小浜逸郎・ことばの闘い

評論家をやっています。ジャンルは、思想・哲学・文学などが主ですが、時に応じて政治・社会・教育・音楽などを論じます。

第一次産業のグローバル・ジャパン完成!

2019年05月24日 20時13分04秒 | 政治


あまり話題になっていませんが、5月21日、ドサクサに紛れて、またもやトンデモ法案が衆院本会議を通過しました。

全国の国有林で最長50年間、大規模に伐採・販売する権利を民間業者に与える国有林野管理経営法改正案は21日、衆院本会議で自民、公明両党、国民民主党、日本維新の会などの賛成多数で可決された。参院は22日の本会議で審議入りし、与党は月内にも成立させる構えだ。政府は昨年来、第1次産業や公共インフラの民間開放を拡大する法整備を相次いで進め、急激な規制緩和が不安視されるケースも目立っている。
https://mainichi.jp/articles/20190521/k00/00m/010/179000c

国有林は全国の森林の3割を占めています。
この伐採の「自由」を民間業者に与えようというのです。
「改正案」なるものの骨子は以下のとおり。

・伐採可能な国有林を農相が「樹木採取区」に指定。政府は1カ所あたり数百ヘクタールを想定
・民間事業者に採取区での森林伐採を最長50年間委託
・事業者は国に樹木採取権の設定料と伐採した樹木料を支払う
・農相は事業者に伐採後の再造林(植え直し)実施を申し入れ

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190516-00000083-mai-soci&fbclid=IwAR2GSsI4HVjT0OcaZmHSpQhmjTbsx1-rDC0K-FG7j9EEwyzuxZlq_wA5IwM

現行の国有林伐採では、せいぜい数ヘクタール規模で、1~数年単位で農水省が入札し、再造林は別の入札で委託しているそうです。
政府は、民間への開放によって、大規模集約化による効率化を図り、低迷する林業の成長を促し、伐採期間は10年が原則で、地元の森林組合など中小業者を想定していると説明しています。

白々しい大ウソです

なぜなら、第一に、数百ヘクタールの森林を50年間にわたって伐採することを民間に委託するなどということをすれば、その権利を取得できるのは、資本力のある大企業に決まっているからです。

第二に、「10年が原則」というのは、法案のどこにも明記されていません。

第三に、伐採された森林の跡地利用について国がどういう方針を持っているかについても明記されていず、再造林も「申し入れる」となっているだけで、義務化されていません。
業者が申し入れを拒否することも可能です。
採取後、権利を取得した業者あるいは別の業者が、その跡地利用について、森林以外の使用方法を申請してきた時に、林野庁はどういう対応を取るのか。

たとえば、広大な土地を必要とするメガソーラー発電ビジネスのために利用することなどを視野に入れた業者が当然現れるでしょう。
筆者は、さまざまな理由から、ソーラー発電の将来性そのものに対して否定的な見解を持っていますが、そのことはしばらくおきます。

次の写真は、鹿児島県の森林がメガソーラービジネスのために無残に伐採されてしまった例です。


こういう光景は、いま全国至る所で見られ、これからの計画に対して、反対運動も盛んに起きています。
また次の写真は、霧ケ峰高原の森林に計画されているメガソーラーの計画図です。


これらは民有林でしょうが、国有林だって、こんな法案を平気で通してしまうわが国では、きちんと環境保全がなされる保証は全くありません。

言うまでもなく、日本の豊かな森林は、水害、土砂災害の防止に大きな役割を果たしています。
この法案は、近年頻発しているこれらの災害に対する防災の観点が配慮されているでしょうか。
そうは思えません。

第四に、例によってこの法案には、外資規制がありません
グローバル企業が金にものを言わせて伐採権を取得し、それによって木材の売り上げを稼ぐだけではなく、腰の据わらない日本の国土行政の足元を見て、次々に跡地利用の新ビジネスに参入してくる可能性があります。

