■盗難事件のため、この日の記録はあとから挿入することになった。ヤロスラヴィリをほんとに見て回りたいんだけど今晩の寝台でSPBに発つのでお昼にチェックアウトしないといけない。それまでに行っておくところはラナさんも指摘してくれていたBell Museum (サブラーニエ博物館「音楽と時間」だ。いったいどんなところなんだろう?
場所はボルガ川沿いの通りにあることは確認済みなのでいってみると誰もいない。早すぎるしなぁと思っていると、入口付近にいたおばさんがやっているから入りなさい、みたいなことを言うのでベルを押して入ってみた。ここはソ連崩壊後ロシアで最初にオープンした個人による博物館、ということだが普通の邸宅だ。中には各種のベル、教会のベル、牛の首につけるベル、等さまざまなベルがびっしり展示してあるがそのほか古い各種時計、蓄音機、ランプの類、さらにアイロンや洗濯板(これ何かの楽器かなと思ったらこの長細い羽根つき板で段々になっている)まで、いわゆるガラクタ博物館なのである。
若くてチャーミングな子がへただけど通訳してもいいか?というので2つ返事でお願いした。つたない英語がまたかわいい。古いアメリカ製だという蓄音機をあけて聞かせてくれた。ちゃんと音が出る。エジソンが発明したあのタイプのものさえあった。これはどんな音がするのかぜひ聞きたかったがさすがにこれは音がでないとのこと。彼女のおかげでとても楽しい時間がすごせた。
一旦ホテルに帰ってチェックアウトして荷物を預かってもらうことにした。夕刻になると寒くなるだろうと思ってしっかり上着を着て出かけた。しかし今日はお金を使えない。うっかりモスクワで日本円の換金をしなかったために手持ちのルーブルはわずか。VISAは暗証がわからず使えないし、CITIバンクはこちらにない。SPBにいけばなんとかなるだろうが、ここから電車駅まで行くのにどれぐらいかかるかも分らない。心細いかぎりだ。
しかし、今日で最後のヤロスベリを楽しもうといろいろ歩き回ることにした。やはりボルガ川原の沿道がいい。人通りも少なくちょっと肌寒いが気持ちがいい。ゆったり座って時間をすごすのもいい。ラナさんが老後をここで送りたいと言う気持ちはよくわかる。
夕方になって食堂のような店があったので食事をすることにした。親切なおばさんがとても気を使ってくれてどれがいいか聞いてくれる。サリャンカと肉のシチュウのようなものを頼んだ。彼女は指をあげておいしいよ、みたいな動作をした。
サリャンカはすごくおいしかった。支払いはカードでしてくれと言われたが暗証を聞かれるとできない。しかし試しにやってみたがだめだった。
食後は河原沿いの公園で時間をつぶした。夕暮れの7時8時になってもまだ3時4時の感じで人通りは多くなるし店じまいの気配は全然ない。9字になったのでホテルへ戻って駅へ出かけよう。
ホテルでタクシーを呼んでもらって駅に行くことにした。バスターミナルより遠いはずだ。走り出した運ちゃんにいくらかかると聞くとメーター見りゃあ分るだろといわれた。駅に着くとメーターによれば100pちょっと。来るときあのタクシーのおっさん250pふんだくりやがったんだ。