万円で、大企業の半分未満です。
従業員別で、もっと詳しく見てみましょう。

1000人以上      43.8万円
300人以上1000人未満  32.5万円
100人以上300人未満  30.0万円
100人未満       30.2万円

ただし100人未満の企業では、「ボーナスあり」の割合が、38.2%に落ちます。6割以上が支給されていないのです。
https://wezz-y.com/archives/62359

暴言王・麻生財務大臣が、記者会見で、記者に対して「少ないというのは君の感性だ」とうそぶいたとか。
ちなみに麻生大臣のボーナスは、一部返納後で352万円です(前記事)
「いさなぎ越え」と「ゆるやかな回復基調」と麻生発言と3点セットで、もう笑っちゃうしかないですね。

このように、マスコミ報道と実態との間にはものすごい乖離があります。
GDPが対前年比で2.5%下がり、実質賃金は低迷、実質消費支出は下がり続けています。
にもかかわらず、日本は世界一の金持ち国とよく言われます。
これは全体として見れば間違いではありません。
以下、元国税庁調査官で作家の大村大次郎氏の記事「なぜ日本のサラリーマンの年収はいつまで経っても低いままなのか」(2018年12月17日)から、要点を抜粋します。
https://www.mag2.com/p/news/379730?utm_medium=email&utm_source=mag_news_9999&utm_campaign=mag_news_1217

日本の個人金融資産残高は、現在1800兆円、赤ちゃんも含めて1人当たりにすると1400万円、アメリカに次いで2位です。
1990年には1000兆円でしたから、この28年間で80%も増えたことになります。
これに土地建物などの資産を加えれば、さらに莫大なものになるでしょう。
また対外準備高は全ヨーロッパの2倍、国民1人当たりだとダントツの1位。
さらに対外純資産は約3兆ドルで、これも世界第1位。
しかも、世界的な金融グループ、クレディ・スイスの2016年のレポートによると、日本のミリオネア(100万ドル以上の資産の持ち主)は280万人超で、前年より74万人増え、増加率は世界一です。
これは全人口の2%にあたります。
この激増している億万長者の大半は、かなり以前から大企業の株をたくさん持っていた人です。
以下は、上場企業の配当金の総額の推移です。
2005年  4.6兆円
2007年  7.2兆円
2015年  10.4兆円
2017年  12.8兆円
2005年の3倍近く、2007年の2倍近くに増えていますね。
つまりこの大半が、大企業の株をたくさん持っていた人に流れ込んだことになります。
(大村氏記事抜粋ここまで)

さて一方、平成29年版・少子化社会対策白書によれば、1997年には、給与所得の価格帯の最頻値(モード)が500万円~699万円だったのに対し、2012年には300万円~499万円に落ちています。
また厚労省の統計によれば、この13年間の実質賃金の推移はご覧のとおりです。



さらに、国税庁の民間給与実態統計調査」によれば、年収200万円以下のワーキングプアは、安倍政権になってから1100万人を超え、その推移はご覧のとおりです。90年代後半に比べて300万人も増えていますね。



しかもワーキングプアは、ひとり親家庭(多くは母子家庭でしょう)が圧倒的に多いのです。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/seikatuzukan/2014/CK2014101502000195.html
https://toyokeizai.net/articles/-/221708?page=2



生活保護世帯も2000年代に入ってから急増し、安倍政権になってから160万世帯で高止まりしています。
これは90年代後半の2.7倍です。



子どもの貧困率は、2012年の統計で、先進7か国ではアメリカ、イタリアに次いで3位、
OECD諸国では9位で、平均を上回っています。



先ほどの2016年までのワーキングプアの推移のグラフを見れば、もっと悪化しているに違いありません。
ある人の話によれば、食事も満足に食べさせてもらえない子どものために、地域で「子ども食堂」を開設する案があり、公立高校生600名にアンケートを取ったところ、希望者70名。
さまざまな記事に見られる、6人に一人か7人に一人が「貧困家庭の子ども」に数えられるという分析と符合します。