以上見てきたように、この法案が、やせ細りつつある日本の林業にさらに壊滅的な打撃を与えることは明白です。


これは、林野庁一個の問題ではなく、経産省、資源エネルギー庁、国土交通省、環境庁その他、要するに、中央政府全体の問題なのです。

この法的措置が、農協法改正、種子法廃止、漁業法改正、水道民営化など、安倍政権が進めてきた一連の構造改革・規制緩和路線の延長上にあることは明白です。
そこには、日本の産業や国民の生活を守ろうとする意図はみじんもなく、逆に、利益だけを追及する大企業、グローバル企業に、公共的な部門をすべて明け渡すという方針しか読み取れません。

2018年の12月10日に、第197臨時国会が幕を閉じました。
この国会の最末期に、改正入国管理法(移民法)、改正水道法(水道民営化)、改正漁業法(漁協解体)の三つが、バタバタと成立しました。
これによって、大資本やグローバル資本を利するだけのかたちに、ほぼ完全に書き換えられたのです。
筆者は、この日のことを忘れないために、勝手にわが国の「国恥記念日」と呼んでいます。
しかもこの国恥記念日は、他国からの直接の侵攻によるものではありません(間接的にはそう言えますが)。
いやしくも独立国家の体裁を保っている民主主義国の権力中枢が、自ら進んでグローバル・ジャパンを作り上げたのです。

しかし、グローバル・ジャパンはまだ完成していませんでした。
このたびの国有林野管理経営法の改正が成立すれば、農・林・水産と、第一次産業のすべての領域で、グローバリズムに城を明け渡す準備が整ったことになります。
さあ、私たちは揃って、グローバル神にお供え物を捧げましょう。

ところで、まったく関係ないこと(じつは関係あるのですが)を最後に付け加えます。

先にもこのブログで触れましたが、筆者は、このたび長編小説を完成させました。
この小説は、2018年の8月から12月までの期間、ごく普通の一人の女性と一人の男性がモノローグを交替で繰り返す形を取っています。
ただし、単なる恋愛ドラマではなく、作品の中に、現代日本の政治、経済、社会に対する批判的なメッセージを込めています。
その中に、上に述べたようなことも含まれています。
グラフなども登場する、実験的な試みです。
そんなのは文学じゃない、とお感じの方もいると思いますが、筆者自身は、少しでも多くの方に自分の考えをわかっていただくために、意図的にこういう方法をとっているつもりです。
現在、アメブロに毎日少しずつ分載しており、二か月弱、つまり参議院選挙の投票日までには終わる予定です。
少し堅苦しく、理屈っぽいかもしれませんが、ご関心のある方は、ぜひアクセスしてみてください。
https://ameblo.jp/comikot/



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・水道民営化に見る安倍政権の正体
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・みぎひだりで政治を判断する時代の終わり
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・急激な格差社会化が進んだ平成時代
https://38news.jp/economy/12983
・給料が上がらない理由
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・「自由」は価値ではない
https://38news.jp/economy/13224
・日経記事に見る思考停止のパターン
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・優れた民間人のほうが主流派経済学者などより
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・まもなく小説を完成させます
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●『Voice』2019年2月号
「国民生活を脅かす水道民営化」

小説を完成しました

2019年05月17日 10時22分48秒 | お知らせ


少し前に、当ブログで、「まもなく小説を完成させます」と題して、一部を抜粋した記事を書きました。
https://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/02cecf5ed02e24dd0e1f5b17bf49a0e8

完成しましたので、以下のブログで、毎日少しずつ分載していきます。
どうぞよろしくお願いいたします。

https://ameblo.jp/comikot/entry-12461879611.html

なぜ経済問題は敬遠されるのか

2019年05月15日 09時48分38秒 | 政治

世界のGDP成長率

令和元年5月13日、ついに内閣府が景気動向指数の基調判断を、6年2カ月ぶりに「悪化」へと引き下げました。
いままでいろんな屁理屈をつけて「いざなぎ越え」だの「ゆるやかな回復基調」だのとデマをまき散らしてきたのが、ついに認めざるを得なくなったわけです。
しかし、この判断は、たしかな数字に依拠してなされたというよりは、政権内部の力関係にもとづく、政治判断だろうと推定されます。
為政者たちが、経済を理解した上で、判断したわけではないでしょう。
不景気を示す指標なら、実質賃金、物価指数、民間最終消費支出、GDP成長率、世界に占めるGDPのシェアなど、これまでいくらでもあり、みな低下あるいは低空飛行していることが歴然としているからです。

