「生きているとはどういうことか」池田清彦著 筑摩書房 1,400円+税、です。
「ホンマでっか!?TV」を観ていて(正確には、かみさんが録画を観ているのを聴いていて…)、評論家の方々の本を読んでみたくなっていました。その中では、やはり生物学者の池田清彦さんに惹かれるので、多々ある著書の中から、本来の生物学のことを書かれた最近の本ということで、この本を選びました。
これまでに、私が教わってきたり、かじってきたりしてきた、生物やDNAに関する薄い知識にはなかった、生物は「物理化学法則からだけでは説明できない」「何か変なのものがある」という感覚や、生物の進化や多様性や免疫システムなどを成り立たせる「いい加減」さ、という感覚が、古い思い込みを払い落としてくれて、なるほどと思います。とても、面白いです。
「動的平衡しつつ変化する−−代謝と循環
生物は時間が経てば、身体と構成する物質が大幅に入れ替わる。人間ならば、十年前と現在ではほとんどすべての物質が入れ替わっている。それでも『自分』であることには変わりがなり。…」。
「勝手に成長して勝手に死ぬ−−オートポイエーシス
… 生物は内と外の境界を次々変えながら、自分自身が変わっていくシステムをもっている。細胞であれば分裂して空間が分離する。繁殖は、ひとつの空間で使っていたあるルールを、別の二つや三つの空間に分ける。そして成長とは、この空間を外部にどんどん増やしていく、つまり自分のルールを外に拡張していくことだと言える。…」。
「代謝・循環もオートポイエーシスも物質系の中にある。…略… 遺伝子工学の発展によって『生物の原理』的なことはどんどん分かってきている。…略… 現在わかっていることをひと言でいうなら、生命を司る局所的なルールである。局所的なルールを重ねても生物は当然動かない。おそらく、そこに生命の本質があり、局所的なルールを超えた何かがあるに違いない。それが何であるかが、わかっていないのだ。」と。
その他にも、進化の「さまざまな遺伝子の使い方を開発して…」「たまたま生き残っただけ…」や、免疫システムの「ムダきわまりない」「網羅的なシステム」、性の「遺伝的多様性を増やし」「遺伝子を修復する」ためと哺乳類のSRY遺伝子の働き、2n細胞の有性生殖とアポトーシス、細胞の分裂寿命に関わる染色体のテロメア、がんの関連遺伝子とがん幹細胞と転移、クオリアという「個人的な生の感覚」…、など、興味深いことがたくさんです。