大いに暑い。
遠藤が手紙を寄越す。
房吉が今日もきて米を搗く。
13日の風雨(あらし)に栄谷あたりの山が崩れたそうで、池が二つつかえて上方の損害余程のことらしい。
橋本の下屋敷も貴志のあたりにあって数寄屋建ての棟上げも済んだところで、大工の道具も置いたままで流してしまったという。
この下屋敷を守っていた物は泳ぎがうまいので助かったらしい。
夜半に水が出るという声がして外に出たが、もはや水は山のように高くなっていて二人の子供の姿が見えなかった。訊ね回ったら井戸の傍で見つけ、二人を抱えて二階に上ると女房も二階に上る途中で首まで水に浸っていた。家も倒れかかっていたが運良く大木に支えられて持ちこたえた。
今少し水がきたら全く危なかったが、水に追われるように懸命に逃げて命が助かったのだ。
今も次々と人が来て心配でならない。
橋本から気付けを遣り薬なども煎じ続けてようようと快方に向かっているとのこと。
誠に急な来事で諸々の出費、被害額は相当な物だ。
梶取潮五郎方でも損害は千両の上でお上にもかなりの物入りであることよ。
池が二つ崩れたために畑はみな役に立たなくなった。
とよがこいくを連れて帰って来たがとよは泊まらなかった。