北関東には民窯の集まる土地として益子、笠間、子砂があり何回か訪ねた。益子と笠間は県は違っても生れは兄弟みたいなもので多くの窯元があるのだが、今は独立個人作家も周辺に多く在住する。子砂はあまり有名ではないもののかなり古くからの庶民派の焼物の里、そこに一つだけ毛色が変った窯がある。
益子焼と笠間焼は何回も出向いているから日常使いの器類などかなり持っていて、気に入っているものについてはいくつか既に紹介した。どちらかというと益子は浜田庄司以来の民芸調が主流で男っぽい、笠間はこれが笠間という特徴が無いのが特長でやや女性っぽい作風かなと僕は感じる。最近は芸大出身者がこの周辺に窯を持つようになって、もう相当に高い値段が付けられる作家も多いから単純に民窯の土地とは言えないのだが。
冒頭写真の扇皿は栃木のギャラリーで始めて見て、益子風に鮮烈な色彩感覚を加えたところが妙に気に入ってしまって購入したもの。確かに地の黒や絵付模様の素っ気無さなど民芸調なのだが、そこに浮き出す色は新鮮な感じで眼に飛込んでくる。作者は川上眞悟というそうで、ちょっと前に亡くなられた人間国宝の島岡達三の弟子だったそうだ。実はその時のギャラリー展は弟子3人の作品展であったと記憶するが、この人のものの印象だけが強烈であった。
次は笠間で買ったコーヒーポットのセットで八十島雅樹作、これは益子と言っても通用する作風である。笠間でも何人か気に入っている作家はいるのだが、やはり良いなぁと思うものは高い、でもこれはそんなでも無かった。
馬頭町にある子砂焼は幕末にこの地の土が焼物に適するということで始まったというから益子とは同じぐらいの歴史がある。ここの焼物の特徴は黒い釉薬に半分ぐらい土金色の釉薬を流し掛けしたもので、昔からの民陶であったようだが、それとは違った作風の窯が一軒だけあって、窯業史博物館を併設する国山窯という。日本窯業史を研究して博士号もとった人が興した窯で、ここで青磁風の焼物を生み出したんだそうだ。個人作家という窯元ではないものの、ここの青磁風釉薬と茶色い釉薬とのマッチングは面白いと思う。ほかにも白磁風に絵付したものもあったが、そちらはあまり好みでは無かったな。
これらの三つの焼物の里は早足でもいいなら一日でも回ることができるが、どこかの温泉にでも一泊すれば焼物以外にも良い物が見付かるかも、そんな旅行記はコチラにも。
まだアップしていない手持ちのこれら三箇所の窯のコーヒーカップがあって、まずはそれぞれの雰囲気は出ていると思う。奥が子砂でこの黄色と黒の釉薬の小さいカップが一番の特徴、左手前は笠間、右手前が益子である。