もう十分でしょう。
「日本は世界一の金持ち国」ですが、そのお金はミリオネアに集中して、中間層は脱落し、多くは貧困層に転落したと言っても過言ではありません。
つまり、これが今世紀に入ってからの実態なのです。
急激な格差社会化と呼ばずして何と言えばいいのでしょう。
もちろん、その原因は、金融グローバリズムが経済の大きな部分を占めるようになったことにあります。
そして、その危険に対して、政府がそのトレンドに追随するばかりで、実体経済を活性化させる有効な対抗手段を打ってこなかった点にあります。
97年のデフレ突入から20年以上が経ちました。20年といえば、生まれた赤ちゃんが大人になるまでの、長い長い期間です。
その間、いくらでも打つ手はあったはずです。
グローバル資本やグローバル金融市場への規制を強め、一方では内需拡大に向けて、国内産業の保護やインフラ整備のための大規模な投資をすべきでした。
経済に関する限り、「日本ファースト」に徹するべきでした。
それなのに、ヘンな「自由」イデオロギーとヘンな倹約思想にかぶれて、結局何もしてこなかった。
政府関係者よ、「いざなぎ越え」などと悪い冗談を続けるのは止めて、この悲惨な経済実態を直視せよ。
それでも来年は消費増税、やる気ですか。
移民受け入れ、水道民営化、やる気ですか。
国民いじめにさらに邁進する気ですか。

以上、世界一の金持ち国の政府は、世界一のバカ政府、というお話でした。
ワッハッハッハ。



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消費税制度そのものが金融資本主義の歪んだ姿

2018年10月18日 11時46分34秒 | 経済


消費税を負担するのがモノやサービスを買う人なので、増税で直接ダメージを受けるのは消費者であると思いがちですが、もちろんそれだけではありません。
納税者である企業経営者(特に中小企業)も大きな打撃を受けます
経営者の数が相対的に少ないためか、そのことに私たちは、なかなか気づきにくいのです。

筆者は、藤井聡氏が編集長を務められる雑誌『クライテリオン』の臨時増刊「消費増税を凍結せよ」(11月14日発売予定)に、「消費増税の是非を問う世論調査を実行せよ」という文章を寄稿しました。
これを、フェイスブック上でお知らせしたところ、ある中小企業経営者の方(Aさんとしておきます)から、現場感覚にあふれたたいへん的確なコメントをいただきました。筆者自身、とても勉強になりました。
それを筆者なりに補足しながらまとめると、次のようになります。

(1)政府はこれまで増税分を社会保障に充てるというウソを繰り返してきたが(現実には8割を国債の償還に充てている)、そもそもこの発想自体が、社会保険料の会社負担を減らしたいという、大企業の意向を反映させたものである。
なぜなら、本来、社会保険料の財源は「本人+会社」が負担すべきものだからである。その企業が担うべき責任を「税」という形で国民に転嫁しようとする意図が、消費増税には働いている。

(2)大企業(グローバル企業)は、消費税負担の削減にとどまらず、次のような実質負担解消のシステムを構築している。
  A.下請けに価格決定権を持たせない。つまり下請け企業が、きつい労働に耐えている現場労
    働者に、それに見合う給料を払うために価格を上げようとしても、それを認めない。
  B.国際競争力維持の名目で、輸出時に税率ゼロの特例措置を受けることで、還付金を捻出
    る。
  C.現場労働者を外国人化(移民拡大!)したり派遣労働を拡大することで、下請けからの値
    上げ圧力を回避
する。
  D.人件費にかかる消費税分を控除できるようにするために、労働力をなるべく外注化する
    (つまり下請けに背負わせる)。

