ちょいボケじじいの旅・酒・エーとそれとね

毎晩酒を愛で古き日本と温泉を愛す、少し物忘れも出始めた爺が、旅日記やコレクション自慢などと、時々の興味のままを綴る。

ここのところ古民家見学会が続いて、今度は青森から世田谷に移築した物件を

2011-02-27 16:25:46 | その他

 先々週の土曜日は南房総市の古民家の現地再生の物件の見学会であったが、今回は世田谷の住宅街の中に青森にあった古民家を移築したという物件で、日本民家再生リサイクル協会(JMRA)というところからの見学会の案内が一ヶ月ほど前にあって、こちらは我家から近いこともあって参加申し込みをしておいた。

 当日は東横線の某駅改札口に午後3時集合で現地に向かい、3時半から6時ぐらいまでタップリと時間をとって、完成後1年という建物を見学し、さらに青森の大工さんに来てもらい、現地での古民家の状態から解体の様子、具体的な古材の活用方法、都内の住宅密集地での各種制約条件の対策や施工状況などの説明を聞き、さらに建て主さんがどのようにしてこの古民家に行きついて建てるまでに至ったか、そしてこの1年間の住み心地はどうであったかなどの話があった。

 そのときの写真については外観は一切出さないで欲しいというわけで、内部の写真だけをいくつかここに紹介して、古民家の良さを感じとってもらえればと。それとこういう建物を建てる人はそれなりに建物内に配する家具や照明、それに飾り物などにもこだわりがあるはずだから、それらが如何に生かされているかにも目が行くはずだ。

 まず最初に目にした外観の感想だけ言うと、雪国青森の重厚なものを予想していたからあまりにも軽快な感じで面喰ってしまった。その理由は聞いて分かりました、この地域は外壁を不燃にしなければいけないということで、外を不燃材で覆ってさらに和風に見せるための化粧材がまわされていて、それがあまりにも細い柱状だし、敷地いっぱいに建てられているから軒の出も少ないからそんな印象を与えるわけだ。

 しかし内部、特に二階の空間は凄いです、太い欅の柱に栓の木だという背の高い梁が架けられ、吹き抜けの屋根組は古材だけが持つ黒さの松がうねるように組まれて、さすがに古民家ならではの風格が感じられる。もともとは9間に5間半の平屋だったそうで、その骨組みの材を一本一本調べてこちらの既にプランの概略が決まっていたものに合わせて使い方を決め、刻み直したという。それだと骨組みを元のままに使うよりずっと手間がかかるわけで、この青森の大工さんの腕はいいんだねぇと感心してしまった。確かに社長はもう70歳代の穏やかな人で、その息子さんの副社長もシッカリしているし、ここを担当したのは30歳代の棟梁というのにも驚いた。実に木に詳しいのはさすがで、無垢材をふんだんに使っているから本物の味わいがある。しかし吹抜けの居間の床も杉の天然木にしたため、板があばれるから床暖をいれなかったという。とにかく杉が人体の健康に一番いいんだそうで、それも一見識かもしれないね。骨組みは古民家の柱古材は使えるものが少なくて見せる大黒柱風には古材、その他は新しい杉の柱をかなり使って、水平材はほとんどが古材という構成になっている。それと風呂場もユニットを使わず石とヒバ材でというのも拘っていましたねぇ。但し、壁だけは土壁ではなく、ボードに漆喰塗となっているそうで、外部は当然に断熱材を入れてガラスはすべてペアガラスとなっている。

              柱時計はまだ現役もの

   

      居間は吹抜けで屋根組を見せて古民家の風格を             居間の入口の引違戸はガラスも昔のまま

 僕が建てた信州の山小屋は常時住むわけじゃないから、土壁では空調が効くまで時間が掛り過ぎるということで、当然のように同じように断熱材を入れたボードに漆喰塗りとしたが、これは工期も早くなることもあって好ましい妥協かも。でも信州は上田にあった古民家だから、雪荷重が大きい青森ほどは太い材にはなっていなくて、これほどには重量感はないものの、それでも吹き抜けて屋根裏を見せる空間は古民家の良さを十分に感じさせていると思う。古民家が消えていくのはなんとかしないと、特に移築ならどうにもなるし設備的に上手く現代風に改善してやれば、張りぼてプレハブなんかよりずっとリッチなものになるんだから。

 建て主は学者さん一家で蔵書の量が尋常じゃないらしく、そのための書庫は重量を支えられる一階に配して、メインの居住空間は二階に、さらに屋根裏部屋というには立派な空間が上に加わるという設計で、その居住空間には古い箪笥が各所に収まり、この時期はそれらを利用してこれもかなり古い雛人形が飾られているというのがまたお見事。照明器具の吊り下げ式の笠はほとんどがレトロだし、建具も自身で新木場の業者から仕入れて使っているという。何でもその新木場の古い建具を扱う業者を訪ねたときに、こういうことができる大工のことを初めて聞いたんだそうだ。そもそも古い家の耐震診断で逃げる間もなく壊れると言われ、建て替えを検討しはじめ、この場所では古民家は無理とハウスメーカーに相談、それでも建具の一部には古いものをというのがきっかけだったというから、何が幸いするか分かりませんな。

   

          屋根裏部屋といってもリッチな空間                   居間には階段箪笥が、そこには雛飾りを

 初めは新潟の総欅の古民家移築の話があったが値段で折り合わず、この大工さんの近くで築約100年の物件が出てきたんだそうだ。でもかなり傷んで使えない材もあったらしいが、大きな古民家だったから柱以外はほぼ賄えたと。それからは順調で何のトラブルも無く完成まで一気に進んだと。住み心地も昨年の猛暑でも風が抜ける家で涼しかったというし、この冬もエアコンやガスヒーターに最上部のサーキュレーターでそんなには寒くなかったと。確かに杉の無垢板は靴下だけで歩いても冷たく感じないのは確かであった。

 実にいい建物とそこでの住まい方を見せてもらいました。特にこの古材には昔から幾多の人々の生き様が染みついているから大切にと話された棲み手のお話は素晴らしい。こんな都内の住宅街に古民家が建てられるということをもっと喧伝してもいいっじゃないかな。なんでもこの青森の大工さんは、鎌倉やそちら湘南方面の工事が地元より多いそうで、首都圏でも関心が高い地域があるようだから、古民家が過疎地で朽ちる前に移築保存であっても生かせる道をもっとPRしてやらないとねぇ。


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