
大谷由里子著 中経出版 P110より引用
ISBN4-8061-2041-3 1400円+税
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大変やね
!「大変やね」という言葉には、「でも
他人事だし」、「あなたよりはマシ」
という本音が見え隠れする。よく使わ
れるけれど、要注意の一言。
この言葉ほど、無責任で心のこもってい
ない言葉はない。とわたしは思っている。
実際、わたしもつい使ってしまうけれど、
絶対に真剣に相手のことを考えていない。
さりげなく流してしまうような時に、一
番使ってしまっている。しかも、他人事
で、なんとなく自分が優位に立っている
ような言葉である。この言葉を使う時、
「わたしはそんな目に合うのは嫌だわ」
という気持ちが多かれ少なかれ入ってい
ると思う。
22歳から25歳まで、横山やすしのマ
ネージャーをしていたわたしは、本当に
よくこの言葉を言われた。
「大変だったでしょ」わたしはその言葉
を言われるのが嫌で、「いいえ、良い経
験をさせてもらったと思っています」と
答える。そうすると、たいていの人は
「でも大変だったでしょ」と言う。
相手に「大変だった」という返事を期待
している。そして、優位に立とうとして
いる。
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▼何気なく聞いていた言葉ですが、そん
な深い意味があったのですね。「大変や
ね」には同情の気持ちがあると思って
いましたが、そうではなくて、「あなた
より私の方が優位なのよ」というメッセ
ージだったのだ。
ーー「大変だね」と声をかけても、自分
の手を差し伸べないなら無責任な同情に
過ぎない。言葉だけのいたわりは逆効果。ーー
とあり気軽に「大変でしようね」などと
言葉を掛れないですね。ひとつの言葉に
も、いかにも重大な意味があるんですね。
ところで、わたしの絵についても、展覧
会会場のインタビューで「どのくらいの
時間がかかりましたか」という質問をよ
くうけますが、「何時間くらいとか、一
週間くらいです」と答えながら「それは、
それは至福の時間です」と答えるように
している。時間で図られるのは少し抵抗
がありますね。
