*以下の記事は、このブログの「テロとグローバリズムと金融資本(その3)」と一部内容が重複します。
ラジオで奨学金制度が暗礁に乗り上げていることを知りました。
ふつう高3の5月に予約申請をするのですが、その時点ではそもそも大学に入学できるか決まっていず、大学卒業後、正規社員として採用されるかどうかもわかりません。非正規の場合は、職種も雇用期間も収入もきわめて不安定ですね。この時点で将来像を描けと言っても無理なわけです。先生は多忙で、とても生徒一人一人に適切なシミュレーションの指導などする余裕がありません。
ちなみに経済的な事情から進学をあきらめた場合には、高卒の正規採用というのはほとんどゼロで、非正規を含めても2割就職できればいい方だそうです。
調べてみたところ、日本学生支援機構の奨学金制度は、無利子だが選抜が厳しい1種と、有利子だがほとんどだれでも受けられる2種とに分かれていて、2種は1種の最高2倍まで給付されるので、こちらに人気が集まっています。
しかしたとえば貸与月額10万円で四年在学すると総額480万円となり、これを償還期間20年、固定金利0.82%で返還すると、月々22000円支払わなくてはなりません。月収手取り16万円として、家賃その他の経費を差し引き、そこからさらに2万円以上を返していくというのは、相当辛いですね。頼りの親も次々と下流高齢者の仲間入りをしていく昨今です。将来展望が開けるわけがありません。
非正規社員の割合がどんどん増えている(現在4割)この不況期に、労働者派遣法「改正」などを簡単に国会通過させてしまった政府、国会議員に大きな憤りを感じます。この「改正」なるもの、雇われる労働者の生活のことなど全く考慮されていません。派遣労働者を永久に低賃金で不安定な雇用形態に留めておこうとする悪法です。
細かい点は抜きにして、ポイントは三つ。
①同じ労働者が派遣先の同一組織で3年以上働くことはできない。
②3年を超えて雇用されることを派遣元が依頼することができる。
③専門26業務とその他の業務の区別を取り払う。
①は労働者を入れ替えて使い捨てにすることが容易になる規則ですね。厚労省はこれをキャリアアップのためなどと言い訳していますが、逆だろう!と突っ込みたくなります。
②は「依頼することができる」となっているだけなので、派遣先が断ればそれで終わり。
③は一見平等を期しているようですが、内実は正規雇用への可能性の道をいっそう閉ざすものです。これまでの派遣法では、専門26業務の派遣労働者が同じ派遣先で仕事をしている場合、その派遣先が新しく直接雇用をする際には当の労働者に雇用契約の申込み義務があるという制度が存在し、これにより当の労働者に直接雇用の見込みが不十分ながらあったのに、今回の改正ではこの制度が削除されたのです。
この改悪の主役は誰か。規制改革を進める派遣会社会長・竹中平蔵氏らの一派、およびこの路線をよいことと信じている安倍政権です。日本の労働行政はアメリカの悪いところを見習って、ますます亡国への道を歩んでいます。これではいくら奨学金制度があっても、若者の将来設計を困難にしてしまうのは当然と言うべきでしょう。
参考:http://toyokeizai.net/articles/-/73553