宿を出て銅山川を渡ってからすぐ登りとなる外輪山越えでは小雨模様ながら紅葉が素晴らしい、車を停めてパチリと、でも日光が無いから眩いばかりとはいかなくて、最高の写真は残念ながら撮れなかったけれど、この上り坂の道中がこの旅での紅葉の最高状態であった、最高点を過ぎた所からが少しだけが片側通行規制となっていて、それから先は一気に降りて行く道筋ではまだ緑がかなり多く残っている、人家が増えた平坦地を通って最上川に新しく架けられた橋を渡れば、すぐ並行する左手の道が大蔵村の中心部となる旧道である。
温泉街を出てすぐの場所から温泉方向を見返した
外輪山への上り坂からの後方の眺め
大蔵村の中心部には昨夜飲んだ日本酒花羽陽の醸造元である小屋酒造があって、昨夜と同じ生貯蔵酒を買おうとしたらそれは旅館専用で出荷したもので同じものは無いんだと、それで味が似ているという純米吟醸をお買上げ。この蔵元は文禄2年(西暦1593年)創業で東北で一番古いというから歴史が凄い、昔はかなりの辛口だった印象だったが昨夜呑んだのはかなり味わいがあって僕好みに変化していた。元河原湯で昨年まで扱っていた新庄の最上川という酒は廃業して小屋酒造で引き継いだそうで、今や肘折の酒はここが一手にということになりましたかな。
小屋酒造で
このあとは少しだけ走ればまた最上川にぶつかって、本流沿いに新庄から酒田を結ぶ国道R47に合流することになるが、この辺りは本合海という地名で、かの松尾芭蕉が最上川下りをした乗船地である。
芭蕉乗船の本合海あたり
本合海からほどなくで韓国風の建物が迎える道の駅とざわが現れる、最上川沿いの風景の中のこういう場所に何でだと異様な感じを受けるが、売っているものも韓国食材のキムチなどと韓流、でも別に地元農産物の直売所もあってここでも棲み分けが、我々はここにラフランスが無いかと立寄ったがやはり見当たらない。今回は農産物以外に川ガニのモクズガニがあって、こちらは上海蟹と同種だからこの時期が旬で中国版というべきですかな、我々に料理法を教えながら売ってきたが、これは旅行中では絶対に買えないでしょう。
道の駅とざわ
生きた川ガニが
このあとも延々と最上川沿いを走ることになって最上川下りの終点を過ぎ、やや谷が開けてくれば庄内平野の一部が現れて庄内町となり、まずは風力発電の風車が見えてくる。そのままR47を走れば酒田だが、今回の旅の三日目は遊佐に泊まるので鶴岡を先にして次に酒田という道筋をとろうと途中で左折、庄内平野の田園の中を走ることとなった。こちらは初めて通ったが、田圃には各所に白鳥の群れ(冒頭写真も)が見えるのにはこんなに早くからとビックリ、あとで地元の人に聞いたらやっぱり今年の飛来は早かったんだそうだ。以前の冬場から早春の団体ツアーでは見たけれど、この時期でも見られるとは初めて、東北の人には見慣れたものかも知れないが、全く野生の白鳥など来ない南関東に住む我々には見られただけでも嬉しくなっちゃうね。
最上川沿いは紅葉と緑が混じる
芭蕉上陸地あたり
風車群
白鳥がもう飛来
本当は庄内映画村の撮影セットがあるところに行きたかったのだが、まだ小雨が止まなくて園内を相当に歩くらしいからと今回は諦めて、いつもの鶴岡中心部の鶴岡公園辺りを散策してお茶を濁すことに。無料の観光駐車場に車を停めて、こちらに来た時によく立寄る鶴岡物産館でがんすに来てみればもうすぐ解体とか、市民会館再建工事だそうでまた物産館ができるかは分からないらしい、すぐ近くで今工事中の建物に清川屋が入るというから民間に移行するということかも。
市役所近くが広い公園風に整備されていて
致道館は無料で見学できる
鶴岡物産館でがんす
温海カブは焼畑栽培とあったが生産組合のものらしい、本長は粕漬と柴漬風だけが、他のメーカーのものもいくつか、山形は漬物王国
きびそというのは初めて知った
大昔に一回だけ見物したことがある鶴岡カトリック教会天主堂に久しぶりだからと、重要文化財の木造の擬洋風建築で幼稚園内にあり、日曜ミサの時以外は昼間は常時自由に見学できて無料というのがエライもんだ。この日は土曜日で休園らしく誰も居なくて、ヒッソリとしていて観光客も見えない、この建物はもっと高い評価を受けてもとも思うけど、こういうところはやはり静かに見物すべきですかね。
鶴岡カトリック教会天主堂
説明文
