実家は地方都市の真ん中で繁華な所にあった。
当時、犬を繋ぐ習慣は全くなく商店街でも一人お散歩犬は珍しくなかった。
我家の犬も仕事場で寝起きしていて勿論繋いでいない。
雌だったからか決して家から離れようとはせず20メートル以内が彼女の世界だった。
近所の機械屋に子犬が来たので見に行くと黒い雌でコロコロしていた。
店の人がチロと名付ける。
チロも放し飼いでよく我が家に遊びに来た。
犬が数匹たむろする光景は普通の事、だからこそいつの間にか子犬が産まれるのだ。
子犬のチロは可愛いくて仕方が無かった。
しかし、あっけなく死んだ。
家の前で車にはねられたのだ。
小さなチロは必死で自分の家へと帰ろうとした。
そして入り口を少し入った所で息絶えた。
僅か3か月の命だった。
悲しかった。