Aさんは、このように分析した後、自分が起業してから3年目に消費税の納税が大きな壁として立ちはだかったと自身の経験を語り、次のように述べます。
有望な会社が急に売り上げを伸ばすと、資金繰りが安定しない中で巨額の納税を強いられるので、消費税は起業家つぶしの税制でもある、と。
さらにAさんは、大企業が画期的な製品づくりができなくなったのも、かつては得られた下請けからの提案や協力が得られなくなったことが大きな要因の一つだと分析しています。
昔は大企業と下請け企業との結びつきが強く、すそ野も広かったわけですね。
そこには親会社―子会社という見えない紐帯があったために、両者の有機的な連携が可能でした。
ところが、デフレ不況に加えて、新自由主義イデオロギー(自己責任論、成果主義、規制緩和)が襲いかかったために、産業界の中間層が上層部と分断されて脱落しました。
そのため、大から小まで、企業は個別バラバラに自己の利益を捻出せざるを得なくなったわけです。

Aさんは、次のように語ります。

消費税制度の30年の歴史の中で、大企業も、廃れていく中小企業を見ながら、更に自社の利益を確保するためには消費税率のアップをはかることしか道が無くなってきたように思います。

また、次のようにも語っています。(ごく一部改変と補足)

財政拡大には、私も異論を唱えるつもりは全くありませんし、今はその道が最短かつ有効な手立てになることを確信してはいますが、消費税制度というハンデを背負ったままでは、実体経済の本来あるべき構造改革(中略)とはますますかけ離れていきます(中略)から、財政拡大が実を上げるためには、段階的かつ中長期(中略)の消費税率削減は必須だと考えています。そしてそれこそが大企業の本来あるべき収益構造の復活にもつながる道だと確信しています。

こうして、消費増税要求だけでなく、消費税制度そのものが、社会保険料の企業負担削減、移民問題、非正規労働者増加、下請けへの大企業の不当な圧力、新自由主義イデオロギーにもとづく企業の個別分断化などと、すべて連動していることがわかります。
それは、すべて、大企業の利益最大化のためのシステム作りに貢献するという仕組みになっているわけです。
しかもAさんの最後の言葉に現れているように、この利益最大化の方法さえ、笑いの止まらない独り勝ちといったイメージのものではなく、むしろ苦し紛れの自己保身によるものです。
その根底には、株主の圧力に不本意にも屈している資本家の姿があります。
別に彼らに同情はしませんが、ここにグローバル金融資本主義が極限まで進んだ、不健全で歪んだ構造が見て取れることは確かです。

つい先日、安倍首相が10%への増税の意向を固めたことが報じられました。
グローバル金融資本主義に奉仕することしか知らない安倍政権のこうした体質を見抜く政党、政治家が存在しないことを思うと、さらに暗澹とした気分になります。
しかし、増税が決定したわけではありません。まだ闘いの余地は残されています


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●『表現者クライテリオン』9月号特集
「ポピュリズム肯定論」の座談会に出席しました。
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「2038年――スマホ一極主義の陥穽」(仮)
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拙稿「消費増税の是非を問う世論調査を実行せよ」




国民の思考停止

2018年08月30日 15時36分17秒 | 経済


テレビは、ニュース番組以外はほとんど見ないのですが、8月26日の「たけしのTVタックル」をたまたま見ました。
大水害がテーマで、いろいろと防災対策について話し合っていました。
ハザードマップの当たる確率の高さが強調され、そのあと防災対策を何とかしなければという話になりました。
そこまではいいのですが、とにかく堤防を整備しなくてはならない、しかし国に多くの税金が行ってしまうので、自治体には資金が不足していると誰かが発言しました。
そこから先に議論が進みません。
これは何もTVタックルに限った話ではないのです。
社会福祉、医療、科学技術開発、国防、どんな社会問題を扱った番組でも(といってもニュース番組やクローズアップ現代などで見る限りですが)、その個別問題について詳しい専門家を連れてきて、ディテールについて紹介をします。
それによって問題の根深さが強調されます。
さてどうするか。
解決のためには、こういう努力が必要だといった結論に導かれるのですが、そこから先は思考停止状態に陥ります。
解決に導くための資金をだれが出すのか、そのために何が必要か、だれが資金提供を阻んでいるのかという問題に突き進まなければ、みんなで頭を抱えていても意味はないのです。