政府がようやく「悪化」を認めるに至ったということは、来たる7月の参議院選挙(場合によっては衆参同日選挙)を睨んでのことと思われます。
10月に予定された消費増税を実行に移すか移さないかは、おそらくこの選挙の最大の争点となるでしょう。
もし実行に移すと決断すると、与党自民党が大敗するだろうという危惧が、党内にも高まっているようです。
それを避けるために、増税延期のカードを切ったうえで、総選挙に持ち込むというのが、いまのところ、最もありうるシナリオです。
それには、「景気の悪化」という判断を前もって示しておき、その上で、「延期やむなし」との決断に正当性を与えなくてはなりません。
そのことによって、野党の批判をあらかじめ封じておこうという心算でしょう。
リーマン級、リーマン級と、バカの一つ覚えのように言っていたのでは、安倍政権が立たされている難局を乗り越えられない――そういう政治判断が熟してきたのだと考えられます。

「延期」ということになれば、ひどい状態の日本経済が一息つけることはたしかでしょう。
しかし本当は、延期ではダメなのです。
たとえば、東京五輪の行なわれる2020年まで延期、などとなったら、目も当てられません。
今年度中に五輪特需が終わりますから、五輪が行なわれた後は、その反動で投資も消費もさらに落ち込むことが予想されます。
その上に増税実施となれば、日本経済は壊滅的打撃をこうむります。

消費税が、富裕層に優しく貧困層に厳しい逆進性を持つことは、よく知られています。
その上、増税が経済にもたらす打撃は長期にわたります。
これは1997年、2014年と2回にわたる増税が証明しています。
また、言うまでもなく増税を唱える財務省が、その根拠としている「財政破綻の危機」なるお題目には、
まったく根拠がありません。
税率のアップによって、消費は冷え込み、これと連動して投資もさらに縮退します。
すると財務省が見込んでいる税収増は実現されず、かえって「健全財政」は果たされなくなります。
デフレ期の増税など、病人に対して薬の代わりに毒を盛るたぐいの、狂気の振舞いです。
ただちに凍結、あるいは、減税、最良なのは廃止することです。

ところで、財務官僚が国民生活のことなど何も考えず、「PB黒字化」という教義だけをひたすら信じる狂気のカルト集団であることは、すでに一部で知られています。
しかし政治家たちは、どうして、こんなカルト集団の言い分に洗脳されてしまったのでしょう。
財務官僚も政治家も、経済がわかっていないバカだから、と片付けてしまえばそれで終わりですが、それだけでは、そういう事実を確認し、この事実は変わりっこないから諦めようぜと言っているのと同じです。
もう少しこの問題を考えてみましょう。

ごく少数の例外を除いて、政治家たちは、なぜこんなにもマクロ経済を知らないのか。
あるいは知ろうとしないのか。
日本の政治を動かそうという意思を持った人たちが集まっているはずなのに、そのために必要不可欠であるマクロ経済について、最低限の知見すら持ち合わせていないのはなぜなのか。

以下、箇条書きにして、その理由を挙げてみます。
(1)政治家もわれわれふつうの生活者と同じ知恵と関心しか持っていない、凡人である。
(2)民主主義的な手続きによって選ばれた現在の政治家は、人格イメージや演説のうまさや現職の強みや背後の組織力によって選ばれているので、別段、経済の知識など必要としていない。
(3)いったん選ばれてからも、組織内の分掌に割り当てられ、そこに集中することを余儀なくさせられるため、広く公共的な問題を見渡そうとする視野を失ってしまう。

