■明日はモスクワに戻るので今日が最後のサンクトぺテルブルグ。どうしてもエミルタージュだ。
ネフスキー・プロスペクト駅は一駅となりのはずなのにすんなり行けない。乗り換え表示がややこしいからだ。1号線ではプロシャーチ・ヴィスタ-ニャ駅から入るのだが3番線のホームに行くとそこはマヤコーフスカヤ駅と表示される。そこから隣の駅がガスチ-ニュイドヴール駅だ。そこから駅の連絡通路を延々と歩いて2番線のホームへ行くとそこがネフスキープロスペクト駅でそこの出口から外に出ないといけない。
日本語で読んでも舌をかみそうなのに、表示はキリル文字、その下にここではラテン文字表示されるのでローマ字風に読もうと思えば発音できるが、ものすごい速さで押し寄せる人波をよけるので精一杯ではもう行くとこまで行かないと確認のすべがない。メトロマップを見ても連絡できる駅では両方表示されていて,なれないと何処にいるのかさっぱりわからないことがある。メトロ内セキュリティーの視点からはこれが1番の問題だと思う。あの通訳警察官の彼女もメトロ内の英語表示が間違っているところがあるとぼやいていたくらいだ。
とにかく駅を降りて、宮殿広場に向かうとたくさん観光客が来ている。僕は来る前に「歩き方」でエミルタージュとロシア美術館の項を読んで中の歩き方、主な展示内容を頭にいれたつもりだが、簡単にはいかない。切符は発券機で買ったが人の列が何の列がわからない。聞いてロシア語で返ってくるとますます解らない。近くのおばちゃんが「券を持ってるひとはそっち」なんて言っているようなそぶりをみて、あたふたとそっちへ走るありさま。
こちらの博物館などの入場券は入り口回転バー横の読み取り装置で地下鉄の時の様に入場する。エミルタージュでは更に空港でのセキュリティチェックと同様手荷物の透視と磁気ゲート通過がある。
僕はいつもウエストポーチ一つで行動するので荷物預かり所はパスだが館内は非常に人が多く、どこからスタートかわからない。今日1日かけてもいいつもりで来たから自由に見て回る事にした。たしか20世紀美術は3階だからと思って、正面の「ヨルダン階段」と呼ばれる赤絨毯の華麗な階段を上る。ロシアでは宮殿を美術館、博物館などにしていてその宮殿設計自体が展示物なのだ。
3階にあがったところを横にはいったら人が少ない日本のコーナーだった。人気がないのか静かでほとんど人がいない。展示は見て回るうちにこれは数だけでもすごいなと思った。
日本だけでなくモンゴル、ウラル、チベット、中央アジア、インド等々にわたっているがまだ整理もおわってないというようなマイナーな印象を与えているのじゃあないかという気がする。
次に宗教画や肖像画みたいなコーナーが延々と続く中を完全に迷ってしまった。そのうち1階の古代ギリシャローマまでくるともう歩くだけで精一杯になってしまった。とにかく、有名な宮殿の部屋だけでもおさえておこうとやっとたどり着いたのが「パビリオンの間」。
ここに「孔雀時計」がある。エカテリーナIIのツバメだったポチョムキンが贈ったものだ。金色で精巧な孔雀ではあるがどういうように時を刻むのかは定かでない。
エカテリーナIIがロシアの威信を取り戻すために集めまくった美術品の数々は半端でない。そのエカテリーナはピーターの孫の嫁さんで、ドイツ人だからそのエネルギーをロシア人特有のものと考えることは出来ないと思うが、外国人に権力を偏見なく与えて国家をまかす鷹揚さにはロシア人的なものがあるのかもしれない。
「祖国戦争の画廊」といわれる部屋はあのロッシの設計だ。戦争に参加した将軍の肖像画が赤い壁面全域にわたって掲げられている。均等で対照なデザイン。
祖国戦争というのはロシアがナポレオンに勝った戦争だが、実際はナポレオン軍が寒さで自滅しただけなので勝ったというにはおこがましい。しかしローマに攻め入ったロシア軍が自国の後進性に気づいて変革の機運を持ったことは前進だったと思う。
ようやく「聖ゲオロギーの間」にたどりついた。皇帝謁見の場所で、正面にはロマノフ王朝の紋章、双頭の鷲が掲げてある。双頭の鷲はもともとローマ帝国の紋章で西と東を支配する意味だったがハプスブルグ家やロマノフ王朝はこれをパクッタのだ。ピーターが双頭の奇形動物のコレクションに走ったこととの関連は定かでない。
ほかにも見つからなかった宮殿の間もあるが、ただいまは足が疲れて疲れて、、そこで色々訪ね歩いた結果、目的の20世紀絵画の展示室にたどり着いた。最初の日本コーナーの並びだった。
まず、セザンヌ,ゴッホ、ルノアールなど。そしてゴーギャン。
本当は彼の作風は僕の好みではないのだが、とても気になる作家。彼は僕の生まれる100年前に生まれて金儲けしてからタヒチで絵を描いて55歳で死んだ。S.モームの「月と六ペンス」のモデルだ。彼はサウスパシフィックの異文化に同化しようとしたのか?できたのか?彼の薄暗い作品のなかで想像する楽しみがあった。ここにはそれに十分なゴーギャンがある。
そしてマチス。僕一人の根拠のない勝手な思い込みによれば彼の「ダンス」は現在存在する絵画のなかでは最高価格で落札されるものである。そのマチスの部屋があって、「ダンス」の反対側の壁に「ミュージック」があって中央に「赤い色の部屋」がある。「ミュージック」では5人の男女は皆正面を見て楽器を演奏したりしているのに対し反対側の「ダンス」では一人だけ顔がみえるがのあとの4人はみな後ろを向いた形になっているのに気づいた。あのみえる顔はだれなんだろう。マチス自身の顔かな、と思ったりもする.「ミュージック」では1人が立っていてあとの4人は座っている。この静とダンスの動の対比をこの展示で意図している。
どうして青、赤、緑3色だけの組み合わせでこうダイナミックな印象をあたえるのか?そうだ光の周波数なんだと気づいた。赤と青はそれぞれ赤外線、紫外線の方向で対極にある。そして緑の周波数は可視光線の中間に位置している。だから一時、モニターの色は緑が目に優しいと考えられた時期があったのだ。可視光線のなかで波長の長い赤と中間の緑と短い青を使ってもっとも強烈な色のコントラストを狙っている、、、。
ダンスにはまったく同じ構成で色が違う作品がNYのモマ(近代美術館)にあるはずだ。これは人体のいろが赤ではなく肌色だ。上の理由でこちらのダンスの方が強烈であることは疑いない。僕がNYにいたときダンスを見たかどうか記憶にない。もう一度見てみたい気がした。
もうこれでいい。見たかったカンジンスキーはみつからなかったが、もういいや疲れた。
今日はロシア美術館もみないといけないので、、。そしてやっとたどり着いたと思って入場券を買って入ったら、、。あれっ!間違えた。隣の「ロシア民族博物館」に入っちゃった。どっちもルスキーとムヅィーエが入っているので、、、。ま、いいか、こっちも面白そうだしちょっとだけ、、、とロシアの各種民族の衣装や生活用具などの膨大な展示品を見ているうちにもう本当につかれた。どこや出口は!みつからん!あぁ。
やっと出て、となりのミハイル宮殿(ロシア美術館)の入り口まで来ると誰も人がいない。もう閉館時間になっちゃったのかな?俺、時計ないから、、、。今日は休館日だ。もうかえる。絶対かえってホテルで寝る。