さてこの問いの答えははっきりしています。
中央政府が、問題ごとに国民の生命、安全、生活にかかわる度合いを判断して、優先順位を迅速に決め、積極的に財政出動をすればいいのです。
ところが、どの番組も、個別問題を切れ切れに取り上げて、その範囲内で「資金不足だねえ、困ったねえ」と財政問題に突き当たって止まってしまいます。話がそこまで行けばまだいいのですが、ただの精神論で終わる場合も多くあります。
総合的に政策を見ようとする視野が開かれません。
目の前に梁(うつばり)がかかっています。
もちろん、かけている張本人がおり、かけられている張本人もいるのです。
前者は財務省、後者はマスコミ(これは前者と共謀もしていますが)と、それをうのみにする国民です。
先のTVタックルでは、初めから三つの大きな誤りと無知にもとづく枠組みによって番組が構成されていました。

第一に、まず番組の初めに、政府が2023年に配備運用を予定しているイージス・アショア(弾道ミサイルを陸上で迎撃するシステム)に6000億円も必要だという情報をセンセーショナルに流しておいて、それと大規模な災害に対する対策とどっちが大事か、と視聴者に二者択一を迫ったのです。
予算規模が限られていることを前提として、そのパイの範囲内でどちらかを選べ、という心理操作を行っているわけです。
しかしこれは二者択一の問題ではありません。
安全保障と防災、どちらも大事で、どちらにも大金を投じて実現させなくてはならないのです。
すぐ後で述べますが、それはいくらでも可能なのです。

第二に、税金が国にたくさん行っているから地方に金が回らないという認識ですが、これは二重の意味で間違っています。
まず国の予算規模は100兆円ですが、税収はわずかに40兆円です。残り60兆円は国債その他で賄っています。
発言者はそんなことも知らないのでしょうか。
そしてこの予算総額の中には、当然、地方への補助金も含まれます。
もし政府が事態の重大性にかんがみて、国債発行による特別予算を組み、補助金を大幅に増やせば、自治体に金が回らないなどということはないのです。

第三に、財務省が流し続けた例の財政破綻論のウソにみんなが騙されているという事実です。
以下は、「キャッシング大全」という、国の財政には直接関係のない、個人借金のためのサイトですが、そこにまで、両者を混同させるようなことが書かれています。

http://www.cashing-taizen.com/kokusai1016.html
国が頼りにしている国債は誰が貸しているのか?
それは国民です。
なので国債=国の借金=国民の借金ということになるのです。
もし国は破綻すればその借金はほぼ国民にかかってくることになります。2015年3月の時点で1053兆円もの大金が国の借金となり、国民1人あたりで計算すると830万円もの借金をかかえていることになるのです。


完全に財務省のトリックにハマっていますね。国民が貸主なのに、なんで国債=国民の借金ということにされてしまうのか。
でもみんなが騙されるのも無理がないかもしれません。
なぜなら、財務省の御用学者たちが、その権威を傘に着て「財政健全化」を説き、根拠なき「財政破綻の危機」、それゆえの「消費増税の必要」を煽りつづけているからです。

たとえば吉川洋東大名誉教授は、大規模災害対策のための公共投資よりも、「財政健全化」を重視すべきだと平然と述べて、ここ数十年にわたる公共投資のひどい削減を正当化しています。
吉川氏は、本年6月に土木学会が発表した、南海トラフ地震で予想される被害総額1400兆円のうち、40兆円の耐震化費用で500兆円以上の被害が防げるという試算結果を悪用し、次のように述べます。

今回の土木学会の発表で最も注目されるのは、インフラ耐震工事約40兆円で南海トラフ地震の場合509兆円の被害を縮小できるという推計結果である。これほどの高い効率性をもつ公共事業は他に存在しない。整備新幹線はじめほとんどすべての公共事業をわれわれはしばらく我慢しなければならない。(中略)あれもこれもと、現在国費ベースで年6兆円の公共事業費を拡大することはできない。それでは『国難』としての自然災害を機に、『亡国』の財政破綻に陥ってしまう。》(『中央公論』8月号)
要するに、すべての公共事業費をあきらめるか、そうでなければ南海トラフ地震対策をあきらめるか、どちらかにしなければ、「財政破綻」すると言っているわけです。
こういう狂信的な輩が「学術論文」めかして、財務省の緊縮路線に根拠を与えているのです。