この(3)の点ですが、現代の政治組織は、官僚組織や企業と同じように、分業化とトップダウンの構造を持ち、党内の自由な議論の空間が存在していないように思います。
政治組織こそ、他の組織と異なり、公共的な問題についての自由な討論の場が持続的に確保されなくてはなりません。
それなのに、細分化されたアドホックな事務的仕事に追われ、いつの間にか、官僚の提出する「資料」のままに動く習慣を身につけてしまいます。
しかし、国会議員は、常に国民全体の安全と幸福について考えるべき使命を担っており、そのためにこそ高い給料と秘書を与えられ、国政調査権も持っているのですから、この怠惰な習慣に眠り込んではなりません。
これらの特権について「身を切る改革」などというバカなことが言われましたが、「身を切る」のではなく、せっかくの特権をフルに活用すべきなのです。

政治家は、消費増税のような国民すべてにかかわる重要な問題について、なぜ増税が必要とされてきたのか、誰がそれを声高に主張しているのか、なぜそんなことを主張し続けるのか、自分の頭で、また反対している人たちの意見によく耳を傾けて、勉強しなくてはならないはずです。
しかし、彼らのほとんどがそれをやっていないのです。

「多忙」や「分掌の拘束」を言い訳にせず、党内に必ず、国政、特に重要な経済政策に関する自由な討論の場と時間を設けておき、そこで、キャリアや派閥に関係なく、対等に議論しあう。
そのために各人、勉強を怠らない。
これは、近代政党のあるべき姿としてかなり重要な反省点ではないでしょうか。


もう一つ、政治家に限らず、私たちは一般に、政治的な事象、たとえば、国政選挙とか、日韓問題とか、米朝首脳会談とかに対しては、妙に熱くなる傾向があります。
マスメディアもそういう問題には時間をかけて鳴り物入りで報道しますね。
しかし、たとえば消費増税や移民受け入れ政策や水道民営化や発送電分離などは、私たちの身近な生活圏、つまり家政に直接かかわってくる問題であるにもかかわらず、メディアもあまり報じません(これらについては、既定のこととして報じるばかりです)。
これはどうしてでしょう。

ここで、「狭義の政治」と「広義の政治」という概念分けを試みます。

狭義の政治では、国内政局の力関係、隣国の反日的姿勢、国際環境の変化などが問題とされます。
しかしこれらは、私生活からの遊離度・超越度が高い問題です。
もっとも政治とは、いずれにせよ、「わたくし」の領域から超越した「共同観念」を扱う領域です。
マルクス流にいえば、「上部構造」ということになります。
ところが、その超越の度合いにも落差があって、より超越度の高い問題と、より「わたくし」領域に近い問題とがあります。
前者だけに特化するのが「狭義の政治」であり、両者を含むのが「広義の政治」です。

不思議なことに、私たちは、超越度が高ければ高いほど、興奮する傾向があるのですね。
そしてこの興奮(たとえば「韓国の駆逐艦が自衛隊の対潜哨戒機にレーダー照射をした」といった問題に対する興奮)が、足元の家政という最重要問題を忘れさせます。
狭義の政治は、ある意味で、身近な生活問題を忘れさせてくれる麻薬のようなものです。
それは日々の報道を通じて、私たちの政治意識の表層を覆い尽くしてしまうのです。
床屋政談を繰り返すことは、私生活のうさを紛らして、麻痺させてくれるのですね。
自民か立憲民主かといった政局談議、保守とリベラルのイデオロギー対立の問題などというのも、この麻薬に酔った人たちが作り上げた空中楼閣の典型です。
この人たちのなかに、経済を理解している人がどれくらいいるというのでしょうか。