内部はヨーロッパの様式そのものの雰囲気
珍しい黒い聖母マリア像
ステンドグラスではなく描かれたものらしくやや剥げてきて おみくじみたいで面白い趣向かと
天主堂を出てきてすぐの場所に地元客らしきが何組か出入りしている食事処が目に留まって、どうやら街の中華屋さんらしいが自家製麺とあるのが気になって、軽くラーメンぐらいなら腹に応えないだろうと入ってみた。店内には勤め人らしいグループでほぼいっぱい、メニューを見たらラーメン550円ならそんなには量はないだろうからと一安心して二人ともそれに。やはり昔ながらの中華そばといった味でこれはこれでいいですよ、食後にコーヒーがサービスというのは地元御用達のいいところだね。
食事処たかだて
ラーメンとコーヒー
そのあとは荘内神社境内側から歩いていって、ちょっと前に出来た藤沢周平記念館や擬洋風の大寶館などは外だけ見て廻って大通りにまた、この通りに面しては慶応大学先端生命科学研究所とタウンキャンパスがある。これはついちょっと前のTBS夢の扉という番組で、病気の早期発見ができる驚異の成分分析技術開発について紹介されていたのを見たばかり、こういう地方都市からというのが素晴らしいことですな。
藤沢周平記念館から大寶館へと
大寶館
慶応大学鶴岡タウンキャンパス
今回は致道博物館などは素通りしてR7沿いにある庄内観光物産館ふるさと本舗に、今年で開業20周年の記念バーゲン中ということで賑わっていたが、いくら鮮魚が安くてもまだ買えませんでしたな。食事処では海鮮食放題とかで待ち行列が、そんなのを眺めつつお土産品の試食で済ます我々二人であった。今回は本長には立寄らないからとここでも売場を探したが、やはりカブの甘酢漬はまだのようでここでも粕漬中心、これだけの場所に並べるならもっと他の種類も置いてもらいたいですな。
庄内観光物産館
鮭は安かったが生ものでは
これ目当てに大行列が
ここには本長コーナーがあったが粕漬ばかり、温海カブなどはまだ本店でも浅漬けが出始めたばかりじゃないかと思う
この日の観光の最期は酒田に廻って土門拳記念館に、ここは運動施設や美術館に大学と文化施設が集約されているところの一郭で、土門拳記念館の前には大きな池があって冬場は渡り鳥が集まってくる。この池に田圃で見た白鳥がいるかと期待していたがまだ鴨が少しだけの飛来だけ、館内で訊いたら今年の白鳥は早いらしいがこちらにはまだとのこと、まずは旅の疲れを落穂拾して食欲を満たすことからというんですかね。記念館ではここも開館30周年だそうで、「古寺巡礼 とっておきセレクション」という展示となっていてこれまでも見た写真もいくつか、ちょうど東北文化の日とかで絵葉書をプレゼントされた。その中では国産カラーフィルムの最初の撮影という2枚があって、劣化したネガを最新の技術で復元焼き付けしたという大型写真(下の写真の正面5枚のうちの左側の2枚)はほかのものと遜色なし、富士フィルムが意地でもと協力したらしい。こじんまりした第二展示室では雑誌の表紙を飾ったという「女優と文化財」というテーマでの展示もあったが、こちらも前に見たことがあるものであった、ここは何回見てもいいと女房とも話しているが、僕はもっと初期の戦後間もない自分の子供時代を思い出させてくれる下町の子供達や、廃坑となった頃の貧しい筑豊の子供達のモノクロの写真の印象が強いんですよ。
前庭の池には鴨が少し、鯉は人が近づくと餌を求めて集まってくるが、鳥インフルエンザ騒ぎの時には野鳥に餌をやらないようにとあって鯉もワリをくったはず
土門拳記念館
アプローチ
館内の様子
記念館の手前には芝生の運動場や体育館が、この日は高校バスケットの試合とかで駐車場は車がいっぱい、しかしこんな芝生のグランドは僕の子ど時代には想像もできませんでしたな
今日が一番台風がこちらに近づいたはずだが、どうやら台風は昼過ぎに通り過ぎたみたいで、それも予想よりも南側にずれてくれてそんなには降られずに済んだようで車から出た時は不思議と降られなくて、でも明日からは西高東低の気圧配置となって日本海側についてはこのあとも好天は期待できないらしい、ということで雲の様子がこれまでとは変ってきたようだ。このあとは宿がある遊佐に、途中では道の駅ふらっとにだけ立寄って明日の魚屋の開店時間だけ確認してから、すぐ近くの公営の宿である遊楽里に早目に入ることに。