さらに吉川氏は、2003年3月19日付日本経済新聞「経済教室」で、「このままだと政府債務の対GDP比率が200%に達するが、この水準は国家財政の事実上の破たんを意味すると言ってよい。たとえデフレが収束し経済成長が回復しても、その結果金利が上昇するとただちに政府の利払い負担が国税収入を上回る可能性が高いからである。」と述べています。
ところが、経済思想家の中野剛志氏が、「しかし、現在の政府債務の対GDP比率は、吉川氏らが『国家財政の事実上の破たん』とした水準をすでに上回り、230%以上となっているが、長期金利はわずか0.03%に過ぎない。政府債務の対GDP比率と財政破綻とは関係がないのだ。」(「東洋経済オンライン2018年8月1日」)と反論しています。
吉川氏の「警鐘」がまったく非現実的であったことが事実によって証明されたわけです。
また、政府債務は、無利子無期限の新規国債に次々に借り換えてゆくことによって、原則として返済しなくてもよい特殊な「借金」なのです。
国民が取り付け騒ぎでも起こして、返せ返せと押し掛けたわけでもないのに、いったい誰に返すのですか。
それとも銀行ですか。
銀行は新規国債が発行されないために、発行残高が不足して取引が成立せず、困っている状態です。

政府は通貨発行権を持っていますし、日本国債はすべて自国通貨建てです。
そうであるかぎり、財政破綻など起こりようがありません。
そもそも「財政破綻」の定義とは何でしょうか。
御用学者や財務省は一度もこれを明らかにしたことがありません。
それは、政府の負債が増えることではなく、正確には、国として必要なのに誰もお金を貸してくれなくなった状態を意味します。
しかしいまの日本は、国債を発行すれば、いくらでも貸し手(直接には、主として銀行)がいる状態です。
またたとえば、政府の子会社である日銀が市場の国債を買い取れば、事実上、その「借金」なるものは、買い取った分だけ減殺されるのです。
現にここ数年日銀が行ってきた大量の量的緩和によって、すでに日銀の国債保有高は400兆円を超え、国債発行総額の4割に達しています。
つまり「国の借金1000兆円超」というのはデタラメなのです。

水利事業、インフラ整備、国防、災害対策――これらは、現在、政府が果たさなくてはならない喫緊の課題です。
税収で賄えない分は、どんどん新規国債の発行で賄うべきです。
新規国債の発行は、これまでの負債の借り換えによる補填以外は、そのまま政府の新たな公共投資を意味しますから、市中へ資金が供給され、内需の拡大に直結します。
日銀の金融緩和によって銀行の当座預金が膨らんでも、投資のための借り手が現れなければ(現れていないのですが)、デフレから脱却できませんが、政府の公共投資は、具体的な事業のための出資ですから、確実に市場にお金が回り、生産活動が動き出します。
それによる経済効果も、特に疲弊した地方を潤すことになるでしょう。
やがて沈滞している消費も活性化し、30年間伸びていなかったGDPも上昇、結果、税収も伸びるでしょう。
こうした一石三鳥、四鳥の財政政策の発動を阻止し、自分で自分の首を絞め、デフレ脱却を遅らせて国民生活を窮乏に陥れているのが、当の財務省なのです。

この程度のことは、少し勉強すればわかることです。
しかし政治家、学識者、マスコミ人のほとんどが、この程度のことを理解していません。
残念ながらそれが日本の現状です。
自民党次期総裁選に立候補する石破茂氏も、全然このことを理解していませんよ。
こんな人が次期総裁になったら、日本はさらに悲惨です。
今の日本人の多くが、財務省を総本山とする「緊縮真理教」という宗教の信者になってしまったので、個別社会問題をあちこちでいくら取り上げても、根っこは、当の総本山にあるのだということが見えず、ある時点で必ず思考停止してしまうのです。
マスコミで取り上げられる社会問題のほとんどの原因は、財務省の緊縮路線にあるのだということにみんなが気付くべきです。