本来、「広義の政治」には、生活に直結するはずの経済政策のいかんが中核に位置しており、これを外しては、そもそも経世済民を目指すはずの「政治」という概念そのものが成り立ちません。
しかし麻薬による麻痺の作用によって、本末転倒が起きます。
ここに、経済一般に対する関心の希薄さが、集団心理として成立してしまうのです。
これに、「経済学」という、難解な数学などを用いて学問めかした「権威」が、追い打ちをかけます。
私たちは、こうして経済について自ら考えることを敬遠・放棄してしまうのですね。
経済って、なんだか難しそうでわからないわ、ってね。
結果、たとえば消費増税がどんなにトンデモ発想に基づいていても、それを受け入れてしまうし、逆にMMT理論がどんなに当たり前のことを言っていても、トンデモ理論扱いされてしまうのです。

読者のみなさんは、中野剛志氏の最近著『奇跡の経済教室』はもうお読みになりましたか。
未読の方にはぜひおすすめです。
これを読むと、安倍政権、特に財務省の政策がいかにトチ狂ったもので、日本をダメにしてきたかがわかるだけでなく、経済問題そのものに対する敷居がぐっと低くなります。

筆者自身、数年前までは、経済はどうもわからないという敬遠の姿勢を取っていたのです。
しかし、それではいけないと思い始め、極力、三橋貴明氏や、藤井聡氏、中野氏などの主張に触れることに勤めました。
その結果、マクロ経済のからくりがだいぶ読めるようになり、読めるようになると、そんなに難しくないということがわかってきたのです(まだ再現可能性という点で未熟ですが)。
わかってくると、何を「敵」とすればいいか、「味方」と思えた考え方もじつは「敵」だった、など、その照準が定まってきます。
読者の中に、もし「経済はどうも……」と思っている方がいたら、どうか、筆者が身をもって体験してきたことを参考になさってください。



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●『表現者クライテリオン』2018年11月号
「安倍政権の『新自由主義』をどう超えるか」

●『クライテリオンメルマガ』
・池袋事故のSNS炎上から何を学ぶか
https://the-criterion.jp/mail-magazine/m20190426/
・ポリティカルコレクトネスという全体主義
https://the-criterion.jp/mail-magazine/m20190329/
・性差、人権、LGBT
https://the-criterion.jp/mail-magazine/m20190302/

●『「新」経世済民新聞』
・消費税制度そのものが金融資本主義の歪んだ姿
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・消費増税に関するフェイクニュースを許すな
https://38news.jp/economy/12559
・水道民営化に見る安倍政権の正体
https://38news.jp/economy/12751
・みぎひだりで政治を判断する時代の終わり
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・急激な格差社会化が進んだ平成時代
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・給料が上がらない理由
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・「自由」は価値ではない
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・優れた民間人のほうが主流派経済学者などより
ずっとマシ
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まもなく小説を完成させます
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●『Voice』2019年2月号
「国民生活を脅かす水道民営化」

「令和の政策ピボット」がリニューアルされました

2019年05月08日 01時02分56秒 | お知らせ
「令和の政策ピボット」がリニューアルされました。
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まもなく小説を完成させます

2019年05月02日 08時33分22秒 | 思想


いま、小説を書いています。タイトルは『ざわめきとささやき 2018年ふたりの秋』(仮)。
この連休の間に完成させようと思っています。
小説といっても、一風変わっていて、ふつうの小説のように個人どうしのかかわりの展開がストーリーの中心になっているというよりは(それもあるのですが)、一対の男女のモノローグを交替で進行させながら、そこに、近年の政治・経済・社会問題を織り込んでいくという形を取っています。

中に、LGBT問題をはじめとした、ポリコレブームについて、ふたりの主人公が会話を交わす場面があります。
今回、その部分を取り出してここに転載します。


*************************************

それから私たちは、お茶を飲みながらLGBTやセクハラについて話した。
「LGBTが騒がれるのって、権力を倒したいサヨク勢力が、マイノリティをそのための道具として利用している面もあるって前に言ったよね。世界中で、こんなに、サベツ、人権って騒がれるのって、それを受け入れるマジョリティの側の心理にも原因があると思うんだ」
「ポリコレってやつね」
「そう、これこそが政治的に正しい原則だって固執して、あらゆるところにサベツやセクハラの兆候を嗅ぎだしては、レッテル貼りをする傾向」
「わたしも、男の人が女の人に何か言うと、いちいちセクハラ、セクハラって騒ぎ立てるのって、男の人が委縮しちゃって、よくないんじゃないかしらって思ってたの。出会いの機会を奪ってるでしょう」
「流行現象みたいになっちゃってるね。もちろん中には、ほんとにそういうこと言ったりしたりする連中がいることはたしかだけど、一度そういうのがニュースになったりすると、言葉が独り歩きして、どんどん拡散するよね。それで、ポリコレがこんなにブームになるのも、現代人のほとんどが生きるよりどころをなくしているせいじゃないかと思うんだよ」
「生きるよりどころ?」
「うん。たぶん宗教的な権威が衰えたんで、どこかに『正しさ』の絶対的な基準を立てておかないと、生きていくのに不安で仕方がないんじゃないかな。そうしないと、自分の存在の確かさが確認できない。そういう下地があるんで、一部の政治勢力が、ポリコレに少しでも引っかかる言動に対して「差別主義」とか「排外主義」のレッテルを貼って、魔女裁判みたいに糾弾する」
「ああ、なるほど。そのことで、自分は『正しい人だ』って確信が得られるわけね」
「うん、そう。すごく脆弱な確信だけどね。でもそれは裏を返すと、自分たちがリア充の実感を持てないからじゃないか。つまり相手の否定によって、自分がアイデンティティを確保しているかのような気になれる」
「それって、韓国の一部の人たちが何でも反日、反日って騒ぐのと似てるわね」
「ああ、ほんとだね。あの半島には、ずっと大国に挟まれてきたために、もともとそうなってしまう悲しい歴史があるんだよね」
「そういうことを、あの国の人たちってどこまで自覚してるのかしら」
「さあ、あんまり自覚してないから、恨みや被害妄想でいっぱいになっちゃうんじゃないか」
「自分の中身が空虚であることの証拠ね」
「うん。韓国の人がみんなそうだってわけじゃないけどね。話を戻すと、ポリコレブームを作り出したのは欧米人だよね。その深層意識には、自分の存在の基盤が失われていて、『関係の空虚』を生きてるっていう実態があるような気がする。だから、これはポリコレ・コードに引っかかるんじゃないか、こんなことを言ったら『差別主義者』とか『排外主義者』とか『セクハラ』呼ばわりされるんじゃないか、と絶えず恐れていなくちゃならない。しかも、そのことが自覚できないようにさせられているということでもあると思う」
「そこに反権力的な政治団体がつけ込むわけね」
「うん。ただ、ヨーロッパの場合、古くから、宗教対立や他民族の混交の問題があったでしょう。ナチスみたいなこともあったしね。だから、きっとアイデンティティ不安とか、緊張感とかがすごく強い。それで、反権力団体だけじゃなくて、むしろ中枢権力が、そういう正義の建前を率先して掲げてきたんだと思うのね。でもいま、イスラム系移民なんかがどっと押し寄せて、かえってその建前が仇になってるんじゃないかな」
「そうね。日本の場合は、そういう緊張感ってないわね。LGBTと普通の人たちって適当に棲み分けてるし」
「イスラム教じゃ、同性愛は死罪だからね。そういう宗教対立がない日本じゃ、LGBT問題なんてそんなに切実じゃないはずなんだけど、なんか、アチラから<問題>として輸入されると、すぐマネするんだよね」
「でも、いま移民受け入れ拡大の方向に向かってるでしょう。そうすると、東南アジアのイスラム系移民が大量に入ってきたら、そういうことも問題になってくるんじゃないかしら。だって豚肉食べちゃいけないとか、一夫多妻認めてる人たちとの間で摩擦が起きるんじゃない?」
「うん。たしかにこれからはその可能性はあるね。でも日本人はのんきだから、そういうこと、いままで考えてこなかったんだよね」
 それから玲子は、じっと思いを巡らすふうにしてから、ひとりごとのように言った。
「正しさとか、正義って何だろう」
哲学者みたいだ。私も同じようなことを考えていたけれど、この疑問に答えを出すことはすごく難しい。
「文化によってすごく違うからね。Aの正義、Bの正義、Cの正義がぶつかり合ったりまじりあったりした時に、それが問題になるんだよね。リベラルな人たちって、特に学者に多いけど、よく『いろんな価値観があっていい。多様性を受け入れるべきだ』なんていうでしょう。でもそれは、自分がそういうぶつかり合いの場面に立たされてないから、そんな軽薄なきれいごとを言っていられるんだと思う」
「ヨーロッパは、それで失敗したのよね」
「そうだね。やっぱり相手の価値観をただ寛容に受け入れるんでも否定するんでもなくて、それはそれとして認めた上で、でもこっちにはこっちの価値観があるんだから、お互いに侵入しないで棲み分けられるような境界線をうまく引くことが大事なんじゃないかな」
「それって、国を守るってことに関係ある?」
「大いに関係あるね。日本人は西洋のマネばっかしてないで、むしろヨーロッパの失敗を他山の石として学ぶべきなんだ。でも一向にその気配がない」
「困ったわね」
それきりふたりの間では、言葉が続かなかった。

*************************************

この会話は、2018年12月4日に行われたものという設定で書かれています。

このあと、12月10日に第197臨時国会が終了し、「改正入国管理法」(移民受け入れ拡大)、「水道法改正」(水道民営化)、「改正漁業法」(漁協解体)が、ろくな審議もないままに、矢継ぎ早に国会を通過しました。
平成の最後に至って、国境と国家主権と国民生活を自ら破壊するグローバリズム・ジャパンが完成したのです。

また、12月27日には、ダグラス・マレーの『西洋の自死』(東洋経済新報社)が発行されています。
ここには、EU諸国の中枢が、人道主義的な理想を実現させようとして、移民受け入れを奨励したために、どんなに惨めな結果を引き起こしたかが、赤裸々に語られています。

新しい令和の御代が始まりましたが、私たちは、平成時代に犯した失敗から何とか脱却しなくてはなりません。
しかし現実には、すでに法制度が敷かれてしまったのですから、この失敗の克服は困難を極めるでしょう。
それでも絶望せず、一歩一歩、克服への道を歩みましょう。

令和の政策ピボット
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【小浜逸郎からのお知らせ】
●私と由紀草一氏が主宰する「思想塾・日曜会」の体制が
かなり充実したものとなりました。
一度、以下のURLにアクセスしてみてください。
https://kohamaitsuo.wixsite.com/mysite-3
●『倫理の起源』4月15日ポット出版より刊行!

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80%AB%E7%90%86%E3%81%AE%E8%B5%B7%E6%BA%90&qid=1554280459&s=gateway&sr=8-1

●『日本語は哲学する言語である』好評発売中。

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●『福沢諭吉 しなやかな日本精神』
(PHP新書)好評発売中。

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●『表現者クライテリオン』2018年11月号
「安倍政権の『新自由主義』をどう超えるか」
●『別冊クライテリオン 消費増税を凍結せよ』(2018年11月14日発売)
「消費増税の是非を問う世論調査を実行せよ」
●『「新」経世済民新聞』
・消費税制度そのものが金融資本主義の歪んだ姿
https://38news.jp/economy/12512
・消費増税に関するフェイクニュースを許すな
https://38news.jp/economy/12559
・先生は「働き方改革」の視野の外
https://38news.jp/economy/12617
・水道民営化に見る安倍政権の正体
https://38news.jp/economy/12751
・みぎひだりで政治を判断する時代の終わり
https://38news.jp/default/12904
・急激な格差社会化が進んだ平成時代
https://38news.jp/economy/12983
・給料が上がらない理由
https://38news.jp/economy/13053
・「自由」は価値ではない
https://38news.jp/economy/13224
・日経記事に見る思考停止のパターン
https://38news.jp/economy/13382
・優れた民間人のほうが主流派経済学者などより
ずっとマシ
https://38news.jp/economy/13506

●『Voice』2019年2月号
「国民生活を脅かす水道民営化」